エヴァ

■取り替えエヴァンゲリオン■

第8話「紅い髪の少女」

作・SHEROさま


 

 NERVの兵装ビルの一角に、ヘリポートが設置されている。

 現在そこにはユイ、ミサト、リツコ、レイ、シンジ、トウジ、ケンスケの

7人とヘリ、そしてパイロットが集まっていた。

「それじゃミサトちゃん、お出迎えよろしく。」

「はい。」

 使徒襲来により、体制を整えなければならなくなったNERV。

今日はドイツ支部からエヴァとそのパイロットがやって来るのである。

「今回はちゃんと案内してくれる人がいるから心配いりませんね。」

 道に迷う事がよくあるミサトを見て、リツコは口元に笑みを浮かべながら話す。

「あ〜、リツコひっど〜い。」

「ははははは。」

「シ〜ン〜ちゃ〜ん。」

 出会った日の事を思い出して笑ったシンジなのだが、すぐさまミサトに

こめかみを拳でぐりぐりされた。

「あいたたた、ご、ごめんなさいミサトさん。」

「ふふふふふ。まあまあ。」

 微笑ましいといった表情でミサトをなだめるユイ。

 開放されたシンジはこめかみを押さえながら、

早く出発したいと言わんばかりのトウジとケンスケを見た。

 その姿を見てシンジは未だ気にしている事を口に出した。

「母さん達は行かないの?」

「母さん達はここでお仕事が残ってるの?ほんとは行きたかったんだけどねぇ。」

 少し残念そうな顔をするユイ。

「でも相田君がいるから後でその映像を見せてもらうわ。」

 ユイのその一言にケンスケは大袈裟なリアクションで敬礼をした。

「はっ、お任せください。この相田ケンスケ、必ず司令殿の満足する映像を撮影して

 戻ってまいります。」

 ケンスケの芝居掛かったセリフに呆然とする一同。

「・・・よ、よろしくね。」

「それじゃ、いってきま〜す。」

 ヘリはミサト、シンジ、トウジ、ケンスケの4人を乗せて飛び立つ。

「いってらっしゃ〜い。」

 飛び立つヘリに向けて大きく手を振るユイ。

その後ろではレイがそれを真似て小さく手を振っている。

 そしてヘリが小さくなっていくとユイは手を振るのをやめ、リツコとレイの方を振り向いた。

「それじゃ、リッちゃん。マヤちゃん呼んで来てくれる。」

「構いませんがどうしてですか。」

「ちょっと準備する物があるからお買い物。それにミサトちゃんの特別手当が

 うらやましいって思った事ってない?」

「い、いえ、特には・・・」

「そう?どうせだからみんなでいろいろ見てまわろうと思ったんだけど・・・やめとく?」

「いえ、行かせてもらいます。」

 ユイが何を言いたいのか分かったリツコはユイの気が変わらないうちに即決した。

「それじゃ、駐車場で待ってるからお願いね。」

「司令、青葉君と日向君はいいんですか?」

「これは女同士の買い物ですもの、男の人に付いて来てもらっては困る物もあるわよ。」

「分かりました。(かわいそうな二人、荷物持ちにもしてもらえないのね)」

 本部へと戻っていくリツコの背中を見ながらユイは一人考えを巡らしていた。

(必要経費としてNERVの予算から買い物しましょっと。

 ・・・冬月先生は怒るかしら、フフフ。)

    ☆    ☆    ☆

「すごい、すごすぎる!」

 ヘリに乗り込んだケンスケは離陸直後から舞い上がっていた。

乗るチャンスなど今の自分にあるはずの無い物に乗り、しかもその振動を体に感じながら

その手のデジタルカメラに映像を収めているのである。

「ケンスケ、危ないよ。」

 シートベルトはしているのだが、身を乗り出して今にも飛び出しそうな

ケンスケを横にしてシンジは不安な表情でケンスケを見る。

だがケンスケはそんな言葉に耳も傾けず一心不乱にカメラをまわしている。

「どーぉ、空のデートの感想は?」

「もう、最高っすよ。」

カメラをミサトに向けながらケンスケが返事をする。

「デート?ミサトさんとデートが出来るなんてわしは幸せもんや。」

 デートという言葉に反応したトウジは縞模様の帽子を整え直す。

「目的地が見えて来たわよ〜。」

 ミサト達の乗るヘリの先には空母、戦艦といった艦が集う大艦隊が航行していた。

「これがデートの目的地やて・・・?」

 デートとはあまりにもかけ離れた光景にがっかりした様子でトウジがつぶやく。

「いや〜、すばらしい。俺は大歓迎だね。」

 対照的に大艦隊の迎えに喜ぶケンスケ。

一方、シンジは二人のあまりに対照的な反応にあきれていた。

 

「NERVからわざわざお迎えが来たか、人形のソケットなどおまけにな。」

 空母のブリッジで艦長が忌々しそうに双眼鏡をのぞきながら、着陸するヘリを見ていた。

    ☆    ☆    ☆

「レイちゃん、これなんかどう?」

 洋服専門店で衣装室にいるレイに向けて、マヤは水色のワンピースを見せた。

その控えめな色はレイの髪の色に似ており、全体的に透明感を演出している。

「私はこっちの方が似合うと思うんだけど。」

 マヤの後ろから黒い服を持ってリツコが出てきた。

リツコの持って来た服は黒のミニスカートに、同じく黒のキャミソールといった

大胆なデザインの物である。

「あら、私が選んだのも見てくれる?」

 ユイが持って来たのはジーンズにTシャツ、リバーシブルのパーカーといった

シンプルなデザインの服だった。

 レイは三者三様の服にどうしたものかと表情には出さずに悩んでいた。

    ☆    ☆    ☆

 飛行甲板の上、潮風に吹かれながらブリッジへと向かう4人。

「アロー、ミサト。」

4人が進む前に紅い髪の少女が立つ。彼女は仁王立ちの姿勢でじっとミサト達を見ている。

「久しぶりねアスカ、ずいぶんと成長したじゃない。」

「成長したのは見た目だけじゃないわよ、中身もちゃんと成長してるんだから。」

 話し込む二人を見て他の3人は『誰?』というような表情をしている。

「私の名前は惣流・アスカ・ラングレー、

 エヴァンゲリオン弐号機のパイロットにしてセカンドチルドレンよ!」

 瞬間、風が強く吹いた。アスカの長い髪が風になびく。スカートも・・・。

パン!パン!パン!

 音高らかにアスカが男達3人を叩いた。

3人は呆然としながら叩かれた頬を押さえている。

「な、な、何すんねん、突然。」

「見物料よ、安いもんでしょう?」

 悪びれるでもなく、さも当然とばかりにいうアスカ。

「何やと、たかがパンツぐらいで。そんなもんこっちかて見したるわい。」

 言うとトウジはジャージの紐をゆるめてズボンをおろした。パンツまで一緒に・・・。

「っ!!この変態!!!」

ゴッ!ゴッ!ドム!ドム!

 トウジの顔と腹にアスカの拳がめり込む。とどめにアッパーを食らってトウジはあおむけに倒れた。

彼にとって幸いな事は自慢の帽子で股間が隠れている事だろう。

「はぁ。それで、噂のサードチルドレンはどこ。まさかこの変態じゃないでしょうね?」

「違うわ、この子よ。」

 ミサトは前にいたシンジをアスカの方に向けて押し出した。

「わわっ!」

 アスカの方へと押されて慌てて立ち止まるシンジ。

「ふ〜ん、これが・・・冴えないわね。」

「詳しい紹介は後でしてあげるわ、先に艦長の所へ行って手続きを済ませましょう。」

 言うなり身を翻してブリッジへと向かうミサト。

「ちょっとミサト、どこ行くの?」

 階段に差し掛かった所でミサトの後ろからアスカが声をかける。

振り向くミサト。

「そっちは機関室。艦長のいるブリッジは上よ。」

言われて照れ笑いをするミサト。ミサトは階段を下っていこうとしていたのだ。

    ☆    ☆    ☆

 思い思いの服を買った4人、今度は下着専門店へ。

「先輩、素敵です〜。」

 リツコが試着した下着姿を、顔だけ出してのぞいたマヤが感嘆の声を上げる。

「そ、そう?」

 歳の事もあり、ちょっと悩み気味のリツコだったがマヤの声を聞いて機嫌を良くする。

「いいなぁ〜先輩は、何着ても似合うんだもの。」

「あら、マヤちゃんだってそうじゃない。」

 後ろからユイが声をかける。その手には出たばかりの新デザインの下着がある。

「そ、そんな、あたしなんて・・・」

 謙遜するマヤ。手と体がフルフルと横に揺れるのだが、リツコの試着室のカーテンを持っているので

中も動きに合わせてチラチラと見えてしまい、慌ててリツコが押さえる。

「そういうのって本人には結構分からないものよ。」

 そんな話をしているとレイがユイの後ろに歩いてきた。

「・・・これ・・・」

「なに・・・レ、レイちゃん(汗)・・・」

「どうしたんです?」

 ユイの慌てた声に反応して顔だけ出すリツコ。レイの持っている物を見てその顔にも汗が流れる。

「・・・着て見せて・・・」

 3人の顔を見回すレイ。みんな首を振っている。

みんなが首を振っているのを見てレイは、試着室にいるリツコの顔をじっと見つめることにした。

「・・・お願い、それは勘弁して・・・」

 涙ながらに許しを請うリツコ。残念そうに手に持った下着を見つめるレイ。

レイが持ってきたのは生地が極端に少なかったり、穴が空いていたりする下着だった。

    ☆    ☆    ☆

「葛城ミサト・・・NERVの人だったとわね。わざわざお迎えとはご苦労な事だ。」

 アスカに案内されてやってきたブリッジ。そこで一行は艦長の出迎えを受けた。

「エヴァパイロットの子供は大切ですから。」

「なら人と人形と別にしたらどうかね。久しぶりに子供の相手が出来て嬉しかったのは確かだが、

 あんな人形一つ運ぶのにこの大艦隊ははっきり言って迷惑だよ。」

「エヴァが襲われたときパイロットは必要ですから。

 可能性と重要性を考えればこの戦力でも足りないぐらいですわ。」

「大胆な事を言ってくれる。それで海上でも戦えるようにソケットまで運んできたのかね?」

「そうです。こちらが非常用電源ソケットの仕様書です。この書類にサインをお願いできますか?」

「ああ、だがエヴァ弐号機とそのパイロットはドイツの第三支部より本艦隊が預かった。

 正式な引き渡しは新横須賀に到着してからにさせてもらう。」

「わかりました。ですが有事の際は我々NERVの指揮権が最優先である事をお忘れなく。」

「かっこええなあ・・・」

「ほんとにミサトさん?」

「おっ、ちゃんと仕事をしてるね〜。」

 ブリッジの出入り口に後ろ髪を縛った無精ひげの男が立っている。

「加持先輩!」

 その姿を見つけたアスカがはしゃいで手を振る。

「げっ・・・」

「加持君、君をブリッジに招待した覚えはないぞ。」

「そいつはどうも、ですがこちらも仕事でして。」

    ☆    ☆    ☆

 買い物中の4人、次に入ったのは靴専門店。

「きゃあ〜〜〜、この靴かわい〜〜。あ、こっちも〜〜〜。」

 入るなり右へ左へとはしゃぎまくるマヤ。

「落ち着きなさい、マヤ・・・」

 はしゃぎまくるマヤを見て頭を押さえながらつぶやくリツコ。

「あ、このデザインいいわね〜〜。でも、これも捨て難いし・・・」

「司令まで・・・レイ、あなたは・・・」

 マヤ、ユイとはしゃぐのを見て、せめてレイぐらいはと期待を込めて振り返るリツコ。

次の瞬間リツコは音が聞こえそうなぐらい『がくっ』と肩を落とした。

 リツコが見たレイはヒールの高い靴を履いて『おっとっと』とバランスを取ろうとしていた。

    ☆    ☆    ☆

 ブリッジから艦内の客室へとやってきたミサト達。

だがミサトだけはずいぶんと不機嫌である。

「なんであんたがここにいるのよ。」

「彼女の随伴でね。ドイツから日本へ出張さ。

 あと、もう一つ仕事があるんだけどね。」

「なによそれ?」

「聞いてないかい?葛城たちの案内役さ。」

「あんたが?・・・リツコの奴、知ってたわね。」

「あの・・・ミサトさん、知り合いなんですか?」

「ああ・・・加持リョウジ、あたしとリツコの大学時代からの友人でNERVの同期よ。」

「ずいぶん簡単な紹介だな。・・・改めて自己紹介するよ。

 加持リョウジ、葛城の恋人さ。」

「「「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」

「も、元よ、元。元恋人(汗)。今じゃなんとも思ってないんだから。」

「そいつは悲しいな。寝相の悪い葛城の布団を掛け直したりもしたのに。

 今もそうなんだろ?碇シンジ君。」

「ええ、でもどうして僕の名前を?」

「そりゃ知ってるさ、君はこの世界ではずいぶん有名なんだよ。

 何の訓練も無しにエヴァを実戦で動かしたサードチルドレン。」

「そんな、偶然ですよ。」

「偶然でも君はエヴァを動かして使徒まで撃退した。これは才能と呼べるよ。

 それじゃ、俺は他に仕事があるからひとまず退散するよ。

 案内はまたあとでな、葛城。」

「うるさい!もう戻ってこなくて結構よ。」

「ははは、君がまた迷子になる前には返ってくるよ。」

 軽口を叩きながら出て行く加持をアスカが追いかけていく。

ミサトはテーブルに突っ伏して頭を抱えていた。

    ☆    ☆    ☆

「加持さん、ホントなの?ミサトと恋人関係だったって?」

「ん?ああ、ほんとさ、でも俺は葛城に振られたのさ。だから元。」

「そ、よかった。」

「それよりどうだい、碇シンジ君は。」

「つまんない子、あんなのがサードチルドレンだなんて幻滅よ。」

「でも彼はいきなりの実戦でシンクロ率40を軽く越えたよ。」

「うっそでしょ〜。」

「ほんとさ、俺がアスカに嘘をついた事があるかい?」

「あるじゃない、ついさっき。加持さん恋人いないって言ってたのに。」

「今いないのは本当だよ、俺だって恋愛経験ぐらいはあるんだから過去には恋人ぐらいいるさ。」

「ずっる〜い。」

「思い出したくない恋愛もあるからそれぐらいは勘弁してくれよ。」

「わかったわ、その代わり日本についたらデートしてよね。」

「はいはい。」

    ☆    ☆    ☆

 バッグの専門店に入ったユイ達。

そこではユイが鏡を見ながら迷っていた。

「こっちの方がデザインは好みなんだけど、機能的にはこっちの方がいいし・・・」

 こんな調子で10分以上も悩み続けているのである。

リツコとマヤも一緒に悩んでいる。

「デザインだけで選ぶとあとで使わなくなることもありますし・・・」

「かといって機能だけで選んでも、外へ持ち歩くのに気にしちゃって使わなくなったりするし・・・」

 そんな悩む大人たちをよそに、バッグを見ていたレイが一つのバッグを持ってユイの元へ歩いてくる。

「・・・これはどう?」

 レイは手に持ったバッグをユイへ手渡す。

ユイはバッグの中を見たあと、肩に下げて鏡の前でポーズを取ってみる。

「うん!これにしましょ。」

 今まで悩んでいたのが嘘のようにあっさり決断するユイ。

そのうしろでリツコとマヤは固まっていた。

「・・・先輩・・・あれって確か・・・」

「・・・ついこの間出たばかりの・・・最新物・・・だったと思うけど・・・」

 そんな二人の反応をよそにさっさと会計を済ませてしまうユイ。

その金額が二人をさらに固まらせてしまう物だったという事は言うまでもない。

「二人とも選ばないの?そうだ、どうせだから同じのにする?」

 その言葉に二人は揃って首を振った。

「い、いえ、自分で選びます。」

「司令と同じものだなんてとてもとても・・・」

 そう言ってそそくさとバッグを選びはじめる二人。

だが『誘いに乗ってみてもよかったかな〜』などと後悔したりもしていた。

    ☆    ☆    ☆

「サードチルドレン!」

 案内役がいなくなって迷うかと思いきや、ケンスケのマニアぶりによって

迷わずに歩いていたシンジはエレベーターを上がった所でアスカに呼び止められた。

「ちょっと付き合って。」

 このセリフに冷やかしを掛けたケンスケとトウジはやっぱり叩かれた。

二人は辺りにいた船員を捕まえヘリに乗ると甲板に大きなシートをかぶせた船へと降りた。

「どう、これがエヴァンゲリオン弐号機。世界中で初めての正式なエヴァンゲリオンよ。

 あんたやファーストチルドレンの乗る試作機や試験機なんかとは全然違うんだから。」

弐号機を格納しているプールの中、アスカはその背中に乗って得意げにシンジに自慢していた。

「・・・赤いんだ、弐号機って。」

「それだけ〜!もっと他に言う事はないの。」

「そんな事言われても・・・」

 ドォォンッ!

「なにっ?」

「水中衝撃波!?近いわね。」

 慌てて甲板へと飛び出す二人。その視線の先には大きな水飛沫が上がっていた。

「まさか、使徒?」

「あれが?・・・これはチャンスね。

 来なさい、サードチルドレン!」

 弐号機のすぐ側においてあったカバンを持ち出しシンジを引きまわすアスカ。

辺りにだれも人がいない階段を見つけるとそこへ入って行った。

「ほらこれ。」

 カバンの中からプラグスーツの予備を取り出すアスカ。

「え?」

「着替えるのよ、あんたは上、私は下。いい?

 のぞいたりしたら殺すからね。」

「ちょ、ちょっと・・・」

 シンジの声を無視して階段を降りていくアスカ。

シンジは仕方なく階段を上って着替えを始める。

だが途中でシンジはあることに気がついた。

「あ、あの〜惣流さん?」

「きゃあっ!!のぞかないでって言ったでしょ!エッチ!」

「ご、ごめん・・・あの・・・いいかな?」

「何よ。」

「このプラグスーツ、女性用なんだけど・・・」

「当然でしょ、あたしのプラグスーツの予備なんだから。いいからさっさと着替えなさいよ。」

「わ、わかったよ・・・」

 着替え終わり再び弐号機の所へ戻ってきた二人。

だがシンジは女性用のプラグスーツの為、腰がひけている。

「ねえ、プラグスーツに着替えてどうするのさ?」

「決まってるじゃない、使徒をやっつけるのよ。」

「どうして僕まで?」

「あんたとの実力の差を見せ付ける為よ、いいから乗りなさい。」

    ☆    ☆    ☆

Prrrr! Prrrr! Prrrr!

「は〜い、どちらさま〜。」

『どうも、加持です。予想通り使徒が来ましたよ。』

「そう、それでそっちの準備の方は?」

『艦長が意地になって艦隊戦で使徒を倒そうとしてますよ。

 まあ、葛城がいますからエヴァが動き出すのは時間の問題でしょうけどね。』

「そっちはミサトちゃんに任せていいわ、加持君の方は?」

『いつでも大丈夫ですよ、荷物は少なくするようにしてますから。』

「そう、それじゃ本部で会いましょう。」

『了解しました。』

「あ、加持君。」

『何です?』

「一番いい機体に乗ってきてね。」

『・・・了解です。』

 一通りの買い物が終わり、喫茶店でゆっくり休んでいた所に加持からの電話を受けたユイ。

電話を切ったあと、リツコの方を向く。

「リッちゃん。新横須賀までミサトちゃん達を迎えに行ってくれる?」

「何かトラブルでも?」

「道案内の人に用事が出来たの。」

「分かりました。」

 休憩は終わりとばかりに立ち上がる4人。

そして一行は本部へと一時戻り、リツコだけが部下を連れて新横須賀へと向かった。

    ☆    ☆    ☆

「なぜ倒せん?」

 魚雷を浴びてもものともせずに動き回る使徒を見て焦る艦長。

「やっぱエヴァやないと無理ちゃうんか?」

 何気なくつぶやいたトウジの声に振り向く艦長。

その目は思いっきり血走っている。

 思わずひいてしまうトウジ。

「お手伝いしましょうか?」

「いらんわ!」

「艦長、弐号機が動いています。」

「何じゃと!止めさせろ!」

 ここがチャンスとばかりにマイクを奪い取るミサト。

「アスカ、聞こえてる?」

「聞こえてるわよ、ミサト。」

「初陣よ、しっかりね。」

「オッケー、エヴァンゲリオン弐号機。

 惣流・アスカ・ラングレー、行きます!」

 甲板から飛び立つ弐号機。弐号機は次々と他の艦に飛び移り、ミサト達の乗る艦へと着艦する。

「ミサト、ケーブル!」

「準備は出来てるわ。」

 甲板上にはミサトの言うとおりケーブルが用意されている。

「いつのまに?副艦長、君の仕業かね?」

 双眼鏡をのぞきながらなぜか電卓を持っていた副艦長がその声に答える。

「私は美人の味方ですから。」

「・・・まったくどいつもこいつも・・・」

 艦長はがっくりと肩をうな垂れた。

「来るよ、左舷9時方向。」

「外部電源接続完了。」

「どうするの、武装がないよ。」

「プログナイフで十分よ。」

 プログナイフを取り出して構える弐号機。それに向けて直進してくる使徒。

「どうする気だ?」

「使徒に関しては近接戦闘がもっとも有効なんですけど・・・まさか!?」

 さらに直進してくる使徒、艦に近づくといきなり海から飛び出した。

それを受け止める弐号機、使徒は甲板のほとんどをうめる状態で押さえつけられる。

「無茶をするな、飛行甲板が無茶苦茶じゃないか。」

 甲板にたたき上げられておとなしくなる使徒、それを見た瞬間、

シンジの頭の中で閃きが起こった。

 ザシュッ、ザザザザザッ。ザクザクザクザクッ。

弐号機の取り出した行動に多くの物が唖然とし、一部の物はよだれを流した。

なんと弐号機は使徒をさばき始めたのだ。もちろんこの時点で操縦しているのはシンジである。

「・・・ちょっと、あたしの弐号機勝手に動かさないでよ!」

 アスカが夢中になって使徒をさばいているシンジからレバーを奪う。

「あっ。」

 その拍子に使徒をさばいていたナイフがずれ、使徒が暴れて弐号機とともに海へと落ちる。

「身体おろされながらも泳いどるで・・・」

「シンちゃん、達人の域に達してるのね・・・」

「食えるのかな、あれ?」

 残された使徒の切り身を見てつぶやいているケンスケが音に反応して左を向く。

そこには一機の戦闘機が甲板へと出てきている。

「おーい、葛城ー。俺用事が出来たから先に本部に行くわ。」

「こぉら、加持、逃げるなー!」

「またなー、葛城一慰。」

 飛び立っていく戦闘機を必死でカメラに押さえようとしているケンスケと

それを呆然と見ている二人。

「何やったんや、あの兄ちゃんは・・・」

「あの馬鹿。」

「かっこいい・・・」

 そんなのんきな事を言っているブリッジの三人とは対照的に、

弐号機の中で慌てているアスカ。

「ちょっと、なんで動かないのよ。」

「D型装備だからね、水中戦は無理だよ。」

「何のんきに言ってるのよ、これからどうするの?」

「どうしようもないよ。動かないんだから。」

「もう、役に立たないわね。」

 海に入ってから動かない弐号機を見つけて迫ってくる使徒。

「げっ、こっちに来た。」

 気付いた時には動けていても逃げ出せないような距離にまで詰められている弐号機。

その弐号機に向けて使徒は大きく口を開けて弐号機に噛み付いた。

「くぅっ。」

 噛み付かれた衝撃で顔を歪めるアスカ。

「こうなったら・・・」

「どうするの?」

「こんな半身になった奴に負けるなんて恥よ、無理矢理にでも口こじ開けて叩き潰してやるわ。」

「そんな、動かないんだから無理だよ。」

「動かすのよ、何としても。あんたにも協力してもらうからね。」

 言ってシンジにより強くレバーを握らせるアスカ。

そのためシンジはアスカにずいぶん近づく事になり、アスカと身体を密着させる事になる。

「いい、この口をこじ開ける事だけを考えるのよ、余計な事は考えないで。」

「余計な事って?」

「いいから、やるわよ。」

 レバーを力いっぱい引き始める二人。その考えもエヴァを動かし口をこじ開ける事に専念する。

(開け、開け、開け、開け、開け、開け!)

 二人の考えが重なった時、弐号機の四つの目が光り、使徒の口を大きくこじ開ける。

「ここぉ!!」

 その瞬間を逃さずアスカがプログナイフを使徒のコアに突きつける。

ナイフが十分な位置にまで突き刺さると一転して使徒の口から脱出する弐号機。

弐号機が逃げ出すと同時に閃光を上げて爆発する使徒。

その爆発で海上にまで吹き飛ばされた弐号機は、手近な艦に飛び乗るとその動きを止めた。

    ☆    ☆    ☆

 すさまじい速度で本部にたどり着いた加持。彼は迷うことなく司令室へと入ってきた。

「どうもどうも、なんとも危険な船旅でしたよ。」

 ゆっくりと中に入っていく加持。その先にはユイがいる。

「それで荷物は?」

「これです。硬化ベークライトで固めてはいますが、すでにここまで復元しています。

 間違いなく生きてますよ。」

 加持は持ってきたアタッシュケースを開いて見せる。

そこには人間の胎児のような生物がいる。

「人類の始まり、アダム。」

    ☆    ☆    ☆

「お疲れ様。」

 新横須賀に着いてすぐ、ミサトはリツコの迎えを受けた。

「ほーんと、疲れたわ。」

「疲れたのはこっちも同じだよ。」

 ミサトの後ろから付いてくる艦長と副艦長。

副艦長はずいぶんと厚い封筒に入った書類を持っている。

「我々の艦隊では戦力不足というのがよく分かりましたよ、こちらが書類です。」

「はい、どうもぉ。」

 ミサトが座席に座って書類を受け取ると、車が走り出した。

「はい、リツコ。」

「中身は?」

「シンクロ率のデータでしょ?」

 封を切って中身を確認するリツコ。その顔が突然険しくなる。

「・・・ミサト、あなた宛てよ、これ。」

 言うなり封筒をミサトに渡すリツコ。

「何よ・・・げっ!」

 ミサト宛てとして渡された封筒、その中身は請求書の山だった。

 

作者後書き

 

・・・きつかった。

今回はほんとにそれを実感しました。

思いついたオリジナルと、本編組み合わせてやってたら増える事増える事。

今どの辺りかチェックしたらTVの半分しかいってなかったり

サイズもこれまでで最高だし。

途中で切りたくなりましたよ、ホント。

でも切るわけにはいかないんですよね、この話は。

次回は本編中心になると思います。

難しいと思うな、あれをオリジナルにするのは・・・。

それでは今回の一言クエスチョンは、相田ケンスケ君です。

「撮影の方、ご苦労様でした。」

「いやー、趣味だからね、苦労なんてないよ。」

「それでディスクの方はユイさんに渡したんですか?」

「ちゃんと渡したよ、もちろんノーカットで。」

「で、反応は?」

「喜んでくれてたよ、色々と楽しいシーンがあったって。」

「それはよかったですね。それではまた次回。

         (後で渡しも見せてもらおっと。)」

 

 


(update 99/11/07)