エヴァ
■2ndステージ■
第6話「ユニゾン、権利争奪戦」
作・専務さま
ネルフ
「今だ仕事の虫かい?」
「・・・・加持君か」
「その様子だと未だに彼氏はいないね」
加持はリツコの首に手をかける。
「あら?加持君だってそうじゃないの?それにね、この手をどかさないと・・・」
「平手打ちかな?」
「いいえ・・・こわ〜いお姉さんが睨んでいるからね」
さっと手を引いた加持。
振り向くと、分厚いファイルを持って睨んでいる。
「あんたねぇぇぇ!いい加減にしなさいよ!」
「あら?まだ俺に未練があるのかな?」
ズパン!っとファイルを加持に殴りつけようとするが、かわされる。
「お〜こわ・・・それじゃあ葛城も彼氏はいないな」
ドカッシ!
ファイルが壁に張り付いた加持の頭の左側をかするようにぶつかる。
ファイルは半壊している。
ファイルの表紙の破片がリツコの手に刺さった。
「・・・・・・これで勤務時間が長びそうね・・・・どうしてくれるつもり?」
「あ・・・・あ」
「ついでに・・・そのファイル結構高いわよ」
「ふぁぁぁ!ちょっちまった!」
すでに遅い・・・
ファイン!ファイン!っと警報が鳴り響く。
「警報・・・使徒!?」
僕は、緊急収集された。
まだ傷が痛むけど・・・戦える程度にはなっている。
「いいわね!三人であいつを海から出す前に倒しなさい!」
無理なのはわかっている・・・
アスカがソニックグレイブで真っ二つにする。
「アスカ!ちゃんと使徒を見て!」
「はぁ?アンタバカ?」
「いいから!まだ動いている!」
「・・・・・・私が行くわ」
レイがプログナイフをコアに突き刺す。
しかし、効かない。
「二人とも!退却だ!ミサトさん!N2兵器で脚止めしてください!」
「ほえ?あ、ええ!わかったわ!」
このときミサトは「何でシンちゃんに言われにゃならんの?」っと心の中でグチって
いた。
「新型N2爆雷にて、体表の28%を焼却。今は、事故修復中。再度進行は5日後」
「・・・恥さらしだな」
「すみません・・・」
「パイロット三名!」
「「「はい」」」
「お前達の仕事はなんだ?」
「使徒と戦う事です」
「使徒に勝つ事・・・世界を救う事・・・サードインパクトを防ぐ事・・・でしょ?」
「・・・勝つ事・・・」
「そうだ、使徒に勝つ事だ。それ以上は望まん」
そう言うと、ゲンドウは冬月と去っていった。
「綾波、昼食に行こう」
「レイ・・・一緒に来い」
ゲンドウがレイに声を掛けた。
「・・・・・碇君・・・ごめんね・・・また今度ね」
この言葉に、ゲンドウは驚いていた。
その驚きは冬月にしかわからなかった。
「シンジ君、俺と行こうか?レイちゃんに振られちゃったらな」
まったく・・・違いますよぉ。と言って苦笑するが、アスカの表情は暗い。
食堂
「何で私が司令に睨まれなきゃいけないのよ!」
「戦う事って言ったからだよ・・・あの人は僕らを道具としか思っていないよ・・・」
「そのようだね、司令はそう言う人なんだね」
「・・・・・・いいえ、母さんのためなら何でもすると思います・・・・」
「何でそう思うのかい?」
「・・・・・・何となくです」
ははは、と加持さんに笑われてしまった。
「そう言えば・・・ミサトさんは?」
「責任者は責任を取るためにいるのさ」
そして、ミサトのデスク
「・・・・・・・・・請求書は世界が危機から脱した時に出してもらいたいわね・・・」
「今度失敗したら間違い無くクビよ」
にっこり笑いながら言うリツコ。
「そんな事言わないでよぉ!どうしよう・・・」
そう言うと、エビチュを取り出した。
「いい案があるけど・・・飲むのなら渡さない方がいいわね」
「いりますいります!赤木博士の案なら喜んで!」
さっと、仕舞う。
「残念、私じゃないわ」
「え?だれ?」
渡されたフロッピーには、手書きで「マイ・ハニーへ」っと書いている。
「・・・・・・いらないわ」
「クビになってもいいのね」
「うぅぅ・・・加持のバカ・・・」
食堂
「加持さんはわかってくれますわね!」
「え?何がだい?」
「何でサードが睨まれないで私だけにらまれるのか!サードは余計なことを言い過ぎ
だったのに!」
「ははは、シンジ君は今まですごかったからね」
「シンクロ率だったらすぐに抜いてやります!」
「そう言う問題じゃないよ。心と人格だ」
さすがに怒ってしまったようだ。
「何よ!加持さんまで!私がサードに劣っているとでも言うの!?」
「まぁ・・・今はそうかな?きっと抜けるよ」
「もう・・・加持さんだから許して上げるわ!」
<ファースト、セカンド、サードチルドレンは作戦会議室まで・・・>
「お呼びだ」
「はぁ・・・・・・」
「行こうよ・・・呼んでいるんだから・・」
「ミサトさん、お呼びで?」
「ええ、一緒に来なさい」
着いたのは家の前だ。
「へ?」
「ここはどこなのよ!」
「・・・・ミサトさんの家・・・」
ユニゾンか・・・どうなるんだろう?またアスカとかな?
「ここで、ダンスを踊ってもらいます。シンクロ率の一番高いシンジ君は外せない
わ」
「・・・ファーストと争えって?いいわよ!絶対に貰うわ!」
「シンちゃんを?」
「バッかじゃない!使徒と戦う権利をよ!」
「・・・私は・・・碇君と踊ってみたい・・・・」
爆弾発言発動。
ミサトは真っ白になって固まっている。
「ハ、ははは・・・・・とにかく踊ってみましょうか?」
僕の踊りはほとんど完全だった。ミサトさんは驚いていた。
「次はレイね」
「はい・・・」
綾波は、僕の踊りを見て覚えたようで、僕とほとんど変わらない踊りを見せた。
「アスカよ」
・・・・・・綾波より下手だった・・・これには・・・怒るだろう・・・
「これでシンジ君とレイね」
「ミサトさん、僕と綾波は・・・ほとんど同じなんでしょう?」
「そうよん」
「だったら・・・惣流さんと、2日3日練習させてください。それから考えましょう」
「そうね、そうしましょう」
アスカは僕が変な気でも起こしたかと睨みつけていた・・・・怖いよ・・・
「えぇぇぇぇ!三人で住むのぉ?!」
「そうよん!シンちゃんはそんな事しないから大丈夫よん!」
「そう・・・碇君は優しくしていくれる・・・」
アスカの僕に対しての不信感が一気に倍増した。
結局、リビングで雑魚寝で寝る事になった。
朝
気持ちのいい匂いと音が部屋に響いている。
シンジが朝食を作っているのだ。
「二人ともおきてよぉ!」
「・・・・・・・(ガバッ!)サード!あんた・・・何もしていないわよね?」
「ったく・・・僕は変なことしないよ・・・朝食が出来ているよ」
昨日の配置は、アスカ、レイ、シンジの順で川の字になって寝ていた。
起きると、レイがシンジに張りついていた。
シンジは、一瞬で活動を停止した。
再起動まで15分かかった。
「男の手料理?美味しくなかったら出ていくからね!」
勝手にしてよ・・・出ていく事はないと思うから・・・
「・・・・・・・・・・・・・・」
「どう?」
「碇君の料理は美味しい・・・」
「・・・・・・美味しいわ・・・・・凄い・・・・」
驚いていた。
「おっはぁ〜・・・眠いわぁぁぁ!!!」
「眠いなら大声出さないでください」
「あら?朝食出来ているわね!いっただきます!」
寝起きすぐに、朝食をたいらげるミサトさんの胃袋は脅威だ。
訓練が始まった。
訓練には、前時代にはやったダンスゲームの改造版をつかって採点した。
「はいはい!ちょっと待ちなさい!」
「なによ!文句あるの?」
「違うの、二人を合わせないと駄目なのよ!シンちゃんは合わせようとしているけど
アスカは協調性が無い!」
「何よ!私は完璧よ!サードがとろいんじゃない!」
こんなやり取りの練習が続いて3日。
加持さんが見に来た。
「加持さん!見ていてください!」
「見て上げるよ、俺が考えた作戦だからね」
「そうですか!頑張ります!」
その1時間前、学校
「ケンスケ、センセがきとらんやろ?」
「あ?うん、4日かな?3日かな?」
「とにかくや!また怪我でもしたかもしれん!お見舞いに行くで!」
「え?いいよ!葛城さんもいるかもしれないし!」
「そや!ワイも実はそれが狙いな・・・」
後ろにたたずむ殺気・・・・
「鈴原!そんな理由でお見舞いに行くな!私も今日行くつもりだったから・・・」
「なんや?センセのお見舞いか?」
「それもだけど・・・アスカもよ」
アスカは、第七使徒が来る直前に転入したばかりだ。
その翌日に使徒戦があり、そのまた翌日から来ていない。
マンションの前
「行くでぇぇ!」
「そうだね!いこう!」
「こんな所に住んでいるんだ。凄いなぁ・・・・」
エレベーターを上がり、部屋の前に来る。
「・・・・・行くで」
「ええ・・・」
何で扉をノックするのにここまで慎重にやるのだろうか?
トントン!
「はぁ〜い!どなたぁ〜?」
「あ、シンジ君の知り合いの鈴原トウジです!先日はすんません!」
「同じく相田ケンスケです!」
「あ、アスカ・・・も・・・一緒なんですか?」
音楽が流れてきている。
「あれ?音楽なんて・・・」
シンジが出てきた。
「ミサトさん!早くしてください!」
このとき、一瞬で大笑いの渦が巻き起こった。
シンジの格好は、・・・・・・・男物のレオタードと言った所だろうか・・・
「なんやセンセ!変な趣味でも出来たんか?!」
「シンジ!その格好は貰ったぁぁ!」
どんどん撮られていくシンジは奥に消えていった。
「で・・・何の用かしら?」
「あ、シンジが学校を休んでいたから・・・体でも悪くしたのかと思いまして・・・」
三人は部屋に入ってきた。
そこには、二人して踊っている。
レイは、後ろで同じ格好をして立っている。
当然ケンスケに撮られた。
「・・・・駄目だな・・・・」
「え?何がですか加持さん!」
三人が来て、5回ほど踊ったところである。
「・・・・・シンジ君にはわかっているね?」
「ええ・・・・」
「・・・・僕もわかった」
「なんや?ケンスケ」
「シンジ君、どうぞ」
「・・・アスカは協調性が無さ過ぎるんだ・・・自分の殻に閉じこもったまま・・・だから合
わせられないんだ」
「そう、僕も同じ感想・・・・いくら完成度が高くても二人で同じ動きをしないと駄目な
んだな・・・」
「うっさいわね!私はなんにでも完全じゃないと気がすまないの!」
ミサトさんが出てきた。
「レイ・・・シンちゃんと踊ってみて・・・・」
僕は綾波と踊り出した。
目を合わせた瞬間動きが鈍ったみたいだったけど・・・僕の動きにかなり近かった。
「さすがレイね・・・見ているだけでシンちゃんに合わせられるなんて・・・」
「・・・・もういいわよ!あんた達二人で戦えば!」
「アスカ!」
僕は、たまらず前の呼び方で呼んでしまった。
アスカは、そのままの格好で飛び出してしまった。
「シンジ君」
「わかってます加持さん・・・行ってきます」
僕は、上着を持って外に出た。
どこにいただろうか・・・・忘れた・・・
公園を通りかかった時に、ベンチに座ってぶつぶつ言っているアスカを見つけた。
「・・・・・・アスカ・・・・」
「きやすく呼ぶんじゃないわよ・・・・」
「向こうの風習だろ?ファーストネームで呼ぶのは」
「ここは日本よ・・・・それに、それを言うためにここに来たの?バッかじゃない?」
「・・・・・・肩の力を抜きなよ・・・・自分が出来る所まででいいじゃないか・・・・完璧な人間
はこの世に存在しないよ・・・
誰にも、絶対に欠点はある・・・得意じゃなくても頑張れば出来るかもしれないけど
・・・・気をずっと張っていたら目標達成までに体が壊れちゃうよ・・・・・・・」
「うっさいわね!アンタなんかに私の気持ちが判るもんですか!」
「・・・わかるよ・・・・・・アスカに似ている人を知っているんだ・・・」
アスカは、殴ろうとしていた手を止めた。
「その子はね、絶対に一番じゃなきゃいけなかったんだ・・・・でもね、他の人に抜かれ
て・・・心を壊しちゃったんだ・・・
その後にいろいろあったけど・・・・それが原因で・・・・・・・・その子はアスカによく似てい
たよ・・・・日本人とドイツ人の間の子でね」
「なによ!人間で同じ物なんていないわ!」
僕は、泣いていた。
泣き声も上げず、アスカをまっすぐに見て泣いていた。
「・・・・なによ!」
「その子はね・・・僕の・・・すぐ目の前で・・・・・・死んでしまったんだ・・・・・・僕は・・・・何も
して上げれなかった・・・
ただ見ているだけで・・・彼女が僕を必要としている時に僕はいなかった・・・僕のせいな
んだ・・・だから・・・
僕はもうそう言う人を放っておけないんだ・・・・・」
アスカは、シンジの真剣な顔と言葉と心に、心を動かされた。
こいつは、私の心を見てくれる・・・私を一人の人間として心から心配してくれている
と・・・
「アスカ・・・EVAがなくなったらどうするの?」
ビクンと体が震えた。
そんな事考えた事無いから・・・
もし・・・無くなったら・・・私の存在理由が無くなる・・・・・・
どうすれば・・・いいのだろうか・・・・・・死ぬのか?
「無くなったら、学校や友達、趣味や恋人を・・・・そうすれば寂しさが和らぐよ・・・・友
達は存在理由を見出してくれるから・・・
趣味は、やっていれば特技に変わるかもしれない・・・恋人は・・・将来も一緒にいるかも
しれない・・・
そう言う事を考えておかないと・・・平和になった時に困るよ・・・・・・自殺するかもしれ
ない・・・それは駄目だよ」
アスカは考えていた。
学校は大学まで出ている・・・・
友達は・・・・・今のところわからない・・・・
恋人は・・・加持さんは・・・私を子供としてみるだけ・・・・
趣味?趣味なんて・・・・・・・無い・・・・
小さいころから訓練ばかりだったから・・・・没頭した事のあるものはEVAしかない
・・・・・・
どうすればいいのだろうか?
私は・・・・・・
アスカは、1時間黙り込んで考えていた。
僕は、持ってきた上着をアスカにかけた。
日はすでに傾いて、涼しくなってきたので持って来た事を思い出したのだ。
「・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・シンジは・・・・・・・EVAがなくなったらどうするの?」
「僕は・・・・わからないよ・・・ただ・・・高校に行って・・・大学に行って・・・・就職して・・・・・
それから新しく探そうと思う・・・
趣味はあるけど・・・・最近はやってないし・・・・・・恋人もいない・・・いや・・・好きな人はい
るね・・・・・・」
「だれ?」
「・・・・・・・・教えて上げない・・・・・・・・」
「・・・・・・ファーストね?」
「・・・・・・・・・うん・・・初めは同情だったのかもしれないけど・・・・・・」
アスカは頭に?マークをぶらつかせている。
「綾波はね、僕が来るまで赤城博士や父さんでもないとちゃんとした会話が出来な
かったんだ・・・・
僕が話しかけているうちにだんだん・・・・・・でも、最近結構変わったんだ」
あれでか?っと嘆くアスカ。
「うん・・・・・前はミサトさんが何か行っても、ハイやイイエや、問題有りません、っ
て答えていただけみたいだし・・・・」
「それって人間じゃないわよ・・・・・・・」
「心を硬い氷で固めてしまっていたんだよ・・・・・・それを今、僕が少しずつ溶かしてい
る・・・・・」
結局、そんな会話をしているうちに、日が落ちてしまった。
「シンジ・・・・ファーストが・・・・もしシンジの事が嫌いだって言ったら?」
「・・・・・・新しい人を探す・・・・・事は無いだろうね・・・・・今度は僕が心を閉ざしてしまう
だろう・・・・・・」
「そう・・・・・・」
「・・・・・・誰か・・・僕の心を溶かしてくれたら今度はその人が好きになるだろうね
・・・・・・自分勝手だね・・・・・ごめん」
「・・・・・・・・帰りましょう」
「そうだね・・・・・・」
僕らは結局3時間半話していた。
三人は帰っていて、綾波はミサトさんの料理を食べたくないらしく自分の部屋に避難
していた。
「すみません遅くなって・・・・・夕飯を食べたら少し練習します。きっと完全に近いで
しょう」
僕は自信満万に言ってやった。
ミサトさんは目を丸くしていた。
夕食を終え、訓練を再開したら、1回目でほとんど一緒になった。
寝るまでに5回やったけど、5回目はほとんど同じ動きになっていた。
綾波は、恨めしそうな目でアスカを見ていた。
(update 2000/11/12)