【ブルーセンチネル−for1218−

「時の狭間の縁にて」

作・文


薄暗く日の光ノ届かない所。

人の目には広いのか狭いのかも解らない場所。

暗闇と消えた奥の方には得体の知れない『歪み』が存在していた。

そんな場所に響く人の気配。

戦いの気配。

 

チャリ ヒュゴッ!

パギィン!ガッ!カカッ!

 

薄暗い空間に空を裂く音が響く。

まったく同時に撃剣らしき衝撃音が重なる。

二人の戦士らしき影が現れては消え、消えては現れる。

光の乏しさ故ではない、二人の動きはとても常人にはいや、

生半な達人にも捉えられぬほど速いのだ。

 

カッ!パキッ!ガンッ!

 

幾度か切り結んだ時、片方の戦士が吹き飛ぶ形で地面に叩き付けられた。

落下地点は抉られ、衝撃の凄まじさをまざまざと見せ付ける。

吹き飛んだのは大剣の使い手、僅かにうめきながらも立ち上がった。

 

「やめてえっ!二人が戦う事無いでしょ!今の今迄一緒に戦ってきたんじゃないの!」

息も切れ切れに叫びながら、奥の暗闇から、一人の女性が姿を現す。

その姿は儚げで奥の闇に飲まれてしまいそうだ。

やや小柄な身体、この薄暗い空間を照らすような輝く金髪が揺れる。

二人の後を追ってきたのか肩で息をしている。

その後からまた二人追いついてくる、女性二人の様だ。

「だめだ!!こいつは俺達を裏切ったんだ!俺達の運命を弄んだんだぞっ!

大剣の戦士がもう一人の男を睨み付けたまま叫ぶ。

その目には憎しみとも悲しみともつかない暗い光が宿っていた。

そして、押さえ切れぬ涙が溢れかけていた。

身の丈程もある曲線を伴った片刃の大剣を構え直す。

 

沈黙を守っていた、もう片方の戦士がそれを破る。

「裏切ってはいませんよ、貴方達の意志と私の思惑がずれてしまっただけで。」

「…なにが不満ですか?私が人の世にしてきた事?…それともあなた達にまつわる事?」

「全部だ!」

間髪入れずに大剣の戦士が怒鳴り返す。

「では、ここで決別です。私自身を倒し、私の仕掛けを阻止しなさい。」

そう言いながら、手にしていた小剣に力≠込める。

戦士の二の腕程しかなかった剣が見る見る伸びて行き

倍以上の長さになる。

−魔力剣−

「それが出来るかは、貴方…お前達が良く解っているでしょう。」

その場にいた者が凍り付く、今の言葉は最後通知そのものだった。

誰も…誰もあの男に勝てるとは思っていなかった。

これまでも、そして今も。

 

「力を合わせないと…私には勝てませんよ。」

にこやかに告げる、その顔はこうなる前、

つい先程まで見せていた屈託のない笑顔だった、

そして、もう二度と見れないかもしれない笑顔。

 

「アルピナ…」

最後に現れた一人が今まで仲間であった彼の名前を呟いた。

 





−メイルシュトロームの縁で彼らに何が起きたのか、今は知らすべき時ではない−

 


書き手の言い訳/

プロローグです。ながーい話の一部を切り取って一部のシーンを文章化しました

大元をUPするのはいつの事か…精進します。_(__)_