決別
作・ALICEさま
私の今の名前は『碇アスカ』
ドイツ生まれの日・独・米のハーフ。
私は理由があって日本にいる。
そして私には秘密がある。
夫に言えない秘密がある。
それは絶対に知られてはいけない事。
その事が彼に知られれる事、それは今の生活の終わりを意味している。
だが、その生活も終わりに近づいている
決別
「アースーカー!もう!いいかげんに起きてよ!」
怒気を含んだ声。
私を起こすために肩をゆする人、それは私の一番大切な人。
私の心の水源となってくれた人・・・・・・。
彼は私が生きてきた人生の中で、誰よりも優しい。
そして愛しい。
「もぅ、頼むから起きてよ。」
しょうがないこれ以上苛めるのは可哀相だから止めとこうかな?
「ん〜、まだ眠い・・・。」
私はまだ眠い振りをする。
「何言っての!もう八時半だよ。朝ご飯の支度がもうすぐ出来るからシャワーでも浴びて来いよ。」
私はここでも彼を騙している。
「今日は十一時からの冬月教授の講義に出なきゃ駄目なんでしょ。」
私はいつも五時には起きている。
「だから、もう起きてよ〜。」
それでもこの人に甘えていたいから寝たふりをする。
「アイ(ハイ)。分かった。じゃ、お休み・・・・。」
やっぱり可愛い!も少し苛めちゃおー。
「『じゃ』じゃないよ!あすか!」
「いい加減にしないと、朝ご飯、作らないよ。」
・・・・私はそれを聞いてちょっとやりすぎたと反省する。
彼の作る朝食が食べられないのは私にとっては『任務』よりキツイ。
「すいません。もう起きました。」
こういう時は素直に誤るに限る、すぐに笑って許してくれるから。
彼は優しいから・・・・・・・誰よりも。
私の夫「碇シンジ」とは、大学入学式の時に初めて会った。
彼と目が合ったとき、彼の瞳の奥底の『優しい光』に引かれた。
そして、初めて会った二ヶ月後に私たちは結婚した。
結婚については何も問題はなかった。
私には両親はいないし、彼にも父親がいるらしいが彼に何も干渉してこなかった。
だが、私には彼と結婚した理由が二つある。
私が日本に来た理由。
それは、ある『任務』の遂行と完遂させること。
そのために、6歳の頃から私は『人形』として育てられてきた。
そう、『任務』のために全てを懸けて。
18歳のときに特待生を装って日本に来た、もちろん『任務』を遂行するためだめに。
そこで彼と出会う。
まさしく、それは運命といってよいだろう。
そして私は『任務』のために彼と結婚する。
理由としては、日本国内で自由な行動を行うための日本国籍を得るため。
もう一つは、彼の父親である、「碇ゲンドウ」率いる、国連直属の組織『ネルフ』に近付くために。
そう、私は『ゼーレ』と言う組織の諜報員として日本へ派遣されてきた。
『ネルフ』の『碇ゲンドウ』及び『碇シンジ』の存在を消すために。
私は『ネルフ』と言う組織が何をしているのかと言うことは余り知らない。
だが、過去に『エヴァンゲリオン』と言うコードを調査しているときに『ネルフ』に行き着いたことがあった。
今回もそれが関係している。
過去の彼らに何が在ったのだろうか、ここに来るまでは知らなかった。
だが私は彼を通じて手に入れた情報により真実を知る。
彼が『エヴァンゲリオン』のパイロットだったこと、そして彼が世界を救ったこと。
そして、彼がその事で深く傷ついていること。
『碇シンジ』彼は私の全て、だがそんな彼に暗殺の命が懸かっている。
私はそんな彼を利用してきた、愛していながらも。
何時の間にか自分の中には無い彼の純粋な優しさにに惹かれていた。
彼は生きていることに対しての執着が余り感じられなかった、たまに見せる余りに悲しげな表情が、私の過去と相重なった時私は彼を抱きしめる。
そして彼も私を抱きしめる。
それでも私は彼を騙し続けた。
その時、涙は枯れ果てたと思っていた。
彼は私に様々な情報を提供してくれた。
彼を殺す計画の・・・・・・・・。
私の『任務』は彼らの過去を清算すること。
そして、すべての準備が先日整い、『ゼーレ』本部から『任務』遂行の命令が下された。
今日、『任務』の最終段階に入る。
この事は三年間の彼との生活の終わりを意味している。
だが私は『任務』を遂行するだろう。
例え彼を殺す事になろうとも、それがどんなに悲しい結末を迎えるとしても、私は『任務』を遂行する。
そのために生まれたのだから。
それが私の存在意義だから。
彼を殺すために私は生まれたのだから。
だから私は『人形』へと変わる。
シャワーから流れる水は私を現実へと戻してゆく。
シャワーから上がると台所では私の愛しい人が朝食を作っている真っ最中だった。
彼の背中が急に愛しくなった。
「シーンージ!!」
私は彼に後ろから抱き付く。
「あ・アスカ!?」
彼は突然の事に驚いているが私は彼から離れるつもりはない。
今日で、全てが終わるから、全てを自ら壊すのだから。
そう、これは私が『人形』に戻るための儀式。
「ちょっと、アスカ、こんな・・・・朝から、止めてよ。」
彼は慌てているがそれでも私は止めない。
いや、自分の感情を止める事が出来ない。
「・・・・・・アスカ・・・・・・・・・その、卵焼きが・・・・焦げちゃうよ・・・・・・・・。」
彼は自分の作っているものが心配な振りで逃げようとする。
私はそんな彼の態度がもどかしくなってガスコンロに手を伸ばしそれを消すと、彼に呟く。
「シンジ・・・・・今、しよっか?」
「ちょっ・・・・・・・・・アスっ!」
「・・・んんっ!!」
私は彼が最後まで言う前に彼の唇を奪うような形でキスをする。
彼はとても優しい、こんな私の我侭を何も言わずに、全てを受け止めてくれる。
世界中の中で一番優しいキス、常に私の心を潤してくれる彼のキス、これが私を『ヒト』に止めさしてくれる唯一の温もり。
キスを止めて彼と目が合ったとき、私は泣きそうになっているのを必死にこらえていた。
すると彼が今度は私に腕をそっと回してきて、こう呟く。
「・・・・・・・アスカ、どうしたの?」
こんな時にまで私に気を使ってくれる彼の優しさに私は耐えられなくなった。
私は涙が止まらなくなってしまった。
まだ自分の中に涙が残っていたことが嬉しかった。
「アスカ。今日はどうしたの?何かあったの?」
私は彼に本当の自分を伝えたかった。
でも、それは許されないこと。
それでも、私は彼を愛していた。
私を受け止めてくれる腕があったから。
だから、私はそんな彼の優しさに溺れたのかもしれない。
私は彼に伝える。
「私を愛して・・・・・・・。」
「お願いだから、私を離さないで。」
彼からのキスが私を包み込んでゆく。
ベッドの中にいる彼は最後のキスのときに私が眠らした。
私は彼の寝顔に規視感みたいなものを感じた。
彼と私は永遠なのかもしれない、そんな風に思えた。
もう戻る事が出来ない所まで来たことが悲しかった。
けれども私は彼に会えた事が、奇跡のように思える。
だがそれは残酷な真実への足掛けにしか過ぎない淡い幻想、その事に気付かない振りをすればするほど苦しくなってゆく自分を私は呪う。
そしてシンジに別れを告げる。
私はこの後もう一度シンジと会うだろう。
次に会うときは、別れのとき。
彼は私に何を見たのだろうか?
彼は私の中の永遠に気付いてくれたのだろうか?
私は、手に入れたものを壊そうとしている。
私は消える、すべての思い出とともに。
そして彼との思い出が、私の想いが、そんな私の全てが水のように手の隙間から零れ落ちてゆく。
私にはもうその想いを取り戻す事は出来ない事を悲しみ、そして大切な想いを解き放つ。
・・・・・・・・・・・・・私は『人形』へと戻る。
・・・・・・・・・・・・・溶け合う心で私を壊す。
・・・・・・・・・・・・・私の心を凶器に変えて。
そして今日、私は・・・・・・・・・・・・・・・・・
シンジ・・・・あなたを殺します。
後書き?
ダーク過ぎたかもしれません。それに投稿を始めてまだ間もないのに、こんなオリジナルを書いて。まだまだ未熟ですがこれからもよろしくお願いします。これを読んで思ったこと、ここをこうした方が良い、等のアドバイスやご意見お待ちしてます。
10/30 ALICE
みゃあ
と偽アスカ様(笑)の感想らしきもの
みゃあ「おおっ!すんごい甘いストーリーかと思ったら、最後はダークに…」
アスカ様「いやぁぁぁぁっっ!な、な、なんであたしがシンジを殺さなくちゃいけないのよっ!!」
みゃあ「それがですねぇ、ここではアスカ様ゼーレの刺客ってことになってるらしいですよ」
アスカ様「な、な、なんでこの美しくも聡明でナイスバディのあたしが、あんなキチ○イじじい共の手先なのよっっ!!!」
みゃあ「しょーがないですよ。そーいうお話なんですから。でもいいじゃないですか」
アスカ様「何がいいのよっ!?」
みゃあ「…ちゃんとシンジくんとえっちできたし(笑)」
どげしっ!
アスカ様「いっや〜〜〜〜〜〜!!シンジぃ〜〜〜〜」