『タイトル未定〜リレー小説〜』

第1回

作・ヒロポンさま

 


 

リレー小説 第一回

 

 

浮かび上がる、そのイメージ。

アスカは、娘と一緒に芝生の上に腰掛けて、ずっと遠くを見詰めていた。

遥か遠くまで続いている芝生の緑は、小さな起伏でもってなだらかな谷を形作りながら

地面を覆っていて、視界の遥か向こうに仄見える荒れ茂った林の手前で徐々に狭まり、木

々の枝枝の影が差し掛かる辺りで、やっと姿を消していた。

さやさやと風が吹く。

小さな稜線が、うねるようにそよいで、何やら一つの生き物のようにアスカには思えた。

その光景に目を細めながら、先ほどから自分の膝の上で同じ光景を見ている、愛しい娘

の肩を優しく抱く。手に胸にじわっと染み込んでくる暖かい感覚が、アスカの心に優しい思

いを満たしていった。

彼女の娘は、後れ毛が目の中に入りでもするのか、時折頭をフルフルと振っては、その

茶色がかった黒髪をゆらゆらと揺らしてみせた。

「パパ遅いね」

いかにも、憤懣やるかたないといった具合に、口を開く。

「そうねぇ。でも、もうすぐくると思うわよ」

アスカは、その小さい頭を見つめながら、優しく髪を撫でてやる。

「ほんと?」

舌足らずな問いかけ。

「ほんとよ。シンジはちゃーんと約束は守るんだから……昨日言いつけた通り、ちゃんと

私を起こしにくるはずよ。なんてたって、今日は、二人で買い物に行くって………」

言葉を途中で切って、眉間にしわを寄せるアスカ。

どこか遠くの方からなにかがやってくる感覚。

何とはなしに釈然としない感覚が、彼女の心内に湧き起こっていた。

−私なに言ってるんだろう?

−起こす?

−買い物?

−……………………………

−そうだ今日はシンジを連れて服を見に行くんだった。……あれ?私こんな所で何してる

んだっけ?

視界が急にぼやけてきた。緑の連なりがうねうねとのたくっている。地面が揺れて、じっ

と座っていられない。

−あれ??????????????????

−あっ、これ夢か?

「パパ早く来ると良いね」

−パパ?

「ほんとねー」

−返事してる。私?

―この子…娘?

―シンジの…………

私の……………

………

−そっか、夢だ。なんか変な夢見ちゃたなぁ。………子供なんか要らないのに……でも、

シンジと私の娘って、いったいどんな顔をしてるんだろう?

−関係ないか。どうせ、夢だもんね…………でも、どうして、こんな夢を見たんだろう。

−こんな事考えてるってことは、私は目が覚めてるのかしら……きっとそうね。シンジの

愚図。ちゃんと起こしにこいって言ったのに……それとも、私が目が覚めたのが早かったの

かなぁ…………今、何時だろう。……目を開けなきゃ……そう、目を開けなきゃ

「ママどおしたの」

気が付くとくりくりとした瞳が、アスカの顔をのぞき込んでいた。

−あっ、こんな顔してるんだ。やっぱり私の娘だけあって、可愛いわね。って、私は子供な

んて要らないんだった………でも、目の辺りなんてシンジにそっくり。

「ごめんね、これは夢なのよ。それに、アタシ、目が覚めちゃうみたい」

アスカは、自分でも変な会話だと思いながらも、すまなそうにそう答えて見せた。

アスカの言った事の意味が分かったのかどうか、娘はくりくりした瞳に不安の色を浮かべる

と、ぎゅっと胸元にしがみついてくる。

アスカは思わず、その小さい体を抱きしめた。どうして、そんな事をしてしまうのか、自分

でも分からなかった。

−夢の中だもんね。……夢だったら、こういうのもたまには良いかな。

ずっと遠くの方から、白い固まりがやってくるイメージ。

その白が意識を覆うのを感じた瞬間、アスカは、ぱっちりと目を開いた。

自分でも驚くほど寝起きが良かった。

「変な夢」

夢の中とはいえ自分とシンジの娘の愛らしさに、覚えず心に暖かいものが湧き起こったの

を感じたアスカは、それがいかにも不本意だとばかりにそう口にした。

−だいたい、なんでアタシとシンジが…………

−きっと、昨日の実験のせいだ。パイロットの意識を拡張してエヴァとのシンクロ率を高め

る為にって、リツコがくれたあのクスリのせいで、昨日は一日気分が悪かったもの………だ

から、こんな妙な夢を見たのよ!きっとそう。

とりあえずの理屈付けを済ますと、アスカは勢いよくベットの上に上半身を起こそうとした。

−あれ?

−なんだろう?胸が重たい…

じっと胸元に目をむける。

さらさらとした、茶色がかった髪が、まず目に入る。愛らしい寝顔。小さい手がしっかりとア

スカの胸元をつかんでいて……スースーとした寝息が、胸の谷間に掛かってくすぐったい。

それはまぎれもなく、五歳くらいの女の子だった。

−なんだ、あの子か………………………

なぜだか変に納得して、ボーッと天井を見つめる。

夢と現実。

現実と夢。

−そうか、胸が重たかったのは、あの子がしがみついてたからなのね……そうか…………

…てっ、なんで?

自分の脳みそが顆粒状になって広がっていくイメージ。

それが、アスカの感じた違和感の形だった。

むに

頬をつねってみる。

「ひたい(イタイ)」

−ということは、私は起きてるんだ。

−ということは??????????????

「なっなっなっなっなっ、なによこれーーーーーーーーーーーーー!」

アスカの絶叫が辺りに響き渡った。

 

つづく

 

初っ端は、やっぱり難しかったです。

ごめんなさい。どうしても娘ものから離れられない私です。

えーと、スタートはアスカよりな展開になっちゃいました。しゅみません。でも、次の方が何

とかしてくださると思います。

とっ言う事で、次は御大「みゃあ」さんを指名させていただきますです。

すいません無責任で……

以上 ヒロポンでした。


 

みゃあと偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの。

 

 ご指名ですが(笑)、コメントはもうしばらくお待ちください。(^^ゞ

リレー1