エヴァ

■取り替えエヴァンゲリオン■

第11話「旅行に行きたい!」

作・SHEROさま


 

 

 多くの人が行き交う街中で、腕を組んで歩いている無精髭の男と赤い髪の少女。

取り合わせを見ていると援助交際をしているようにも見えるが、もちろんそんなはずはない。

 男はNERVの無節操男2号、加持リョウジ。少女はアスカである。

「ラッキー、加持さんにショッピングに付き合ってもらえるなんて。」

 アスカは喜びを表現するように、加持の腕にしっかりと抱き着いている。

そうして、加持の腕に抱き着いたままアスカが向かったのは、水着売り場である。

「おいおい・・・」

 女性用の水着に囲まれて、まわりの女性の痛い視線が突き刺さるなか、

アスカの水着選びに付き合わされている加持。

「ねえねえ、加持さん。これなんかどう?」

 長い時間をかけてアスカが選び出したのは赤と白のストライプで色分けされた

セパレートタイプの水着である。

「いやはや・・・中学生にはまだ早いんじゃないか?」

 中学生が身につけるにしては大胆だと思った加持は素直に感想を述べる。

「おっくれてる〜。いまどきこれ位は常識よ、常識。

 あ〜あ、これが加持さんと二人っきりの旅行だったら

 もっと大胆な水着で悩殺するんだけどな〜。」

「・・・・・・」

「でも、同学年の男子にじろじろ見られるのも嫌だからこれ位にしておかなきゃ駄目ね。」

 いくつもの水着をさらに物色したあと、アスカは最初の水着を持ってレジの方へと向かった。

「さ、加持さん。次行こう。」

 そのあと加持は、洋服売り場、下着売り場、化粧品売り場と

女性の視線が痛い所ばかりをいくつも回らされた。

 修学旅行へ行くのにどうしてそこまで買うのかと加持が聞くと

本人曰く、他の女の子との勝負は身につけている下着や化粧品はもちろんの事、

その持ち物から既に始まっているらしい。

 そして、アスカが満足するほど買い物をしたあと、やっと屋上で休憩をする事になった。

「さあ、これで修学旅行の準備は万端。」

「修学旅行はどこへ行くんだっけ?」

「お・き・な・わ。メニューにはスクーバダイビングもあるの。」

「スクーバね・・・そういやもう3年も潜ってないな・・・南の海が懐かしいよ。」

「ねえ、加持さんは修学旅行どこに行ったの。」

「ああ・・・俺達はそんなのなかったんだよ。セカンドインパクトがあったから・・・」

 さみしそうに上を見上げる加持をみて、アスカは話の方向を変える事にした。

    ☆    ☆    ☆

 夜、修学旅行の準備を終えて嬉しそうに食事を終えたアスカにミサトの一言が突き刺さった。

「ええ〜〜〜っ!! 修学旅行に行っちゃ駄目?」

「そうよ。」

「どうして? せっかく荷物も準備したのに!」

「戦闘待機だもの。」

「そんなの聞いてないわよ!」

「今、言ったわ。」

「誰がそんな事決めたの?」

「作戦担当のこのあたし。」

 熱くなって質問を浴びせかけるアスカと冷静沈着に応答するミサト。

一歩も退こうとしないミサトに痺れを切らしたアスカが味方を探そうと

辺りを見ると素知らぬ顔をしているシンジが目に入った。

「・・・ちょっとシンジ? あんたずいぶん落ち着いてるけどまさか知ってたの?」

 アスカは横でのんびりとお茶を啜っているシンジに向かって問いただした。

「僕はなんとなくそうなるんじゃないかなって思ってたから。」

「ファースト・・・・・・も知らなかったようね。」

 アスカが顔を向けるとレイは自分は何も知らないと言わんばかりに首を振っていた。

「修学旅行に行きたい気持ちは分かるけど、これは仕方の無い事なのよ。

 あなた達がいない時に使徒の攻撃があったら世界は終わりだもの。」

「待機、待機、待機って、いっつも守ってばかりじゃない。

 たまには相手の居場所を見つけて攻め込むくらいの事出来ないの?」

「それが出来たら苦労はないんだけどね〜。なんせ相手は神出鬼没、正体不明だもの。

 私たちが出来るのはじっと待ち続けて迎え撃つ事だけなのよ。」

 そう言われて黙ってしまうアスカ。

「まあ、これをいい機会だと思って勉強に専念してみたら?

 あなた達の成績・・・言わなくっても分かってるでしょう?」

 ミサトはにっこりと微笑みながら話しているが、それがあえてプレッシャーを与えている。

「そうね〜。環境が変わったからを理由にするのもそろそろ限界でしょうし・・・」

 声のした方にミサト達が振り向くと、ユイがちょうど風呂上がりの姿で部屋に入ってきた。

「はん。あんな前時代的な試験の成績がなんだっていうのよ。

 ホントに必要なのは実践力とか、他にももっとあるっていうのに。」

「まあそう言わないで・・・郷にいれば郷に従えっていうし。」

「そんなことより! おばさま、ミサトが戦闘待機で修学旅行には行かせないって言うんです。

 何とかいってくださいよ。」

「残念だけどそれは出来ないわ。」

「どうしてです?」

「私も同じ事言おうとしてたから。」

「そんな〜・・・」

 ユイにまで修学旅行の禁止を言い渡され、がっくりとするアスカ。

「そのかわり、後で良い事があるから今回は我慢してね。」

「くぅ〜〜〜・・・ミサト、準備にかかったお金はミサトに請求するからね!」

 アスカは怒りながら自分の部屋へと帰って行った。

    ☆    ☆    ☆

 その夜、こっそりとアスカの部屋の様子を見に行くミサト。

アスカの部屋に近づいてみると中からドタバタと大きな音がする。

「あ〜〜〜っ、もうっ! せっかく準備したのに! このっ! このっ!」

 中を覗いてみると、アスカが枕を相手に憂さ晴らしをしている姿が見えた。

「(あっちゃ〜・・・こりゃ当分収まりそうに無いわね。)」

 アスカに気付かれないようにそっと部屋を離れたミサトは

ついでにとレイの部屋も覗いてみる。

「・・・・・・・・・・・・」

 部屋の中では、カバンから荷物を取り出しているレイの姿が見える。

だが、ひとつひとつさみしそうに荷物を取り出すその背中からは、哀愁がただよっていた。

どうやらレイも密かに楽しみにしていたようである。

「(うっ・・・普段何も言わないだけにこれはこたえるわね・・・)」

 レイの背中を見て、胸に痛みを覚えながら自分の部屋へと戻っていくミサトだった。

    ☆    ☆    ☆

 数日後、修学旅行へと行くクラスメートを見送ったシンジ達は

本部設備にあるプールへと行く事にした。

「う〜ん・・・」

 プールサイドで、ミサトに指摘された事をこなそうと勉強に取り組むシンジ。

その横では我関せずとばかりにレイが白いワンピースの水着姿で泳いでいる。

「何やってんの? シンジ。」

「理科の勉強。」

「馬鹿正直にやってんのね〜。」

「そんな事言われてもやっておかないと後が怖いし・・・」

「怖いってミサト?」

「母さんの方。」

「どうして? あんたの母親、成績にこだわるようには見えないけど。」

「人並みでいれば何も言わないんだけどね。著しく落ちたりすると・・・」

「すると何よ? 怒られたりするの?」

「・・・・・・つきっきりの英才教育が始まるんだ。今だと高校卒業くらいまで教えられると思う。」

「ふ〜ん、それは大変そうね・・・・・・で、どんな問題やってるの?」

 そう言って覗き込んでくるアスカに目をやると、シンジは真っ赤になった。

シンジの目の前にはアスカの胸の谷間が見える。

「な〜に、こんな数式が解けないの? ほんとに英才教育してもらったら?」

 体を起こしたアスカはシンジが赤い顔をして自分を見ているのに気付いた。

「ちょっと、何赤くなってるの? ・・・・・・ああ、この水着ね。

 沖縄でスクーバやる時の為にと思って買ったんだけど行けなくなったからここでやるの。

 似合うでしょう?」

 聞かれたシンジはただただ頷く事しか出来ない。

 それに納得したアスカはシンジに問題の解き方を解説するが、

シンジはアスカが気になって全然内容が頭に入っていない。

「・・・・・・この問題の解き方は分かった? ちょっとシンジ。

 ぼんやりしてるんじゃないわよ。・・・それで、こっちの問題はなんて書いてあるの?」

「え? 熱膨張に関する問題だけど・・・もしかして読めないの?」

 『おかしな質問をするな』と思ったシンジは思った事をそのまま口に出す。

「そうなのよ、漢字まだ全部覚えきれてないの。成績が悪いっていうのも問題が読めなかっただけ。

 ・・・・・・それにしても熱膨張ね〜。とどのつまり、物は温めれば膨らんで大きくなって

 冷やせば縮んで小さくなるってことじゃない。こんなの覚えてなんの役に立つのかしら?」

「知ってたら何かの役に立つ事もあるんじゃない?」

「私のオッパイも温めれば大きくなるのかしら?」

 自分の胸に手を当てて聞いてくるアスカに、シンジは顔を真っ赤にして横を向く。

「・・・・・・それはミサトさんかリツコさんにでも聞いたら?」

 そしてまた、思った事を口に出す。

「リツコはやめておくわ、うっかり改造されたらたまらないもの。

 それじゃシンジ、勉強頑張ってね。私は潜ってくるから。」

「うん、いってらっしゃい。」

 準備しておいたボンベの方へと歩いていくアスカを見送りながら

シンジは泳いでいるはずのレイの姿を探した。

 するとレイはプールサイドに上がっており、タオルで体を拭いている。

「見て見て〜、シンジ。」

 声のした方を見ると、アスカがプールサイドにボンベを背負って座っている。

「バックロールエントリー。」

 ザバンッ!

アスカは素早くゴーグルとアクアラングを着けると後転してプールの中へと飛び込んだ。

「(アスカは気楽で良いなぁ・・・)」

 シンジはため息を吐くと再び勉強を始めた。

    ☆    ☆    ☆

 暗い部屋の中に浮かび上がる人影。

そこではゼーレのメンバーとユイによる会議が行われていた。

「皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。

 特務機関NERVはA−17は発令しました。」

 その一言を聞いてメンバーはあわただしくなった。

「A−17だと!」

「こちらから打って出るなど危険過ぎる!」

「そんな軽率に事を運ばないでくれ。」

「もっと慎重に対処すべきだ。」

 全員の注目が集まったところで、ユイは再び口を開く。

「これはすでに決定事項です。現在我々は、A−17にむけての準備を進めています。

 私もこれから準備を行いますので失礼します。」

 口を挟む暇もなく言い切ると、ユイと冬月の姿がその場から消える。

その場に取り残されたゼーレのメンバーは、ただ慌てる事しかできなかった。

    ☆    ☆    ☆

 会議の場からすばやく退場したユイと冬月は、足早に廊下を進む。

「冬月先生、準備は出来てます?」

「もちろんだとも。他の職員にもいつでも旅行が出来るようにと準備をさせている。」

「それで、各人の行く先はもう分けてありますの?」

「それならこの間、アンケートの形で行きたい所を調査しておいた。

 それをいっしょに行きたい人の組み合わせも考慮して、MAGIで割り振らせておいて

 A−17発令と同時に各員に行き先の案内を配布したから心配ない。

 手の空いているものから出発準備をしているはずだよ。」

「それじゃ、後はシンジ達が使徒を確保してくれば問題なしですわね。」

「しかし、いいのかね? A−17など発令して・・・

 一歩間違えればセカンドインパクトの二の舞だよ?」

「大丈夫ですわよ、きっと。

 それじゃ私はあの子達の荷物をまとめてきますので、後をよろしくお願いします。」

 走り去っていくユイの後ろ姿を見送りながら、冬月は職員の出発状況と

A−17の進行状況を確認する為に発令所へと向かった。

    ☆    ☆    ☆

 暗い部屋でリツコからの作戦内容を伝えられるシンジ達。

下から光を当てている為、浮かび上がったリツコの顔はちょっと怖くなっている。

「今回の作戦は使徒の捕獲が最優先です。出来る限り原形をとどめたまま

 生きて回収をする事。いいわね。」

「は〜い、質問。」

「何? アスカ。」

「どうして捕獲なの。やっつけちゃえばいいじゃない。」

「今の私たちに必要なのは使徒に関しての情報よ。

 それを得るのにこれは願っても無いチャンスなの。分かった?」

「それで作戦担当はもちろん私よね。」

「(でもやるのは僕なんだろうな・・・)」

 自ら手を上げて立候補しているアスカを横目に見ながら思うシンジ。

「アスカ、お願いね。」

「やっと私の独り舞台が来たわ。シンジ、よ〜く見てなさいよ。」

「シンジ君とレイは初号機と零号機に乗って地上待機。

 時間が惜しいから急いで準備してね。」

    ☆    ☆    ☆

 浅間山へと空輸されたシンジ達。

「早く終わらせてこれ脱ぎた〜い。」

 不満そうに声を上げるアスカ。そのアスカの格好はまるでダルマのように丸くなっている。

耐熱使用のプラグスーツが丸い形を作っているのだが、

格好を気にするアスカがその姿を気に入るはずもない。

 さらに弐号機も同じように丸くなっているのが、アスカの不満に拍車をかけている。

(こちらはどちらかというと宇宙服のようであるが。)

「もう少しで準備が出来るからもう少し我慢して。

 終わらせたらすぐに温泉に入れるから。」

 後に待っている温泉の事を言われて黙るアスカ。

その代わりにシンジが声を上げた。

「あの・・・・・・でるときに一緒にたくさんのヘリが出てましたよね。

 あれってもしかして・・・」

「察しの通り、NERV慰安旅行、先発組の乗ったヘリよ。」

「みんな一斉なんですか?」

「そうよ、一斉に行っておかないと、次に行けるのはいつになるか分からないもの。

 別々になんてしたら、後でもめて大変になるからこの機会に一斉に行くの。」

 人類の存亡を賭けて戦っている組織の職員全員が、一斉に慰安旅行に行くなどという

お気楽な内容を聞いて唖然としてしまうアスカ。

「ちょっ、ちょっと。そんな気楽な事でいいの?」

「言われてみればそうですよね、みんな一斉だと問題無いですよね。」

 そんなお気楽集団の最高責任者の息子であるシンジはあっさりと納得した。

どうやらお気楽なのは司令から来ているようである。

「準備が出来たわ、アスカ。」

 リツコの声ではっとするアスカ。

「りょ、了解。装備最終確認。各部異常無し。いつでも出撃できます。」

「弐号機、発進位置につきました。」

「エヴァ弐号機、発進!」

 号令とともにクレーンから、使徒捕獲用のキャッチャーを持った弐号機が

溶岩へと向けて降ろされていく。

「うわぁ〜〜・・・熱そう・・・。(そうだ!) 見て見てシンジ。」

 シンジがアスカの弐号機を見ると、弐号機は足を前後に開いた状態で溶岩へ突入しようとしている。

「ジャイアントストロングエントリー。」

 沈んでいく弐号機を見ながら、シンジはあきれたようにため息を吐いた。

「・・・・・・視界ゼロ。CTモニターに切り替えます。

 ・・・・・・これでも透明度120か。予想より大変そうね。」

 溶岩の中を映し出した映像は、赤い色を映し出すばかりで辺りに何があるのかまるで分からない。

モニターを切り替えても、それは辺りが少し良く見える程度になった程度である。

「・・・安全深度オーバー、目標予測位置到達。」

「どう、アスカ。何か見える?」

「センサーに反応無し、何にも見えないわ。」

「どうやら対流が予想より早いようね。誤差を修正して急いで再計算をしないと。」

「そっちの方はお願いね。アスカ、再度沈降させるわよ。」

「OK。」

 再び溶岩の中を潜り始める弐号機。しかしそこから先は機体に大きく負担がかかり

各部がギシギシと悲鳴を上げている。

「深度1350・・・1400・・・1480・・・限界深度オーバー。」

 限界深度を越えて沈降し続ける弐号機に、ヒビの入る音が響き始める。

その音に不安を覚えながらも作戦を続けるアスカとミサト。

 その時、弐号機の足に付けられていたプログナイフを収めたケースのベルトが、

圧力に耐えられなくなって切れた。

「ナイフが!」

 ナイフは弐号機を置き去りにして、より深い場所へと沈んでいく。

「・・・・・・嘘!?」

 沈んでいくナイフを見ていたアスカが、途惑いの声を上げる。

ナイフが沈んでいく先に楕円形の形をしたものが見えたからだ。

「使徒の卵・・・・・・お願い、そっちにいかないで!」

 アスカの願いもむなしく、ナイフはまっすぐに卵の方へと沈んでいく。

ゴンッ!

 ナイフは卵にあたり、外殻をなぞりながら下へと沈んでいく。

「目標に異常発生!」

 モニターに映った使徒は、卵の状態からその姿をエイのような形へと変えていく。

「羽化を始めたわ! 計算より早すぎる、急いで上がってきて!」

 弐号機は上へと浮上を始めるが、羽化を完了した使徒もその後を追っていく。

「来るんじゃないわよ、このぉ!」

 持っていたキャッチャーを使徒に叩き付ける弐号機。

だがキャッチャーは戦闘用ではないため、使徒にたいしたダメージを与える事もなくあっさりと壊れる。

 使徒は襲い掛かる方向を変え、今度は正面から弐号機へと向けて迫ってくる。

「バラスト放出!」

 備え付けられていた重りをはずし、身軽になる事でその攻撃をかわす弐号機。

使徒は間合いを取るように弐号機の周りを回り始める。

 だがその距離は弐号機の視界から離れ、姿は見えなくなった。

「見失うなんてまずいわね・・・武器はないし、視界は悪い。

 スーツはべったりしてるし、おまけに熱い。状況は最悪ね。」

「アスカ、初号機のプログナイフを落とすから受け取って。

 出来る事ならその場で殲滅。出来ないようなら地上までおびき寄せて。」

「誰にもの言ってるの、ミサト。このあたしが倒せないはず無いでしょ。」

「そうね・・・。」

 アスカとミサトが会話を交わしている間に、

シンジは初号機のプログナイフを溶岩の中へと投げ入れた。

ナイフは弐号機へとむけてゆっくりと沈んでいく。

 姿が見えなくなった使徒への警戒を続けながら、ナイフが落ちてくるのを待つ弐号機。

「正面! あぁ〜ん、ナイフはまだなの? 早く来て!」

 目の前からは使徒、頭上からはナイフと待っているもの、待っていないものが

微妙なタイミングで近づいてくる。

 弐号機に迫る使徒は身体から腕のようなものを広げて襲い掛かる。

そして使徒の手がまさに届こうかという瞬間、弐号機はナイフを受け取る。

しかし、使徒はそのナイフごと弐号機の腕を掴んで動きを止め、

溶岩の中、口を開けて弐号機に噛み付く。

「そんな! この状況下で口を開くなんて!」

 使徒は噛み付きながら、さらに弐号機にダメージを与えるため、

触手を伸ばして弐号機へと絡み付き、絞め上げていく。

「こんのぉっ!」

 使徒に絡み付かれながらも腕を振り払い、ナイフを振り上げてコアへと向けて打ち付ける弐号機。

だがコアはその攻撃をまったく受けつけない。

「だめよ! 高温高圧に耐えているんですもの、プログナイフ程度では刃が立たないわ。」

 言われたアスカは攻撃を諦め、他の手段を考える。

「(高温高圧に耐えるような使徒)・・・・・・そうだ! あれだわ!」

 弐号機は耐熱スーツに冷却液を送っているパイプの一つを切断すると

弐号機に噛み付いていた使徒の口に差し込んだ。

「冷却液の圧力をすべて3番にまわして!」

 アスカの声を聞いて、冷却液が3番のパイプに集中して送られる。

パイプから流れ出した冷却液が使徒の身体を急激に冷やす。

使徒は身体の中身を吸われているかのように小さくなっていき、コアにもひびが入る。

「そこぉっ!」

 その瞬間を見逃さず、弐号機がコアにナイフを突き立てる。

今度は深々と刺さり、使徒に致命的なダメージを与える。

 そして使徒はもうすぐ事切れようというとき、最後のあがきとばかりに腕を振った。

その腕は弐号機の装備した耐熱スーツに冷却液を送るパイプをほとんど切断し、

弐号機を吊り下げる支えのほとんどをなくす。

 そのあと、使徒は溶岩の底へと向かって沈んで行った。

弐号機は冷却液の供給を断たれたため、耐熱スーツは圧力に耐え切れずに押しつぶされ

完全に切られずに残ったパイプも少しずつその傷口を広げていく。

 そして、もうすぐ地上に出るという所で無情にもパイプは切れた。

「せっかく勝ったのに・・・ここまでか。結局引き分けなのね・・・かっこわるい・・・」

 あきらめて顔を伏せるアスカ。

だが、不意に弐号機に揺れが起きた。

「!?」

 アスカが上を見上げてみると、弐号機とパイプを初号機が掴んでいた。

初号機は耐熱装備もせずに溶岩の中へと飛び込んで、弐号機を救ったのである。

「・・・無理しちゃって・・・」

 アスカはおせっかいな同僚の顔を思い浮かべながら微笑んだ。

その頃、初号機の中では・・・

「あ・・・熱い・・・ミサトさん・・・綾波・・・早く引き上げて・・・」

 シンジが全身を焼かれる感覚に耐えながら、苦しそうに引き上げられるのを待っていた。

    ☆    ☆    ☆

 一方、地上の作戦本部では・・・

「やった〜! 温泉よ、温泉!」

「先輩、一緒に露天風呂入りましょうね!」

「ええ。」

「久しぶりの休みだな、青葉。」

「おもいっきり骨休めしようぜ。」

 そして零号機でも・・・

「温泉・・・気持ち良いもの・・・」

 使徒を倒した事で気持ちが先に行き、アスカの状況も知らずに喜んでいるNERVスタッフ達がいた。

アスカとシンジの状況を知ったのはもう少しあとである。

 

作者後書き

 

    またもや遅れてしまいました、SHEROです。

    今回は本当はもっと続きがありました。

    ここまでなら先月には出来ていました。

    でもパソコンのメモリ不足で最後まで書けなくなったので

    一度ここで切っての投稿です。

    言い訳です、すいません。

    来月にはこのあとの後半部分を完成させて送れたらと思います。

    時期がぎりぎりになってしまったので今回もまた

    一言クエスチョンもばらしもなしです。

    ああ、以前のペースに戻れるのはいつ?

 

 


(update 00/06/04)