新世紀エヴァンゲリオン

■取り替えEVANGERION■

第6話「時にはこれも人類の敵?」

作・SHEROさま


 

マンションの一室の前、二人の少年が紙を見ながら話し合っている。

「ここ・・・だよな?」

「住所はここなんやろ?」

「ああ、でも表札には葛城ってあるし・・・」

「気にする事あらへん。間違えたらそん時はそん時や。」

ピンポーーン。

葛城家の呼び鈴が鳴らされる。

「はーーい。ちょっとまってねー。」

中からミサトが出てくる。そして扉を開けたその先には、トウジとケンスケが立っていた。

「あら、あなたたち・・・相田君と鈴原君。どうしたの?」

「ミサト先生?・・・おかしいな・・・ほんとに間違えたのかな?」

「どうしたのいったい?」

「え、えと、僕ら二人、碇君が最近、学校に来ないもんですから、どうしたのかと思って、それで・・・」

あこがれというべきミサト先生の突然の登場にどぎまぎしながら応えるトウジ。

「たまってたプリントを渡すのをついでに、様子を見に来たんです。

 でも住所聞き間違えたみたいです、すみません。」

続きを慌てることなく説明するケンスケ。

「あら、あってるわよ。シンジ君はあたしと一緒に住んでるの。」

「えぇ〜〜〜〜〜〜!」

さらっと言うミサトに、二人は驚きの声を上げる。

「な、なんでミサト先生と?」

「そうでっせ、碇君にはユイ先生というお母はんがおるやないですか。

 それがなんでミサト先生と住んどるんです?」

「ちょっちわけありでね。それとあたしはもう先生じゃないわよ。」

「は、はぁ・・・そ、それで碇君は?」

「NERVの方でちょっとね。もうしばらくしたら、学校の方にも行けるようになるから。」

「そうですか・・・それじゃこれ、お願いできますか?」

そう言ってケンスケは、鞄の中からプリントを出すとミサトに差し出す。

「OK。ごくろうさま。」

「いえ、ミサトさんもNERVのお仕事、頑張ってください。」

「ありがとう。」

「それじゃ失礼します。」

 そしてお辞儀をすると二人は帰って行った。

その背中を手を振りながら笑顔で見送ったミサトは、扉を閉めると勢いよく扉を蹴った。

「あんの馬鹿!!」

 

 

 一週間前、シンジがミサトの命令を聞かずに使徒に向かい、撃破したあとシンジはミサトに呼ばれた。

「なぜあたしの命令を聞かなかったの?」

「・・・すみません・・・」

「一歩間違えればとんでもない事になるところだったのよ。」

「・・・はい・・・」

「まあ、今回はその場の判断が正しかったという事にしとくけど、今度やったら承知しないからね。」

「・・・はい・・・」

「それじゃお説教は終わり。着替えて司令のところにいってらっしゃい。」

「はい・・・ミサトさん、本当にごめんなさい。」

「お説教はもう終わったの、同じ事をしないって約束してくれるなら、もう気にしなくていいわ。

 あ、あたしは先に帰るから、帰りはリツコに送ってもらってね。」

「一緒に帰らないんですか?」

「どうせ司令との話が長くありそうだし、それに家に帰ってしておきたい事もあるしね。

 だから今日のところは先に帰るわ。あ、リツコには話し通しとくから、それじゃお先に。」

 ミサトはシンジを置いてさっさと部屋を出て行った。

 

それから数時間後、シンジはリツコの車に乗り家路へとついていた。

「ホント、ミサトにも困ったものよね。」

「僕が勝手な事をしたから・・・」

「あら、気にしなくてもいいのよ。ミサトも似たようなところあるんだから、お互い様よ。」

「でも・・・」

「気にしないの、それにこっちとしては、貴重なサンプルが手に入って喜んでるんだから。

 むしろ感謝したいくらいだわ。」

「・・・・・・・・・」

「そんなに落ち込むようなら今度、みんなに何か差し入れでも作ってあげて。

 それでチャラにしてあげるわ。」

「はい。」

「さ、着いたわよ。」

 そう言って車を降りるリツコ。シンジが降りるのを確認するとキーを閉じてシンジの横に並ぶ。

「ミサトさんに何かご用事ですか?」

「忘れ物を届けに。それと愚痴をちょっとね。」

 リツコはシンジに微笑みながら話す。だが本当の理由はミサトに頼まれたからである。

『シンジ君一人だと部屋に入りづらいんじゃないかと思うからさ、リツコも一緒に来て。』

(ホント、困った子よね。)

「・・・ただいま。」

「おっかえりなさ〜い。」

リツコに後押しされて家に入ったシンジを待っていたのは、何故か上機嫌なミサトであった。

「ささ、早く入って入って。ほらリツコも。」

「ちょっとどうしたのよミサト。」

「べっつに〜、ほらほら早く早く。」

 そうして押しやられた先には、ミサトが調理したらしいカレーと、いくつかのつまみが置かれていた。

無論、台所は無茶苦茶な状態である。

「これ、ミサトさんが・・・?」

「他に誰がいるっていうのよ、今回はあたしがお祝いしてあげようと思ってね。

 先に帰って大急ぎで準備したのよ。」

「それがこれなの?」

「なによ、確かにシンジ君の料理には劣るけど、真心こめて一生懸命作ったのよ。

 ほらほら立ってないで座った座った。」

ミサトはさらに二人の背中を押すと、二人を席に着かせた。

そして2人の分のカレーをそれぞれの前に差し出した。

「シンジ君、まだまだたくさんあるからいっぱい食べてね。それじゃいただきま〜す。」

 ミサトはそう言うとカレーを用意しておいたカップラーメンに入れて、食べはじめた。

呆気に取られていた2人も気を取り戻すと、美味しそうにラーメンを

食べているミサトにならい、カレーを口にした。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その瞬間、2人は目を回し倒れ込んだ。体は震え、顔色は青ざめている。

「あら、そんなに美味しかった?」

 2人の反応をあまりの美味しさに倒れ込んだものだと思い込み、ミサトはどこか嬉しそうな声を上げる。

その声を聞いても何も反応できずに倒れている2人。

 ちょうど扉の影からその光景を見ていたペンペンは、救急車を呼ぶ為、電話の方へと走り出していた。

ちなみに救急車はペンペンに受話器を渡され、気力で話したリツコによって20分後到着した。

 

 

 そしてトウジとケンスケがミサトの家を訪ねてからさらに数日後、

シンジとリツコは未だ青い顔をしながらも意識を回復し、今日病院を退院するところであった。

「・・・シンジ君、分かってるわね。」

「はい、ミサトさんを台所には立たせません!」

「そうよ、でなければ同じ事が何度となく起こってしまうわ。」

「そうなったら使徒ではなくミサトさんが人類を滅ぼしてしまう、

 という結果になってしまうんですよね?」

「そうよ、もしレイとあなたが同時にあれを食べて、倒れている間に使徒に攻め込まれたら

 そこで人類は滅亡してしまう。あなたの役目は重要なの。頼んだわよ。」

「はい。」

「それじゃ私は本部に行くから。」

「あれ、自宅に帰らないんですか?」

「司令がいるとはいえ、マヤやその他のスタッフに仕事を任せっきりにはしてられないわ。

 それにせっかくの使徒のサンプルですもの。早く研究したいの。」

「そうですか。それじゃ僕も後で行きます。」

「無理しなくていいのよ。」

「いえ、僕も出来る事はしておきたいですから。」

「わかったわ、それじゃシンクロテストの準備でもしておくわ。」

「はい、お願いします。」

 2人は病院の前で別れて、それぞれ歩き出した。

そしてシンジは懐かしのミサトのマンションへと戻ってくる。

「ただいま。・・・ミサトさん、居ないんですか?」

 玄関の鍵は開いていたので、家には誰か居るはずなのに中には誰の姿も見えない。

テーブルのところに見慣れない大きなカバンを見つけた以外は何もない。

(このカバンなんだろ?ミサトさん何かの準備でもしてたのかな?)

 色々と考えながらシンジがカバンを持ってみるとカバンは意外と軽く、

中の荷物があまり入っていないらしい事が分かる。

 シンジがカバンを肩に担いでみた時、後ろの方から音が聞こえた。

「ミサトさん?」

 振り向いたシンジが見たのは、肩にバスタオルをかけただけの綾波レイであった。

「あ、あああああああ・・・・・・」

 突然現れた全裸のレイに慌てふためいているシンジ。

レイは気にすることなくシンジの方へと向かってくる。

「あ、綾波。あああ、あの、ごめん、いるとは思わなくて、あの、その、えと・・・」

 自分の家であるにもかかわらず何故か謝るシンジ。

レイはさらにシンジに詰め寄ると肩にかけていたカバンを引っ張った。

「え、え?あ、あの・・・」

 シンジの事を無視するかのようにカバンの中から下着を出し、着替えはじめるレイ。

下着を着終えるとレイは脱衣所に制服を取りに行き、着替えおわるとさっさと部屋を出て行った。

 レイの着替えを一部始終見ていたシンジは、レイが部屋を出て行くのを見るとはっと我に帰り、

荷物を置くとすぐさまレイの後を追いかけた。

「待ってよ、綾波。」

 シンジはレイを見つけると駆け出し、その横へと並んだ。

「あの、さっきはごめん、見るつもりはなかったんだけど、見えちゃって、

 でも見たくなかったわけじゃなくて・・・」

シンジが色々と言い訳をしているのを無視して、さっさと歩いていくレイ。

シンジは途中小走りになって、追いつきながら言い訳を続けるが

それもレイに無視され何も言えなくなってしまう。

 そして電車の中からNERVにかけての間は何も話さず、気まずい沈黙だけが両者の間にあった。

 

「あのさ、綾波。何故うちにいたの?」

 NERVの長いエスカレーターを降りながら、ようやく冷静になったシンジが声をかけた。

「呼ばれたの。」

 シンジの方を見もせずに応えるレイ。

「呼ばれたってミサトさんに?」

 不思議がって再び質問するシンジ。

「詳しい事は司令に聞けばいいわ。」

 あとの質問を遮るようにレイがそう言うと、シンジは質問するのをあきらめた。

 

「こんにちわ。」

 指令部にシンジがやってくると、そこにいたのは青葉、日向、マヤの三人だけだった。

「あれ、他の人たちはどうしたんです?」

 シンジが疑問を問いかける通り、そこには他のメンバーの姿が見えない。

「やあシンジ君、久しぶり。司令と葛城一慰はこの間の使徒を見に行ってるよ。

 最近はずっと向こうで使徒の生態の調査さ。おかげで最近は暇で暇で。」

 青葉とジジ抜きをやりながら日向が応える。

「まあ、今までが忙しかったんだから、こんな時があってもいいんじゃないの。」

 日向の手からカードを抜きつつ青葉が口を出す。

「リツコさんは?」

「先輩も同じく向こうに行きましたよ。もう少し休んでてもいいのに・・・。」

 手にしたファッション雑誌を見ながらマヤが応える。

「そうですか、それじゃ僕もそちらの方へ行ってみます。」

 そうしてシンジがいなくなると、三人は再び暇な時間を過ごす事になった。

 

「あら、シンジ君来たわね。」

「お疲れ様です、リツコさん。どうです作業の方は?」

「司令が中心になって調べていたデータを、見せてもらっているところだけれど

 なかなか興味深いデータよ、これは。もうじきミサトが戻ってくると思うから

 その時に中身を説明してあげるわ。」

「そう言えばミサトさんはどうしたんです。」

「何か私に調べて欲しいものがあるからってそれを取りに行ったわ。何か用でもあるの?」

「いえ、少し聞きたい事があるだけです。ところでミサトさんの様子どうでした?」

「反省の色無しってところね。2人も病院送りにしておいて、あった瞬間に

 『あらリツコ、元気してた?』ですもの。どういう神経してるのかしら。」

「悪かったわね、無神経で。」

「あらミサトいたの。」

「いちゃ悪い!(怒)」

「いいえ、どちらかといえばいいタイミングよ。」

「そう、それはよかったわ(怒)。」

「それじゃこれまでの調査で分かった事を説明するけど、よろしいかしら作戦部長さん?」

「ええ、結構よ。」

「まずはこれを見てもらえる。」

「何よこれ?」

 リツコが操作したパソコンのディスプレイには『601』という数字が表示されていた。

「解析不能を示すコードよ。つまり、何も分からないって事。」

「それじゃ何、結局調べても無駄だったって事?」

「無駄じゃないわよ。これを見てごらんなさい。」

「これって!?」

「使徒独自の固有波形パターン。構成素材の違いがあっても信号の配置と座標は

 人間のそれと酷似しているの。発見というなら発見よ、これは。」

「これまでの稚拙な見解をひっくり返すような内容のね。」

「・・・と、取りあえずの報告はここまでね。ところで何を取りに行ってたの?

 私に調べて欲しいって言ってたけど。」

「ああ、これよこれ。」

 ミサトは後ろに回していた手から一本の木刀を取り出した。

「それって!?」

「リツコが居ない時にマヤちゃんから聞いたのよ。零号機の起動実験の時、

 司令が振り回してたって。で、噂どおりの事が本当に出来るのか調べてもらおうと思って。」

「あの・・・、母さんいったい何をやったんです?」

「レイが大怪我をした零号機の起動実験の時の話よ・・・」

 

 

「零号機起動実験、開始します。」

 スタッフ全員の注目を浴びる中、零号機の起動実験は開始された。

 各セリフはややこしいので途中割愛。

「絶対境界線まであと0.9、0.7、0.5、0.4、0.3」

「パルス逆流!!」

 拘束具を引き剥がそうと暴れだす零号機。

「コンタクト停止、6番までの回路を開いて。」

「駄目です、信号が届きません。」

 拘束具を支えていた壁ごと引き剥がし、もがきながら動き出す零号機。

「実験を中止します。電源切断。」

「了解、電源おとします。」

「予備電源に切り替わりました。完全停止まであと35秒。」

 もがき苦しみ、その痛みから逃れるようにユイ達のいる実験室を殴り付ける零号機。

「全員、安全な距離を確保しつつ撤退準備。」

「オートイジェクション、作動します。」

「駄目よ!緊急停止!」

「間に合いません!!」

 ユイとマヤの悲痛な声が飛び交う中、零号機から飛び出したエントリープラグはその勢いで

壁に当たり、暴れまわる。そして勢いをなくすと自由落下しはじめた。

「レイちゃん!!」

 ユイは落ちはじめたエントリープラグを見ると壁を叩いた。

すると中から一本の木刀があらわれ、ユイはそれを持って実験ケイジの方へと走って行った。

 あっと言う間に下に降りたユイは、エントリープラグの方へと向かっていくと、

腰に携えた木刀を一閃させた。

 その瞬間、プラグの底の部分がキンッ、と音を立ててずれていく。

「またつまらぬものを斬ってしまった・・・て、そんな事言ってる場合じゃなくって!」

 ユイは外れた部分から中へと入り込み、レイの容体を見る。

「レイちゃん、大丈夫!?」

 中に入ってきたユイに対し身体を苦しそうに固めながらレイはかすかにうなずいた。

「すぐに手当ての準備をするからそのまま動かないでね。」

 ユイはレイが無事でいるのを確認するとすぐさま救護班の指示に入った。

救護班の担架で運び出される時、既にレイは気を失っていた。

 

 

「・・・というのがその時の内容よ。」

「それでこれがその時の木刀。」

「ちょっとそれ見せてもらえます。」

 シンジはミサトから木刀を受け取ると向きを変えて調べはじめた。

「あ、やっぱり。これ斬鉄剣V世ですよ。」

「斬鉄剣V世?」

 不思議そうな声を上げる二人にシンジは木刀のいくつかの部分を触ったあと、

柄と鞘の部分を開いて見せる。そこからは吸い込まれるような輝きを見せる刀身があらわれた。

「うそ、あたしがやった時はそんな風にならなかったのに。」

「特別な手順がいるんですよ、これ。」

「なんで司令はそんなもの持ってるの?」

「知りあいの人にもらったとか言ってましたけど・・・」

「なるほどね、それならエントリープラグを斬ったっていうのも納得できるわ。」

「納得しないでちょうだい!! エヴァは使徒との戦闘を想定して作られた、究極の汎用人型決戦兵器よ。

 そのパイロットが中に入るエントリープラグともなれば、強固さは本体にも引けを取らないのよ。

 それを一刀両断ですって? 非常識にも程があるわよ!!」

「でも司令の事だし・・・・・・ねぇ。」

「そうですね。他にもいくつかすごいもの斬ったっていう話もありますし。」

「ああ、うそよ、現実にこんなことがある?いいえ、あってたまるものですか。

 ああ、母さん、私は何を信じたらいいの。母さん・・・」

 ドサッ。

 非常識な現実からの逃避か、リツコはその場に倒れ、再び病院へと運ばれた。

 そして再び病院にて一泊する事になったのである。

 

作者後書き

 

この作品を読んでくれている皆様、どうもありがとうございます。

生活環境が一変して作品に何か影響があるかといえば毎度の事ですが

使徒との決戦にはどうしてもオリジナルが入れられず悩んでいるこの頃です。

(あ、その前にバイトが決まらなくって悩んでるわ。)

あとオリジナルの後のつじつま合わせに、前の話が合ってなかったり・・・

結局いつも悩んでるかも。

それでは作者が何気なく続けてる一言クエスチョン。

今回は時として人類の敵、葛城ミサトさんです。

「あによ、この紹介。」

「まあ、作者の思い込みですから気にしないでください。

 さて、質問の方ですがミサトさんのカレーはどのように作ってるんです。」

「何か気になる聞き方だけど・・・普通よ。ま、隠し味としていろいろ混ぜるけど

 一応、箱に書かれてる通りやってるわよ。」

(一応ってあなた・・・(汗))

「ち、ちなみに何を・・・」

「一言になってないわよ、ま、いいけど。まず、美味しそうなものを

   いくつか見繕って入れて、後はその味が控えめに出るようにまたいくつか。

 とどめにビールをいれて味に酷を出すのよ。」

「(倒れるのもうなずけるわ、こりゃ)い、以上、葛城ミサトさんでした。」

「ねえ、ここのタイトル変えたら?」

「うっ。」

P.S 上のミサトカレーの作り方はあくまで作者の勝手な想像です。

実際にはそれほどのものは出来ないはずなのでご指摘は勘弁ください。

 

 

 


(update 99/09/04)