エヴァ

■取り替えエヴァンゲリオン■

第10話「踊る人達」

作・SHEROさま


 

「無様ね。」

 それが今回の作戦において引き起こされた状況に対する、E計画責任者のコメントだった。

「も〜、あんたのせいで日本でのデビュー戦が目茶苦茶になっちゃったじゃない!」

「何言ってんだよ、アスカが焦って倒そうとするからこんな事になるんだろ!」

 二人が喧嘩するその先には上半身部分が地面に埋まっているエヴァの映像があった。

「まったく恥をかかせおって・・・二人ともいいかげんにしたまえ。」

パクッ。モグモグ・・・。

「いいか君達、君達の仕事は何だね?」

パクッ。モグモグ・・・。

「エヴァの操縦。」

パクッ。モグモグモグモグ・・・。

「違う、使徒に勝つことだ。こんな醜態をさらす為に我々NERVは存在するのではない。」

パクッ。モグモグモグモグ。パクッ。モグモグモグモグ・・・。

「・・・・・・(汗)。レイ、ここは映画館ではないのだからポップコーンを食べるのはやめたまえ。」

 呆れ顔の冬月副司令の視線の先には、空になったポップコーンを

残念そうに見つめているレイの姿があった。

「・・・はぁ。エヴァパイロットの3人は葛城君と共に帰宅するように。

 以上で会議を終了する。」

 言うなり、部屋を出ていく冬月。

「もう、なんで皆すぐに怒るのよ。」

「大人は恥を掻きたくない物なんだよ、特に副司令のように忙しい人はね。」

 怒るアスカを優しくなだめる加持。

「あの・・・ミサトさんは?」

「後片付け、何といっても君達の責任者だからね。

 まあ、戻ってくるまでのんびりしてよう。」

 加持が二人の相手をしているその後ろで、レイとマヤはお茶をすすっていた。

    ☆    ☆    ☆

 机の上にこれでもかという位、抗議文、請求書、苦情が乗っている部屋は

ミサトに与えられた部屋である。

 その書類の山にあきれた視線を送って椅子に座っているミサトに、

顔を覗かせて声を掛けるリツコ。

「ちゃんと目を通しておいてね。」

「見なくても分かるわよ、喧嘩するならここでしろって言うんでしょ。

 言われなくてもわかってるわよ。前の使徒が片付いてたらそうするわ。」

 ミサトは少し顔をしかめたあと、真剣な表情から一転して

笑顔を浮かべてイスの背もたれに身体を預けた。

「それでリツコ、何かいいアイデア持ってきてくれた?」

「あんまり人に頼ってるとそのうちに首が飛ぶわよ。」

「まーまー、いいじゃないの。で、あるんでしょ?」

「ふう。・・・はい、これ。」

 リツコは白衣のポケットからディスクを取り出す。

「あんりがと〜。やっぱもつべき物は心優しき旧友よね〜。」

 ミサトは椅子から立ち上がると素早くリツコの手からディスクを受け取る。

「あら、残念。それは加持君と碇司令のアイデアよ。」

 ディスクに頬擦りしているミサトに、リツコが怪しげな笑みを浮かべながら言い放つ。

その瞬間、ミサトの動きが止まり、ゆっくりとリツコの方を見た。

「加持・・・と・・・碇司令・・・(汗)」

「・・・ほんとに首にならないように気を付ける事ね。」

 リツコの視線の先には冷や汗を流し続けるミサトがいた。

    ☆    ☆    ☆

 その後、何とか立ち直ったミサトはディスクの中身を見たあと、

シンジ達3人を引き連れて自宅へと戻ってきた。

「「ただいま〜。」」

「お帰りなさ〜い。」

 奥の部屋から帰ってきた返事に、慌てて中に入るミサトとシンジ。

そこにはペンペンを膝の上に抱えて座っているユイがいた。

「司令!?」

「母さん!? なんでここにいるの?」

「なんで、はないでしょう? これから一緒に暮らすんだから。」

「一緒に? そんな事言われても・・・」

「あの・・・司令、私の家、そんなに広くないですからこれ以上人が増えても・・・」

 困惑した顔のシンジの横で、遠慮した様子でユイに声を掛けるミサト。

「その心配はいらないわ、ほら。」

 ユイは自分の後ろを指差した。

その方向には、隣の部屋へと続く大きな穴が作られていた。

「ああ〜〜〜〜!! 母さん、何だよこれ?」

「何って・・・」

「どうしてリビングの壁に穴があいてるのさ? お隣に迷惑じゃないか。」

「その心配はいらないわよ、だって私が住むんですもの。」

「「えっ?」」

 ユイの言葉にシンジは呆然として、ミサトは顔を青くして固まっている。

「私が隣に住むのよ、シンちゃんと一緒に。」

「「ええ〜〜〜〜!!」」

「そんな!? どこかに引っ越すんじゃなかったの?」

「だからミサトちゃんの家の隣にしたのよ、使徒のおかげで

 どこもいい物件とはいえないんですもの。ならこっちの方が便利でいいでしょ。」

「便利・・・なのかな?」

「そうよ、空いてる部屋はたくさんあるから以前の家においてある荷物も

 持ってこれるし、いつでもシンちゃんの顔は見れるし。」

「・・・・・・そんな事はどうでもいいけど、どうして私がここに呼ばれたのか

 説明してもらえますか?」

 驚きの声ばかりをあげるシンジとミサト、それに冷静に受け答えするユイ、

何も言わずに横に立っているレイを目の当たりにして、静かに立っていたアスカだったが、

とうとう我慢の限界に来たのかユイに向かって怒気を含ませて質問した。

「そうね、ミサトちゃんお願い。」

「はい。前回の戦闘データより第7使徒の弱点はひとつ、

 分離中のコアに対する二点同時の過重攻撃であると予測します。

 そこでアスカ、レイ、シンジ君の3人には今日から1週間、ここで共同生活してもらい

 ある曲に合わせた攻撃パターンによる、完璧なユニゾンをマスターしてもらいます。」

 アスカ達3人の方を向いて、今回の作戦内容と合わせて集められたことを

説明するミサトだが、アスカは納得しない。

「いやよ! 昔から男女7歳にして同衾せずってね。」

「あいにくと時間が無いの、それにアスカには拒否権はないわ。」

 声を荒げて反対するアスカだが、あっさりと意見を取り下げられる。

「どうしてよ?」

「それは私から説明するわね。現在零号機は規格変更の為、改修中なの。

 加えて今回の作戦被害状況より、エヴァ修復も大急ぎで取り掛からなければいけない状況です。

 そのため、零号機の改修を後回しにして、初号機と弐号機の修理を最優先で行わせています。」

「それとあたしの拒否権が無いのとどう関係が?」

 お茶を持ちながら説明するユイに、腕組みをしながら質問するアスカ。

「作戦は弐号機を中心とし、ユニゾンの精度がより高いほうが初号機に乗る事になります。

 この意味が分かるわね?」

「ファーストかシンジか、あたしとぴったりユニゾンできるほうが初号機のパイロット。

 そして私は絶対にはずせない主戦力。まあ、私の能力を考えれば当然よね。

 いいわ、やってやろうじゃない。」

 内容を聞いて、自分の待遇が特別である事に気をよくするアスカ。

「頑張ってちょうだいね。それで曲の方なんだけど攻撃パターンの検討と

 曲作製を青葉君達にお願いしてるけど出来上がるのはどうしても明日以降になるわ。」

「時間が無いんでしょ? そんな事で間に合うの?」

「ですから、曲が完成するまであなた達にはリズム感を養ってもらいます。」

「リズム感ね〜、シンジやファーストにそう簡単に身につくかしら?」

 アスカはシンジとレイを交互に見て、心配そうに声をあげる。

「大丈夫よ、体に叩き込んでもらうから。これを使ってね。」

 ユイは足元から大きな紙袋を取り出し、中身をテーブルの上に広げた。

テーブルの上には長方形の箱と、マットらしきものが並べられる。

「何? これ・・・」

「セカンドインパクト以前にはやっていたゲームよ。

 今日はこれで遊びながらリズム感を養ってもらうわ。」

「ふ〜ん、ま、いいわ。ゲームだろうとなんだろうと私の実力を見せてあげるわ。」

「それじゃ早速やりましょう。私も久しぶりだから楽しみだわ〜。」

「母さんもやるの?」

「もっちろん。まずはお手本、そしてあとはみんなで特訓よ〜。」

 一人盛り上がってセッティングをはじめるユイ。

そして3人の特訓は始まった。

ただ何かにつけてアスカが反発するので、進行が多々止まる事があったのは言うまでもない。

    ☆    ☆    ☆

 3日後、コンフォートマンションに向かって歩く、二人組の男子と一人の女子がいた。

3人は入り口前でやっとお互いに気付き、声を上げる。

「委員長。なんでここに?」

「アスカのお見舞いに。あなたたちは?」

「「シンジのお見舞い。」」

 話しながらも歩いてエレベーターへと向かい、乗り込む3人。

「そう・・・あなた達は何階?」

「ん? 同じ階だよ。」

 ヒカリの押した階を見てケンスケが答える。

 そして目的の階にたどり着き、エレベーターを降りて目的の部屋へと歩いていく3人。

その足は奇麗に一つの部屋の前で止まった。

「「「なんでここで止まるんだ(や)(のよ)?」」」

ピンポーン。

 3人で一斉にチャイムを押し、反応を待つヒカリ、トウジ、ケンスケ。

「・・・・・・何?」

「「「あ、綾波(さん)!?」」」

「あら、あなた達、いらっしゃ〜い。」

 無表情に出迎えたレイの後ろからユイが顔を出す。

「い、碇先生まで・・・。どうなってるんだ?」

 予想外の人物が続けて出てきた事に驚いて固まってしまう3人。

「シンちゃんならなかにいるわよ。さ、あがって。」

「あの・・・アスカは・・・。住所を聞いたらここだと聞いてきたんですけど・・・」

「ああ、アスカちゃんもいるわよ。」

「ホンマ、どないなっとるんや?」

 呆然としながら部屋の中へと進む3人だが、部屋の現状を見ると再び固まってしまった。

部屋の左側ではペアルックでヘッドホンを付けながら何やら踊っているシンジとアスカ。

右側ではテレビ画面を見ながら矢印が書かれたマットの上で踊っている加持とミサトがいる。

「これはどういう事か説明してください。」

この状態に一番早く立ち直ったトウジが、ユイに向かって質問した。

「シンちゃんとアスカちゃんは対使徒戦に向けて特訓中、あっちの大人達は遊び。」

「司令〜、それはないでしょう?」

 ユイ達に気付いた加持が踊りながら身体の向きを変えて、声を掛ける。

画面を見ていないにもかかわらずステップをはずしていないのはさすがである。

「ちょっと、加持、あんた、よく、そんな、余裕、ある、わね。・・・あ、いらっしゃ〜い。」

 そしてこちらは何とか顔だけを向けて声を掛けるミサト。

「ま、覚えたからな。これぐらいはやって見せるさ、ところで葛城ステップ踏み外してるぞ。」

「えっ、うそ? わ、わわっ、えと、えと・・・」

 慌てたミサトは何とかペースを取り戻そうとするがなかなかうまくいかない。

そんなミサトを見ながら部屋の隅によせられたテーブルのまわりに座るユイ達。

一人ケンスケだけはカメラを構えて、踊っているミサトを撮影し始めたが。

「ほんで、特訓の方はうまくいっとるんですか?」

「それが見ての通りなんだよ。」

 ゲームを終えた加持の声に全員が部屋の左側を見ると、皆納得したようにため息を吐いた。

 シンジとアスカのユニゾンはあまりにもひどく、

学校を休んでまで特訓しているという成果は全然見られない。

「・・・どうだい、そこの君、交代しないか?」

 休憩しようとテーブルへ近づきながら、加持がトウジに声を掛ける。

その後ろではミサトが息を切らしながら手招きしている。

「させてもらいますわ。」

「あ・・・あたしも次にさせてもらえます?」

 ゲームに興味を持ったのか、ヒカリが遠慮しながら声を掛ける。

「もちろん。葛城、それが終わったら一休みしようぜ。」

「オッケー、さ、鈴原君やるわよ〜。」

 トウジに簡単な説明をして、ゲームを始めるミサト。

その間にもシンジとアスカの特訓は続くのだが、シンジとアスカの

タイミングが合わないので、部屋の中には何度もエラー音が鳴り響く。

 それでも頑張ってユニゾン特訓を続けていたが、ついにアスカがきれた。

「ああ〜〜〜〜〜〜っ、もうっ!! やってらんないわ!!」

アスカはヘッドホンをはずすと下に叩き付けた。

「だいたい、今回の作戦は私が中心なんでしょ?

 だったらどうして、この私がシンジやファーストに合わせてレベルを落とさなきゃいけないのよ!

 本来なら二人があたしに合わせられるように、猛特訓するのが普通でしょ?」

 怒るアスカをじっと見るシンジ達。

「アスカちゃん、大きな差を出来るだけ早く埋める方法分かる?」

 ユイの問いにアスカは何も答えずじっとユイを見ている。

「一方を上げて、一方を下げるの。そうすればわずかな時間で両者の差を埋める事が出来るわ。」

「そんな事してたら、使徒になんて勝てなくなっちゃうわよ!」

 ユイの言葉を聞いても納得しようとしないアスカ。

「それじゃ、やめにする?」

「私しかいないでしょ? なんてったって今回の作戦は私が中心なんだから。」

得意げなアスカを見て、ユイは一口お茶を飲んだあと、レイの方を見る。

「レイちゃん、シンちゃんとやってみてもらえる?」

「・・・・・・はい。」

 レイはヘッドホンを取ると、アスカと入れ替わってマットの上に立った。

そうしてシンジとレイでのユニゾンが始まる。

 二人のユニゾンは先ほどのシンジ&アスカの時とは違い、

思わず拍手をしたくなるほど見事にピッタリと揃っている。

 アスカは二人の動きに、自分の時との違いを見せつけられて呆然としている。

「これは作戦変更して、レイとシンジ君でやった方がよさそうね〜。」

 ミサトの発言に顔を強張らせるアスカ。

次の瞬間、アスカは勢いよく立ち上がって部屋を飛び出した。

「アスカ! ・・・・・・碇君! 追いかけて!」

「えっ?」

「女の子泣かせたのよ、責任とってなぐさめに行きなさいよ。」

「いいんちょ〜。順番回ってきたで〜。」

 理由をいまだ理解できずシンジがオロオロしていると、

トウジから順番待ちをしていたヒカリへと声が掛かる。

「は〜い。いい、碇君。ちゃんと追いかけるのよ!

 ・・・・・・おまたせ、どれがいいのかな?」

 あっさりとテレビの方を向いたヒカリを何か納得できないといった目で見ながら

シンジはアスカを探しに出る事にした。

    ☆    ☆    ☆

 アスカを探して家を出たシンジだが、辺りにはもう姿が見えない。

シンジはマンションの近くから探し始め、しばらくしてコンビニにいるアスカの姿を見つける。

「・・・・・・・・・・・・。」

 アスカを見つけたものの何と声を掛けたらいいか分からず、取り合えずアスカに近づくシンジ。

「・・・・・・何も言わないで。」

 ようやく声を掛けようとしたシンジの先手を取ってアスカが声を出す。

「わかってるわ、私はエヴァに乗るしかないんだもの。」

 しばらくして、コンビニで大量に買い物をして公園とやってきたアスカとシンジ。

 ビニール袋いっぱいの荷物は、シンジの財布から

アスカがストレス発散の為にと買った物ばかりである。

「こうなったら、何としてもミサトや司令を見返してやるわ。」

「そんな・・・・・・見返すだなんて・・・」

「あっま〜〜い! 傷付けられたプライドはね、ハグッ、10倍にして、返してやるのよ。」

 先ほど落ち込んでいたとは思えないほど、元気にサンドイッチを食べながら

やる気を出しているアスカを見て、シンジはわずかに微笑んだ。

    ☆    ☆    ☆

 それからのアスカとシンジの特訓は今まで以上に真剣なものとなった。

生活習慣、行動はほんのわずかの間に揃うようになり、

わずかな時間も惜しむように音楽を聴いて曲とリズムを叩き込んだ。

 ただ、その横で毎日ゲームに興じている人間が数人いたのはいささか邪魔になっていたようだが。

    ☆    ☆    ☆

・・・・・・そして、決戦前夜。

「ねえ、シンジ。ミサトはどうしたの?」

「本部へ行ったよ。今日は徹夜だって。」

「そう・・・・・・・・・司令は?」

「母さんも一緒。」

「それじゃ、今日は私とファースト、そしてあんたの3人だけね・・・。」

 そう言うなり、アスカは自分の布団を持ってミサトの部屋へと持っていく。

「これは決して崩れる事のないジェリコの壁。この壁を少しでも越えたら死刑だからね。」

 アスカはシンジに警告を言い渡すとミサトの部屋の中へと消えた。

「・・・・・・・・・おやすみ。」

 その様子を見ていたレイもアスカと同様に自分の布団を持つと、自分の部屋へと帰っていく。

 何も言えずS−DATのイヤホンをはずしてそれを見ていたシンジだが、

再びイヤホンをすると自分の布団に寝転んだ。

 それからしばらく時間がたった頃、ミサトの部屋からアスカが出てくる。

シンジは聞いていたS−DATを停止させて、目を閉じ、周囲の音に耳を澄ませる。

 しばらくして、トイレから水の流れる音がしたあと、シンジの左側で

何か物音がするとともに腕に重みがかかる。

「・・・・・・!」

 その重みにシンジは目を見開いて驚いた。

重みがかかった腕には、アスカがシンジの腕を枕代わりにして寝ている。

シンジは間近で見るアスカにどきどきしながらも、アスカから目を放す事ができなかった。。

 Tシャツから覗く胸の谷間、甘い香り、目の前にある唇。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 シンジは思わずアスカの唇へと吸い寄せられていく。

ガラッ!

 突然した扉の音にシンジはアスカから体を離す。

だが腕はアスカがのっているので大の字になる程度しか体を離す事は出来ない。

 音の方向からして出てきたのはレイである。

足音は隣の部屋へと進んでいき、しばらくするとまた水の音が聞こえた。

そうして足音が近づいてくるとシンジの足元で止まり、今度は右側に重みがかかる。

「・・・・・・!!」

 再び目を開けたシンジの右側には今度はレイが寝ていた。

「(ど、どうしよう・・・これじゃ身動きが取れないよ。

  かといって下手に動いて起こすのもなんだし・・・

  でもこのまま朝になったりしたら何か言われそうだし・・・)」

 そんな事を考えているうちに時間は経っていき、結局そのまま寝てしまったシンジは

二人に腕枕をした状態のまま、朝を迎えるのだった。

    ☆    ☆    ☆

 翌日。MAGIの計算通り使徒は動き出し、NERV本部へと向かって進行を始めた。

「目標は絶対防衛線を突破しました。」

 使徒は国連の航空部隊に周囲を囲まれながら前進を続けている。

「来たわね〜。今度は準備もばっちり、この間のような事はないわよ。

 二人とも準備はいい? これまでの特訓の成果、あいつらにド〜ンとぶつけてやりなさい。」

「「はい。」」

 ユニゾンの成果を見せるかのように奇麗に揃って返事をする二人。

「いいわね? 最初からフル稼動、最大戦速でいくわよ!」

「わかってる。62秒でケリをつける。」

 作戦の最終確認をして出撃のタイミングを待つ二人。

そして、進行を続けていた使徒は作戦決行の場所へと近づいた。

「目標、零地点に到達します。」

「作戦開始!」

 外部電源が切られ、地上へと打ち出される初号機と弐号機。

2体のエヴァは空中へと打ち上げられると流れるように行動を開始した。

空中から使徒へ向けて特別なスタッフを投げつける。

スタッフから発生したフィールドで使徒を2分すると初号機、弐号機はそれぞれに攻撃を加えた。

 そして反撃を試みた使徒の攻撃をかわすと、防衛施設からの援護射撃によって

使徒を一点に釘付けにした所を攻める。

 エヴァ両機の攻撃を受けた使徒が、再び1体に戻った瞬間を狙って

シンジとアスカは空中から使徒のコアへと向けて、2点同時過重攻撃を加えた。

 使徒はその勢いで地上を数百メートル後方へと引きずられたあと、閃光を上げて爆発した。

発令所にいた全員は勝利を確信し、エヴァ両機の映像が出るのを待っている。

「エヴァ両機確認。」

 映像が現れると、そこにいた全員は呆れ顔を浮かべた。

爆発地点の中心には、本来凛々しい姿で立っているはずのエヴァ両機が絡み合って倒れている。

「あっちゃ〜〜〜・・・」

「無様ね。」

 一方、倒れているエヴァの方でもエントリープラグから出てきたシンジが

なぜかプラグ挿入口脇に備え付けられている電話型の非常連絡回線からコール音が鳴るのを聞く。

シンジがそれに出ると映像と共にアスカが大声で怒鳴りかけてきた。

「ちょっと! あたしの弐号機になんて事するのよ!」

「そんな!? そっちが突っかかってきたんじゃないか。」

「最後にタイミング外したのそっちでしょ! それに最後の一撃は

 足首にひねりを入れるのがポイントだって言っておいたじゃない!

 普段からボケボケっとしてるからそんなミスするのよ。

 昨日だって夜遅くまで寝ないで何してたのよ。」

「き、今日の作戦に向けてのイメージトレーニングと最終確認だよ。」

「嘘ばっかし! 寝てる間に私の唇奪おうとしたくせに!」

「・・・・・・ず、ずるいよ! 起きてたなんて!」

「ひっど〜い! 冗談で言っただけなのにホントだったなんて! キスしたのね?」

「し、してないよ! 途中で止めたんだ。」

「エッチ、痴漢、変態、信じらんない!? だいたい今日の朝だってそうよ。

 なんで私があんたに腕枕されて寝てなきゃいけないのよ?

 しかも反対側にはファーストまで腕枕されて寝てるし。」

「それはアスカが勝手に人の布団に潜り込むからいけないんだろ?

 こっちは身動き取れなくなっていい迷惑だったんだから!」

「なんですって!? こぉんな美少女が幸運にも横で寝ていたっていうのに迷惑ですってぇ!?」

 スピーカーによって本部はおろか、周囲にまで大声を撒き散らしながら喧嘩を続ける二人。

その姿にNERVの人達は、ある者は口元に笑いを浮かべ、

またある者はあきれた様子でそれを見聞きしていた。

「・・・・・・また恥をかかせおって・・・」

 そんな中、温泉旅行の場所の下見に行ったユイに

留守を頼まれた冬月は、胃に痛みを覚えながら頭を抱えていた。

そして冬月のうしろでは、せんべいを食べながらお茶をすすっているレイの姿もあった。

 

作者後書き

 

    ごめんなさい!

    まず最初に言わなければならないのはこの言葉でしょう。

    本来1月には投稿しているはずの作品がこんな時期までかかっているんですから。

    原因はと言えば、年末からの予定が予想外に進まず、それに伴なって

    これを書き上げる時間を削ってしまった事。

    そして長いブランクの所為で作品のテンポを忘れてしまった事です。

    おかげでリハビリ状態の作品になってしまったので

    一部違和感があるかもしれません。

    これは以前に見つけたり、指摘されたりした間違いの修正とともに

    書き直して修正出来たらいいなと思います。

    さあ、急いで続きを書かないと。

 

 


(update 00/03/12)