ぷろだくしょんねるふ繁盛記

その2

作・FISH BLUEさま

 


激しく窓を叩く雨脚、外で電線が風に唸りを上げている。時計の針が指し示す時刻

午後11時34分・・・そろそろ台風が真上に差し掛かる頃だろうか。六畳間の真ん中、

シンジが再会した時にはずぶ濡れのまま熱に身体を火照らせていた真っ白な天使は

今は静かに寝息を立てている。

 

あの後、この会社の連中の彼女に対する仕打ちを思い出し、溜め息を付くシンジ・・・

 

「38度の熱を出してる女の子をAVに出そうとするなんて・・・父さんだけじゃない、

ここの人達って、やっぱりまともじゃないよね・・・」(見て解らんか?)

 

布団の端から少しだけのぞいている、小さな寝息に合わせて上下する、短い水色の髪・・・

 

「・・・ねえ、どうして、君はこんなところにいるの?・・・」

 

もちろん、答えは、無い・・・

 

 

 

えぴそーどの2 「レイ、心のむこうに・・・」@

 

 

時に、西暦201X年・・・

別段、南極に大質量隕石が落ちた訳でも、怪しげな先史文明の落とし物をつつきま

わして爆発させた訳でもない。それでも、御馬鹿な人類の活躍のお陰で、温室効果

の果てにやっぱり南極の氷は溶けた。毎年毎年海面はじわじわと上がる。マスコミ

にあおられてパニくった人々はこぞって長野や山梨にマイホームや老人ホームを建

て、住みにくくなった東京から暫定首都が松本に移って間も無い。EUと中国が発

展すればするほど不景気になっていくどこぞの島国は、内需拡大を図って無謀にも

新首都建設を強行した。しかもよりによって箱根の山の中に・・・怪しい巨人が地下

に埋まっている、いや、タンバテツローの様な顔をした「箱根の老人」が密かに・・・

等の怪しい噂が乱れ飛ぶ中、その真相は明らかではない。某岐O羽島駅並みにその

存在が疑問視される此処・・・いちいち政治家の地元サービスになど付き合ってはお

られんとばかりに皆が冷たい態度をとる為、景気は一向に回復しないし、いつまで

経っても完成の目処は立たず、いっそ計画を破棄し「箱根じおふろんとの森」にで

もしてしまおうか、と言う話も出ていると言う・・・此処、第三新東京市。

 

彼、いかにも気の弱そうな青年、碇シンジ(19)は父、ゲンドウの経営するネルフ

プロダクションの仮眠室、ちゃぶ台と安布団しか置いていない(なんとテレビさえ

無い!!)煤けた六畳間に監禁されていた。無論、シンジの母、即ちゲンドウの元

妻である碇ユイとの連絡を遮断するためである。慰謝料を滞納されて激怒した彼女

は「15年ぶりだな・・・」と言うほど待ってはくれない。今度会えば、待っている

のは確実にユイの「暴走」・・・ゲンドウが第14使徒と同じ運命を辿るのは目に見え

ている・・・

 

そこで狡猾なヒゲオヤジは一計を案じた。彼の一人息子を社運(風前の灯火、いや

殆ど終わっている)を懸けた新作AVに男優として出演させ、世間様に顔向けの出

来ない(お婿に行けないとも言う)身体にしてしまい、しっかり調教したあげく、

ユイの懐柔に用いようと言うわけである。だた一つだけ問題があるとすれば・・・

 

ネルフプロダクションが擁する唯一にして期待の新人女優、綾波レイ嬢(19)・・・

彼女が雨の中、箱根湯本まで歩いてシンジを迎えにいった挙げ句、風邪をこじら

せて寝込んでしまった、と言う事であった。同社営業部長、葛城ミサト嬢(30)

(しつこいわねぇ!29だって言ってるじゃない!!)の談によれば、「二日掛

かりで歩いて山を越え、付いた時には間に合わなかったらしい」との事である。

なお、綾波嬢は箱根湯本駅前の用水路の中で倒れているのを、捜索に出た葛城女

史に発見されたらしい・・・

 

「迎えにいけって、いわれたから・・・」

 

シンジの疑問に対する、レイの答えは極めてシンプルである。

 

「ミサトさんが言ったの?何も歩いていかなくったって・・・」

 

「お金、ないから・・・それに・・・初めてなのに、初めてじゃない気がした・・・」

 

「?・・・会社の人に言えば、交通費くらい出して・・・くれないかもしれないけど・・・」

 

・・・社長に言えば、止められる・・・それでも、気になったから。でも、どうして?

どういう表現をすれば良いか解らないレイ・・・写真を、見たわ。始めてみる物なのに

なぜ、なつかしいの?・・・数日前、会社の郵便箱を開けたら(入っているのは請求書

くらいのものだが、それがレイの日課だったのだ)碇ユイと言う人からの手紙がは

いっていた・・・どこかで、きいた名前・・・?葛城部長に聞いたら、「社長の別れた奥

さんよ。」と教えてくれた。碇シンジというひとがくる事も聞いた。気になった、

なぜ?・・・社長に聞いたら、とてもおどろいていた。でも、写真を見せてくれた・・・

 

「あったことがないのに、どうして、なつかしいの?・・・」

 

困るべきなのか、それとも喜ぶべきなのか?どう反応すれば良いのか解らないシン

ジ。しかし、この一週間(軟禁開始後経過時間・・・)で、大分レイとの「非常に微妙

なニュアンスを読み取る観察眼」を要するコミュニケーション術を身に付け始めて

いた・・・風邪をひいたレイの看病がまともに出来る人間など、(恐ろしい事に医者

であるリツコも含めて)ここには皆無だったのだ・・・かろうじて、冬月医院の看護婦

である伊吹という女性と、メイクのバイト(給料も払えないのにバイトを雇うとは

良い度胸だ)をしている洞木という女の子はまともに家事が出来るらしいが、あい

にく二人とも休みをとって出払っているらしかった・・・しかも彼女はこのビルの仮眠

室に住んでいると言うのだ・・・

 

元はといえば、僕のせいなんだよね、綾波が風邪を引いたのって・・・

 

行きがかり上、また責任を感じた(山ふたつ超えて迎えに来てくれたのだ、レイは)

シンジが彼女の看病に当たる事になったのは、当然といえばそうかもしれない・・・

 

・・・だからって、同じ部屋に寝泊まりさせるって言うのは・・・布団から身体を起こして

文庫本を読んでいるレイの方を僅かに覗き見る。レイはまったく困っていないらしい

が・・・僕の方が、困るじゃないか!

 

『だーいじょぶだって・・・どの道レイが元気になったらそーいう関係になる運命なん

だしい・・・なんならおねーさんが慰めてあげよっか?』

 

うかつな事は言わないに越した事はない。折角脱出の機会を伺っていると言うのに。

しかし・・・少なくとも彼女の風邪が治るまでは、僕が看病しなくっちゃ・・・つらいけど

、毎晩・・・淡白な顔してイカな若者に一週間の、しかも斯様な美少女との生活下にお

ける禁欲は、もうそれだけで拷問であったが・・・

 

しかし、レイと一緒に暮らし、その微妙な感情表現が理解できるように成るに連れて

改めて思う・・・

 

「綾波は、こんなとこにいて良い女の子じゃないんだ・・・君は綺麗だし、その、外見

だけじゃなくって、ほ、ほら・・・精神的って言うか・・・」

 

しどろもどろになって、何を言っているのか自分でも解らない・・・でも、思うんだ、

君がこんな所で汚されるなんて・・・僕は・・・

 

「わたしは・・・碇君か思っているような綺麗な存在ではないわ・・・」

 

「綾波・・・」

 

確かに、彼女については不可解な点が多すぎる・・・唯の「変わり者」では済まない

位に。でも・・・しょうがないじゃないか、その・・・好きになってしまったんだから・・・

 

そう思えば、余計に「不用意に触れて、綾波を傷つけてはいけない」と言う意識が

働いて、結果夜毎の生殺しになるのだったが・・・

 

「あ、御粥、煮えたみたいだね・・・とってくるよ。後は、梅干だけのほうが良かっ

たんだよね?」

 

こく、とうなずくレイ・・・可愛い・・・だんだんと、何時か脱走する決意が揺らぎ始

めるシンジだった・・・

 

 

「レイの素性?・・・ふーん、シンちゃん、いよいよ本気なんだ(ニヤリ)」

 

既に軟禁、三週間目に突入・・・容体は大分良くなったものの、もともと身体の丈夫

な方ではないレイの事、大事を取って休養をとっている。

 

「なーんか毎晩トイレの方から『あやなみぃぃ〜っ』て呻き声が聞こえるらしいん

だけど・・・やせ我慢は身体によくないわよん(はぁと)」

 

「ほっといてくださいよっ!・・・大体なんで夜中に人が・・・あ・・・」

 

・・・是だからちぇりーちゃんは、やめられないのよねー(にやり)真っ赤になっち

ゃって、今が食べごろかしら(じゅるじゅる)内心虎視耽々と狙う、しょたこん30

女・・・(殺すわよ、アンタ・・・)

 

「あたしも詳しくは知らないんだけど・・・リツコの方が詳しいんじゃない?レイの

主治医だし。」

 

「病気なんですか?綾波・・・風邪以外で・・・!!そんな、嘘でしょ!?ミサトさん!」

 

リツコさんの専門・・・性感染症!?嘘だ!綾波がそんな事・・・すうっ、と眼を細める

ミサトの顔から軽薄な笑いが消える。

 

「・・・女には、いろいろあるのよ。大体こんな仕事してるレイが、オボコだとでも思

ったの?・・・シンジ君も結局は「男」なのね。心が大事だとか奇麗事言っといて、い

ざとなれば!やだやだ、所詮あなたも女を所有物だとおもってるのね・・・」

 

吐き捨てるミサト・・・違う!!僕は・・・

 

「レイを抱く度胸、無くなった?それとも、吐き出すだけ利用して逃げるつもり?」

 

「・・・僕に、どうしろって言うんです。そりゃ、驚きましたよ・・・あの綾波が・・・でも、

やっぱり僕は・・・」

 

溜め息を付くミサト・・・その顔からさっきまでの険しさが、抜ける。

 

「直接リツコに聞きなさいよ。カウンセラーの資格ももってんのよ、あいつ。」

 

今更、後に引けるもんか・・・何があったって・・・覚悟、できてる、かな・・・

 

ミサトに連れられて、冬月医院へ向かうシンジだった・・・

 

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あとがき

 

どーも、毒電波発射装置、FISH BLUEです(笑)何か、期待してくださった皆様を

裏切るような物を・・・でもご安心を。一応コメディのつもりですので。ただ、駄目

なんですね。性に関するものを書こうとすると、どうしてもこういうネタを振って

しまふ・・・直ぐに明るく御馬鹿な話にもどりますので。いろいろなタッチを試したい

てのもありますが・・・レイちゃんは絶対幸せになります。これだけは確実。皆様の

ご意見御感想、お待ちしております。では、ごきげんよう。

 

FISH BLUE

 

p.s アスカ君・・・君も登場するのだよ。しかも思いっきり「汚れ」(笑)

但し、シンちゃんはレイちゃんの物やから・・・まあ、期待してくれたまえ。 

 

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