エヴァ

■取り替えエヴァンゲリオン■

第9話「変わっていく日常(学校編)」

作・SHEROさま


 

「惣流・アスカ・ラングレーです、よろしく。」

 黒板にすらすらと自分の名前を書き、振り向く赤毛の少女。

シンジ達がアスカに再びあったのは翌日の事だった。

    ☆    ☆    ☆

 NERV本部の中、無精ひげをはやした男が廊下を飄々と歩いている。

 プシュッ。

「どうもどうも、お邪魔しますよ、碇司令。」

 司令室へ気安く入っていくのは加持リョウジである。

「どうしたの、加持君?」

「いえね、実は司令達が学校の教師を兼任しているとお聞きしましてね。」

「あら、誰から聞いたのかしら。」

「それは秘密ですよ。それでですね、実は俺もやってみたいと思うんですが何か空いてませんか。」

「そう・・・。」

 加持を見ながらユイは足元に隠してあるボタンを押す。

それとともに小さな赤いランプが足元で光った。

    ☆    ☆    ☆

「葛城一尉、碇司令から連絡が入っています。」

「私に?何かしら。」

 ヘッドホンを受け取り回線をつなぐミサト。

「はい、葛城です。」

 しかし、そこからは返事がなく、ただ人の声だけが聞こえてくる。

    ☆    ☆    ☆

 回線がつながり、足元のランプの色が青に変わったのを確認してユイは加持の方を見た。

「・・・・・・本当に中学校の教師として配属してほしいの?」

「ええ、お願いしますよ。」

「一応、希望を聞いておくけど何の教科がいいの?」

「そうですね・・・。出来れば女の子を担当できれば嬉しいんですけどね。」

「なら、ミサトちゃんの後任で、体育教師にでもする?

 前まで女子の体育やってたから女の子はたくさんいると思うけど?」

「いいですね、それも・・・」

「ならそうしましょ、ただし・・・ミサトちゃんが許したらね。」

「は?」

 加持の口が開くと同時に司令室の扉が開く。

そこには息を切らしながらも恐い顔をしたミサトが立っている。

「加〜持〜!教師やろうだなんて本気なの〜。」

 床を踏み抜きそうな勢いでズンズンと加持へ近づいていくミサト。

「か、葛城・・・・・・。(こりゃ、覚悟した方がいいかな)」

 加持が諦めて目をつぶると、胸に予想外の重みがかかった。

目を開けるとそこにはさっきまでの勢いはどこへやら、ミサトがすがりついていた。

「・・・うそよね、加持君は私を見捨てたりはしないわよね?」

 涙目になって加持を見つめるミサト。

「ど、どうしたんだ?葛城?」

「うぅ、実はマヤちゃん達が楽しそうに話をしているから、何かなって思ったら

 学校での事を話してるのよ。私は追い出された身だし、加われないからさみしいのよ。

 それにリツコに『飲みに行こう』って誘っても、『明日、学校に行くから』ってつれないしさ、

 副司令に相談しても私を出来の悪い生徒みたいに諭すし・・・。」

 話しながらだんだんうつむいていくミサト。

途中で話をきると顔を上げて加持の顔をじっと見つめる。

「ね、加持君は私の味方よね?私を見捨てて学校に行ったりしないわよね?」

 加持がミサトにすがりつかれ、困っている間にユイは書類をまとめて部屋を出て行こうとする。

「い、碇司令・・・。」

 部屋を出て行こうとするユイに助けを求める加持。

するとユイは笑顔で振り返る。

「加持君、ミサトちゃんが説得できたら学校に行ってもいいわよ〜。

 それじゃ私これから会議だから、じゃね〜。」

 そう言い残して部屋を出ていくユイ。

残された加持は、胸にすがりついて半泣き状態のミサトの肩を抱いたまま、途方に暮れていた。

(こりゃ諦めるしかないな・・・。)

 少し残念に思いながらも『これはこれでいいかな』と思う加持だった。

    ☆    ☆    ☆

「HELLO!グーテンモーゲン、シンジ。」

「グ、グーテンモーゲン・・・惣流・・・。」

 後ろから掛けられたアスカの声にどこか暗い顔で振り向くシンジ。

「はぁ〜、朝っぱらから暗いわね〜。このあたしが声を掛けてあげてるんだから

 もっと嬉しそうな顔しなさいよ。」

「そ、そんなこといわれても・・・」

「はぁ〜もういいわ。それで、噂のファーストチルドレンはどこ?」

「綾波の事?綾波なら、ほら。」

 エスカレーター脇のベンチには綾波レイが座って本を読んでいる。

 レイが読んでいる本の表紙には『一週間で出来る世界征服の基礎 入門編 成原成之著』とある。

「HELLO!あなたが噂のファーストチルドレン、綾波レイね。」

 アスカに声を掛けられても振り向きもせず、黙々と本を読むレイ。

 アスカは本を読み続けるレイに対して、自分の身体で本に影を落とす。

 本を読む事を邪魔されてレイはやっと顔を上げる。

「あたしは惣流・アスカ・ラングレー。仲良くしましょ。」

「命令があればそうするわ。」

 脇にある本を抱え校舎の方へと歩いていくレイ。

 ちなみにレイが抱えた本のタイトルは下記の通りである。

『一ヶ月で出来る世界征服 自由自在応用編』

『チャート式 世界征服の傾向と対策』

『七日で出来る世界創造』

 彼女がこれらの本を読んで何をしようというのか分かる人はいないだろう。

    ☆    ☆    ☆

「碇君、これまでの報告は確かに受け取った。」

 暗い部屋の中、浮かび上がった老人達がユイの方を見ていた。

「結果的に勝ってはいるものの、一歩間違えればどれも危険な状態ではないか。」

「しかも、それに伴い要求する予算も高額になっている。」

「今現在でも国が一つ傾くよ。」

「この状況を君はどう見ているのかね?」

 次々に自分の意見を言い、ユイを見る老人達。

「私たちNERVの仕事は使徒と戦い、それに勝つ事です。

 金銭の問題など考えている余裕はありませんわ。」

 ユイはその視線を気にもせず、笑顔を浮かべながら答える。

「初号機を君の息子に与えたそうだが、これは間違いではないのかね。

 戦闘結果を見ていても無駄があり過ぎる。」

「・・・ウチのシンジが頑張ったというのにそれを愚弄するんですか?」

 その言葉は先ほどと同じ笑顔で言われながらも、他人に与えるプレッシャーがまるで違う。

その場にいたら誰かは土下座したかもしれないだろう。

「い、いや(汗)。初めての実戦であれだけの結果が出せるとは立派だよ、うん。」

「き、今日の会議はこれまでとしよう(汗)。」

「キール議長、少しお待ちいただけますか?」

 ユイの待ての声にビクッとする一同。

「な、何だね。碇君(汗)。」

「・・・bO2、こちらの請求書の件ですが・・・。」

 その一言にほっとするほかの老人達。

「ん・・・ああ、昨日の艦隊の修理、被害に関する請求書だな。それがどうしたかね。」

 冷静を装うbO2。それに伴い、少し落ち着いてくる。

「報告によると海上における一切の権限はそちらにあるとあります。

 それならこの請求書もそちら行きではありませんか?」

「有事の際の権限はそちらにあるのだろう?ならNERV行きだよ。」

「手順通りこちらに権限が移っていたのであればそうですわね。

 しかし実際には、艦長指揮の元、艦隊戦で使徒を倒そうとした為、

 こちらは独自に動き、装備も不十分のまま戦闘を行なう事になりました。

 これはNERVへ権限を移さなかったが為に起こった被害だとは思いません?」

「そんな事は知らんよ。ともかくこれはNERVにまわすべき請求書だよ。」

「そうですか・・・。」

 ユイは残念そうに言ったあと、手元の資料を取り出し読み始めた。

「・・・シンディ・レノック、マリー・G・オンス・・・」

「(ビクッ)い、碇君?」

 ユイのあげた名前に驚くbO2。

「何か?・・・あ、請求書お受けいただく気になりました?」

「い、いや、ちがう。なんでもない。」

「そうですか。・・・・・・エリス・クォーツ、レイチェル・フォーリー・・・」

 再び残念そうに名前を読み上げるユイ。

「い、碇君、せ、請求書だが受けようじゃないか。」

「いえ、もういいですわ。・・・マリア・キリシマ、サティ・シーン・・・」

「せ、請求書の分の他に追加予算も出す。お願いだからやめてくれ。」

 ユイの読み上げる名前にとうとう痺れを切らして許しを請うbO2。

「何を言い出す、bO2。」

「・・・bO5、bO5と・・・あら、いけませんわね。」

「何がだね?」

「秘書の方に次々手を出されているというのは・・・」

「「「「「(ビクッ!!!!!)」」」」」

 この一言で会議に出席していた全員がユイの持っている書類が何であるか理解した。

ユイの持っている書類、それは老人達の愛人他、手を出した女性のリストである。

「い、碇君。私からも特別予算を進呈しようじゃないか。」

「私も出そう!」

「私もだ!」

 その場にいた全員から特別予算進呈の声を受けるユイ。

そしてユイは予定の何倍もの予算を獲得して司令室へと戻って行った。

その帰りの廊下では、ニコニコ顔のユイに冬月副司令がしてやったりという表情でユイと話をしていた。

「やったな、ユイ君。」

「ええ、冬月先生。これで職員皆に温泉旅行でもサービスしてあげましょう。」

「うむ、温泉か。いいな。」

「ええ、次の使徒が来た後にでも早速。先生、宿の方、職員分いいところ探しておいてくださいね。」

「うむ、まかせておきたまえ。」

二人とも上機嫌であった。 

    ☆    ☆    ☆

「毎度あり〜。」

 ケンスケから写真を受け取って立ち去っていく生徒。

その横でトウジはネガを太陽に透かしている。

「猫も杓子もアスカ、アスカか・・・。」

「そんなに売れてるの?」

 ケンスケの商売を横で見ながらシンジが聞く。

「ああ、今週中に三百枚越すんじゃないか?」

「そりゃ新記録やな。」

「アスカって人気あるんだ・・・。」

「あのルックスだからな、噂に登るのも早いし、男子の評判も高い。人気は出るよ。」

「写真にあの性格は出えへんからな・・・。」

「みんなに知れたら売り上げは減るかもな・・・。今のうちに稼いでおかないと」

「こっちのアルバムは何?」

 広げられた写真とは別に、アルバムがその脇に立てられている。

何があるのか延々気になっていたシンジが聞いてきた。

「ああ、今までに撮った写真だよ。後からここの事を知った奴の為に置いてあるんだ。見てもいいよ。」

「ありがとう。」

 ケンスケの許可がおりたので、早速アルバムを開けるシンジ。

そこには校内で人気の生徒達の写真が、大量に貼られていた。

 シンジはその写真を見ながらページをめくっていく。

「・・・・・・あ、マヤさんだ。」

 ページをめくっていてシンジが見つけた写真には、黒板の前で教科書を持っているマヤの姿があった。

「ああ、それか。伊吹先生が教卓に立っていた時の数少ない写真だよ。」

 写真を覗き込んで説明するケンスケ。さらにその上からトウジも覗き込んできた。

「ホンマ、もったいないなぁ。たまぁにある伊吹先生の授業は結構楽しみやったのに・・・。」

「赤木先生を見つけた途端、保険医になっちゃうんだもんなぁ・・・。」

「マヤさんってリツコさんを一番信頼してるみたいだからね。」

「ホンマもったいない。」

 本当に残念そうに呟くトウジの声を聞きながら、ページをめくるシンジ。

「・・・・・・リツコさんの白衣以外の姿ってあんまり無いんだね。」

「言われてみたらそうやな。ワシも白衣の他に見た事無いわ。」

「学校に朝一で来る時くらいしかないからね、白衣以外っていうのは。」

「でも白衣があった方がリツコさんらしいかも。」

 再びページをめくるシンジ。

「・・・・・・・・・・・・。」

「どうした、シンジ?ああ、碇先生か。」

「シンジが黙るのも無理ないわ、ほとんどピースして写っとるもんな。」

 シンジが開いたページにはユイの写真ばかり貼られていた。

だが、どの写真もピースサインをしている。

していないものといえば、何かしらのポーズを取っている物しかない。

「なあ、シンジ?お前のお袋さんって何者だよ。

 どれだけ隠し撮りしても必ずピースサインしてるんだ。

 さすがに諦めて本人了承で撮らせてもらったら、必ずポーズ付けてるし。」

「そうなんだ。」

「そうなんだって、シンジは見たこと無いんか?お袋さんの写真。」

「アルバムを見せてもらった事はあるけど、一人で写ってるのは全部ポーズ付けてるんだ。

 母さんが写ってる写真はそんなのばかりだよ。」

「そうか、残念だな。」

 うまく行けば、シンジから昔のユイの写真を持ってきてもらおうと

思っていたケンスケは残念そうにしている。

「シンジ、ちょい貸してんか。・・・・・・どうせやったらこれも見てみ。」

 シンジからアルバムを借りたトウジはぱらぱらとページをめくったあと、再びシンジに手渡した。

「・・・マヤさん居眠りしてるよ。」

 トウジから渡されたアルバムのページには、保健室の机でうつらうつらとしているマヤ、

うつぶせになって寝ているマヤ、はっと驚いた様子で起き上がっているマヤ。

辺りをきょろきょろと見回しているマヤが写っている。

「NERVの仕事がきついんじゃないか?たまに撮れるぞ。」

「マヤさんって結構頼りにされてるみたいだからね。」

 後にも何かないかとページをめくるシンジ。

「・・・どうしたの、これ?リツコさん真っ黒だけど・・・。」

 シンジが開いたページには理科室らしい黒板の前で、上半身が黒焦げになっているリツコが写っている。

「それは『理科室爆破未遂事件』の時のだな。」

「こん時はホンマにびっくりしたで。授業中に突然『ボンッ!』やもんな。」

「???」

 何があったのか分からないと首をかしげるシンジ。

「リツコ先生さ、俺達の授業中にNERV用の何かの実験をしてたらしいんだ。

 その時、薬品の量を間違ったらしくって『ボンッ!』。

 後には真っ黒のリツコ先生が出来たってわけさ。」

「あん時は黒髪のリツコ先生見たさに職員室にぎょーさん人が集まっとったわ。」

「・・・?トウジ、リツコさんって金髪だよ。」

「その時の薬のせいでさ、黒髪に戻ってたんだ。

 しばらくはいくら染めてみても金髪にならなかったらしいよ。写真はここ。」

ケンスケが指差したアルバムのページの端の方に確かに黒髪のリツコが写っている。

「(眉毛が黒なのってその薬のせいなのかな?)」

 そんな事を考えながらページをめくるシンジ。次の瞬間、シンジは見てはいけない物を見た気がした。

「ケンスケ・・・これって何かの間違いだよね?」

 不安そうなシンジの肩を『ポンッ』と叩きながらケンスケは首を振った。

「残念ながら、現実に起こった事だよ・・・。」

 シンジが見た写真には酒瓶を持ち、他の教師の肩を抱きながら

赤い顔で酒を飲んでいるミサトの姿があった。

「これさえなかったらミサトさんとまだまだ学校で会えたいうのに・・・。」

「シンジは聞いてないか?体育教官室でのドンチャン騒ぎ。これがその現場だよ。」

 ユイから話を聞いていたシンジだがその姿は予想を越えていた。

写真に写っているのは飲み過ぎで倒れた教師数名。

どこから持ち込んだのか分からないほどのビールの空缶と空き瓶、日本酒の瓶。

そして取り押さえようとした教師相手に無理矢理酒を飲ませたり、暴れたりしているミサトの姿だった。

「こん時は学校の先生では取り押さえられへんかったからな。」

「NERVからリツコ先生と碇先生が来てやっと取り押さえて行ったんだよな。」

 どこか遠い目をして語るトウジとケンスケ。

それを見てシンジはその時のすごさをなんとなく感じ取った。

「そうなんだ・・・・・・。」

家での状況を思いだし同じく遠い目をするシンジ。

その後、三人は休み時間終了のチャイムが鳴るまでそのままだった。

    ☆    ☆    ☆

 体育の時間、シンジ達は男女共にソフトボールを行なっていた。

「アスカー、しっかりー。」

 クラスの女子からアスカへ声援が送られる。

わずか数日にしてアスカの才色兼備ぶりは学校中に知れ渡っているのである。

(ホント、アスカってすごいなあ。)

 ライトのポジションから女子のバッターボックスを見てシンジはそう思った。

アスカは打ち気満々でバッターボックスに立っている。

 キンッ!

「シンジー、いったでー。」

 トウジの声で前を向くシンジ。ボールはシンジの頭を越えていく程度に上にあがっている。

「オーライ、オーライ。」

 ボールを見ながら後ろへ下がり、落下点へと着くシンジ。

「碇君、危ない!」

 ゴッ!

 女子の方からの声に振り向こうとしたシンジの横顔に、ボールが食い込む。

追い討ちを掛けるように上からさっきまで追っていたボールが落ちる。

 ドッ!

二つの打球を受け、倒れ込むシンジ。

「碇!」

「碇君!」

 あまりの事に試合を中断して集まる生徒達。

シンジの周りを囲む生徒達の中、ケンスケが冷静にシンジの状態をチェックする。

「うーん、どうも脳震盪起こしてるな。」

「うそ、あれぐらいで?」

 ケンスケの見立てに納得が行かないようにアスカが声を上げる。

「当たり所が両方頭だからね、しかも二連続。」

「それがなんだっていうのよ?それにあんた、ホントにそんな事分かるの?」

「趣味で色々やってるからね。少しは分かるよ。」

「話はあとよ、保健室に連れてかなきゃ。」

「委員長の言う通りや、ケンスケ、手伝え。」

「はいはいっと。」

 シンジを運ぼうとするトウジを手伝うケンスケ。

「あたしもついていくわ。」

「・・・・・・あたしもいくわよ。」

 トウジ達の後ろから声を掛けたヒカリと、それに続いて言うアスカ。

そうしてお決まりのメンバーとなって保健室へと向かうアスカ達。

 この時レイはいずこかへと向かって歩いていた。

    ☆    ☆    ☆

 トウジとケンスケの手によって保健室へと運ばれてきたシンジ。

保健室の前まで来ると、手が塞がった二人に変わってヒカリが保健室の扉を開けた。

「失礼しま・・・!!!」

 ヒカリが扉を開けた瞬間、そこにいた全員が驚きの表情で固まった。

扉の向こう、保健室ではリツコと女子生徒とのキスシーンが繰り広げられていた。

「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」

 扉を開けたまま、何も言えずにいるアスカ達。

その視線にいち早く気付いた女子生徒は顔を真っ赤にすると慌てて保健室を飛び出して行った。

「し、失礼します!」

 女子生徒が離れた事でやっとアスカ達に気付くリツコ。

「ふ・・・・・・不潔よぉぉぉ!!!」

 絶叫を上げながら廊下を走り出すヒカリ。

「はっ!行きなさい!ラウール!」

 ヒカリのとった行動にすぐさま反応するリツコ。

その指示と共にどこからか飛び出したロープが廊下を走っているヒカリを追いかけ捕まえる。

 そしてヒカリをぐるぐる巻きにし、声も出せないようにすると

ロープは暴れるヒカリを引きずって保健室の中へと戻ってきた。

 リツコはそれを見届けると入り口で固まっていたアスカ達も保健室に入れ、後ろ手に扉を閉める。

「・・・あなた達・・・・・・見てしまったのね・・・。

 可哀相だけど・・・・・・。」

 不気味な雰囲気を漂わせながら近づいてくるリツコにあとずさる三人。

「い、言いません、誰にも言いませんから命だけはお助けを・・・。」

 泣きそうな顔をして言うケンスケ。トウジ、アスカ、ヒカリもウンウンとうなづいている。

「・・・冗談よ。それより何の用?」

「あ、あの、シンジが脳震盪起こして倒れたんで運んできたんです。」

 説明をするトウジだがどこか声が震えている。

「脳震盪?・・・取り合えずそこのベッドに寝かせて。」

 寝かせられたシンジの様子を見るリツコ。

その後ろでアスカがヒカリに巻きついたロープを取ろうとしているが、全然ほどけない。

「・・・この程度なら大丈夫よ。NERVで再検査はしなきゃいけないけど。

 ・・・・・・何してるの、アスカ?」

 ヒカリに巻きついたロープに悪戦苦闘しているアスカ。

どちらかといえばほどいた先から、また巻き付かれているので遊ばれているようにも見える。

「ちょっとリツコ、何よこのロープは?」

「猫人格を移植したロープでラウールって言うの。他にも色々と実験中よ。

 ・・・そんな事よりあなた達・・・・・・さっきの事誰かに言ったら・・・。」

 リツコの表情と雰囲気に再びビクッとなるアスカ達。

「い、言いません。そ、それじゃ僕たちこれで失礼します。」

 リツコから逃げるように保健室を出て行くケンスケとトウジ。

「あ、あんた達待ちなさいよ。」

 それを見てアスカも後を追いかける。

「・・・・・・・・・。」

 保健室に残ったのはリツコと脳震盪で倒れているシンジ。

そして忘れられてしまったヒカリである。

「ふふふ・・・洞木さん、さっきは突然飛び出すからびっくりしたわよ。

 ・・・・・・不潔って言ってたわよね・・・それがどういう事か今から教えてあげるわ。

 ・・・ゆっくり可愛がってあげるわよ。」

「むぅ〜〜っ!!!」

 縛られた身体で何とかあとずさるヒカリ。

それを楽しむかのようにゆっくりとヒカリに近づいていくリツコ。

「あ〜〜〜っ!!ヒカリ置いてきちゃった。」

 保健室から離れた所でヒカリの事を思い出し、慌てて保健室へと走っていくアスカ。

 ガラッ!

 扉を勢いよく開け、ヒカリを入り口まで引きずるアスカ。

「はぁはぁはぁ、・・・・・・失礼しました!」

 ピシャッ!

ヒカリを連れてアスカが出て行ったあと、リツコは楽しそうに笑っていた。

「ヒカリ、大丈夫?」

 廊下でヒカリに巻きついたロープをほどきながらアスカがヒカリに聞く。

ロープは今度はさっきまでの抵抗が嘘のようにあっさりほどけ、するすると保健室へと帰って行った。

「アスカ〜、怖かったよ〜。」

「ごめんね、ヒカリ。」

 アスカに抱き着くヒカリと、それを抱きしめるアスカ。

「いや〜んな感じ。」

 様子を見に戻ったケンスケはそれを見てそんな事を言った。

    ☆    ☆    ☆

 一方、保健室の窓の外では。

「・・・・・・任務完了。」

 デジカメを手にしたレイが立っていた。

 

作者後書き

 

まず最初にごめんなさい。

本編中心になるはずが学園物を入れられる数少ないチャンスと知り、

急遽オリジナル中心となりました。

どちらかといえばパロディかもしれませんが楽しんでくれれば幸いです。

今回は特別編、バラシにて赤木リツコ博士に再び登場願います。

    ピック「どうも、バラシにてやっと名前をもらったピックです。

        今回は本作での設定に、本人を交えてばらそうと思います。」

    リツコ「それで私が呼ばれたの?」

    ピック「はい、なんせ作者が3話書いてる時から迷ってたリツコさんの設定ですから。」

    リツコ「どうして上のようになったのか、説明してもらえるかしら?」

    ピック「もちろんです。まずは本編でのゲンドウとリツコさんの関係です。

        ユイさんと交換しても、関係はそのままかなと

        考えている所から始まりました。」

    リツコ「つまり、碇司令との関係の設定からこうなったと。

        そうすると司令もそうなの?」

    ピック「それはまだ考えているそうです。リクエストがあったらメールをください、

        だそうです。」

    リツコ「いいかげんね、それで決めた理由は。」

    ピック「リツコさんの出番が欲しかったらしいですよ。

        某所の作品読んで、作者結構気に入ってるらしいですから。」

    リツコ「その扱いがこれな訳?」

    ピック「笑いが取りたいそうですよ、まず第一に。」

    リツコ「・・・それで後はなにかある?」

    ピック「いえ、今回は取り合えずこれぐらいですけど・・・どうしてです?」

    リツコ「作者に一服盛りに行くのよ、あなたも来る?」

    ピック「はい。どうなるかな?どうなるかな?(ワクワク)」

・・・・・・・・・・・・(汗)。

リツコさんが来る前に私は逃亡しようと思います。

それでは、また次回に。

 

 


(update 99/12/19)