シンジとレイのどうしてイくの
後編
作・ヒロポンさま
『何やってんだろ・・・・俺』
・・・・・・・
ピンポーン
チャイムが鳴ったのはその時だった
後半へ続く
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シンジとレイのどうしてイくの 後編
−あっ、誰だろう?
突然のチャイムが、自己憐憫に浸りきろうとしていたシンジの意識を急激に呼び覚
ました。
正気に戻ったシンジ。彼は、湿りきったパンツを履き替えるのも忘れて、慌てて玄関
に向かっていった。
シンジが開けた扉の先には、彼が朝から今の今迄、妄想の中で睦み会っていた当の
相手である綾波レイが立っていた。
繊細でしなやかなシルエット。何度も何度も夢想の中で溶け合った面影を前にして
、
シンジは思わず硬直してしまった。
「あっ……」
言葉が出ない。今まで犯しがたく感じていた聖なる少女。しかし、くり返し繰り返し
見た妄想の中での彼女の痴態が、シンジの中での綾波レイ像を、生々しい程の女性性
を備えた存在へと変質させていた。
「あっあっあっ………」
目の前の少女に対する後ろめたさと突然の訪問に対する戸惑いが、シンジの硬直を長
引かせていた。
「碇君?『あ』って何?……………アンダマン海?」
天然ボケ
遠くマルタバン湾に沈み行く夕日に思いをはせながら、シンジはフルフルと頭を振
った。
「ちっ違うよ、綾波って言いたかったんだよ……………とっ突然だったんで、ち
ょ
っと吃驚しちゃったんだ…ごめんね」
その言い訳じみた言葉に、レイの真紅の瞳が曇る。
「……迷惑?」
フラットな声音の中にわずかな震えを乗せて、レイは、静かに問い掛けた。
「えっ?」
「突然きたら、迷惑?」
「そっ、そんなことないよ。絶対、そんなことない」
心からの言葉。
「…………よかった」
レイは、薄い唇をきゅっと引き締めるようにして薄らと笑ってみせた。ぎこちない微
笑みの向こう側には、少年の言葉に一喜一憂する恋する乙女の面影があった。
シンジもニッコリと笑い返す。
とっその時。
クンクンクン
安心したレイは、いきなり小犬のように鼻を鳴らすと、シンジに問い掛けるような目
線を向けた。
「…………碇君……イカ臭い」
小首をかしげるようにしてそう口にする。ショートカットの髪が、さらさらと頬に流
れる。髪の毛がつくる影。レイの小さい顔が、ますますその愛らしさを増した。
「えっ!」
突然のレイの指摘に、目と耳に集中していた彼の意識が、触覚を初めてするその他の
感覚に均等に分散されていく。
はたと気が付く股間の湿り。不自然なほどに生暖かく粘ついた感覚。
−あああああああああああああああああっ!パンツ履き替えるの忘れてたぁ!
シンジの顔から血の気が引いていく。言い訳を考えるために脳みそをフル回転させる
。中身の忙しさを象徴するように、彼の視線はうろうろとレイの顔の上を動き回った。
「ああっ…あのっ…ほら、そう、なんか今朝からミサトさんがイカリングが食べたい
って急に言い出しちゃってさぁ。ははっ、困っちゃうよね、わがままで。それで、さ
っきまで作ってたから、そっそれでイカ臭いんだよきっと」
じっとその言い訳を聞いていたレイは、その瞳をぱちくりさせてシンジに問い掛けた。
「葛城三佐……碇君を食べたい?」
ぽやぽやした焦点の合わない感じの無表情。どこか女の子らしさを増したその無表情
の中に、「よくわからないわ」というメッセージを張り付かせたレイの顔。
その顔を見詰めながら、ボーッとレイの質問を咀嚼していたシンジは、やっとこさ
、
その中に含まれていた誤解の形を見つけ出して、慌てて口を開いた。
「えっ!ちっ違うよ。僕を食べたいんじゃなくって…………、その、イカリクンじ
ゃ
なくってイカリングだよ、綾波」
「イカリング?」
「そう……あの、くるって輪っかになった奴」
そう言って、両の手の人差し指と親指を使って輪っかを作ってみせるシンジ。
「くるって?」
鸚鵡返しに問いながら、レイも、輪っかを作ってみせる。
常夏の日本は今日も良い天気。ブリリアントな午後の日差しの中、公園で遊びまわる
子供たちの声。通行く日常の中、額に汗しながら住宅街を行き交う営業マン。きらめ
くその汗のしずくから直線距離にして500メートルは離れているであろうマンシ
ョ
ンの一室の玄関先で、お互いに体の前でわっかを作ってぎこちなく微笑み合う中学生
が二人。
………………………………………………
「とにかく、上がってよ綾波」
幾ばくかの沈黙の後、シンジがレイに声をかけた。
彼は玄関先にスリッパを置くと、脱兎のごとく部屋の中に駆けていった。
当然、パンツやシーツをはじめとする匂いの元を片づける為である。
残されたレイは、スリッパを履いて玄関先に立つと、少し考え込むそぶりを見せた後
、玄関のほうに振り返って、自分が脱ぎ散らかした靴をきっちりとそろえた。……………………爪先を自分のほうに向けて………
五分後
「今日は、どうしたの?」
速攻で証拠隠滅に孤軍奮闘したシンジは、ハアハアと荒い息をしながらレイに問い掛
けた。
ここはシンジの部屋。
てっきりリビングで待っているのだろうと見当をつけていたシンジは、レイがシンジ
の部屋で所在なさげにきょろきょろと辺りを見回している光景を見た時に、心臓が飛
び上がりそうなほど吃驚した。
シーツは、パンツと並ぶ最優先事項として真っ先に取り替えていたのだが、元々納戸
であった部屋の中は通気性が悪く、わずかながらイカ臭さが残っていたからだ。
二人はベットに並んで腰掛けていた。意味深なシュチエーションがシンジの心拍数を
上げている。いけないいけないと思いながらもいやらしい視線が、今日もまた制服を
着ているレイの体の上を行ったり来たりしていた。
「聞きたいこと」
「えっ?」
「聞きたいことがあるの」
それまで黙って床の上を見詰めていたレイが、ゆっくりとシンジのほうを向きながら
そう口にした。
吸い込まれそうな瞳。
「なっ何が聞きたいの?」
理性理性と自分に言い聞かせるシンジ。
レイはほんのりと頬を染めると、体の前で両の手の指先ををクニャクニャと絡み合わ
せながら、ポツリポツリと言葉を紡いでいった。
「最近、変なの……碇君のことを考えると、体が熱くなって…………心拍数が上が
っ
たり、夜眠れなくなったりするの……食欲もなくなって………にんにくラーメンチ
ャ
ーシュー抜きも喉を通らなくなってしまうの……赤木博士に聞いても笑いながら、別
に病気じゃないって言うばかりだし………………………それに……………」
「それに?」
ゴックリ
シンジがつばを飲み込んだ。喉の中はからから。告白にも等しいレイの発言を受けて
、彼の理性はものすごい勢いで溶けはじめていた。
「それに…………ここが、なんだかむずむずしてきたりするの」
そう言いながら自分の股間を指差すレイ。
「碇君……これはどういう事なの?」
ウルウルおめめで問い掛けるレイの表情に、残り少なくなっていたシンジの理性は奇
麗さっぱりなくなってしまった。
「あっ、あにゃにゃみぃー」
ガバッ
レイを押し倒すシンジ。
「碇君?」
レイは、目の前でハアハアと荒い息をするシンジを、不思議そうな顔で見上げた。
「こっここが、むずむずするんだよね綾波?」
シンジは、血走った目でレイのことを見詰めながら、スカート越しにレイのその部分
をなで上げる。初めての感覚にレイの体が、ビクッとしなった。
「あっ」
思わず声が出る。
「碇君、どういう事か分かるの?」
何時の間にか紅潮してきたレイの頬。細い指先を落ち着きない様子でシーツの上に滑
らせながら、そう口にする。
シンジは、興奮に任せて柔らかいレイの体に自分の体をすりつけながらその質問に答
えた。
「みっ、見てみないとわからないよ」
「見る?」
レイの問いに、ブンブンと首を縦に振ってみせるシンジ。
見る……なにを?
むろんナニである。
「いいよね。綾波」
…………………
「うん」
レイは、密着しているシンジの体から伝わってくる不思議な刺激に身を震わせながら
コクリと肯いてみせた。なにがいいのか、もはや分かってはいない。レイは押し寄せ
てくる未知の感覚に、眉根をきゅっと寄せて耐えていた。
シンジはレイの答えを受けて、素早く自分の体を下にをずらしていった。
顔の前にはレイのスカート。シンジは荒い息を付きながらホックをはずして、力ずく
でレイのスカートをその体から引き抜いた。レイが、無意識に腰を浮かしたので案外
すっぽりと抜けてしまった。シンジはしばしスカートを呆然と眺めやった後、ものす
ごい勢いで視線を動かして、目の前にあるレイの肢体に見入った。
細くて白い太股。触らなくても、その張りを想像できる、しかし、触ってみないと実
感できないその柔肉。その先にある下着は白。
シンジは、じっとその下着に目をやると、その白にじわっと浮かんでいる染みに気づ
くこともないままに、両サイドに手をかけて一気に足首まで引き抜いた。今度も、レ
イは無意識に腰を上げてシンジの作業を助けていた。
彼女は、焦ったように乱暴に振る舞うシンジの態度に戸惑いながらも、何か訳の分か
らない期待感にその身を震わせていた。今二人がしていることは、きっと正しいこと
なのだという、根拠のない確信が彼女を支えていた。まっさらな心を染め上げていく
生まれたての愛情が、シンジの荒々しさをやんわりと受け止めていく。同時に生まれ
ていた、不慣れな男に傷つけられることに対する女性としての危機感も、その想いの
中にゆっくりと溶け込んでいった。
すっかり下着を取り去ってしまったシンジは、相変わらずの荒い息のまま、レイのそ
の場所を覗き込んだ。
生まれて初めて見る女性のその部分。よく覗き込むために、ゆっくりと、硬さの残る
太股に手をかけて開いていく。
とっ、急に違和感を感じたシンジは、その手をぴたっと止めた。違和感の正体を探る
ために、今までとは別の意味で熱心にその場所を観察する。
−あれ?
………………
−あっ
シンジは、たいした時間も掛からないうちに、その違和感の正体を発見した。
そして、少し唇をかんだ泣きそうな顔でその場所を覗き込むシンジを見詰めていたレ
イを、驚いたような顔で見ながら口を開いた。、
「綾波………………毛がない……」
その言に不思議そうな顔をするレイ。
「?……怪我ない?…………碇君、確かにそこは割れているけど………怪我をしてい
るわけではないのよ」
……………天然
レイの誤解を解くこともせず、再びその股間に見入るシンジ。
飾り毛のないその部分。
…………………………
ツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シンジの鼻から一筋の血が流れて、レイのその部分にポタリと落ちた。
鼻血
「あっ」
慌てて鼻を押さえるシンジ。しかし、勢いよく流れる鮮血は手の間からこぼれ落ちて
シーツの上に染みを作っていく。
「碇君、大変!」
レイはその姿を見て、ぐったりと横たえていた体を起こすと、シンジの顔をのぞき込む。
そして、やさしく、鼻に当てられた手を振り解くと、自分の顔を近づけていき…………
ペロペロ
可愛らしい紅色の舌で流れ落ちるシンジの鼻血をなめ取った。
「綾波」
ざらざらした舌の感触を感じながら、ぐっとその体を抱きしめる。彼女のむき出しの
下半身から、くらくらするほどの女の匂いが漂ってくる。シンジは、自分の顔を嘗め
回すレイをそのまま好きにさせながら、ゆっくりと華奢な体をベットに横たえていった。
「綾波」
優しく呼びかけながら、ゆっくりと制服に包まれた胸をもむ。
ウン
シンジの血をなめ取っていたレイが、わずかに鼻を鳴らした。
絡み合う目線。
二人が自然に唇を触れ合わそうとしたその時…………
「シンちゃんたらぁ、どうして呼んでるのに出てこないのよ!」
という声と共にシンジの部屋の扉がガラっと開いた。
あまりのイカ臭さに避難していたミサトが、お腹が空いたので戻ってきたのだ。
部屋の中の光景に呆然と立ち尽くすミサト。
ベットの上に半身を起こして硬直している二人。
レイは制服の上と靴下だけで、下半身は素っ裸…………そして、その女性としての部
分にべっとりと付いた血痕と、シーツの上の赤い染み。
……考えられることは一つ。
「シッ、シンちゃん、あなた……………」
精神的空白からいち早く抜け出したミサトは、ベットの上のシンジにズンズカと詰め
寄って、睨み付けた。
ミサトの目線をたどってシーツの上の染みを見出したシンジは、彼女の誤解の中身を
正確に洞察して、慌てて口を開いた。
「ちっ、ちがうんです…いや、ちがわないけど。その、違うんです!」
「あなた、自分が何をしたかわかってるの!ちゃんと責任取れるんでしょうね!」
いつになくマジなミサトの視線にたじたじになるシンジ。
「ほんとに、違うんですってば、綾波も何か言ってよ」
シンジは、ミサトのほうにちらちら目線を送りながら、レイに救いを求めた。
「責任ってなに?」
………
頭を抱えるシンジ。
「レイ、責任のことについては私がじっくりと教えてあげるわ」
ミサトは、レイのほうを向いてそう言った。
そのままレイの肩にぐっと両の手を置いて、いたいけな真紅の瞳を覗き込む。
「泣き寝入りなんかしちゃだめよ!」
レイは目をぱちくりさせながら、シンジとミサトを交互に見ていたが、やがてミサト
の迫力に気圧されるように、
「……はい」
と肯いてみせた。
「あやなみぃー」
部屋の中に、シンジの情けない声が響き渡る。
ミサトは、にっこりと微笑むと、レイの耳元に口を近づけて何事かささやき始めた。
何を言われているのか、レイは頬を赤くしたり、瞳をうるうるさせたり、はずかしげ
に俯いたりと忙しい。
四半時たってミサトはやっとレイの耳元から離れた。二人そろって、ベットの上に呆
然と半身を起こしたまま事の推移を見守っていたシンジを、じっと見詰める。
やがて、ミサトに急かされたレイが、体をずらしてシンジのほうに近づいてきた。
そして、もじもじとシーツの上に指を滑らせながら、じっと彼の瞳を見詰めて恥ずか
しそうにこう口にした。
「碇君……責任とってね」
シンジの頬に流れ落ちる一筋の汗。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
バタン
どこか遠くのほうで、重い扉の閉まる音が聞こえたような気がした。
エヴァンゲリオン初号機パイロット碇シンジ。十四歳にして、幸せの牢獄につながれ
た男。彼が釈放されることは、金輪際ないだろう。
おしまひ
後書き
D・Sさん、すいません。ほんと、ごめんなさい。
はははははははははははははははははははははははははっ←もう、笑うしかない
はじけられなかった。もっと、テンポよく書きたかったし……なによりも、作品の趣
旨に反したものを書いてしまいました。スコーンと抜けた、ギャグっぽい雰囲気にし
なくっちゃ駄目ですよね。内容もないし…………
ほんと、お詫びのしようもないですが………………ネタに詰まっちゃったんです。
こんなもので勘弁してやってください。
みゃあさん、D・Sさん、ここまで読んでくださった方々、ほんと、ごめんなさい。