るろうに剣心

■〜月之輪〜 操 編■

-1-

作・スイケンさま


 

 その日はたしか・・・・・満月だったかな・・・・。 

 

 そんな気がした。

 

 

 

 そろり。

 

 そろり。

 

 そろそろ。

 

 ばき。

 びくっ!!!!!!!!!!!

 

 

 

 しーん。ほっ。

 

 かたっ・・・。

 

 ぬきあし、さしあし、しのびあし・・・。

 

「蒼紫さまぁー(^^)」

 がば。

 

 あれ。布団には蒼紫様がいない。

 

「あれ?????」

「何をやってるんだ・・・。」

 後ろを振り向くと、冷ややかな目で蒼紫様が見下ろしていた。あっちゃぁー・・

・。

 

「あれ・・・。なんでわかったの?」

 機嫌が悪そうだったから、かわいく言ってみたが、

「廊下を歩いてくる音でわかってたぞ。」

 

 あんまりかわらないー!!!おこってるー!!!

 

「なんだ・・・。つまらないの。」

「何がつまらないんだ?」

 なにも分からないように聞いてきた。わかってるくせに・・。

 

「せっかく夜這いに来たのに・・・。」

 

ふうっとため息をついて蒼紫様は答えた。何言われるか分かってるけども。

 

「まったく、なにやってるんだ。部屋に戻って寝なさい。その格好も何だ!」

「えっ。夜這いをやるならこのくらい・・・。」

「きちんと着なさい!!!!」

 

 怒鳴られたあ・・・。そりゃあ色っぽさをだすために、珍しく白い襦袢とか着てる

けど・・・。

 前は肩まではだけて、足も太股まで見えてるけども・・・。

 ( いつも見せてるけどもこれはちがう・・・ )

 せっかく蒼紫様のためにやったのに。勇気がいるんだからね!!!

 女の子がここまでするのは!!!

 

「それとおまえがそんなことするには早すぎるぞ。もう少し大人になってから

 誰か好きな人が出来たらやりなさい。」

 

 ・・・・。まさかそんなこと言われるとは思ってなかった。全然あたしの気持ち分

かってない。

 あたしはがやったことは何?いけないことなの?蒼紫様のためなのに?

 蒼紫様が好きなのに。そう思ったら瞳から雫が落ちた。

 

「おい、どうした?何で泣いてるんだ?」

 

 自分がいったことで泣いたとは思っていないらしく、しゃがんで

 あたしの顔を不思議そうに見つめた。

 

「蒼紫様のバカぁ!!!」

 あたしは、蒼紫様をポカポカ叩いた。

「おっ、おい。」

「どうしてあたしの気持ちが分かんないの!!分かってるでしょ!!

 知らないフリなんかしないでよ!!!」

 その時、泣きじゃくっているあたしの上から、ふわっと何かが覆いかぶさってき

た。

 

 蒼紫様だ。あたしは蒼紫様に抱き締められた。

 

「何するの!!!」

 あたしは抵抗した。嬉しかったのとびっくりしたので頭がおかしかった。

 こんな時に優しくしないでよ。抵抗していたら抱き締める力が強くなった。

 

「・・・俺の話を聞け。」

 

「はなして!!」

 

「俺の話を聞け。」

 

「いや!!」

 

「俺の話を聞け。」

 

「いやっ!!!!!」

 

「聞け!!!!」

 

 びくっ。

 

 いきなり怒鳴られてあたしは抵抗するのをやめた。ため息混じりでこう言った。

 

「俺がおまえの気持ちを分かってないと思ってるのか?」

「ひっくっ、うん。」

 あたしはさっきの怒鳴られたので泣きやんだ。こんなに怒った蒼紫様・・・。

 初めて見た・・・。

「おまえはまだ二十歳にもなってないだろう。俺の気持ちも考えろ。

そんな格好できたら、二十歳までまとうと思った俺の気持ちが崩れるだろ。」

「へっ???っく。」

 

 蒼紫様はあたしの肩に手をおき、布団の上に押し倒した。少し乱暴気味に。

 びっくりした。あたしは自分の目の前にある、蒼紫様の顔を見た。

 目があった。蒼紫様は真剣な顔をしてた。少し怖かった。

 

「我慢しないぞ。」

「えっ。」

 

 あたしが喋るのを遮るようにように、あたしの唇は何かに触れた。

 あたしはなにが起こったのか全く分からなかった。目の前に蒼紫様の顔があった。

 すぐそこに。目を瞑っている・・・。えっ・・・・・・・・・。

 もしかして。これは接吻????と、思った瞬間に蒼紫様の唇はあたしの唇から離

れ、

 首筋に向かった。あたしはどうしてか分からないが、体の中で何かが反応した。

 

 ビクッツ。

 

 その反応に蒼紫様はどう感じたか知らないが、そのままあたしの首筋を舐めていっ

た。

 喉元から耳に向かって。舌で優しく、あたしを溶かすように。あたしはいやらしく

感じた。

 さっきのように反応するのをあたしは懸命に抑えた。恥ずかしかったから。

 でも嫌でもなかった。くすぐったくてはがゆくて。

 そのとき、

 

「!」

 

 あたしは声を失った。

 蒼紫様の手が・・・・。あたしの太股の処に・・・!!!

 くすぐっているのか、ただ触ってるのか。手は少しずつ上にあがっていっている。

 

 蒼紫様の唇は、耳までとどき、あたしの耳たぶを優しく噛んだ。

 

「・・あっ。」

 声が出てしまった。声が抑えられなかった。

 

「蒼紫様・・・・。」

 

そういったとたん蒼紫様の動きが止まった。状態を起こし、横たわっているあたしに

背を向けた。

 

「俺はいったい何をしているんだ・・・・。」

 そういって頭を抱え、肩を落とした。

「すまない。すぐに部屋に戻れ。俺は頭を冷やしてくる。」

 蒼紫様は立ち上がった。部屋を出ようとしている。あたしは何も考えずに蒼紫様に

抱きついた。

 

「・・・いかないで。」

 

 あたしは蒼紫様にこうされる為にきた。はじめは怖かった。いきなり押し倒され

て。

 でも蒼紫様は優しかった。あたしは嫌じゃなかった。

「どうしてだ・・・。欲求のままに動いている俺は怖くないのか?

 おまえを抱きたいという欲求が。いきなりそんなことした俺が。」

「怖くない。大丈夫だよ。蒼紫様。」

 

「震えているぞ。」

 

「いいの。こっち向いて。」

 勇気を振り絞ってあたしは襦袢を脱いだ。

 

「おっ、おい。」

 

「お願い・・・。」

 

 あたしは蒼紫様に抱きついた。たくましい胸板・・。しっかりとした腕・・。大き

な手・・。

「胸もそんなに大きくないし・・・男勝りで、傷だらけの体だけど・・。」

 あたしは顔が真っ赤になった。こんなことしてる自分が信じられない。

 なんて大胆なことをしたんだろう。

 蒼紫様に裸を見られていると思おう、恥ずかしさで死んでしまいたい。

 

 何も言わずに蒼紫様はあたしを抱き締めた。

 

 脱いだ襦袢をあたしに掛けた。

 

 あたしを布団まで運んでいった。

 

 あたしを優しく布団の上に寝転がらせた。

 

 上から蒼紫様はこう言った。

 

「後戻りは出来ないぞ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 

 あたしは頷いた。

 

 

 

つづく。

 

 

 


(update 2000/01/21)