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薄暗く日の光ノ届かない所。
人の目には広いのか狭いのかも解らない場所。
暗闇と消えた奥の方には得体の知れない『歪み』が存在していた。
そんな場所に響く人の気配。
戦いの気配。
チャリ ヒュゴッ!
パギィン!ガッ!カカッ!
薄暗い空間に空を裂く音が響く。
まったく同時に撃剣らしき衝撃音が重なる。
二人の戦士らしき影が現れては消え、消えては現れる。
光の乏しさ故ではない、二人の動きはとても常人にはいや、
生半な達人にも捉えられぬほど速いのだ。
カッ!パキッ!ガンッ!
幾度か切り結んだ時、片方の戦士が吹き飛ぶ形で地面に叩き付けられた。
落下地点は抉られ、衝撃の凄まじさをまざまざと見せ付ける。
吹き飛んだのは大剣の使い手、僅かにうめきながらも立ち上がった。
「やめてえっ!二人が戦う事無いでしょ!今の今迄一緒に戦ってきたんじゃないの!」
息も切れ切れに叫びながら、奥の暗闇から、一人の女性が姿を現す。
その姿は儚げで奥の闇に飲まれてしまいそうだ。
やや小柄な身体、この薄暗い空間を照らすような輝く金髪が揺れる。
二人の後を追ってきたのか肩で息をしている。
その後からまた二人追いついてくる、女性二人の様だ。
「だめだ!!こいつは俺達を裏切ったんだ!俺達の運命を弄んだんだぞっ!」
大剣の戦士がもう一人の男を睨み付けたまま叫ぶ。
その目には憎しみとも悲しみともつかない暗い光が宿っていた。
そして、押さえ切れぬ涙が溢れかけていた。
身の丈程もある曲線を伴った片刃の大剣を構え直す。
沈黙を守っていた、もう片方の戦士がそれを破る。
「裏切ってはいませんよ、貴方達の意志と私の思惑がずれてしまっただけで。」
「…なにが不満ですか?私が人の世にしてきた事?…それともあなた達にまつわる事?」
「全部だ!」
間髪入れずに大剣の戦士が怒鳴り返す。
「では、ここで決別です。私自身を倒し、私の仕掛けを阻止しなさい。」
そう言いながら、手にしていた小剣に力≠込める。
戦士の二の腕程しかなかった剣が見る見る伸びて行き
倍以上の長さになる。
「それが出来るかは、貴方…お前達が良く解っているでしょう。」
その場にいた者が凍り付く、今の言葉は最後通知そのものだった。
誰も…誰もあの男に勝てるとは思っていなかった。
これまでも、そして今も。
「力を合わせないと…私には勝てませんよ。」
にこやかに告げる、その顔はこうなる前、
つい先程まで見せていた屈託のない笑顔だった、
そして、もう二度と見れないかもしれない笑顔。
「アルピナ…」
最後に現れた一人が今まで仲間であった彼の名前を呟いた。
−メイルシュトロームの縁で彼らに何が起きたのか、今は知らすべき時ではない−
書き手の言い訳/
プロローグです。ながーい話の一部を切り取って一部のシーンを文章化しました
大元をUPするのはいつの事か…精進します。_(__)_