エヴァ

■取り替えエヴアンゲリオン■

第7話「蒼い髪の少女」

作・SHEROさま


 

 

「リッちゃんたらせっかく退院してきたのに・・・」

「先輩・・・」

「リツコも案外もろいわね〜。」

 リツコが再び病院へと送られたあと、ユイ達はそれぞれの思いを述べていた。

「これでまた作業が遅れたら、あとに響くんですけど・・・」

 ユイが戻ってきて、適度な緊張感を纏いながら日向が言う。

「大丈夫よ、今のうちは。それに休暇だと思ってもらいましょう。」

「病院のベッドで過ごす休暇か・・・嫌だな。」

 青葉がその姿を想像してつぶやく。

「ところで赤城博士は何故倒れたんです?」

「現実の重さに耐えれなかったのよ。」

「はあ?」

 日向が分からないといった表情でミサトを見上げているとき、レイが入ってきた。

「あら、レイちゃん。お帰りなさい。」

 シンジはレイの登場で忘れていた家での一件を思い出した。

「そうだ、母さん。綾波の事で質問があるんだけど。」

「何、シンちゃん。」

「今日、一度家に戻ったんだけどその時・・・綾波がいたんだ。

 どうしてって聞いたら、母さんに聞くように言われたから。」

 シンジはレイの裸を見たことを言いよどみ、簡潔に内容を説明することにした。

「ああ、そのこと。喜びなさい、シンちゃん。今日からレイちゃんも一緒に住むのよ。」

「「「えぇ〜〜〜〜〜!!!」」」

 ユイから発せられた爆弾発言に、ミサト以外のその場にいた全員が声を上げる。

「な、何言ってるんだよ母さん。そんなこと・・・」

「あら、シンちゃんの時に言わなかった?作戦部長とパイロットのコミュニケーションが大事だって。

 それにミサトちゃんはOKしたわよ。」

「・・・・・・ミサトさん、またビールにつられたんですね。」

 シンジがあきれたようにミサトを見る。

「あはははは、まあいいじゃないの。」

「良くないですよ!」

「それにマヤちゃんが候補にあがった時、間違いがあるとかそういう話題が一時ありましたが

 彼女の方がそういう可能性が高いと思います。」

 何故かその時の事を良くおぼえている青葉が抗議の声を上げる。

「青葉さん!!」

 シンジが青葉の言葉に顔を赤くしながら怒鳴るが、青葉は相手にしない。

「その心配はないのよ青葉君。嘘だと思うんならちょっと実験に付き合って。」

「は? 何をするんです。」

「レイちゃんの後ろに立って。」

 言われた通り、席を立ってレイの後ろに立つ青葉。

「そうしたらレイちゃんのお尻を触ってごらんなさい。」

「か、母さん!!」

「「司令!!」」

再びの爆弾発言に声を荒げる一同。

「大丈夫、大丈夫。」

 ユイは安心しきっているように笑顔のまま答えた。

「そ、それでは・・・」

 青葉が息をのみ、恐る恐るレイのお尻に手を近づける。

 そしてもう少しという距離まで手が近づいた瞬間、レイが後ろ手に青葉の手を掴み、

次の瞬間、青葉の視界からレイの姿が消える。

 青葉がレイの姿が消えた事を認識した時、掴まれた腕に激痛が走り、

膝から力が抜けたかのように前に倒れる。その背中にはレイが馬乗りになって腕を締め上げていた。

「痛だだだだだだだ!!」

「どう、分かってもらえた?」

 ユイが笑顔のまま、床に這いつくばった青葉に声をかける。

「わ、わかりました、わかりましたから放して!」

 レイに締め上げられている青葉は、早く助けてくれというように声を上げる。

「レイちゃん、もういいわよ。」

 レイが離れると、青葉は肩を押さえて顔をしかめながら、ふらふらと立ち上がった。

「ふう、ひどい目にあった。」

「司令、レイに何を教えたんです?」

「私が知ってる護身術を全て教えただけよ。」

「司令の護身術全てか・・・侮れないわね。」

「シンジ君、気をつけなよ。」

 日向の忠告にシンジは暗い表情で笑う事しか出来なかった。

 

 

「自分で料理するのもなんだか久しぶりに感じるわね〜。」

 葛城家の台所で、ユイは楽しそうに料理をしている。

 今日はシンジ復帰祝いとして、ユイが久しぶりに手料理を振るおうと

葛城家にお邪魔しているのである。

「母さんの手料理も何か懐かしいね。」

「そうね、最近シンちゃんに任せっきりだったものね。」

「でもシンちゃんの料理、美味しいからいつも食べたくなるのよね〜。」

「あら、ミサトちゃんも?」

「ええ、あたしの当番の時もついつい・・・」

「気持ちは分かるけど家事をシンちゃんに押し付けたりしたら駄目よ〜。」

「は、はい。(汗)」

「あ、いけない、いけない。」

 家事の一言を聞いてシンジは椅子から立ち上がるとミサトと決めた当番表の所へと歩いて行った。

「・・・こうしてっと。」

 シンジはマジックをもつと、当番表の食事当番のミサトの名前を、自分の名前に書き換えた。

「・・・シンジ君・・・何のつもり・・・それ?」

 ミサトがシンジの行動に恐い顔をしながら尋ねる。

「ミサトさん・・・お願いですから料理はしないでください・・・」

「それってどういう意味かしら〜〜。(怒)」

 ミサトがシンジのこめかみを拳でグリグリしながらシンジを問い詰める。

「い、痛いですよ、ミサトさん。」

「ど・う・し・て、あたしに料理をさせないの〜。」

 ミサトはさらにグリグリしながらシンジを問い詰める。

「それじゃこうしましょ。」

 ユイはシンジがグリグリされているのを横目に、当番表の前に立つと

洗濯の部分のシンジの名前を、ミサトの名前に書きかえた。

「これでどう、ミサトちゃん。」

「あの・・・そういう問題ではないんですけど・・・」

「取り合えず料理は控えなさい。もし作りたくなったら本部で作りなさい。まずそれからね。」

「あ、あの・・・・・・」

「自宅で作るのは人間の食べ物になってからよ。いい?」

「どういう意味ですか!!」

「だって料理一口で二人も卒倒させたら・・・危険じゃない。」

「あたしの料理は武器か何かですか!!」

「あら、いいわねそれ。次の使徒の時に作ってもらおうかしら?」

「・・・・・・わかりましたから、それだけはやめてください・・・・・・」

「はい、決着〜。あ、レイちゃんの当番どうしようかしら。と、言っても料理は無理よね。

 結局シンちゃんに料理すべて担当してもらって、

 掃除や洗濯を二人に分け合ってもらうぐらいしかないわよね。」

 これまで沈黙を守ってきたレイに、ユイが笑顔で問い掛ける。

「私は構いません。」

「ミサトちゃんもいい?」

「・・・了解しました〜。」

「さ、御飯にしましょ。」

 当番の話も決着し、ユイの手作り料理を食べはじめる4人。

ただ、レイのメニューだけ少し変わっていた。

「あれ、母さん、綾波のだけ中身が違うんだけど・・・」

 シンジ達の前にあるのはオムレツにスバゲッティ、クリームシチューである。

ただレイの料理にのみ、どれも肉が入ってないのである。

「レイちゃんはちょっと事情があるのよ。」

「肉・・・食べれないから。」

「と、言うわけでレイちゃんの御飯には肉抜きでお願いね。」

「でも一人だけ別メニューって言うのは・・・」

「・・・気にしないで・・・お肉を抜いてくれればいいだけだから。」

「レイちゃんもこう言ってくれてるんだから、お願いねシンちゃん。」

「・・・・・・分かったよ。」

 夕食後、久しぶりにのんびりとしているシンジは、後片付けをしているユイの背中を見ていた。

「どうしたの、シンちゃん。じっとお母さんの背中なんか見ちゃって。」

「ミサトさん・・・母さんが普通に家事をしてるのを見るの久しぶりで・・・」

「そう、シンちゃんいつもお母さんのああいう背中を見てきたんだ。」

 ミサトはさみしそうな笑顔を浮かべながらシンジの首に腕を回した。

「ミサトさん?」

 シンジがいつもと雰囲気の違うミサトを気にして振り返ろうとした時、首に回されていた腕が

シンジの首を固め、絞めはじめた。

「・・・この、幸せ者め〜。」

「み、ミサトさん、入ってる、チョークチョーク。」

 シンジがミサトの腕を叩くが、ミサトは微妙な加減をしながら腕をはずさない。

「うりうり、どうだ、どうだ。」

 シンジとミサトがそうやって戯れていると、風呂場からレイが出てきた。

その瞬間、バタバタと暴れていた二人の動きはピタッと止まった。

二人の視線の先には、全裸で部屋へ向かおうとしているレイの姿があった。

「レイちゃん、なんて格好してるの!」

 裸で歩くレイに気づいたユイが、慌ててバスタオルを取りに行き、

身体にかけるがレイは気にした風もない。

「・・・着替え、部屋だから・・・」

 他人の視線を気にすることなく言うレイを、ユイが慌てながら部屋へ押していく。

「今度からは着替えは脱衣所まで持っていくようにしなさい。

 女の子が裸なんて軽々しく見せちゃ駄目よ。パジャマはどこ?」

 下着を着けはじめるレイを見ながら、ユイはあきれたように話し掛ける。

「・・・パジャマ・・・・・・ありません。」

「あら、服を買うようにお金渡してたはずだけど買ってないの?」

「いえ・・・買いました。」

「普段着ばかり買っちゃったの? この中かしら?」

 ユイが部屋にあるタンスを開けると、膝をがくりと落としたあと、ポツリとつぶやいた。

「・・・・・・明日、普通の服、買いに行きましょうね・・・・・・」

 ユイが開けたタンスの中には何着もの中学校の制服がかけられていた。

 数分後、ユイがレイの部屋から出てくるとシンジがミサトに、

レイの裸を見た、見なかったとからかわれていた。

 

 

「ユイ君、未確認飛行物体がこちらに近づいているようだ。おそらく第5の使徒だろう。」

 零号機の起動実験が成功した直後、冬月は観測台からの報告を受け、それをユイへと伝えた。

「テストを中断します。総員、第一種警戒態勢に着きなさい。」

「零号機はこのまま使うのかね?」

「・・・状況によりますわね。初号機の準備はどのくらいで出来る?」

「380秒で発進可能です。」

「もう少し時間をかけてもいいわ、冬月先生、国連に連絡して足止めをお願いしてくださいな。」

「しかし彼らでは向かわせるだけ無駄だと思うが・・・」

「たいした効果は期待してませんわ、情報が少しでも得られればそれでいいんです。」

「・・・分かった。無人の偵察機か何かを出させるように要請しよう。」

「お願いします。」

 零号機のテストを行なっていたスタッフがそれぞれ持ち場へと移動していく。

レイも一度零号機を降りる事になり、プラグの中から緊張をほぐすかのように大きく息をはいた。

「初号機、発進準備に入ります。」

「国連軍よりの偵察機2機、使徒へ接近します。」

 エヴァの発進準備が進むなか、地上を映した画面にはゆっくりと進んでくる使徒と

その周辺を飛びはじめた2機の偵察機が映し出されていた。

「エヴァ初号機、発進準備よろし。」

「目標内部に高エネルギー反応。円周部を加速、収束していきます。」

 次の瞬間、2機の偵察機は使徒の放った加粒子砲により、跡形もなく消し去られた。

「初号機の発進準備を取り消し。先ほどのデータをもとに、これより作戦会議に入ります。」

 偵察機が打ち落とされたのを見て、ユイは即座に判断を下した。

スタッフは慣れたもので、早くもデータの解析や会議の準備に入っていた。

「先ほどの映像を出します。」

 映し出された映像には、使徒の周囲を旋回しようとした所を打ち落とされた偵察機と、

ビルの影を使って距離を取ろうとしながらも打ち落とされた偵察機が映っていた。

「もう少しデータが欲しいわね、ダミー用意。自走臼砲も。」

「了解、すぐに用意します。」

 数分後、エヴァ初号機をかたどったダミーバルーンが用意された。

腕の部分にはライフルが備え付けられている。

「ダミー、使徒へと接近。攻撃態勢に入ります。」

 ダミーが使徒へとライフルを向ける。それを合図に使徒は加粒子砲をダミーへと放つ。

「ダミー消滅。」

「次!」

 次に独12式自走臼砲が山間のトンネルから走り出てきた。

照準を使徒へと合わせ、撃つ。

 しかし、使徒へと打ち出された弾丸はATフィールドにはばまれ、途方もない方向へと飛んでいく。

そして自走臼砲もまた、使徒から放たれた加粒子砲によって破壊された。

「どうやら一定距離内の外敵を、自動的に排除するようですね。」

 その画面をじっと見ていたミサトは日向の意見にうなずく。

「ATフィールドも肉眼で確認できるほど健在・・・か。

 エヴァでの接近戦はまず無理ね。使徒の動きは?」

「現在、我々ネルフ本部の直上より、ドリル上のシールドがセントラルドグマへ向けて潜行中。

 あと10時間足らずで、22層の全装甲を貫通してネルフ本部へ到達する見込みです。」

「どうします、白旗でも挙げてみますか?」

「その前に試してみたい事があるの。司令、作戦を提案したいのですが。」

 作戦の提案はミサトの役目とこれまでじっと見ていたユイにミサトが声をかける。

「どうぞ。葛城一慰。」

「目標の射程外から超長距離射撃により、敵をATフィールドごと貫く

 一点突破を行ないたいのですが。」

「面白そうね。赤木博士、MAGIに提案して勝算をはじき出して。」

「はい。・・・出ました。勝算8.7%、

 MAGIによる作戦案と照らし合わせても最も高い数値です。」

「答えは出たようね。葛城一慰、存分にやりなさい。こちらでも作戦の補佐の準備をしておくわ。」

「はい。」

 

 作戦会議も終了し、ミサトとリツコは技術部へと向っていた。

そこにはエヴァの武器を製造しているスタッフで賑わっていた。

「ミサト、超長距離射撃といっても何を使うつもり?うちのポジトロンライフルでは

 そんな大出力には耐えられないわよ。」

「そんな時は決まってるじゃない、借りるのよ。あるでしょ、元になった物が。」

「まさか、戦自研のプロトタイプ!?」

「そ、あとついでに零号機借りるわね。」

「零号機なんて何に使う気?」

「荷物運び。普通に運んでたら間に合わなくなるもの。」

「・・・・・・司令の許可は自分で取ってきてね。」

 ミサトの使える物は何でも使う性格にあきれて、リツコは冷たく言い放った。

 

「以上の理由により、この自走陽電子砲は特務機関NERVが徴発します。」

 ミサトはユイを説得し、零号機を伴って戦自研の技術本部へとやってきていた。

その手には見事な達筆で書かれた徴発令状を持っている。

「し、しかし・・・そんな無茶な・・・」

「可能な限り原形をとどめて返却致しますよう努めますので。では、ご協力感謝します。

 レイ、持って行っていいわよ。精密機械だからそぉっとね。」

 相手の意見を言わせることなく、ミサトは話をどんどん進めていく。

ミサトの声を聞いて研究所の屋根をはがし、陽電子砲を持ちあげる零号機。

「・・・・・・・・・あっ。」

 レイが声を発したとき、零号機は陽電子砲をその手から取り落としていた。

ガシャッ!

 その光景を見ていた全員が凍り付く。

「・・・・・・か、可能な限り原形をとどめて返却致しますので・・・(汗)」

 だが研究員たちは呆れ顔でそれを見たあと、一人二人と諦めたかのように帰り支度を始めていた。

「しかし、ATフィールドをも貫くエネルギーなんてどこから集めてくるんですか。」

「あら、ここをどこだと思ってるの、日本で使うんだから日本中からよ。」

 

 超長距離射撃の準備も進み、狙撃地点も二子山山頂と決定した。

 スタッフが忙しく走り回るなか、シンジとレイはミサトとリツコから

作戦の内容を聞く為、テントの中に集められた。

「今回の作戦ではシンジ君に砲手、レイに防御を担当してもらうわ。」

「今回は使徒のコア一点を狙って攻撃します。ただ、陽電子は地球の自転、重力、磁場の影響で

 直進しないからその誤差を修正するのを忘れないでね。」

「そんな、練習もしてないのに無理ですよ。」

「大丈夫、誤差の修正をしてなんていうのは建前で、本当はコンピュータがすべてやってくれるわ。

 シンジ君は普段の練習どおりにスイッチを押せばいいの。

 でも、打ち直しにはヒューズの交換や再充填、冷却の関係で時間が掛かるわ。

 その点だけには注意してね。」

「・・・つまり、一撃で仕留めないと大ピンチって事ですね。」

 シンジのその声には誰も応えず、辺りが静かになる。

「・・・時間よ、二人とも着替えて。」

 

「・・・綾波は恐くないの、エヴァに乗るの。」

 着替えも終わり、あとは作戦の準備が完了するのを待つだけとなったシンジとレイ。

待っている間の沈黙に耐えきれなくなったのか、シンジはレイに声をかけた。

「・・・どうして。」

「だって訳の分からない敵と戦って・・・エヴァだって何なのか良く分からないし・・・」

「お母さんやみんなのしている事が信じられないの。」

「信じてるよ。・・・でも、恐いんだ。」

「恐いのなら乗らなければいいわ。」

「そんな事出来ないよ。」

「どうして。」

「母さんやミサトさんや、NERVの人たち、あとみんなを守らないと。

 それに・・・母さんに恩返しがしたいんだ。」

「・・・恩返し?」

「うん・・・父さんがいなくなってから母さん、大変だったはずなのに

 いつも僕の事、気にしてくれて・・・だから少しでも母さんを喜ばせてあげたいんだ。」

「・・・そう。」

「綾波はどうしてこれに乗るの?」

「・・・絆だから。みんなとの・・・」

「・・・絆か、考えた事もなかった・・・すごいんだね、綾波は。」

「・・・時間よ・・・・・・

 安心して、碇君は私が守るわ。」

 

「作戦スタートです。」

 日向の声に全員に緊張が走る。

「シンジ君、日本中のエネルギーあなたに預けるわ。頑張ってね。

 ・・・接続開始!」

 日本中のいたるところに設置された中継器から、ポジトロンライフルへと向けて電力が流れ込んでくる。

「・・・第2次接続開始。」

 続々と中継器を通してエネルギーがポジトロンライフルへと向っていく。

「充填完了まであと15秒。」

 それまで静かに見ていたユイが声を上げる。

「第2次作戦開始。」

 本部近辺の兵装ビル、道路からダミーバルーンや自走臼砲、戦車、戦闘機があらわれる。

それぞれがすべて使徒へと向けて攻撃を始める。

 使徒はそれを迎え撃つかのようにそれぞれに向けて加粒子砲を撃つ。

「全エネルギー集結!」

「発射!!」

 使徒がダミーに向って加粒子砲を放っている中、ポジトロンライフルが発射された。

その閃光は使徒のATフィールドをいともたやすく貫く。

「作戦、成功です。」

 コア一点のみを打ち抜かれ、ゆっくりと地上へ落ちていく使徒。

その様子を見ながらミサトとリツコは、先ほどの2次作戦を思い返していた。

「・・・まさかあんなフォローをしてくれるとは思わなかったわ。」

「考えてみれば、使徒がこちらの動きに対して何も手を打たないとは限らないんだから

 危ない所だったわね。反撃の他に先手を打たれる事もあるのを忘れていたわ。」

「これも親として息子の事を思えば・・・かしら。」

二人はコーヒーを飲みながら、再び拘束されていくエヴァを見ていた。

 

 作戦が終了しエヴァから降りたシンジとレイ。

月明かりの下、前を歩くレイにシンジは声をかけた。

「綾波!」

「・・・何。」

「あの・・・ありがとう、僕を守るって言ってくれて。」

「・・・・・・・・・」

「綾波のあの言葉でずいぶん安心できたんだ、だから、ありがとう。

 ・・・・・・・・・でもできる事なら・・・僕が、綾波を守ってあげたい。」

「・・・・・・ごめんなさい、こんな時なんて答えたらいいのか、わからなくって。」

「・・・微笑ってくれると・・・うれしいな・・・

 母さんが言ってたけど・・・誰かの笑顔が一番嬉しいって。

 僕もそう思うんだ、だから・・・」

 言っていて照れはじめたシンジは、レイから視線を逸らして言葉を続ける。

「・・・・・・ありがとう。」

 その時シンジは見なかったが、レイは口元にかすかに笑みを浮かべていた。

 

作者後書き

 

毎回、締切りに追われて書いているのですが今回は特につらかったです。

なんたってネタがないんですもの、この回。

使徒戦や、間の小ネタはあるんですけど場面変更が多いし

いいギャグも思いつかないし。

あとの方なら少しはネタがあるんですが・・・

でも、楽しく読める作品に出来たらと思ってますので。

では、一言クエスチョン、今回はNERVのマッドサイエンティスト

赤木リツコ博士です。

「誰がマッドサイエンティストよ。」

「作者がその設定で通そうとしてますから間違いはないかと・・・」

「そう、それじゃ新開発のこの薬の実験台になってもらおうかしら。ふふふ・・・」

「(恐いよ〜〜〜)え、えと、赤木博士に質問です。

 今回使われた陽電子砲ですが、あのあとどうなったんですか。」

「返したわよ、ちゃんと。使用後、一部修理したけど。

 ただ向こうのスタッフは泣いてたわね。改造し過ぎて原形とどめてなかったから。」

「原因は?」

「あまりにも高出力過ぎて部品の一部が溶けたのと、うちに来たとき

 精密機器の一部が壊れていたからね。ほとんど組み直し状態だったわ。」

「(レイちゃんが落としたせいかな?)あ、ありがとうございました〜。」

 

 


(update 99/10/09)