ミサト大作戦

〜第二話「シンジ捕獲計画」〜

作 DENTER.Tさま

 


 

夕暮れの第三新東京市。

 

ジャージ姿の中学生に声を掛けるミサトの姿があった。

 

「トウジくん、ちょっち、お願いがあるんだけどぉ」

 

ミサトの得意技、猫撫で声である。

 

「ミ、ミサトさん!ワイはミサトさんの頼みとあれば何でもやりまっ

せ!何でも言うて下さい!」

 

トウジと呼ばれたその少年は、ミサトに声を掛けられいかにも感激、と

いった感じだ。

 

「実はね、ちょっと味見してもらいたい物があるのよ」

 

ミサトはそう言うと、ポーチから小瓶を取り出した。

 

 

 

それから2時間後・・

 

郊外に建つ巨大なマンションのエレベーター、一人の少年がいた。買い

物帰りなのか、手にはスーパーの袋をぶら下げている。

 

制服姿のこの少年は、碇シンジ。ネルフが開発した巨大なロボット(い

やサイボーグというべきか)[最終決戦兵器エヴァ]のパイロットであ

る。だからといって特に運動神経が優れている訳でも、頭がいい訳でも

ない。

 

「奴がエヴァに乗っていれば、都合のいいときに必ず暴走し、[使徒]

を倒してくれる。すべてはガイ〇ックスの思惑通りだ・・問題はない」

 

こうした行き当たりばったりのネルフの戦略によって、シンジはいまだ

にエヴァ初号機の専属パイロットに収まっているのだった。

 

だが、シンジにとってそれは喜ばしい事ではない、むしろ苦痛ですらあ

る。実際、彼はミサトの立案した無茶な作戦により、何度となく殺され

かけている、嫌になるのも当然だろう。

加えて、その度に見る殺風景な病室の天井も見飽きていたし、そこに美

人の看護婦が登場しない事にも失望していた。

 

「ミサトさん、今日も帰ってこないのかな」

 

シンジはため息交じりに呟く。ミサトがいない事が淋しい訳ではない。

問題はもっと別のところにあった。

 

もう一人の同居人、アスカのことである。エヴァ弐号機のパイロットで

ある彼女は、いつのまにかシンジと同様、ミサトの家に住む事になった。

 

お互いまんざらでもなさそうなのだが、アスカは気弱で内向的なシンジ

とは対照的な性格で、わがままでプライドが高く、いつも二人はちょっ

とした事で口喧嘩になる。

 

いつもだったら、ミサトがなだめ役になってくれるのだが、ここ数週間

彼女は仕事が忙しいのか、まともに帰ってきたためしがない。

おかげでシンジは、毎日のようにアスカに言い負かされていた。

 

エレベーターが目的の階に着き、「チン」という音とともに目の前にあ

るドアが開く。条件反射的に足が前に進んでゆく。

 

「今日はアスカ、遅くなるって行ってたな・・」

 

今はちょうど文化発表会の準備中で、その準備のためにヒカリの家に寄

ってくるからだ。

 

一瞬、何となくほっとする。

 

だが、口喧嘩の開始のゴングが遅れるだけで、結果は同じ事だ。

その想いがシンジの足取りを重くさせた。

 

[葛城]と書かれたドアの前で鍵を取りだし、それをノブの鍵穴に差し

込む。ガチャリという音がして、ロックが外れる。ドアを開け重い足取

りのまま中へと入る。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、シンちゃん。意外と早かったのね」

 

誰もいないはずのリビングから、意外な声が返ってきた。

 

よほどうれしいに違いない。自然と表情が明るくなる。

 

「ミサトさん!帰ってきてたんですか!?」

 

先ほどまでの暗い気持ちが嘘のように晴れ渡り、足早にリビングへと駆

け込む。

 

しかし、その瞬間

 

シンジの足がピタリと止まり、そのままその場に張り付いたように動か

なくなった。その表情は凍り付き、瞬きさえ忘れてしまったかのように

見える。

 

ミサトはいつものようにタンクトップにショートパンツといういでたち

だ。

 

しかし、シンジにはどうしても理解できない点が一つだけ、その光景の

中に存在していた。

 

あのミサトが料理を作っているのだ!しかもエプロンまでして!

 

シンジの頭の中はかつてないほど混乱した。

 

(夢だ、夢に決まってる、

 あのズボラで、酒癖が悪くて、ついでに男癖も悪くて、

 料理といえばレトルト物しか作ろうとしない、

 いや、作れないミサトさんが、エ、エプロン着けて、しかも緑色だ、

 そ、それは関係なかった、でも、りょ、料理作ってる!!)

 

「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・」

 

スパーン!

 

パニックが限界に達し、うわ言のように繰り返すシンジの頭に激しい

衝撃が走り、何とか正気に戻る。

見ると、ミサトの手にはどこから持ち出したのかハリセン・・、

もとい、スリッパが握り締められていた。

 

「ちょっと、シンちゃん!わたしがお料理作ってるのを見てビックリ

するのは許せるけど、これじゃわたしが[使徒]かなんかみたいじゃな

い」

 

目の座ったミサトの顔が、アップで迫ってくる。

 

「す、すいません。ちょっ、ちょっと混乱しちゃって。ミサトさんも

一応女の人ですから、料理くらいしますよね、はは、ははは・・」

 

本当はちょっとどころではではなかったのだが、引きつった笑いで

ごまかす。だが、ミサトは止まらない。

 

「シンちゃ〜ん?一応とは何よ、い・ち・お・うとは」

 

ミサトの顔が、今度はどアップになる。

シンジにとって今のミサトは間違いなく[パターン 青]だ。

ヤバイ、何とかこの場を切り抜けなくてはならない。

 

「そ、そうですよね、一応なんて事はないですよね、ミ、ミサトさんは

とても素敵な女性ですもんね、ははは・・」

 

引きつった笑いが、さらに渇いていくのが自分でもわかった。

 

「・・わかればよろしい」

 

ミサトはニコッと表情を一転させると、シンジにぶつかりそうになるま

で迫っていた顔を離し、手に持っていたスリッパを履き直して、キッチ

ンに戻っていった。それを見て、シンジはほっと胸をなで下ろす。

しかし、それも束の間、

 

「シンちゃ〜ん、ちょっとお味噌汁の味見してくれないかしらぁ」

 

今度は毒味のご指名がかかる。

恐る恐るキッチンへ向かうと、ミサトが既に小皿に味噌汁をよそい終わ

ったところだった。

 

「味見って、ミサトさんは味見しないんですか?」

 

「やっぱこういうのは、シンちゃんが一番信頼できるでしょ?」

 

無茶な理屈だが、ここで断ったらまたミサトさんが怒り出すに違いない。

差し出された小皿を受け取り、ややためらったあと、意を決したように

味噌汁をすする。それを見つめるミサトの表情は、何故かいつもにはな

い程真剣だ。

 

「・・・・」

 

コクンとシンジの喉が鳴る。

と、同時にそれを見つめるミサトの唇が、ニヤリと笑ったような気がし

た。

 

「・・・・・・、美味しいです!ミサトさん!」

 

味噌汁と一緒に[意外と]という言葉も飲み込み、答えるシンジ。

だが、ミサトの反応は味噌汁の味になどまるで関心が無かったかのようにそっけないものであった。

 

「そ、そう?良かったわあ」

 

なんだか取り繕っているような返事をして、再びキッチンへと向き直る。

その様子を変だとは思ったものの、とりあえず無事に済んだのを喜ぶ

シンジ。

その時ミサトの目に妖しい光が輝いたのを、シンジは知る由もなかった。

 

つづく

 

 

ENDING

Fry me to the moon(食いしん坊万歳!バージョン)

 

 

 

次回予告

 

ミサトの罠にはまったシンジ

自由のきかないシンジの身体にショタコン・ミサトの魔の手が伸びる

シンジは貞操を守りきれるのか、それとも・・

 

次回「ハヤすぎた経験」

来週はミサトがサービスよ!

 


 

ミサトリツコの感想らしきもの。

 

ミサト「ふっふっふ……うまくいったわよ、リツコ」

リツコ「ふっ…当然ね。あたしの作戦は完璧よ」

ミサト「でもあんた……何か企んでるでしょ?」

リツコ「(しれっと)あら、何のことかしら?」

ミサト「……まぁいいわ。あたしにはシンちゃんがいるから…うふふふふふ」

うめき声「むー!ふむー!ふむむーーーっっ!!」

リツコ「ちっ!クロロホルムが薄かったみたいね……」

ミサト「こーいう時は……こーするのよっ!」

 

ごめすっ!

 

うめき声「ふむっっっっ……(がくっ)」

リツコ「……さすがね、ミサト」

ミサト「ふっ……ざっとこんなものよ。さあ、DENTER.Tくん!早く次を書くのよ!あたしとシンちゃんのえろえろなヤツをネッ!」

リツコ「………」

ミサト大作戦2