続・2つの記憶〜演奏〜

第二話「豊潤」

作・D・Sさま

 


 

アスカがくるりとこちらに向き直す

 

きれいな瞳

 

少し青みがかった透明感のある....そんな瞳でこちらをじっとみる

 

なにか迷っているようだ

 

僕はおもわず心配になる...どうしたんだろう...?

 

そんな気持ちが瞳にでてしまったのかアスカが言う

 

『シンジ...あなたがそんな表情をする必要はないわ...』

 

『..........』

 

アスカが僕を”あなた”といった...これはあの日以来なかった言葉だった

 

つまり、そういうとき以外そうは言わない

 

僕の気持ちはあの日と今日現在を行き来しはじめた

 

 

 

 

僕らは愛しあった....たった一度だけ...

 

でも、僕には2度は必要なかった...互いの身体をただ求めることが愛の形とは思えなかっ

た.....

 

そんなことはなくとも僕とアスカは心の奥でいつも一緒だとそう思っている

 

しかし、時の経過は互いの心を冷やしてしまう

 

アスカがどう思っているのか分からないときが増えはじめていた

 

 

 

『シンジ...こういう事聞くのは嫌なんだけど....あたし...どうしたらいいの?』

 

『.....!....』

 

『あたし..あたし、わかんないの!シンジが...わかんなくなってきてるの!』

 

『アスカ...』

 

アスカの眼は僕を真直ぐみつめつつも、うっすら湿ってきていた

 

『ずっとね...心の中は一緒だって...そうおもいたいの』

 

『シンジの望みがあたしの身体なら何度だってあげる.....でも』

 

『あたしが想うシンジはそんな事は望まないってわかってるの......だから』

 

『だから...?』

 

『そう、だからね』

 

アスカは少しずついつもの冷静さを取り戻しつつあった...

 

しかし、僕に自分の想いをぶつけた恥ずかしさは感じていないみたいだった...僕にはその

ことがうれしかった

 

『シンジ、あたしのことどう思ってる?』

 

『えっ、そっそりゃもちろん.....』

 

僕は...好きだよ、とか愛しいよ、とか口走りそうになったが頭に熱が上るのを感じ、言葉

がでなかった...まだそんな台詞は言えそうになかった

 

アスカはそれを察知したらしかった

 

『シーンジー?あたしが喜びそうなことを言おうとしてんのは嬉しいけどそうじゃない

わ』

 

『えっとー、つまり?』

 

『つまり、あたしと暮らしはじめて何が心に残ってる...つまり..思い出ってのは?』

 

僕はそのときアスカの唇に関する思い出しかでなかった

 

.....アスカが眠ってるのをいいことにキスしようとした僕

 

....ミサトさんがいなかったときのアスカからの強引なキス

 

....そして..僕を愛してくれたときのキス

 

でも、それは口が割けてもいえなかった...それはアスカの求めている答えじゃないのはわ

かりきっていた

 

『例えば....』

 

『例えば?』

 

アスカが期待している答えが何かわからないまま口から言葉が漏れる....

 

『風呂が熱いと文句をいって、謝ると内罰的だと文句をいう....』

 

はっと僕は後悔した...なんてことを言ってしまったんだ、僕は

思わず下を向きそ〜っとアスカをみた...眼には鬼の形相のアスカが...

 

いなかった

 

にこにこしていた..かといって怒りを抑えてるという感じではなかった...

 

 

 

 

『よくできたわ、シンジ』

 

『えっ?』

 

『つまり..あたしとシンジには思い出って呼べるものがまだないのよ』

 

『そっそういえば...そうだね』

 

そのとき僕の頭にはアスカの裸が浮かんでしまった...あの日のあれは思い出じゃなきゃな

んなんだ?...経験か?

 

『だから、演奏会を行うのよ...二人のはじめての...思い出として...』

 

やっぱりアスカはあれは思い出と思ってないらしかった

 

『えっと、じゃーその演奏会はいつやるの?明後日くらい?』

 

アスカの得意ゼリフがきまった

 

『あんたばか〜?そんなんじゃだめよ、せめて1ヵ月は欲しいわね』

 

『そんなに?』

 

アスカはかなり本格的にやるつもりらしい

 

『あったりまえじゃない、やるなら徹底的に、よ』

 

『.........』

 

『それに...二人の思い出になるのよ、中途半端に終らせたくないの』

 

それが本心、それがわかって僕も決心がついた

 

『わかったよ、アスカ...やるなら徹底的にだね?』

 

『うん!』

 

そのとき、ミサトさんが帰ってきた

 

ミサトさんは僕らが帰ってきたあの日、僕らをなんら変わらず迎え入れてくれた

 

『『おかえりなさい、ミサト(さん)』』

 

『ただいま』

 

ミサトさんはあの日以来加持さんの話はしない..心のなかでの葛藤もけりがついたらしい

 

でも、この頃嫌な噂を耳にした...ミサトさんは加持さんの思いを継いでネルフを調べてい

るらしい....かなり危険な行為だと思う...できれば止めてもらいたかった

 

それだけ加持さんはミサトさんの心に住んでいたということでもある...

 

僕は父さんの心に住み着いているのだろうか?

 

リツコさんの心には?

 

加持さんの心には?

 

ミサトさんの心には?

 

日向さんの心には

 

ナミさんの心には?

 

青葉さんの心には?

 

ケンジの心には?

 

ケンスケの心には?

 

ヒカリさんの心には?

 

綾波の心には?

 

そしてなにより、

 

アスカの心には?

 

そんなことを考えるとますます演奏会を成功させなければっと思いはじめた...

 

自分のために、アスカと自分のために.......

 

『あんたたち、今日の夜はシンクロ・テストだからね』

 

『はーい』

 

そのことを口にしたのはアスカだった

 

『ね〜ミサト、1ヵ月後を楽しみにしてなさい!驚くことをあるから!』

 

『えっ何?教えて?』

 

『だめよー、知らないから驚くんじゃない』

 

『え〜ケチー、ねぇ、シンジ君なんか知ってるんでしょ?おしえてよー』

 

『えっえーとですねー』

 

『バカシンジ!いったらあんたホンとに馬鹿よ!』

 

『えっ、あっそっそうだね...じゃーミサトさんノーコメントってことで』

 

『え〜なによー、気になって寝不足になったら、朝ご飯作れないじゃない.....

 朝ご飯知らないわよ』

 

どーせ、つくらないくせに、とは心のなかの声

 

 

 

 

 

......シンクロ・テストは通例通り滞りなく終了........

 

 

 

 

 

僕は自分の部屋にいた...

 

ミサトさんは今日も帰れない...仕事以外のことが関係しているのかな、とか考えてしまう

 

フスマが音もなく開いた....

 

『シンジ...起きてる?』

 

『えっ、アスカ...?うっうん起きてるよ』

 

『絶対...成功させようね...』

 

『演奏会?..もちろん』

 

『そしたら...あたしの中で何か変わるかもしれない...』

 

『.......?..』

 

『ご免ね...シンジ』

 

『えっなにが?』

 

『はじめのときは自分で誘ったのに...誘惑したっていわれてもおかしくないのに...

 なのに...なのにそれ以来なにもしてあげてないもんね』

 

『そっそんなこと...そんなことない..よ』

 

『ううん、わかってる...でも後もう少し待って...もう少しだけ...』

 

アスカは僕がいつの間にか空けた隣のスペースに腰掛けていた

 

『頑張ろう!アスカ』

 

『うっうん』

 

『自分たちでできることはなんでも頑張ってやらなきゃ』

 

『シンジ...』

 

『それに...これはアスカからいったことだよ?やっぱ発案者が弱気じゃ...』

 

『だめよね?』

 

アスカは元気になってきたらしい

 

僕はそのときまで忘れていた事を聞いてみた

 

『アスカ...あのヴァイオリンはどうしたの?見た目とても古かったけど?』

 

『あっあーあれね、あれはあたしのよ...昔のころの』

 

『今日まで知らなかったよ』

 

『ちょっと理由があって隠してたの...』

 

『理由?』

 

『...そうね、シンジにはいっておかなきゃね..』

 

『あれは、あのヴァイオリンはドイツにいたときに知人にもらったものなの』

 

『誰?』

 

『シンジ....あなたの知ってる人よ....加持さん』

 

僕は身体に電流が流れた、加持さん、あなたは皆の心に残っていますよ....

 

『加持さんが死んじゃって....形見になっちゃったからね...しまっておいたの』

 

『でもそれを出したって事は...』

 

『そう、あたしの中でも一区切りをつけようと思ってるの』

 

『今度の演奏会は加持さんの鎮魂歌も含んでるんだね?』

 

アスカはくすっと笑った

 

『でも、シンジとの思いで作りのほうが先に思いついたのよ』

 

そのまま少しのあいだ二人で黙っていた....

 

僕は加持さんのことを考えていた

 

加持さんは僕の心に住み着いている...

 

僕もみんなの心にいるのだろうか?

 

いや、違う

 

みんなじゃなくてもいい

 

でも、アスカには僕の事を覚えていてもらいたい.....愛しいから...

 

 

アスカがかすかな声でおやすみ、といって立ちあがった

 

そのとき、僕のおでこに軽いキスをした

 

僕はアスカのパジャマの胸の谷間を覗いてしまい、疼きを感じてしまった

 

でも、僕はアスカの後ろ姿を目で追うのがやっとだった....

 

 

 

アスカはフスマの前で立ち止まった

 

『アスカ?』

 

『ごめん!』

 

急に振り向くとアスカの頬は涙に濡れていた

 

そして僕にしっかりと抱きついた

 

『ごめんねっ?ごめんね、シンジ!絶対何か変われるから!ただ、今はまだ加持さんがあたしの心に住んでいるの』

 

『いいんだ、アスカ』

 

僕はそういってアスカの顎を手のひらに乗せくいっと持ち上げ瞳をみる

 

『いいんだ、アスカ』

 

僕はそうもう一度いった...

 

そして、アスカを抱きしめた

 

『いいんだ、いいんだ、アスカ』

 

何度も、何度もそれを繰り返しながら強く、強く抱きしめていた

 

第二話『豊潤』完


 

ど〜もD・Sです

 

ど〜でしょう?

 

自分では話がわかってるんで....

 

わかりずらいですか?

 

まぁー、とりあえず加持さんがアスカの心にまだでかいウェイトをしめてるってことです

 

なんかアスカが泣き虫におもえてきます

 

こんなはずじゃないんだけどなー

 

とりあえず自分の頭の中に舞台があってそこで演じてもらってそれを書いてるって感じなんですよ、そしたらいつも泣いてるんですよね〜(馬鹿?)

 

少しでも面白いとおもっていただけたら幸いです

 

次回

 特訓、特訓、特訓

 アスカとシンジは努力を怠らない

 それは『瞬間、こころかさねて』以上のものであった

 アスカの心は

 そしてシンジは加持の墓前で何を思う?

 

次回『続2つの記憶〜演奏〜』第三回『融合』

 

さ〜て、次回もサ〜ビス、サ〜ビス〜(注:シンジ)(結構乗り気)

 シンジ:そんなことないですよっ!


 

みゃあと偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの。

 

(2時間経過)

みゃあ「ぜー、ぜー、ぜー」

アスカ様「はあ、はあ、はあ」

みゃあ「ぜー、ぜー…も、もう止めましょうアスカ様。なんか不毛なことをしてる気がしてきました」

アスカ様「ふ、フン。はあ、はあ…こ、今回はこのぐらいで勘弁してあげるわ」

みゃあ「…と、いうわけで、みゃあたちがアホなことしてる間に、本編はもう2話ができてしまってるんですねぇ」

アスカ様「………」

みゃあ「ぷぷぷ……やーい、アスカ様の泣き虫、泣き虫―!」

アスカ様「……るっさいわね!D・S!あれだけ言ってもまだわかんないの!?アタシとシンジは何でもないんだってば!」

みゃあ「いやいや、これが真実の形ですよ。D・Sさま、このお話では無理かもしれませんが、今度はもっとえっちなアスカ様を書いて、とどめをさしてください(笑)」

アスカ様「……あんたねぇ」

みゃあ「それにしても……泣きべそかいてるアスカ様って…かーいい(笑)」

アスカ様「う、うるさいわねっ!また殴られたいのっ!?」

みゃあ「くすくすくすくす……」

アスカ様「ううううううううううーーーーーっっ!!」

続2つの記憶2