決別

〜螺旋〜

作・ALICEさま


 

永遠と言う時は消えた

 

私の価値も無くなろうとしている

 

そしてここに一つの人形が産まれる

 

人の流れを持つことの無い人形が・・・・

 

螺旋

 

私は寝ているシンジを見ている、とても優しい笑顔。

その笑みを瞳を、私は血で染めるのだろうか。

『任務』の時間まで後、数分、私はこの幸せの中から消え行く存在、そしてシンジに別れを告げる。

『碇アスカ』としての別れを。

 

『ネルフ』の中はあまりに静かだった、何人も許されることの無い静寂の中に私はいた。

三年も懸けただけあって、進入は難なくすんで後に残るは、二人を殺すこと。

今の私は『人を殺す』と言う名の甘美な響きに酔っていた。

自らの想い人を殺すというのに・・・・。

私は狂っているのかも知れない。

自分自身を冷静に判断している私が当然の様に語り掛けてきた。

 

「楽になれ」と。

 

私はそんな自分に苦笑するしかなった。

 

 

 

パンっ!

 

気が付いた時、目の前には人間だったモノが横たわっていた。

「碇ゲンドウ」彼は最期に、殺されると判っているのに笑っていた。

いや、むしろ彼は殺されることを望んでいたのかもしれない、彼の最期の笑みを見てしまった私にはそう感じられた。

彼は私に許して貰いたかったのだろうか。

・・・・違う、誰でもよかったのだろう、自分を殺してくれるのであれば。

哀れな話だ、自決することが出来ず他人に「死」を求めるとは。

だが私はそんな彼に自分と同じモノを見つけてしまった。

私と同じで彼は弱い人だったのだろう。

自らに許しを請うことの出来ない臆病な、そんな哀しい人だったから・・・私は。

彼の死を愛しいと思った。

 

 

夜中の12時を時計は刺している、そろそろシンジが来る頃だ。

何故なら私が彼を呼んだのだから。

私はシンジが来るのを待っていた、「碇ゲンドウ」の部屋で。

 

そしてシンジは来た、私に殺されに。

シンジは自分の父親の死を見ても平然としていた。

それが当たり前のように、何事もなかったように落ち着いていた。

そして私に話し掛ける。

「アスカ、ありがとう。」

彼は気づいていたのだろう、父が許しを求めていたことに。

そして私たちは長い間見詰め合っていた。

 

彼が微笑んだ時、私の中で何かが壊れ、そして生まれた。

私は迷うこと無く彼に銃を向ける。

それを見ても彼は動じなかった。

 

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

貴方はどうして笑っていられるの?

 

どうして立っていられるの?

 

それとも貴方は壊れているの?

 

・・・・それとも私が壊れているの?

 

何故私は許しを彼に求めているの?

 

貴方は私の心なのにどうして私は撃とうとするの?

 

・・・・私は一体何脅えているの、答えて!アスカ!

 

お願いよ!答えて、アスカ!私に未来を見せて。

  

私は未来に希望を持ちたいの!

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

  

私は人では無いから。

私自身では、私のやってきた事が正しいことなのか、悪いことなのか、肯定することも否定することも出来ない。

でも私は人でありたいから、生きる事を認めて貰いたいから、私は・・・・。

 

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

一人になるのに脅えているの?

 

一人がそんなに恐いの?

 

相手にされなくなる事が恐いの?

 

貴方は何をそんなに脅えているの?

 

私には貴方が判らない。

 

貴方が何を望んでいるのかが見えない。

 

私に言えることは「貴方は人」と言うことだけ。

 

私が出来ることはもう何も無い。

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

 

私はこの時シンジを見る事が出来なかった。

『人』では無く『人形』だったはずなのに涙でシンジが見えなかった。

私にはすでに引き金を引く勇気を持てなかった、いや無くしてしまった。

私が涙を拭い、シンジを見た時、そこには私に銃を向けている彼の姿があった。

「!」

「どうして?」

「僕は、まだ死ねないんだ、だから・・・・。」

私は理解した、シンジは全て知っていたことを。

「貴方を殺さなくて済むなら・・・・私は良いわ。」

私はそう言って銃を捨てる。

彼と私の瞳が重なった時。

 

私の胸に鋭い激痛が走る。

目の前がゆっくりと白くなって、私は力が抜けていくのが分かった。

私は彼に抱きかかえられていた。

彼は涙を流していた、こんな私のために。

私は死ねるのだろうかと思った時、笑っていてのかもしれない。

彼の涙を拭うと、シンジは私の夫は私に優しいキスをしてくれた。

 

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

わたしはどうなるのかしら

 

わたしは許してもらえたのかしら

 

わたしは自由になれたのかしら

 

そうか、かれが優しかったから

 

わたしは・・・・自由になれたんだ

 

ありがとう、わたしの記憶

 

そしてサヨナラ

 

サヨナラ、アスカ

 

良い夢を・・・・・

 

ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA ASUKA

 

 

そのときアスカは見た。

全てに浮かび上がる螺旋の流れ。

それは宇宙であり、心であり、人であった。

お互いを写す鏡のように螺旋の流れ、DNAはアスカに入っていった。

今、アスカは人となった。

 

「ありがとう、シンジ・・・・・。」

 

「私は貴方に永遠を見つけることが出来た・・・・・。」

 

「だから、だから、貴方も・・・・私に・・・・見つけて。」

 

「これは私の最期の、人としてのお願いだから・・・・。」

 

「だからシンジ、もう一度、会いましょう、永遠の中で・・・・。」

 

「それまで・・・・・サヨ・・・・・・・・ナ・・ラ・・・・・・」

 

 

 

後書き?

アスカさん死んじゃいました・・・・・(^^;

(「この野郎ここでしっかり言っとくなんて嫌な奴だ」と思ってくれて結構です。)

でもこれでこの話はハッピーエンドなんですよ。

お怒りの方もいらっしゃいますでしょうが、許してくださ〜い。

ALICE


みゃあの感想らしきもの