エヴァ

■悪夢■

-21-

作・すとらとさま


 

 

                    第一部最終話 

「・・・ううぅ・・・グスン・・・ヒック・・・も・・・う・・・虐めないで・・・。・・・お願い・・・お願いします・・・」

アスカは拘束されて物のように床に横たわったまま、ただしゃくり上げ啜り泣きながらそう呟き続けていた。僕は呆然として、床に膝を付いたままそのアスカの姿を見下ろしていた。

(あの気が強い、プライドの高いアスカがこんなになるなんて・・・)

僕は驚きを隠しきれない思いでアスカを見つめていた。

やはり、年長者で有り、真性のマゾヒストでも有り、調教を実際にその躯で受けてきたマヤさんの方が、この美少女を調教するという事に関しては、僕よりも一枚も二枚も上手だということが明らかだという事実を見せ付けられた思いだった。

アスカをイかせた事によって、僕の嗜虐欲はほぼ満足していたが、まだ足りなかった。僕は完璧にこの勝ち気な美少女を屈服させたかった。その想いは、アスカを絶頂に導くまで狂ったように燃え盛っていた加虐の炎が、いまだ完全燃焼しきれずに、それが熾き火のように燻り続けている、とでも表現したら良いような感覚だった。

僕はバイブレーターをアスカの蜜肉に突き立てたまま放置して、アスカの漏らした小水によって濡れた右手をアスカの口元に持ってゆくと、彼女に命じた。

「汚いなぁ。アスカ、アスカのお漏らししたオシッコが僕の手にかかっちゃったじゃないか。アスカが自分で綺麗にするんだよ。そのお口でね」

汚いなどというのはただの方便で、アスカの漏らした小水だったら僕が自ら舐めてしゃぶりたい位に愛おしかったが、そう言う事によってアスカを完璧に陥れたいという嗜虐の残滓が言わせた台詞だった。

「・・・ヒック・・・ううぅ・・・グスン・・・ごめんなさい、ご主人様・・・ごめんなさい・・・」

瞳を閉じて涙を零し続けながら啜り泣いていたアスカは、ゆっくりと悲しげにほの赤く充血した瞳を開いてそう言うと、憔悴しきった様子で僅かに躊躇いながらも僕の右手の指を咥えてしゃぶり始めた。その姿は、正に牝奴隷そのものだった。

(これが・・・これが僕の求めていたアスカの姿そのものなのか?・・・)

ちゅばっ、ちゅっ、ちゅむっ・・・。

アスカは最早最初の躊躇いなど忘れてしまったかの様子で、僕の指を一本一本舐めしゃぶり、清めている。彼女のルージュなどひいていないのに薔薇色に艶めく、やや上唇よりも下唇の方がふっくりとした、極上の美を呈している口唇の内部粘膜に包まれて、のびやかに育つ美少女らしい健康的な淡いピンクの舌で舐められて、その温かな体温と蕩(とろ)けるような感触に酔いしれながらも、僕はどこか心に引っかかる『モノ』を、違和感とでも表現したら良い『モノ』を感じ初めていた。

「もう良いよ、アスカ。それじゃあ今すぐバイブを抜いて上げるからね」

一通り利き手の指を舐め清めさせた後、僕はそう言って名残惜しくアスカの口腔から手を退くと、唾液がツーッと糸を引いて彼女の唇と僕の指との間に銀色の橋を架けた。

ブーン・・・。

僕はその後、アスカのふやけて湯気が立つ程にグッショリと濡れそぼった膣肉から、尻の返分だけを突き出していまだに無機的にくねり震え続けているバイブレーターに手を遣ると、ゆっくりとそれを引き抜いていった。

ヌチョッ、ズポッ・・・。

湿った音を立ててバイブが引き抜かれると、アスカの媚肉は恍惚による充血で、淡いピンク色だった秘唇全体が艶やかなサーモンピンクに染まって見えた。

責めを受ける前には、少女の未成熟な肉体をそのまま体現するかのように、ひっそりと慎ましやかに口を閉じていた肉唇は捲り上がって、膣孔の部分がパックリと口を開いて内部の鮮紅色の粘膜の肉色を覗かせていた。そして、その直ぐ下の肉の小菊も、アナルビーズによって責められた名残でぷっくりと捲れ上がり、直腸粘膜の鮮やかなピンク色を僕の眼前に曝していて、その姿は淫裂の様子と共に痛々しく見えた。

多量の攪拌されたことによって白濁した、粘度の高いホワイトクリームがむちむちと張り詰めた尻たぶに至るまで垂れていて、僕が手に持った淫具にも纏わり付き、ヌラヌラと濡れて光っていた。

僕は玩具のスイッチを切り、足元に置くと、マヤさんの手で拘束されたアスカの身体を解放しようと縄に手を掛けた。

「ご主人様、遅くなって申し訳有りませんでした」

僕がアスカの体を拘束している縄に手を掛けた所で、丁度マヤさんがバスルームから戻ってくるとそう言った。マヤさんの手には乾いたタオルと、ハサミが握られていた。

「アスカちゃん、あなた本当に世話を焼かせてくれるわねぇ。今から縄と釣り糸をほどいて上げるから、体が自由になったら自分の手であなたのオシッコの後始末をしなさい」

マヤさんはそう言うと、アスカの背後に回り込み、彼女の上半身を起こしてやると、手際良くアスカの身体の拘束を解いていった。

流石に縄の扱いには長けているなと僕が感心して見ていると、あっと言う間にアスカの体に掛けられていた縄は全て解かれた。そして、両の乳首とクリットを結び付けているナイロンの糸にハサミを入れると、それを切ってアスカを苦しめていた戒めを全て解いた。

愉悦の嵐の余韻の為に勃起しきっている両の乳頭と、屹立して普段より一回り以上大きくなって包皮から露出しきっている肉の若芽は、つい今し方まできつく縛られていた為に鬱血していて、普段の淡いピンク色に比べると白っぽくなっているのが分かった。

縄掛けされてくびり出されていた、その年齢の少女にしては発育の良い、つんっと乳首の部分が上を向いている形の良い双乳の上下と、両の手首と腿とふくらはぎには、縄の痕が透けるような白磁の肌の上にくっきりと赤く残っていて、その様子は乳頭とクリットの様子と相まって痛々しかった。

「さあ、淫乱な牝奴隷のアスカちゃん。このタオルを使ってカーペットを綺麗にしなさい」

マヤさんにそう命じられて、アスカはよろよろと体を起こすと、マヤさんの手からタオルを受け取って四つん這いになり、自らが濡らしたカーペットのシミを拭い始めた。その姿は正に堕ちきった牝奴隷そのものだ。その姿を見て、僕の中の違和感は更に高まっていった。

「ああ、臭い。本当にこの牝奴隷のオシッコは臭いわねぇ。エアコンを最強にしなきゃ」

マヤさんはそう言って、必死になって床を拭っているアスカを詰(なじ)る。彼女はそれを聞いてまた啜り泣きながら呟くように言った。

「・・・グスン・・・スンッ・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

アスカは最早羞恥心など忘れてしまったかのように、お尻を突き出し、犬這いになって床を拭っている。丁度僕の跪いている位置から見てみると、アスカのふっくりとした愛蜜にぬめ光る肉饅頭を、秘裂がさっくりと割っているように見え、その上の放射状の細皺が刻まれた菊門も丸見えだった。

マヤさんはその腋に立っていて彼女を見下ろしていたが、ふと気が付いたように嬉しそうな表情を浮かべると、右足でアスカのお腹の部分を蹴り上げた。

ドスッ!

「ぐはっ!」

アスカは苦しげな呻き声を上げると、その涙で充血した大きな瞳からぽろぽろとまた新たな涙を零しながら、オドオドとした表情でマヤさんを見上げた。その顔からは、もう何時もの勝ち気さは全く消え失せていた。

「ほらっ、もっと気を入れて拭きなさい。本当に愚図なんだから」

マヤさんにそう叱責されて、アスカは泣き濡れた瞳の視線をまた床に戻すと、床のシミを拭い始めた。マヤさんはこの美少女をここまで堕しめてもまだ満足していないのかと思うと、僕は空恐ろしくさえ感じて黙ってその様子を見ていた。

アスカは犬這いになって床を拭っているのだが、その姿勢にも関わらず、豊かな胸乳は重力に逆らうがごとく全く型崩れしていない。それに、引き締まった腹から腰、脚に至るラインは見る者全てを必ず惹き付けずにはおかない位に素晴らしい。先程から感じていた違和感と共に、僕は場違いにもその美しい肢体に魅入られてもいた。

マヤさんはテーブルの上に放置されていた乗馬鞭を手に取ると、ソレをキリリッ、としならせながらアスカに向かって言った。

「ほらっ、早くなさい!カーペットに染み込んじゃうじゃあないの!拭き残しが有ったりしたらこの鞭で叩きのめして上げるからね。分かった?」

マヤさんにそう言われて、アスカは脅えきった表情でマヤさんの顔とその手に持たれた鞭を交互に見るやると、必死になって床を拭いだした。その姿は哀れだった。

アスカのなよやかな、無駄な贅肉が付いていない為に鎖骨が浮き出て見える細い肩は、脅えきっている為に更にか細く見えた。手から先だけがタオルを握り締めたまま、忙しなく床のシミの上を行き来している。それでも、既に時間が経ってカーペットに染み込んでしまった尿水は、なかなか綺麗には拭き取ることが出来ない。

「この愚図っ!」

マヤさんはそう言うと、鞭を容赦なく渾身の力を込めてアスカの右の尻たぶ目掛けて振り下ろした。

ヒュンッ、パシインッ!

「あひいぃっ!!」

アスカは悲鳴を上げると、ビクンッと背中をのけ反らせた。

彼女の悲鳴が、僕の心を切り裂くように響く。

アスカの羞恥と恍惚で上気して朱に染まっている、ぷりぷりと弾けそうな若々しい弾力を秘めた尻肉に、鞭打たれた赤い痕がくっきりと残った。

「あうぅ・・・ごめんなさい・・・グスッ・・・ごめんなさい・・・」

彼女は萎れきった様子で鼻を鳴らしながらそう言うと、無我夢中になって床のシミをまた拭い始めた。何時もは明るい輝きを放つその瞳が涙に濡れ、眉の端がさがって、おどおどとした印象を与える。日頃の勝ち気な表情が消えて、いかにもせつなげな、まるで捨てられた子猫のような風情だった。その姿の哀れさ、惨めさが、僕の中にまだ残っていた『アスカを守りたい』という物心ついた頃から持ち続けていた、最早本能的とも言える気持ちを目覚めさせた。

「ほらほらっ!早くなさい!本当に愚図な奴隷ね!」

マヤさんは嬉しそうにそう言うと、また鞭を、今度は彼女の左の臀丘に力一杯叩きつけた。

ヒュンッ、パアアンッ!

「ひぎいぃっ!!」

アスカは叫び声を上げると、もう床を拭うことを完全におろそかにして、ただ犬這いのまま身体を縮み込ませて、ガタガタと震えながらマヤさんの手に持たれた鞭を、涙で潤み、脅えきった瞳で見つめているだけだ。その彼女目掛けて、マヤさんは更にもう一撃しようと鞭を振り下ろした。

ヒュッ、ビシッ!

「ぐあっ!!」

マヤさんの振るった鞭は、咄嗟にアスカを庇おうとしてアスカの裸身の上に覆い被さった僕の背中に、鈍い音を立てて当たった。焼け付くような痛みが背筋を走った。

「シンジっ!!」

アスカは自分の裸体の上に、抱き付くような格好で彼女を守った僕に向かって言った。

「シンジッ!大丈夫っ?!シンジッ!」

鞭打たれる痛みをイヤと言うほどその骨身に叩き込まれているアスカは、僕を気遣って声を上げた。彼女の僕を呼ぶ呼び名は、『ご主人様』から、幼い頃から慣れ親しんだ、『シンジ』へとごく自然に変わっていた。

僕は痛みを堪えながら、「大丈夫だよ、アスカ」と言って彼女の瞳を見て少々無理をして微笑むと、マヤさんの方に顔を向けた。

つい先程まで加虐の宴に加担していたというのに、矛盾してはいるが、僕はアスカがこれ以上虐待を受けるのを見ていられないと感じる想いが膨れ上がり、限界に達して、僕は耐えきれずに叫ぶように言った。

「マヤさん、アスカが可哀想だよっ!もうこれ以上虐めないで上げてよっ!」

マヤさんは身を挺して彼女を守った僕のことを、呆気にとられた顔で見ていたが、僕の台詞を聞いていかにも心外だという表情を浮かべて僕の眼を見た。そして、逆に僕に対してこう尋ねてきた。

「ご主人様、わたしにはご主人様の考えていることが理解出来ません。ご主人様はこの子をいったいどうなさるおつもりですか?完璧な牝奴隷に仕立て上げることが、わたしたちの共通の目的だったはずじゃあなかったんですか?それに、だからこそご主人様も調教に加担していたんじゃあないですか?」

マヤさんのその台詞を聞いて、僕は返す言葉を失った。確かに、アスカを完璧な牝奴隷に仕立て上げることがこの旅行の本来の目的だった事は事実だった。その上、僕はアスカに対してつい先程まで非道な行いをしていた。それは紛れもない事実だった。

僕は少しの間考え込んだ後、こう答えた。

「マヤさん、確かにマヤさんにとってはそれがこの旅行の目的だったかもしれないけれど、僕は最初はそれに反対していたじゃあないか」

僕はそう言った後、立ち上がってソファーまで歩いていって座ると、マヤさんに向かって言った。

「マヤさん、僕は今正直言ってかなり混乱しているんだ。マヤさんもそんな物騒なモノは置いて、僕のことをご主人様なんて言うのもやめて、少し僕の話しに付き合ってくれませんか?」

それは一度調教を止めて、マヤさんと話し合いたいという僕の意志表示だった。僕には考える時間が必要だと思ったからだ。

マヤさんは憎々しげにアスカを一瞥すると、テーブルの上に棒鞭を置いて、僕の隣にゆっくりと座った。

「アスカちゃんは床掃除を続けていなさい」

もしも神が存在するなら、その神はこの少女だけを特別に贔屓(ひいき)して、その手に持ったノミを細心の注意をはらって振るったに違いないと思われるような、美しい全裸体を惜しげもなく晒して、何やら不安とこの責め苦から解放されるかもしれないという期待の入り混じったような、複雑な表情を浮かべて僕たちを見ていたアスカは、マヤさんに冷たい射線を向けられてそう命じられると、「ひっ!」と小さな声を上げてまた床を清め始めた。その姿は、僕に脅えた小動物を連想させた。僕はそれが不快だった。

「マヤさん、僕にはマヤさんがなぜここまでひどくアスカのことを虐べるのか分からないよ。もうアスカの躯は僕無しではいられないくらいに調教されきっていると思うんだけれど、これ以上彼女を虐めていったいどうしようっていうの?」

それは率直な僕の疑問だった。僕の眼から見れば、アスカの躯はもう僕無しではいられない状態にまで調教され、その調教は成功しているかように見えるのに、何故マヤさんがこれ以上彼女を虐待するのかが本当に僕には理解出来なかったのだ。

マヤさんはせっせと床を拭い続けているアスカの事をチラリと見やると、視線を自分の両膝の上に置かれた手に戻して、僅かに俯いたまま沈黙していた。

「・・・」

「どうしてなの?答えてよ、マヤさん」

僕がそう問い掛けても、マヤさんはいかにも育ちのよい大人の女性らしく姿勢良く座っていて、綺麗に爪の整えられた両手を膝の上に置いて沈黙し続けていた。

「・・・」

「なぜなの?ねえ、答えてよ、マヤさん」

僕がそう言うと、マヤさんは一方の手をいきなり僕の股間に伸ばして、半ズボンとパンツの上から、僕のあれ程の回数射精した後にも関わらず、アスカの痴態に浅ましく勃起している肉欲の棒を掴んで言った。

「シンジ君、確かにわたしたち”女”は男性の”コレ”に支配される生き物よ」

マヤさんはそう言った後、真っ正面から僕の眼を見据えながら続けた。

「シンジ君、わたしはずっと男性に不信感をいだいていたの。だから大学を卒業して先輩と同じ職場になって、先輩の腰に付けたディルドーで処女を失うまで、ずっとバージンだったの。23歳までずっとよ。今時めずらしい女でしょう?」

マヤさんはそう言うと、自嘲するように僅かに微笑んだ。

「シンジ君と暮らすようになってから、シンジ君の優しさに触れて、ううん、あの時は先輩とケンカして、たまたま自暴自棄になっていたのかもしれないけれど、とにかく始めて男の人に抱かれて、それがわたしには思いもよらずたまらなく心地良かったの。それから何度もシンジ君に抱かれてようやく気付いたの。これが女の幸せなんだってね」

と、そこで一区切りしてからマヤさんは続けた。

「あの時、シンジ君とアスカちゃんがキスしている場面を目にして、わたしは正直嫉妬に狂ったわ。その時決めたの。この子を必ずわたしと同じ牝奴隷にしてやろうって」

僕は少し躊躇した後、ずっと以前から感じていたことを正直に言った。

「僕はマヤさんを抱いていた時、マヤさんを単なる性欲処理のために抱いていた訳じゃあないよ。僕はマヤさんのことを牝奴隷だと思ったことは、この別荘に来るまで一度もなかった。マヤさんに求められて鞭を振るったり、大人のオモチャでマヤさんを責めたりしていたけれど、その時も何かが違うっていつも思い続けていたんだ」

僕がそう言うと、マヤさんはどこか寂しげな表情を浮かべて言った。

「シンジ君、わたしは先輩の手で真性のマゾヒストになる悦びを知ったわ。わたしの躯はもう普通のセックスじゃあ物足りなくなってしまうくらいにシンジ君に抱かれるころにはなっていたの」

僕たちの間に、暫しの間沈黙が訪れた。部屋にはアスカがカーペットを拭う音だけが響いていた。

最初に沈黙を破ったのは僕の方だった。僕は言った。

「正直、僕はマヤさんに憧れていたんだと思う。とっても清潔感が有って、頭も良くて、こんな僕にも優しくしてくれたし。マヤさんは誰の眼から見ても魅力的な女の人だよ。そんなマヤさんがマゾだったっていう事実はものすごく僕を興奮させてくれた。だから僕はアスカに対して『裏切っている』っていう気持ちを感じながらも、マヤさんとセックスすることを止めることが出来なかった・・・」

アスカはごしごしと床を拭い続けている手を一瞬だけ、びくり、と止めた。

「マヤさんはなぜそんなにアスカに嫉妬するの?それが分からないよ」

マヤさんは僕のその台詞を聞いて、信じられないというような呆気にとられた顔をして言った。

「シンジ君、あなたそんなことも分からずにいたの?」

「うん。僕には分からないよ」

マヤさんは俯いて、両膝に置いた両手を碁つめながら言った。

「シンジ君、あなたアスカちゃんに対してもそうだけれど、本当に鈍感なのね」

「僕が・・・鈍感?」

「そうよ。わたしはシンジ君に先輩に代わるご主人様になって欲しかったの。なぜだか分かる?」

僕は黙ったまま首を横に振った。マヤさんは、ちら、と僕を見やると、ふっと溜息をついた後、僕の眼を正面から見て言った。

「わたしたち牝奴隷にとって、ご主人様に対してこの台詞を言うことはタブーだけれど、あえて言うわ。それはね、わたしがシンジ君のことを好きになってしまったからよ」

マヤさんの瞳は、真剣そのものだった。自分より十歳も年下の、まだ彼女から見れば『男の子』と呼んだ方が良い僕に対して、マヤさんは心から『好き』だと言ってくれているのだ。僕は戸惑った。

「シンジ君は気付いていないかもしれないけれど、シンジ君はとっても魅力的な男の子よ。ルックスだって女性の母性本能をくすぐらずにいられないほど可愛いし、性格だって誰に対してもわけへだてなく優しいし。それに、何よりもこのオチンチンが魅力的よ。すごく大きくて、太くて、逞しくて素敵よ。シンジ君はもっと自分の魅力に気付くべきよ。あなたは女性を支配することができる資質をもって生まれているのよ」

マヤさんは僕の眼を見据えながら、そう続けた後、僕の欲棒を握る手に、ギュッと力を込めた。

僕はマヤさんの黒い瞳を見続けることが出来ずに、視線を逸らすと言った。

「僕にそんな魅力があるなんて、とても思えないけれど、マヤさんの気持ちはとても嬉しい。でも、でも・・・」

僕が言い淀んでいると、マヤさんは僕の股間から手を退けて続けた。

「お願い、シンジ君。わたしのご主人様になって。シンジ君が望むなら、いつだって好きなときに、どんなプレイにだって耐えてあげる自信は有るわ。アスカちゃんなんて、考えつきもしない素敵なこと、気持ちの良いことを毎日してあげるから・・・」

それは甘美な誘いだった。憧れてすらいたマヤさん程の清楚な美女と完璧なSとMとして主従関係を結ぶことは、堪えられない程刺激的な毎日を僕にもたらすことだろう。

「・・・」

僕は無言のまま、暫くの間、考え続けていた。

アスカは何時の間にか床掃除を止めて、僕たちの会話に聞き入っている。

「ねえ、お願い、シンジ君。わたしの理想のご主人様になって。そしてハッキリとアスカちゃんよりもわたしの方が優れた牝奴隷だって認めてちょうだい。お願いよ、シンジ君・・・」

しかし僕は、結局その誘いを断ることにした。僕にはアスカが居た。何よりも彼女の存在が、幼い頃から築き上げてきた二人の”絆”の方が、僕にとってはマヤさんの魅惑的な肉体よりもかけがえもなく大切だと思ったからだ。

僕は振り絞るようにして言った。

「・・・悪いけれど、僕はマヤさんの気持ちには答えられない」

僕はそう言い切ると、アスカの顔を見てからマヤさんに視線を戻して続けた。

「僕にはアスカがいる。今までさんざんマヤさんを抱いておいて、マヤさんに対してもアスカに対しても、どう謝っても償いきれないことをしたのは分かっている。けれど、僕にとってはマヤさんよりもアスカの方が大切なんだ。やっと今、その気持ちに気が付いたんだ。ごめんなさい、マヤさん・・・」

僕はそう言った後、もう一度アスカの方を見た。すると彼女は、そのサファイアのような碧い瞳一杯に涙をたたえて、潤んだ瞳で僕を見ていた。

「シンジ・・・」

アスカは感極まった声で僕の名を呼んだ。

まるでそこだけ花が咲いたのかと錯覚を抱かせるような、アスカの嬉しそうな表情を見て、僕は自分が選んだ答えが間違ってはいなかった事を確信した。

僕はマヤさんに視線を戻すと、マヤさんの表情を窺った。彼女は暗い瞳で自分の両手の指を、一本一本確認するように見入っていた。そして、ふと顔を上げて僕の眼を見て言った。

「・・・やっぱり駄目なのね・・・。アスカちゃんがいるかぎり、シンジ君は決してわたしを選んではくれないのね・・・」

マヤさんの黒目がちな、美しい瞳は、悲しみの涙で潤んでいた。

「ごめんなさい、マヤさん。本当にごめんなさい・・・」

僕がそう言うと、マヤさんは右手で瞳に浮かんだ涙の粒を拭い、思い詰めた顔をして言った。

「わかったわ、シンジ君。もう調教は止めにしましょう」

マヤさんはそう言った後、アスカの方に向き直って言った。

「アスカちゃん、もう調教は終わりよ。すこし早いけれど、家まで送っていってあげるから、シャワーを浴びて帰る支度をなさい」

マヤさんのその台詞を聞いて、アスカはいそいそとタオルを持ったまま立ち上がると、これ以上無い位の輝くような笑顔を浮かべて、急に羞恥心を思い出したかのように両手で胸と股間を隠しながら言った。

「・・・ありがとう、シンジ・・・」

僕はその言葉を聞いて、僕に出来る精一杯の笑顔で答えた。

「うん。さあ、アスカ。早くシャワーを浴びておいで。もう誰もアスカを虐めたりなんかしないから」

アスカは、こくり、と頷くと、小走りにバスルームの扉を開けて中に入っていった。

バスルームからアスカがシャワーを浴びる水音が聞こえ始めると、マヤさんは暗い瞳をしたまま立ち上がって、自分の部屋へと帰る準備をする為に歩み去っていった。

 

ミーン、ミンミンミーン・・・。

結局、僕たち三人が帰り支度を終えたのは、午後4時前だった。僕たちが別荘の外へ出ると、まだ真夏の日は高く、じりじりと庭に照りつけていた。

マヤさんは僕とアスカが屋外へ出ると、玄関の扉の鍵を掛けて、キーレスエントリーキーで車のドアのロックを外し、エンジンをかけると、運転席に乗り込み、エアコンを最強にしてからトランクを開けて言った。

「大きい荷物はトランクの中に入れてね。車の中が涼しくなるまで、少しこのまま待っていましょう」

アスカは何とも言えない、複雑な表情で立ったまま別荘を眺めていた。彼女は、今更ながら美しかった。

クリーム色の大胆に胸元まで肌の露出した短めのノースリーブのワンピースに、青い首飾りを巻き、洗いたてでサラサラの栗色の髪を夏の風になびかせているその立ち姿は、夏の木々の深緑とその透けるように白い肌とが素晴らしい対比でコントラストを描いていて、まるで才能有る画家が描いた一枚の絵画のようだった。

この何処までも青い空の下、彼女の長い睫に縁取られたかけがえのない、澄みきった美しい泉を思わせるような大きな碧い瞳は、複雑な色を湛(たた)えて、自分が五日間の間調教を受け続けてきた建物を見つめていた。

何とも表現しずらいが、彼女はこの五日間で、確実に変貌を遂げていた。

一見すると、アスカの姿は、調教を受ける前の純真無垢だった頃の彼女の姿と何の変わりも無いように見えるが、彼女の醸し出す雰囲気が、未だに発育途上の”少女”のそれであるにも関わらず、『艶やかさ』とでも表現したら良いような、独特の雰囲気ををかけ備えることによって、更に持ち前のその魅力が開花したように見受けられた。

僕は改めて、この美少女が五日間もの間調教を受け続け続けてきたことから、確実に性的にある程度成熟したということと、そして、処女を失い、その相手が僕だったことに対する大いなる安堵感ともいうべき思いと、比例して相反する、アスカに性的虐待を受けさせてしまったことに対する大きな罪悪感をも感じて彼女を見つめていた。

「さあ、そろそろ車の中も涼しくなってきたでしょう。出発しましょうか」

マヤさんのその声で、僕はふと我に返り、アスカに促した。

「さあ、アスカ。車に乗ろう」

「・・・うん・・・」

アスカは頬を朱に染めてそう答えると、キュッと僕の右の掌を握り締めた。その仕草は、かいぐりしたくなる位にたまらなく愛らしかった。

僕はまるでお姫様を庇護するナイトのように、アスカの掌を握り締めたまま、車の後部座席のドアの前まで連れてゆくと、ドアを開けて彼女を車内へと招き入れた。

アスカが車に乗り込むのを確認した後、僕はドアを閉めて、今度は反対側の後部座席のドアの前まで回り込むと、自らの手でドアを開けて車内に乗り込んだ。

マヤさんはその間、ずっと僕たちの仕草を、暗い思い詰めた表情で見ていた。

 

「さあ、帰りましょうか」

マヤさんはそう言うと、ハンドブレーキのロックを解き、車を発進させた。

海沿いの道に出ると、僕は車窓から景色を眺めた。空は秋の到来がさほど遠くないことを告げるかのように、何処までも青く、澄んだ色をして、遥か遠く水平線まで海のマリンブルーとその青さを競い合うように広がっていた。

「二人とも、喉が乾いたでしょう?その水筒の中にアイスティーが入っているから遠慮なく飲んでね」

マヤさんは運転しながらそう言うと、助手席からステンレス製の水筒と紙コップを僕の前に差し出した。

「ありがとう、マヤさん。それじゃあ早速いただきます」

僕はそう答えると、紙コップにアイスティーを注ぎ、アスカに差し出した。

「・・・ありがとう、シンジ・・・」

アスカは僅かにはにかんだ笑顔を浮かべると、僕の手から紙コップを受け取った。

僕も自分のコップにアイスティーを注ぐと、二人してほぼ同時に、コップの中のアイスティーを飲み始めた。

マヤさんは、バックミラーごしに僕たち二人がコップに口を付ける様子を窺うと、僅かに口元を歪めて意味深な笑みを浮かべた。

僕とアスカがアイスティーを飲み干し終えて、後部座席の僕とアスカの中間に備え付けられているゴミ箱に紙コップを捨てると、ほんの数分も経たぬ内に強烈な睡魔が僕を襲ってきた。

アスカを見やると、彼女も眼を擦りながら何度も頭を振っている。

段々と遠のいていく意識の中で、僕はマヤさんに向かって言った。

「・・・ううぅ・・・マヤさん、まさかまた睡眠薬を・・・」

言い終わらぬうちに、僕は真っ暗な眠りの世界に引きずり込まれていったのだった・・・。

 

「・・・ア・・・スカ・・・」

誰だろう・・・。アタシを呼ぶ声がする。

「・・・アスカ・・・」

誰?

アタシは考える。

記憶を辿ると、その声は良く聞き慣れた声。暖かい。その声を聞いているだけでアタシの心は安らぐ・・・。

「・・・アスカ!」

良く聞いてみると、その声は切迫した響きを伴っている。

「アスカ!起きて、起きてよ、アスカッ!!」

声に促されて、アタシは重い瞼をゆっくりと開いてゆく。

「アスカ!眼を覚まして!アスカ、早くっ!!」

シンジの声だ・・・。何だろう、なぜそんなに焦っているの・・・?

アタシはその声に急かされて、無理矢理重い瞼を開いた。まだ眠気の為にぼやけた視界をハッキリさせようと、眼を擦ろうとしたが、アタシの右手は全く動かすことすらできない。アタシはそれで自分が拘束されていることを知った。

「・・・う、ん・・・」

まだぼんやりとした頭を目覚めさせようと、アタシは何度か頭を振ってみる。ようやく視野の内に有る物たちが、おぼろげな状態から確かな物体として、その輪郭を明瞭なものとして認識できるようになり始めた。

「アスカっ!!眼が覚めたんだね!逃げるんだっ!アスカッ!!」

アタシは声のする方に眼を向けると、そこには両手首を後ろ手に縛られ、両足首を縛られてイモムシのように床に横たわって首から先だけ持ち上げて、アタシに向かって叫んでいるシンジが居た。

「・・・あれ?・・・シンジ・・・。ここは・・・」

良く見てみると、そこは見慣れたあの忌まわしい別荘のリビングだった。

視線を移すと、マヤさんが鞭を手に持って、暗い思い詰めた表情でアタシの直ぐ脇に立っていた。

西日の射し込むリビングの中、仁王立ちになったマヤさんは背後からその光を受けていて、アタシから見ると、まるで瞳だけ憎悪で光っている人型の影絵のように見えた。

そのマヤさんの姿を見て、アタシは身の危険を感じて逃げようと体を捩った。しかし、アタシの身体は縄と鎖でがっちりと拘束されている為に、両手と両足は動かすことさえ出来ない。かろうじて首から上だけが動かせるだけだ。

アタシはやっとハッキリした意識で、自分が今どういう状態にされているのかが分かった。

両の手首には手錠が掛けられて、テーブルの脚の部分に固定されている。首には首輪を取り付けられていて、両膝をがっちりと緊縛されていて、両の太股(フトモモ)も縛られていて、首輪から伸びた鎖が南京錠で止められている。

一言で言うなら、アタシは服を着たまま、上半身はちょうどバンザイをしているような格好で、下半身は赤ん坊がオシメを取り替える時の姿勢に酷似した姿で、床の上に横たわっていた。

アタシたちが眠っている間に、どうやってマヤさんが二人をここまで運び込んだのかは分からないが、マヤさんのアタシに対する拘束はひどく念入りだった。

アタシは首から先以外、全くまともに動かすことすらままならずに、ただ脅えた眼で、アタシの直ぐ脇で鞭を手にして暗い瞳でアタシを見ているマヤさんを見やることしか出来なかった。

マヤさんは立ったまま、アタシを見おろしながら言った。

「アスカちゃん、あなたが居る限り、シンジ君は決してわたしを選んではくれない・・・」

マヤさんはそう言うと、手に持った鞭をアタシの目の前で見せ付けるように何度か振った。

ヒュンッ、ヒュッ。

「あなたはわたしにとって邪魔なの。邪魔な存在には消えてもらうしかない・・・」

ヒュッ、ヒュンッ。

「アスカちゃん、この鞭には見覚えがあるでしょう?そう。アスカちゃんが始めてシンジ君に鞭打たれた時に使われたバラ鞭よ。まずはコレで責めてあげる・・・」

「ひっ!!」

「マヤさん!止めてよ!マヤさんっ!」

シンジは俯せで床に這い蹲りながら、必死にマヤさんに呼びかけている。

マヤさんは、そのシンジの呼びかけを全く無視して、鞭を持った手を大きく振りかぶった。

「さあ、覚悟しなさい、アスカちゃん。痛みを存分に味わうが良いわ・・・」

マヤさんは、まるでこの状況を見ていない人が、その台詞の内容を知らずに聞いたなら、静かに独り言を呟いているのだろうと確信するような口調でそう言った。そして、渾身の力を込めて、バラ鞭をM字開脚させられて仰向けに横たわっている為に、ワンピースが捲れて剥き出しになっているアタシの左の太股目掛けて振り下ろした。

ヒュッ、スパアンッ!

「いっ、つっ!」

乗馬鞭で何度も叩かれた経験の有るアタシにとっては、バラ鞭は派手な音を立てる割に痛みは少なかったが、それはあくまでも比較論で有って、叩かれれば勿論のこと酷く痛い。

「この長くてしなやかな脚・・・。とっても綺麗よ、アスカちゃん。これがシンジ君を魅了しているのね・・・。憎くてたまらないわ・・・」

マヤさんは静かにそう言うと、また鞭を力一杯振り下ろした。今度は右のふくらはぎ目掛けて。

ヒュッ、パアアンッ!

「ああっ!」

アタシは悲鳴を上げると、首をのけ反らせた。痺れるような痛みが走る。

「わたしにだって、あなたのように若い、ぴちぴちした躯だった頃があったのよ・・・」

マヤさんはそう言うと、今度は左腕を狙って鞭を振り下ろした。

ヒュッ、パシインッ!

「あうっ!」

鞭打たれた部分を見ると、赤くミミズ腫れになっている。

「でも、その頃のわたしには、あなたにとってのシンジ君のような存在は居なかった・・・」

言いながら、アタシの右腕目掛けて鞭を振る。

ヒュッ、ビシッ!

「うあっ!」

あまりの痛みに、だんだん脂汗が滲んでくる。

「マヤさんっ!もう止めてよっ!」

シンジは叫んでいる。

「アスカちゃん、あなたは幸せ者よ。自分をここまで想ってくれる人がいるんだもの・・・」

ヒュッ、スパアンッ!ヒュッ、バシッ!

連続した打擲(ちょうちゃく)が、アタシの太股とお腹を襲う。

「やっ!ああっ!」

鋭い痛みが、背筋を走る。

「わたしは中学も高校も一貫教育のミッション系の女子校に通っていたの。だから男の子と知り合う機会なんて無かったわ・・・」

ヒュッ、バシッ!ヒュッ、パシインッ!

また連続して、肩と腕を叩かれた。

「うあっ!あぁっ!」

「大学に入ってからも、言い寄ってくる男はすべて拒絶して、ただ一生懸命に勉強とボランティア活動に熱中したわ。だってわたしはレズビアンだって、高校生の時に気が付いたから・・・」

ヒュッ、ビシッ!ヒュッ、バシッ!

今度は太股とふくらはぎに鞭が振り下ろされた。

「あひっ!ひいっ!」

「周囲の人たちは、わたしの事を清純で潔癖性な女だって思っていたみたいだったわ・・・」

ヒュッ、パシインッ!ヒュッ、ビシッ!

「つっ!ううっ!」

「けれども、大学を卒業して先輩と同じ職場になって、先輩に性の悦びを叩き込まれてようやく気が付いたの。わたしの本当の姿に・・・」

ヒュッ、ビシッ!ヒュッ、バシッ!

「ひっ!ああっ!」

「アスカちゃん、牝奴隷になるって、とても素敵な気分よ。自分の中の汚い部分も醜い部分もすべてさらけ出されて、本当の自分が見えてくるから・・・」

マヤさんは言い終えると、鞭を持った手をだらりと垂らした。アタシは、これでようやく苦痛から解放されるのかと思い、幾分ホッとしてマヤさんを見ていると、マヤさんは言った。

「アスカちゃん、これで終わりだなんて思わないでね。あなたにはもっともっと苦しんでもらうつもりだから・・・」

「止めて!マヤさん!もう止めてよ!」

マヤさんはシンジの声を完全に無視して、足下に置いてある黒いバッグの中から、今度は棒状の乗馬鞭を取り出して手に持った。そして、大きく振りかぶりながら言った。

「牝奴隷として不完全なあなたなんかに、シンジ君を奪われるのは、わたしはどうしても納得がいかないのよ・・・」

「ひっ!!」

ヒュッ、パシインッ!ヒュッ、バシッ!

「うあぁっ!!あつうぅっ!!」

焼け付くような鋭痛が、アタシの太股とお腹に走った。

バラ鞭も勿論凄く痛いには違いなかったのだが、バラ鞭と乗馬鞭の痛みの違いは歴然としていた。たった二回鞭打たれただけで、アタシは涙を零しながら口を大きく開けて、荒く息をついた。

「ハア、ハア・・・」

鞭打たれた部分を見てみると、アタシのお気に入りのワンピースはお腹の部分が破れていて、太股とお腹の打たれた部分は赤く腫れ上がっていた。

「あら?」

マヤさんはそう言うと、アタシの股間に顔を近づけて、パンティーを見た。

「アスカちゃん、あなた濡らしているんじゃないの。見てご覧なさい、パンツにシミが出来ているわよ?」

そう言われて、アタシは唯一自由に動かせる首から先を持ち上げて、自分の股間を見てみた。すると、認めたくはなかったが、アタシの白いコットンの下着の股布の部分には、確かにそれと分かる十円玉大のシミが出来ていた。

「鞭で打たれただけでアソコを濡らすなんて。とんだ変態中学生ね」

マヤさんにそう詰られて、アタシは下唇を噛み締めて、その恥ずかしさ、悔しさに耐えた。

「ぶたれるのがそんなに気持ち良いなら、もっとぶってあげるわ。それ!」

ヒュッ、バシインッ!ヒュッ、ビシッ!

「あひっ!!ひああぁっ!!」

哀れな悲鳴と、サディスティックな気合いが交錯した。

肩口と僅かに太股に被さっているワンピースの部分を叩かれて、肩口で結ばれていた紐は千切れて、ストラップレスタイプのブラジャーはあらわになり、捲れ上がったワンピースも破れて、アタシは更に肌が露出した格好になった。

「もうぶたないでっ!何でもマヤさんのいうとおりにするからぁっ!お願いっ!」

「ぶたれただけでアソコを濡らしているマゾなのに、何を言っているの?マゾはマゾらしくぶたれて感じていなさい!」

ヒュッ、パシインッ!ヒュッ、バシッ!

「あぐぅっ!!か、はっ!!」

鞭打たれる度に、微かながらも確かにアタシの背筋を快美の微電流が走る。

(アタシは鞭で打たれることによって感じている・・・。うそよ!そんなこと有り得ないわ!)

鞭で打たれることは勿論酷く痛いのだが、そうやってシンジに恥ずかしい姿を晒していることと、痛みと共に感じる僅かな快美感が、アタシに倒錯した悦びをもたらしていることもまた事実だった。

気持ちでは否定しようと思っているのだが、躯の方はそれを裏切って感じてしまっているのだった。

この五日間の調教によって、アタシにとっては鞭打たれることさえも快感に昇華するようになってしまっていたのだ。

「ほらほら、もっとぶたれて濡らしていなさい!」

ヒュッ、ビシッ!ヒュッ、パアアンッ!

「はうっ!!うあぁっ!!」

鞭打たれた部分のワンピースが、どんどんと破れてずたずたになってゆく。その分だけ肌が露出して、シンジの眼前に晒されてゆくという事実が、アタシの中に潜んでいた露出癖をも刺激して、アタシの躯の芯に熱いものをこみ上げさせてゆくのだ。

「うふふ・・・。アスカちゃん、パンツのシミがどんどんと大きくなってきたわよ。本当にこの牝奴隷は淫乱なんだから」

マヤさんはそう言うと、棒鞭の先端でアタシのパンツの濡れている股布の部分をぐりぐりと刺激した。

「はうぅんっ・・・」

その快美な刺激に、アタシは思わず甘い声を上げてしまう。

「そう、ここが良いの。ほらほら、腰が引けているわよ?」

マヤさんはそう言いながら、クリトリスの部分を湿った薄布の上から刺激する。

「あっ・・・やっ・・・」

アタシは快感と羞恥と鞭打たれた部分からジンジンと痺れるように響いてくる痛みに、半裸の躯を上気させて悶えた。

「ふふ・・・。でも勘違いしないでね。あくまでもわたしはあなたを痛めつけるために鞭でぶっているんだから・・・」

マヤさんはそう言うと、また大きく鞭を振りかぶった。

「マヤさんっ!止めて!もう止めてよっ!」

「シンジ君は黙って見ていなさい」

マヤさんはぴしゃりとそれだけ言うと、振りかぶっていた鞭を連続して振り下ろした。

ヒュッ、スパアンッ!ヒュッ、バシッ!ヒュッ、パシインッ!

「あぐぅっ!!ぐはっ!!ひいぃっ!!」

マヤさんはまた一旦鞭を振るう手を止めると、露出したアタシの肌の上を鞭の先端でツツーとなぞりながら言った。

「ホント、綺麗な白い肌・・・。これもシンジ君に愛される理由になっているのね・・・。憎らしいのよ!」

マヤさんの瞳が、憎悪で更に黒みを増したかのように見えた後、マヤさんはまた鞭を大きく振りかぶった。

ヒュッ、ビシッ!ヒュッ、パアアンッ!ヒュッ、パシインッ!ヒュッ、バシッ!・・・。

「ああぁぁっ!!うあぁぁっ!!あっ、ひっ!!ひぎいぃっ!!・・・」

連続した打擲が、次から次へとアタシの躯の胸と腋の下とパンティー以外の部分に加えられた。

アタシはただ涙を零し、悲鳴を上げ続けながら加虐の嵐が過ぎ去るのを待つことしか出来なかった。

痛いことは勿論痛いのだが、鞭で打ち据えられる度に、背筋を悦楽の快電流が走る!

アタシの上げる悲鳴の中に快楽からくる甘い響きが混じっていることもまた事実だった。

その仕打ちによって、アタシのお気に入りのワンピースはずたずたになり、最早衣服としての役割を果たさないまでになってしまったのだった。

「「ハア、ハア、ハア・・・」」

やがて、マヤさんは打ち疲れたのか鞭打つ手をだらりと垂らした。

部屋にアタシとマヤさんの荒い吐息だけが響いていた。

ジンジンと鞭打たれた躯のあちこちから、焼けるような痛みが響いてくる。もうアタシは身体中脂汗を滲ませて、被虐の快感と痛みとを同時に感じながら、全身を弛緩させていた。

アタシをほぼ下着だけの姿に見える程に打ちのめしたマヤさんは、肩で息を付きながら言った。

「ハア、ハァ・・・。アスカちゃん、感じちゃった?でも残念ね、次は一番痛いところをぶって上げるからね。前にも言ったと思うけれど、わたしは一番美味しいものを最後にとっておくタイプの人なのよ」

マヤさんはそう言うと、また鞭を持った手を振りかぶった。そして、次の瞬間、アタシの右の腋の下を力一杯打ち据えた。

ヒュッ、バシッ!

「いああぅぅっ!!」

躯の中でも、最も敏感な部位の一つである脇の下をしばかれて、そのあまりの痛みにアタシは声にならない悲鳴を上げた。

マヤさんは躊躇することなく、また鞭を振り上げると、今度は左の脇の下を打った。

ヒュッ、パシインッ!

「うぁああぁっ!!」

アタシは悲鳴を上げて躯をのけ反らせると、ぽろぽろと涙を零しながらマヤさんに向かって哀願した。

「ああっ!!もう止めてぇっ!なんでもマヤさんの言うとおりにするからぁっ!もうぶつのは止めてぇっ!!」

マヤさんは狂ったように唯一自由に動かせる頭を振りながらそう叫ぶアタシのことを、さも面白そうに見ていたが、その口から発せられた言葉を聞いてアタシは絶句した。

「うふふ・・・。やっといい声で泣くようになったじゃない。そうよ、その声が聞きたかったのよ。でもねぇ、アスカちゃん。まだシンジ君をひきつけている部分が二カ所も残っているじゃあない。そこを責めるまでは終わらないわよ。覚悟しなさい」

マヤさんはそう言うと、鞭の先端をアタシのブラジャーにまで滑らせた。そして宣告した。

「次は胸よ。まだ中学生の癖にわたしよりも大きな胸をしていること自体が気に入らないのよ!」

マヤさんは憎悪のこもった声でそう言うと、アタシの左の胸乳を一気に打ち据えた。

ヒュッ、ビシッ!

「ひいいぃぃっ!!」

もう快感など感じる余裕も無く、アタシはただ激痛に身悶えた。

「それっ!それっ!」

マヤさんの気合いと共に、連続して今度は右の乳房を打ちのめされた。

ヒュッ、スパアンッ!ヒュッ、パアンッ!

「あひいぃっ!!ひっひいぃっ!!」

三回の打擲で、ブラジャーは破れ、アタシの双乳はあらわになった。その、あらわになった胸乳の乳頭目掛けて、更にマヤさんは鞭を振り下ろす。

ヒュッ、バシッ!ヒュッ、パシインッ!・・・。

「かっ、はっ!!ぐあぁっ!!・・・」

乳首が千切れてしまうのではないかと思う程の激痛が、次から次へとアタシを襲う。

アタシはもうとっくに枯れ果てたかと思っていた涙をまた零した。

唐突に、マヤさんの鞭打つ手が止まった。アタシは涙でぼやけた眼でマヤさんを見た。マヤさんは鞭を持った手をだらりと垂らしたまま、僅かに微笑んでいるのが分かった。

「あーあ。わたし、疲れちゃったわ。もう止めようかしら・・・」

(これでこの責め苦から解放される・・・)

アタシが僅かな希望を抱いてマヤさんを見ていると、マヤさんはまた鞭を肩より高く上げて言ったのだった。

「なーんてね。嘘よ。アスカちゃん、まだシンジ君が魅せられている最後の部分が残っているでしょう?これでトドメよ。思いっ切り泣きなさい!」

「マヤさんっ!!もう許して上げてよっ!!マヤさんっ!!」

シンジは身体の拘束を必死に解こうともがきながら叫んでいた。

マヤさんはそれを完全に無視して、両脚をM字型に拘束されているために、無防備に曝されたアタシの股間を、力一杯打ちのめした!

ヒュッ、バシインッ!!

「ぎゃああああぁぁぁっ!!」

激痛。それしか無かった。

クリトリスを打ち据えられ、アタシは全身をのけ反らせて、髪を振り乱しながら悲鳴を上げた。

「それっ!もう一発」

ヒュッ、ビシッ!!

「ぐああああぁぁっ!!」

また無慈悲に、アタシの股間に鞭が振り下ろされた。今度は小陰唇に鞭が命中した。

「・・・あっ・・・ああっ・・・あっ・・・」

アタシはあまりの痛みに、ただ喘ぎ声を上げながら全身を小刻みに痙攣させていたのだった・・・。

 

マヤさんはそれで満足したのでは無いことを、アタシは直ぐに思い知らされた。

マヤさんは鞭を持ったまましゃがみ込むと、足下の黒いバッグから赤くて太いローソクを取り出して言った。

「アスカちゃん、次はコレよ。言っておくけれど、SMプレイ専用の低温ローソクじゃあないからね。コレは普通のローソクだからね・・・」

マヤさんはそう言うと、手に持ったローソクの芯にライターで火を付けた。そして、ゆっくりとソレを見せ付けるかのようにアタシの躯に近づけてきたのだった。

「アスカちゃん、SMって奥が深いのよ。例えばこのローソクだって、高いところから蝋を垂らしたり、低いところから蝋を垂らしたりして責めに強弱を付けるのよ・・・」

そして、アタシのお腹の直ぐ上でローソクを傾けると言った。

「でもね、アスカちゃん。わたしがあなたに対する責めに使うときは低いところ専門だけれどね」

ジジジ・・・。

蝋燭の芯の炎が、徐々に周囲の蝋を融かしてゆく様が、アタシの涙で潤んだ視界にハッキリと映っていた。

「ひっ!もうイヤあぁぁっ!助けて、シンジっ!助けてぇっ!」

「無駄よ、アスカちゃん。見れば分かるでしょう?シンジ君には縄を掛けてあるのが。彼には最後まで見とどけて貰うためにああやって自由を奪っておいたのよ」

マヤさんがそう言う間にも、炎はどんどんと蝋を融かしてゆくのだった。

ジジジ・・・。

そして遂に、赤い雫がアタシのお腹の上に落ちた。

ポタッ。

「キャアアァァッ!!」

それは、熱いというよりも、痛いという方が正しい気がする位の灼熱感だった。

ポタッ、ポタッ。

「イヤアァァッ!!熱いぃぃっ!!」

あちこち赤くミミズ腫れになっているアタシの自慢の白い肌の上に、赤い蝋が点々と垂れ落ちて、そのまま冷え固まっていった。

「ふふふ・・・。アスカちゃん、悔しいけれど、あなたは肌が白いから赤い蝋が映えるわねぇ。ホント、憎らしい子ね」

マヤさんはそう言うと、ローソクの炎がアタシの肌に付く位の位置で、もうほとんど産毛に火が付きそうな位の高さで、蝋を次から次へと垂らし続けた。

ポタッ、ポタポタ・・・。

「イヤぁっ!!熱いっ!!熱いぃぃっ!!・・・」

お腹の上は勿論のこと、両の太股、ふくらはぎ、両腕にも蝋を垂らされて、アタシはただ悲鳴を上げて、ほぼ全裸の躯をシンジの眼前に曝しているという事実と、同性のマヤさんの手で灼熱した蝋を垂らされているという被虐から、上気して朱に染まっている裸体を捩らせ続けることしか出来なかった。

気持ち良い・・・。

(えっ?・・・)

アタシ、熱いのが気持ち良いの・・・。

(なっ、何?この声は・・・。またなの?・・・)

マヤさんは微笑みながら、アタシの肌の上にどんどんと蝋で赤い化粧を施してゆく。

ポタ、ポタッ、ポタポタ・・・。

「あひぃっ!!ひいっ!!熱いっ!!熱ぅっ!!・・・」

アタシは悲鳴を上げ続けて躯を捩らせてもがいていたが、その上げる悲鳴に甘美な響きが混じっていることに気が付くのに、そんなに時間は掛からなかった。

(アタシはまた鞭で打たれた時と同じように感じている・・・。嘘っ!嘘よっ!そんな筈無いっ!)

もう駄目なのよ・・・。

(えっ!?・・・)

もうあなたは普通のセックスじゃあ感じない、物足りない躯にマヤさんとご主人様の手でされてしまったのよ・・・。

(嘘っ!嘘よっ!アタシは認めないっ!だってシンジはこの別荘での調教が終わったら、普通の、一人の女の子としてアタシを愛してくれるって約束してくれたんだものっ!)

まだそんな戯言を言っているの?・・・。

(戯言なんかじゃあないっ!!アタシはそのシンジの言葉だけを頼りに、希望にして、ここまで『調教』という名を借りた、この狂った、忌まわしい虐めに耐え続けてきたんだものっ!)

本当はもうあなたも気が付いているんでしょう?・・・。

(何?・・・何にこのアタシが気が付いているっていうの?)

マヤさんとご主人様が、的確にあなたの本性を見抜いて、それを引き出す為に調教を行っていることに・・・。

(違うっ!アタシは一方的に虐められているだけだわっ!これがアタシの本性だなんて認めないっ!!認めないわっ!)

では、なぜあなたは恥ずかしいことも、痛いことも、熱いことすらも快感に感じているの?あなたは認めたくないかもしれないけれど、これがあなたの真の姿なのよ・・・。

「イヤああぁぁっ!!」

「あら?」

マヤさんはそう言うと、ローソクを傾けていた手を休めて、先程鞭打たれたことによって股布の部分が破れているアタシの股間に手を伸ばした。

くちゅり・・・。

マヤさんは露になっているアタシの秘裂を指でなぞり上げると、アタシの顔の前にその指先を持ってきて擦り合わせた。

にちゃっ、ぬちょっ・・・。

厭らしい音を立てて、マヤさんの人差し指と中指の間に、きらめく透明な粘液が糸を引く。

「またアソコをこんなにして・・・。アスカちゃん、あなたはわたしの思っていたとおり、マゾの素質が十分に有るみたいねぇ」

マヤさんはそう言うと、今度はアタシの右の腋の下にローソクを移動させて言った。

「でも残念ね。あなたの調教はもう終わりにするから・・・」

(えっ?この人何を言っているの?・・・)

アタシの思考はそこで中断された。なぜなら、マヤさんがアタシの右の脇の下に蝋を垂らしたからだ。

ポタポタ・・・。

「うあぁっ!!・・・」

マヤさんはアタシの悲鳴には全く耳を貸さずに、今度は左の脇の下に蝋を垂らした。

ポタッ、ポタ・・・。

「あひいぃっ!!熱いっ!!」

「うふふ・・・。良い声で泣くじゃあない。そうよ。もっと苦しみなさい・・・」

言いながら、マヤさんはローソクを徐々にアタシの胸へと移動させてゆく。そして、左の乳房の上へと到達すると、何の躊躇も無くまたローソクを傾けた。

ポタッ、ポタ、ポタポタ・・・。

「あぎいぃぃっ!!熱いっ!!イヤぁっ!!熱いぃっ!!・・・」

胸に蝋を垂らされるのは、激烈な苦しみだった。特に、敏感な乳首に蝋を垂らされる度に、アタシは何度ものけ反り身悶えた。

マヤさんはアタシの苦悶など全く無視して、アタシの乳首とその周辺の胸の膨らみ全体に、まんべんなく蝋を垂らしていった。

「仰向けなのに、胸が型くずれしないなんて・・・。ホント、憎らしい子ね・・・」

マヤさんは静かにそう言うと、今度は右の乳房の上へとローソクを移動させて、いきなり傾けた。

ポタポタッ、ポタッ・・・。

「やああぁっ!!熱いっ!!ひいぃっ!!・・・」

両胸をあらかた蝋で塗り固めると、そこでようやくアタシの苦しみの時は終わった。

「ハア、ハア・・・」

マヤさんはローソクを床の上へと置いた。アタシはただ涙で滲んだ視界の中にそのマヤさんの姿を捉えながら、荒く吐息をついて、おそらく完全に火傷したであろう全身から、ジンジンと響いてくる痛みに躯を小刻みに震わせていた。

「この布切れが邪魔ね」

マヤさんはそう言うと、今度は利き手に鞭を持ち替えて、お尻を突き出した格好のアタシの双臀を打ちしばきだした。

ヒュッ、パシインッ!ヒュッ、パアアンッ!ヒュッ、ビシッ!ヒュッ、バシッ!

「あううぅっ!!もう許してぇっ!!お願いぃっ!!ああぁぁっ!!」

マヤさんはアタシのパンティーをずたずたにすると、満足げに微笑んだ。それは悪魔の微笑みだった。

「さあ、これで邪魔なものは全て無くなったわ・・・」

マヤさんはそう言ってもう一度ローソクを取り上げると、微笑みを浮かべたままそのローソクをアタシのこんもりと盛り上がった恥丘の上、淡い叢に火が付きそうな位置まで持ってくると、涙で潤み、脅えきった眼でローソクを見つめているアタシの顔を見て言った。

「ふふ・・・。どう?アスカちゃん。これからわたしが何をしようとしているのか分かる?」

アタシは脅えから、ほぼ全裸の、ぼろ切れを纏っただけの躯を震わせながら、次にマヤさんが何をしようとしているかを思い浮かべて、あまりの恐怖にがくがくと頷いた。もう顎が震え、歯がカチカチと鳴るのを押さえることすら止めることが出来なかった。

「あっ・・・ああっ・・・い・・・いや・・・」

アタシが脅えきっている様子を満足げに見ていたマヤさんは、すっ、とローソクを持った右手をアタシの股間から退けると言った。

「ふふふ・・・。もう許して上げるわ」

マヤさんのその台詞を聞いて、アタシは安堵の溜息をつくと、緊張しきっていた全身を弛緩させた。

(これできっとこの責め苦から解放されるんだ・・・)

「ハア、ハァ、ハア・・・」

アタシは安心しきって荒く吐息をついていた。マヤさんはそのアタシを見下ろしながら微笑んでいたが、急に表情を強ばらせると、いきなりローソクをまたアタシの股間に移動させて傾けた!

ポタポタ・・・。

「キャアアアァァッ!!」

安心していたところをいきなり恥丘に蝋を垂らされて、アタシは悲鳴を上げると不自由な裸身を捩って暴れた。

「うふふ・・・。良い声で泣くじゃない・・・。次はここよ」

マヤさんはそう言うと、今度はアタシのアソコとお尻の穴の中間、と渡りと言われている部分に蝋を垂らした。

ポタッ、ポタッ。

「うはあぁっ!!熱いぃっ!!」

アタシは大泣きしながら、唯一自由に動かせる首から上を髪を振り乱しながら揺すった。

「次はお尻の穴。ここすらもシンジ君に愛される理由になっているのねぇ。憎らしいのよ!」

マヤさんは暴れ悶えるアタシを、覚めた眼で見続けながら、今度はアタシのアヌスの上でローソクを無情に傾けた。

ポタ、ポタポタッ・・・。

「あぎいいぃぃっ!!イヤあぁっ!!熱うぅぅっ!!・・・」

マヤさんはあらかたアタシの敏感な肛門粘膜を蝋で塗り固めると、手に持ったローソクをアタシの淫裂の上へと移動させ、宣告した。

「次はオマンコよ。あなたのここが一番シンジ君をひきつけているのよ・・・。滅茶苦茶にして上げる・・・」

「止めてぇっ!!お願いぃっ!!お願いだから止めてぇぇっ!!助けてぇっ!!シンジッ!!助けてぇぇっ!!」

アタシは必死になってシンジに助けを求めた。それが無駄なことだと分かっていても、そうせざるおえなかったのだ。もう冷静に思考することなど出来なかったのだ。

「止めてよっ!!マヤさんっ!!もう止めてよっ!!」

シンジの声を無視して、マヤさんの手に持たれたローソクがゆっくりと傾いてゆく。炎が揺らめきながら、周囲の蝋を融かしてゆく。そして遂に、赤い雫がアタシの核心部へと垂れた!

ポタッ。

「あぎゃああああぁぁっ!!」

灼熱した蝋が、アタシの肉のフードを被ったクリトリスの上へと垂れた!

それは熱いと言うよりも、限りなく痛みに近い衝撃だった。

アタシはあまりの熱さに、渾身の力を振り絞って暴れた。しかし、完璧に拘束された躯は全く動かすことが出来ずに、ただ縄と鎖がミシミシ、ジャラジャラと音を立てるだけだった。

「アハハッ!そうよ、その声が聞きたかったの。それっ、それっ!」

マヤさんはそう言うと、蝋を次はアタシの肉唇目掛けて、次から次へと無慈悲に垂らした。

ポタッ、ポタッ・・・。

「ぎいいいぃぃっ!!ひっ、ひいいぃぃっ!!・・・」

マヤさんの責めは執拗だった。肉芽に近い方のラビアと、大陰唇全体をを蝋まみれにすると、今度はアタシの膣孔の周辺の小陰唇目掛けて蝋を垂らし続けた。

ポタ、ポタポタッ・・・。

「ひいやああぁぁっ!!イヤああぁぁっ!!もう許してぇぇっ!!・・・」

アタシは狂ったように、良く手入れされた自慢の髪を振り乱し、汗と涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔を振り立てていた。

そこで唐突に、マヤさんの手に持たれたローソクがアタシの股間から退けられた。

アタシは涙で滲んだ眼で自分の股間を見やった。もうアタシのアソコは全て垂れてから冷え固まった赤い蝋にまみれていて、マヤさんが蝋を垂らす箇所が見つからない位にまでなってしまっていたのだった。

躯中至る所から、蝋で火傷した痛みと、鞭打たれた痛みとがごちゃ混ぜになってジンジンと響いてきて、その苦しみからアタシは全身に脂汗を滲ませながら、荒く吐息をついていた。

「ハア、ハア・・・。も・・・う・・・許して・・・マヤさん・・・お願い・・・お願いします・・・」

マヤさんはローソクを持ったまま、冷めた眼でアタシを見下ろしていた。しかし、その次に発せられた言葉は、アタシに更なる恐怖を与えるのに充分過ぎるものだった。

「アスカちゃん、悪いけれど、わたしはあなたをこの位で許して上げるつもりはなくってよ。次はこの火のついたローソクをあなたのオマンコに突っ込んで上げる・・・」

マヤさんはそう宣告すると、アタシの折り曲げられた両脚の間に身体を移動させてしゃがみ込んだ。

マヤさんの手に持たれたローソクが、アタシの眼には、赤い邪悪な凶器のように映っていた。マヤさんはその凶器をアタシの媚肉に挿入出来る最適な角度に持ち直すと、ゆっくりと股間に近づけてきたのだった。

「イヤっ!!イヤぁぁっ!!助けてぇっ!!シンジっ!!お願いだから助けてぇぇっ!!」

アタシは最早恥じも外聞も無く、直ぐアタシの腋で俯せで体に掛けられた縄を振りほどこうと身悶えしているシンジの方を見て泣き叫んだ。この場で唯一助けてくれそうな存在はシンジただ一人だと、恐怖で錯乱した頭でも思ったからだ。

「マヤさんっ!!もう止めてよっ!!マヤさんっ!!クソぉっ!!外れろぉっ!!外れろぉぉっ!!」

シンジは必死にイモムシのように拘束された体の縄を解こうともがいている。そのシンジを見て、マヤさんは言った。

「無駄よ、シンジ君。あなたは黙ってこの子がぼろぼろになってゆく様を見続けていなさい」

ポタポタとその先端から赤い雫を垂らしながら、邪悪な意図を秘めた赤い凶器が、ゆらゆらと炎を揺らめかせながら、アタシの秘肉に確実に近づいてくる様が、涙で潤んだ視界にハッキリと映っていた。

「イヤああぁぁっ!!アソコが黒焦げになっちゃうぅっ!!助けてぇっ!!シンジぃぃっ!!助けてぇぇっ!!」

炎が、アタシの淫裂に付きそうな位置にまでローソクを移動させると、マヤさんは言った。

「ただこのままローソクを突っ込んだんじゃあ面白くないから、オマンコを炙って上げる」

ジジジ・・・。

ローソクの先端の炎で、アタシの媚粘膜の表面で冷え固まっていた蝋が融けてゆく。そこから耐え難い熱さが伝わってくる。

「ぎゃあああぁぁっ!!熱いっ!!熱いぃぃっ!!」

アタシはただ悲鳴を上げ続けながら、狂ったように不自由な全身を捩らせて、暴れもがいた。しかし、それでもマヤさんの手に持たれた蝋の凶器は、全く退けられることなくアタシの肉唇にこびりついた蝋を融かし続けていた。

「さあ、これで膣の入り口の蝋が融けて入れやすくなったわ。覚悟しなさい、アスカちゃん」

マヤさんはそう言ってから左手をアタシの小陰唇に添えると、グイッと肉唇を押し広げて膣孔を露出させた。

「もう止めてっ!!もうアスカを虐めるのは止めてよっ!!マヤさんっ!!お願いだから止めてよっ!!クソぉっ!!外れろぉっ!!」

しかしマヤさんは、シンジの呼びかけなど全く無視してローソクを構えた。

「これで終わりよ。思いっ切り泣くが良いわっ!!」

マヤさんはそう言った次の瞬間、火のついたローソクの先端をアタシの膣口に何の躊躇もなく一気に挿入した!

ジュッ!!

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

もう悲鳴も言葉にならなかった。

絶叫。それだけだった。

アタシの上げた悲鳴は、敢えて台詞にするなら、『あぎゃあ』とか、『うぎゃあ』とか言っているようだったが、言った本人さえそれを認識してはいなかった。

「うえええぇぇん・・・もうやだよおぉ・・・もう許してよぉ・・・うえええぇん」

膣肉にローソクを突き立てられたまま、アタシはわんわんと大泣きしながら、無様に涙と脂汗と鼻水と涎とでぐちゃぐちゃになった顔を振り乱し続けていたのだった・・・。

 

マヤさんは冷めた眼でアスカのことを見下ろしていた。そして、ゆっくりとアスカの体を跨ぎ、両脇に膝を付くと、まだ泣き続けているアスカの首に両手を伸ばした。

「アスカちゃん、知ってた?首を絞められるってとっても気持ち良いのよ・・・。特に頸動脈が・・・」

マヤさんはそう言うと、アスカの首に這わせた手に力を込め始めた。

「ぐぇ・・・シ・・・ンジ・・・たす・・・けて・・・シン・・・ジ・・・助けて・・・」

「マヤさんっ!!もう止めてよっ!!もう充分アスカを痛めつけたじゃあないかっ!!お願いだからもう止めてよっ!!」

僕はそう叫び続けながら、必死で両手首と両足首に施された拘束を解こうともがき続けた。

「シンジ君は分かっていないのね・・・。この子が居るかぎり、わたしは決してシンジ君に愛されはしない。だから消えてもらうの。邪魔だから・・・。憎いから・・・」

そう言うマヤさんの瞳には、完全に狂気の色が浮かんでいた。

(このままじゃあ、完璧にマヤさんはアスカを殺してしまう・・・。クソッ!!この縄さえ解ければ・・・。アスカを助けなきゃあ。マヤさんを殺人者にする訳にはいかない・・・)

「外れろぉっ!!外れろっ!!クソぉっ!!外れろぉっ!!」

ずっと縄を解こうとあがき続けていた為に、僕の両手首と両足首は擦過傷を負ったのだろう。酷く痛んだ。しかし僕は、自分の体の痛みなもうどどうでも良かった。アスカを救うこと、マヤさんを止めることだけを考えていた。

アスカが口を大きく開いて、ぜえぜえと吐息をついていると、マヤさんはそこで唐突に首を絞める両手の力を抜いた。

「どう?アスカちゃん。首を絞められるって結構気持ちが良かったでしょう?また絞めて上げる・・・」

マヤさんはそう言うと、また両手に力を込めた。

「うげっ・・・助けて・・・シン・・・ジ・・・たす・・・け・・・て・・・」

アスカは最早、声を上げることすら辛そうだった。

「クソッ!!外れろっ!!外れろっ!!外れろぉっ!!」

僕は必死になって縄を解こうと、呪文のようにそう叫びながらあがき続けた。すると、ようやくその声が天に届いたのか、両手首に掛けられていた縄が緩みはじめたのが感覚で分かった。

(後少しだ!!頑張れ、シンジ!!頑張れ!!どうか間に合って・・・)

アスカの顔色が、青ざめて見える位にマヤさんは絞め続けると、またそこで力を抜いた。

「ゴホッ、ゴホゴホッ・・・。ぜえ、ぜぇ・・・」

アスカは咳き込みながら、酸素を貪るように大きく口を開けて、荒く呼吸を繰り返していた。

マヤさんは、そのアスカのことを、一見すると氷のように冷めた表情で見つめていたが、良く見るとその瞳は狂気に熱っぽく、異様な輝きを放っていたし、頬もうっすらと上気していた。

「これで終わりよ。アスカちゃん。これで邪魔者は消えるわ・・・。わたしの願いがようやくかなう・・・。バイバイ、アスカちゃん。バイバイ・・・」

マヤさんがそう言って、アスカの首に回した両手に力を込めだしたところで、ようやく僕の両手首に掛けられた縄が緩んでほどけた。僕は急いで両足首に掛けられた縄に手を伸ばして、がむしゃらにほどこうとした。

「ぐぁ・・・た・・・すけて・・・シン・・・ジ・・・たす・・・けて・・・」

アスカは首を絞められながら、潤んだ瞳で僕の方を見ていた。もうその顔色は紫色に近かった。時間が無かった。僕は何とか両足首に掛けられた拘束を解いて立ち上がると、アスカの上に馬乗りになっているマヤさんに向かって、思いっ切り体当たりした。

どんっ!!

「きゃあっ!!」

マヤさんは悲鳴を上げると、アスカの隣に倒れ込んだ。僕はアスカを庇うように抱き締めると、もうほとんど意識を失いかけているアスカに呼びかけた。

「アスカッ!!聞こえるっ?!アスカッ!!」

「ぜえ、ぜえ、ぜぇ・・・。ゴホッ、ゴホッ」

荒い吐息と、咳き込む姿を見て、アスカが無事だったことを確認すると、僕は思わず安堵の溜息をついた。

「ゴホゴホッ、ゴホッ・・・。あれ・・・シンジ・・・。助けてくれたんだ・・・。アタシ、助かったんだ・・・」

アスカはそれだけ言うと、その瞳から大粒の涙を幾粒も零しながら泣きじゃくり始めた。

「うえええぇぇん・・・怖かったよぉ、シンジ・・・。怖かったよぉ・・・うええええぇぇん・・・」

僕はそのアスカの髪を撫でながら、彼女の耳元で言った。

「もう大丈夫だよ、アスカ。アスカは僕が守る。もう誰にもアスカのことを虐めさせたりなんかしないから・・・」

泣きじゃくるアスカのことを守るように抱き締めながら、僕は床に倒れ込んでいるマヤさんに向かって言った。

「マヤさん、マヤさんは本当はこんなことをする人じゃあないんだよね。僕の体を縛っていた縄も、本当はマヤさんも僕に止めて貰いたくて、わざと直ぐにほどけるように緩く縛ってくれていたんだよね。そうなんだよね、マヤさん・・・」

マヤさんは起き上がると、呆然とした表情で僕の顔を見た。その瞳は虚ろだったが、僕の台詞を聞くと徐々に瞳には生気が戻り、黒目がちな瞳一杯に涙が浮かんできて、床にひれ伏すとオイオイと泣きじゃくり始めた。

「うわあああぁぁん・・・。ごめんなさい・・・シンジ君、アスカちゃん・・・ごめんなさい・・・。うわあああぁん・・・」

マヤさんはまるで子供のように泣きじゃくりながら、何度も何度も『ごめんなさい』と繰り返していた。

「良いんですよ、マヤさん。本当は僕が全部悪いんだ。今までマヤさんに対しても、アスカに対しても、どっちつかずの態度で接してきた僕が悪いんだ。僕の優柔不断さが、マヤさんをここまで追い詰めてしまったんだ。謝らなきゃならないのは僕の方だ。ごめんなさい、マヤさん。本当にごめんなさい・・・」

僕がそう言うと、マヤさんは床に擦り付けていた顔を上げて、涙で潤んだ瞳で僕を見た。そして言った。

「グスッ・・・。シンジ君、あなたは卑怯よ。なぜそんなに優しいの?あなたの好きなアスカちゃんに対して、わたしはあんなにひどいことをしたのよ・・・。そのわたしを許すなんて、優しすぎるわ・・・」

「僕のことは何て言われても構いません。この五日間で、僕はアスカをここまでひどく傷付けたし、マヤさんのことも追い詰めてしまった。悪いのは全て僕なんです。痛めつけられなきゃあいけないのは僕だ。マヤさんは何も悪くない。二人を傷付けたのは僕なんだ・・・」

僕がそう言うと、マヤさんはまた大きな声を上げて泣き出した。

「うわああぁん・・・。シンジ君は優しすぎるわ・・・。そんな風に言われたら、わたし、もうどうしようもないじゃないの・・・。うわああぁぁん・・・」

僕はアスカを抱いたまま、マヤさんが落ち着くまで、好きなように泣きたいがままにさせることにした。

部屋には、アスカの鼻を啜り上げる音と、マヤさんの泣き声が混じり合い、響いていた・・・。

 

やがて、マヤさんの泣き声が小さくなり、嗚咽を漏らすだけになった頃、僕は言った。

「マヤさん、アスカの縄と鎖をほどいてくれませんか?アスカのことを自由にしたら、三人で家に帰りましょう」

僕がそう言うと、マヤさんはゆっくりと立ち上がって言った。

「グスン・・・。分かったわ、シンジ君・・・」

マヤさんは悄然とした面持ちで、アスカの両脚に掛けられた縄をゆっくりと解き始めた。勿論、僕もその作業を手伝った。

アスカの身体に掛けられていた拘束を二人掛かりでようやく解き終えると、僕はアスカに向かって言った。

「さあ、アスカ。シャワーを浴びておいで。傷が痛むかもしれないから気をつけてね。僕たちはアスカの着替えを車から取ってくるから」

僕の台詞を聞いて、アスカはこくり、と頷くと、立ち上がってバスルームへと歩き去っていった。

僕とマヤさんは玄関を出て、車のトランクに仕舞われていたアスカの荷物を持って、また別荘に戻ったのだった。

 

僕たちの住む街までは、二時間程で帰り着くことができた。

いくら夏の日は長いといっても、僕たちが住むコンフォートマンションに到着する頃には、既に日はとっぷりと沈み、街灯の光と月明かりだけが辺りを照らしていた。

帰りの車中では、時折僕がアスカの身体の心配をして話しかけ、アスカがそれに受け答えする位で、それ以外に僕たち三人はほとんど口を開くことが無かった。

帰りの道中、僕とアスカは互いに手を握り締め合い、その手は離れることが無かった。その掌の温もりが、お互いの愛情と信頼を確認する為の唯一の方法であると、僕にはそう感じられていたのだ。

駐車場に車が滑り込んで停車すると、僕はまるで二人の間を引き裂かれるような思いで、繋いでいた手を離した。

僕たち三人はそれぞれ複雑な思いを抱えながら、沈痛な面持ちで車から降りた。

僕とマヤさんの住む部屋のすぐ隣がアスカの家なので、僕たち三人は車のトランクからそれぞれの荷物を抱えると、両手に持って同じエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターの中でも、僕たち三人は、終始無言のままだった。

チンッ。

やがて、僕たちの家のある階に到着して、エレベーターの扉が開くと、僕たちは歩き始めた。

アスカの家のドアの前に辿り着くと、アスカは久方ぶりに口を開いて言った。

「・・・この五日間、いろんなことがあったわ・・・」

アスカは玄関のカードキーのスロットに、取り出したカードを通さずに、僕の眼を見据えて続けた。

「ねえ、シンジ。アタシ変わってしまった?もう元のように幼なじみの関係には戻れなくなっちゃったの?教えて、お願い・・・」

僕は黙ったまま、アスカの掌をギュッと握り締めた。

アスカは強い力で僕の掌を握り返してきた。そのアスカの瞳を見ながら、僕は言った。

「・・・きっと、僕らはもう元の幼なじみの関係には戻れないと思う。でも、これだけは言える。僕はアスカのことが大好きだ。これからは一人の女の子としてアスカと付き合ってゆきたい。この旅行でようやく僕も心からアスカのことが好きだって言えるようになったんだ・・・」

それが僕の正直な気持ちだった。僕の台詞を聞くと、アスカは碧い瞳を歓喜の涙で潤ませながら言った。

「シンジ・・・」

アスカは僕の名を呼ぶと、両手に抱えていた荷物をその場に置いて、僕の首に手を回して抱き付いてきた。僕は、その抱擁に答える為に荷物をおろすと、アスカの良い匂いがする、柔らかな感触のしなやかな肢体にそっと手を這わせた。

僕はたち二人は互いに見つめ合いながら、ゆっくりと顔を近づけていって、眼を閉じると唇を重ねた。

ちゅっ・・・。

その口付けは、決してディープなものではない、軽く唇を重ねるだけのものだったが、お互いの愛情を確認するにはそれで十分だった。

ほんの数秒口付けを交わした後、僕たちはどちらからともなく唇を離すと、また見つめ合った。

「アタシ、シンジのことを信じる。アタシもシンジのことが大好きよ・・・」

アスカはそれだけ言うと、頬をうっすらと上気させてカードキーをスロットに差し込んだ。

カチャッ。プシュー。

アスカの家のドアのロックが外れる音がして、ドアが自動的に開くと、アスカは室内へと消えていった。

アスカが家の中に消え、扉が閉まると、それまでずっと黙ったまま僕とアスカの様子を見ていただけだったマヤさんが言った。

「シンジ君、今はそれで良いかもしれないけれど、これからわたしの言った言葉の意味に気が付くと思うわ。もうアスカちゃんとあなたは普通の恋人どうしには決してなれないっていう言葉の本当の意味に・・・」

マヤさんはそれだけ言うと、にこり、と妖しい微笑みを浮かべて僕たちの家のドアを開けた。

そう、マヤさんの予見したとおりに、僕とアスカには更に過酷な未来が待ち受けていたことに気が付くのには、そんなに時間はかからなかったのだった・・・。

 

(第一部・完 つづく) 

 


(update 2000/12/28)