エヴァンゲリオン

■取り替えEVANGERION■

第ニ話「新しい家族」

作・SHEROさま


 

 

 

シンジが初号機に乗る決意をすると、発進準備がすぐさまとりおこなわれた。

その様はまさに巨大ロボット発進を物語る大掛かりな物であった。

「エヴァ初号機、発進準備完了しました。」

モニターに映る初号機をじっと見詰めるユイ。

(シンちゃん、がんばってね。)

「発進!」

ミサトのその声とともに初号機は地上に射出される。

そして勢いよく地上に出た初号機のコクピットにリツコの声が響く。

「シンジ君よく聞いて。エヴァは基本的にパイロットの考えた事をトレースして動くわ。」

リツコが操縦の方法を指示しはじめる。

「レバーはコントロールが必要な事をおこなうために使うけど操縦の基本は心よ。」

「心次第・・・」

「まずは歩く事だけ考えて。それで感覚が少しはつかめると思うわ。」

「歩く・・・」

シンジが歩く事だけを考えると初号機は一歩前に進んだ。

その光景に司令部では歓声が上がる。

「歩く・・・」

シンジは再び同じようにした。

ただし今回は少し雑念が入った。

その雑念に初号機は敏感に反応し倒れた。

「うわあ!」

手で支える事もせず顔から倒れる初号機。

そして起き上がろうとしてシンジが見た物は、眼前に立つ使徒の姿であった。

(あれが・・・使徒・・・?)

シンジはまだなれない初号機の操縦と、突然目の前に立った使徒の姿でパニックに陥った。

(動かなきゃ、動かなきゃ!)

だがその考えは空回りし、初号機は容易に動いてはくれない。

使徒はそれを頃合いとばかりに初号機をつかむ。

そして顔をわしづかみにすると、光の槍で頭を貫きにかかった。

「ぐぅ・・・・・・」

初号機が槍を刺されるたび、シンジの頭部に声にできない痛みが走る。

そして何度か貫かれたのち、初号機は近くのビルに叩き付けられた。

「初号機沈黙。活動域に問題発生。」

「回路遮断、せき止めて!」

「駄目です。信号拒絶、受信しません。」

各信号が反応せず、絶望的な事態に混乱する司令部。

「作戦中止、パイロット保護を最優先。プラグを強制射出して!」

「駄目です、完全に制御不能です。」

「なんですって!?」

八方塞がりになってしまい絶望するスタッフ。

「ユイ君どうする、このままでは・・・」

「・・・・・・初号機への通信をこちらのマイクのみでつなげて、早く。」

突然の無意味にしか思えない命令に動きを止めるスタッフ。

その命令に何が意味されているというのだろうと誰もが考える。

「急ぎなさい!」

その声にはっとなり準備をするスタッフ。

「通信つながりました。」

「ユイ君、何をするつもりだね?」

予想のつかない指示に冬月副司令が尋ねる。

だがユイはその質問には答えず、いくつかのキーを押した後

マイクに向かうと小声で何かつぶやいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ウォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

「エヴァ再起動!」

見るとこれまで信号を受け付けなかった初号機が咆哮をあげて動きだした。

「そんな、動けるはずありません。」

「ユイ君、これは一体?」

「もう心配入りませんわ、冬月先生。」

どういう事だと不思議そうな顔をする冬月にユイは満面の笑顔を向けた。

その間にも初号機は使徒へ向かうと体当たりをし、ATフィールドを破りコアを殴り付ける。

その苦しみに使徒は初号機に絡み付くと自爆を図った。

だが初号機はそれをもぎ取り上空へ放り投げる。

そして使徒は自爆し閃光を上げた。

 

 

回収作業。依然回線が回復しない初号機をNERVスタッフは慎重に回収し、

シンジの無事を確認するとすぐさま救出に動き出した。

シンジは再起動後、呆然と座っているようだったがその身体に異常がないと

確認されるとすぐさま司令部へと案内された。

「お帰りなさいシンちゃん。」

入ってくるなりシンジはユイに抱き着かれた。

突然息子をエヴァに乗せ、戦わせなければならなかったのでとても心配していたのだろう。

「く、苦しいよ。母さん。」

抱き着かれたシンジは、まわりの視線に少し顔を赤らめながらもどこかうれしそうである。

「ごめんなさいね、母さんうれしくってつい。」

離れたユイの瞳にはうっすらと涙がにじんでいた。

「・・・母さん・・・」

「さぁ、これからのシンちゃんの家を考えないとね。」

ユイはシンジの無事を実感すると、これからの事へ取り掛かった。

なにしろいつ再び使徒が攻めてくるか分からない状態である。

できる事は今のうちにやっておくにこした事はない。

「母さん、家って?」

「今まで住んでた家からだと、ここまで来るのには少し不便なのよ。

 だから引越ししようと考えてたの。それにシンちゃんにも

 また初号機に乗ってもらわなくちゃいけないみたいだし。」

「ええ!?またあれに乗らなきゃいけないの?」

「そうよ、レイちゃんは怪我が治るのにもうしばらくかかるし、エヴァに乗れるのは

 特別な資質を持った子だけなの。そしてその子達を捜している余裕は私たちにはもう無いの。

 だからお願いシンちゃん。勝手なお願いは分かってるけどあれに乗って戦って。」

ユイのそのお願いにシンジはうつむく。

しばらくした後シンジは顔を上げた。

その顔は決意に満ちていた。

「分かったよ母さん。僕はあれに乗る。」

「シンちゃん・・・・・・」

シンジの決意に満ちたその言葉にユイは感動し、再びシンジに抱き着く。

そしてその思いの分だけ抱きしめると、すぐさま次の行動に移った。

「それじゃまずお家を決めましょう。引越しはしばらく時間がかかりそうだし

 母さんも家に帰れる日が減りそうだから・・・・・・・・・

 ミサトちゃん、あなたの家でシンちゃん預かってくれない?」

「えぇっ、あたしの家でですか!?」

突然のご指名にミサトは、初勝利のお祝いと称してこっそり飲んでいたビールを吹き出し

ユイの顔を見る。その顔はにっこりと笑って真意を読み取らせない。

「どうしてあたしの家なんですか?どちらかと言えば青葉君や日向君の家の方が・・・」

「う〜ん、独身男性の家っていいイメージないじゃない?だからねぇ・・・」

ひどい言われようだが、ユイが二人の方に顔を向けると二人はうんうんとうなづいていた。

どうやらユイの予想が当たっているらしい。

「それなら冬月副司令の家はどうです。部屋も片付いているでしょうし。」

「冬月先生にはあたしの代理で飛び回ってもらわなきゃ行けない事がたくさんあるの。

 だからあたしと暮らす以上にシンちゃんが一人ぼっちになっちゃうわ。」

「それじゃリツコの家は・・・」

他の人はどうだと食い下がるミサト。

「リっちゃんはあたしと同じようなペースでここにいてもらわないと

 困るからねぇ。だからだめなのよ。」

「そ、それじゃ、マヤの家はどうです。年も近いし気が合うのではないでしょうか。」

「えぇっ!?あたしですかぁ!!」

白羽の矢が当たったマヤが声を上げる。その顔は少し赤くなっている。

「確かにマヤちゃんも候補としてはあがったのよ、でもマヤちゃん若いから・・・

 年が近いっていうのもねぇ。シンちゃんが間違い起こしちゃったら大変じゃない。」

間違いという言葉にマヤの顔は赤くなり、横の青葉、日向はうんうんうなづいている。

ただ、この言葉に強く反応したのはミサトである。

「それじゃ、あたしはどうなってもいいっていうんですか!?」

「そういうわけじゃないわよ。ミサトちゃん、マヤちゃんより強いでしょう。

 だからシンちゃんがもし襲ってきてもミサトちゃんなら押え込めると思って。」

この言葉にこんどはシンジが顔を赤くする。

それにしてもとんでもない事をさらりと言う。

「か、母さんなんてことを言うんだよ!」

「それにミサトちゃん、作戦部長でしょう、こういう役職ってコミュニケーションが大事じゃない?

 そういうのも踏まえての選択なんだけど・・・気に入らない?」

あとの事を冷静に考え選択されている事を知り、ミサトは何も言えなくなる。

しかし、年下とはいえ突然他人と生活するのに、ミサトはまだ少しわだかまりを持っていた。

「駄目ぇ?うーーーーーーん・・・・・・

 それじゃ毎月ビール3ケース支給の特別手当でどう?」

「やります!!」

この瞬間、ミサトのわだかまりは粉々に砕け散った。

「ミサトさん、動機が不純です。」

このマヤのつぶやきは幸いミサトの耳には届かなかった。

「あの・・・司令・・・・・・」

シンジの住むところが決まり、ユイがにこにこしているところへ

リツコが後ろから申しわけなさそうに声をかけた。

「実はミサトの家の事なんですけど・・・・・・」

耳元でユイだけにこそこそと話すリツコ。

ちなみにリツコのこの行動はミサトの目に入っていない。

いや、もはやビールの事に頭がいっぱいでミサトには回りの情報の一切が頭に入っていない。

「えっ!」

リツコの話を聞いて視線をミサトに向けるユイ。

「ま、まあもう決まっちゃったことだし・・・・・・

 それに今更やめるなんて言ったらミサトちゃん暴れるわよね・・・」

二人が視線を向けるその先には、指折り数えてビールの事を考えているミサトの姿があった。

 

ミサトがシンジとの同居に賛同した後、シンジ、ユイ、ミサト、リツコ、マヤ、日向、青葉の7人で

祝勝会および歓迎会をおこなう事になった。

場所はミサトの家である。ただ、この意見に数人反対する人間がいたが

「シンちゃんがミサトちゃんの家に早くなじむようによ。」

との意見に押され会場は決定した。

そして現在車の中、一行はミサトの家へと向かっていた。

ちなみにミサトの車にシンジとユイ、青葉の車に日向、リツコ、マヤが乗っている。

「母さん、僕、歓迎会なんていいよ。」

「いいじゃない、母さんがお祝いしたいの。」

「でも・・・」

「それにこれからお世話になるみんなの事も知ってもらわないといけないしね。」

「そうそう、お酒を飲んでみんなの本音を聞けば、より一層相手の事が分かるってものよ。」

運転しながら、ユイと共にシンジを説得するミサト。

ただ、その目的は公然と大量にお酒を飲むのが目的らしい。

「それじゃまずは買い出しね、ミサトちゃん適当な店に入ってくれる。」

「はい。」

返事をしてからミサトは近くの大きなスーパーに車を停め買い物をする事になった。

もちろん他の4人もいっしょである。

そしてスーパーの中それぞれ担当を決めて買い出しに動く。

こちらは簡単なつまみを探しているリツコとマヤ。

「先輩と食事するのって久しぶりな気がします。」

「そうね、しばらく行ってないわね。」

「今度また二人で行きませんか。」

「そうね、余裕ができた時にでも行きましょう。」

「はい。」

一方料理の材料を見ているミサトとユイ。

「やっぱりみんなで多く食べられるものがいいわね。」

「そうですね、あと私としてはお酒にあうものが・・・」

「ふふふ、心配しなくてもいいわよ、ちゃんと作ってあげるから。」

「どうもすいません、よろしくお願いしま〜す。」

そしてその後ろ、荷物持ちとしてついてきているシンジ、日向、青葉の三人。

「いいなシンジ君、葛城さんといっしょの家に住めるなんて。」

「ぼ、僕は別に・・・」

「気にしない気にしない、司令も君の事を思ってのことなんだから。」

「ところでシゲル、おまえの部屋ってやっぱ・・・」

「司令の言うのも当たらずも遠からずの状態だな。」

「そうか、俺もそうなんだ。やっぱり男の一人暮らしだとなあ。」

「そんなにひどいんですか?」

「それはまあ・・・なあ。」

実のところ二人の部屋の様子はそれほどひどいものではない。

ただ、部屋においてあるものに問題があった。

日向の部屋にはミサトの等身大ポスター。

そして青葉の部屋には同じく等身大のマヤのポスターがあった。

シンジがうっかり口を滑らせた時にどういう事が起こるのか。

それを考えると二人はうかつに部屋に人をいれるわけにはいかないのである。

そんな暗黙の会話を交わし、二人が笑い出したうしろでは

ミサトがリツコにこっそり声をかけていた。

「リツコ、ちょっと・・・」

「何よミサト。」

「これから家に行くから手伝ってよ。」

「何を?」

「掃除に決まってるでしょ!あの部屋を見たら司令がなんて言うか・・・

 そうしたら私のビールが・・・ああぁ」

「自業自得・・・と言いたいところだけどシンジ君の事を考えると

 そうもいってられないわね。いいわ、手伝ってあげる。」

「ありがとうリツコ。恩に着るわ。」

「その代わり今度からは自分でするように心掛けなさい。いいわね?」

ミサとは首を縦に数回振る。

「それじゃ司令に話をつけないと。」

ミサトは振り向くとユイのほうへ歩き出す。

「あの〜、碇司令・・・」

「あらどうしたのミサトちゃん。」

「あたし達ちょっと部屋の準備をしようと思うので、先に戻ろうと思うんですけど・・・」

「そうね・・・おねがいするわ。」

「はい!リツコ行くわよ!」

「マヤ、あなたもいらっしゃい。」

「えっ?あたしもですか?」

「そうよ、ほら急いだ急いだ!」

二人の背中を押してミサトはすばやく出て行く。

ユイはその後ろ姿を見て少し考える仕種をした後、シンジ達の方へと向かっていった。

 

一方車の中のミサト達。

「あぁ〜〜〜。早くしないと早くしないと!」

ミサトは乱暴に車を運転して自宅のあるマンションへと急ぐ。

「ミサト、もうちょっとスマートに運転しなさい!」

助手席からミサトの乱暴な運転に非難の声を上げるリツコ。

「そんな余裕は今ないの。しゃべると舌噛むわよ!」

前を見ながらそう答えるミサト。

「せ、せんぱ〜い、私もうだめですぅ〜〜。」

後部座席にて目を回すマヤ。

ちなみにマヤはカーブのたびに左右に降られ、座る場所は安定していない。

「我慢しなさい、もう少しでつくから。」

そうこう言っているうちに、ミサトの運転する車はマンションのすぐ近くまで来ていた。

「ここを曲がれば。」

ミサトがハンドルをきりマンションの駐車場へと入っていく。

そこには車からふらふらと降りてくる集団があった。

その中で一人だけしっかりした足取りの人物がミサト達の乗る車に手を振っている。

「い、碇司令!?」

ミサトが車から降りてその姿を確認する。

ユイは笑顔でミサトに手を振っている。

その傍らには車にもたれかかって目を回しているシンジ、青葉、日向の姿。

そしてミサト達の方はといえば呆然とユイを見ているミサト。

信じられないと言う目をユイに向けているリツコ。

そしてシンジ達と同じく目を回しているマヤ。

おまけに彼女の頭の周りにはひよこではなく小さな怪獣がくるくると回っていた。

「し、司令、いつのまに・・・」

リツコは不思議そうに声をかけた。

実際、ミサトの車はかなりのスピードで走ってここまで来ている。

それに今回はミサト自身の記録を塗り替えたのではと思うような勢いだったのだ。

それなのに後から出たはずのユイが先についている。

「ミサトちゃんが慌ててたからちょっとね。」

ユイが平然とそう言うと、ミサトはがくがくっと崩れ落ちた。

(こ、これで終わりだわ・・・)

「ミサトちゃん、隠し事をするよりさらけ出した方が早く馴染めるっていうものよ。

 さ、いきましょ。」

ミサトを促しエレベーターの方へ歩いていくユイ。

その後ろにはマヤに肩を貸して歩くリツコ。

そして酔っ払いのようにふらふらとしながら歩く三人の姿があった。

 

ちなみにユイの運転を後日、青葉がこう語っている。

「運転を代わってといわれたので代わったところ、車はF−1のような加速で

 走っていったんですよ。そして世界がまわるような運転を感じながらしばらくすると

 マンションについていました。下手な人間だったら三途の川も見えたと思いますね。」

このコメントにミサトが対抗意識を燃やしていたと言う噂もあるが、

真実は定かではない。

 

つづく

 

作者後書き

 

 やっと書き上げた第二話いかがだったでしょうか。

 ホントはもう少し長くなる予定だったんですけど

 私の執筆ペースがずいぶん遅くなりそうなので

 多少余裕を持って作れるよう次回に余裕を残す事になりました。

 何とかがんばるから見捨てないでね。

 では一言クエスチョン、今回は冬月副司令です。

 

「今回のユイさんのあの一言なんて言ってたんです?」

「私も何も知らんのだ、ユイ君、私にくらい教えてくれてもいいではないか!」

「答えになってませんね。ちなみにここの質問を募集したいと思います。

 作者の知識が乏しいので何が答えられるか分かりませんが

 よければ募集してやってください。」

 

次回もよければ読んでやってください。

新人研修会の席で神戸事務所からお誘いあり?

ちょっとどきどきなSHEROでした。

 

 

 

 


(update 99/05/08)