【酔っ払いヒーローズ】

 (前編)

作・GM−Xさま


それはある晴れた日曜日のこと。クイックシルバーの名で知られるアヴェンジャーズのピエトロ=マキシモフは妻子と姉と共にエグゼビア高等教育院をふらりと訊ねた。

 遠出したついでに、そこを本拠地にしているヒーローチームX−Menに会いに行ったのだ。しかし、1時間もしない内に、ピエトロは不愉快になっていた。

 ピエトロの父親は、磁界王を名乗り、ミュータント王国建設のために色々やった悪党で、色々あってピエトロは彼が嫌いだった。で、今その父親は、色々あって若返って記憶を失ってジョゼフと名乗ってX−menにやっかいになっていた。

 そのジョゼフに冷たい態度をとってしまった彼に、姉のワンダは言った。

「いい加減に父離れできないの?」

「親父さんが改心して嬉しいのはわかるがよぉ」

 茶々を入れたのはローガン。何がおかしいのかそのまま豪快に笑う。

 その笑いにつられてか、周りのみんなも何とはなしに笑って場は和やかな空気に包まれた。

 一人ピエトロだけが蚊帳の外という感じだった。

 何でだ、何でみんなこいつを黙って受け入れられるんだ。今までこいつに何度も酷い目に会わされてきたじゃないか。いまは味方のふりしてるけど、かつてニューミュータンツを見捨てた時みたいにいつ裏切るか知ったもんじゃないじゃないか。

 気がつくと、いくつもの白い視線が彼に突き刺さっていた。いつの間にか、彼はモノローグを口に出して言ってしまったのだ。

「なんて事言うの!父さんに謝りなさい。」

 思わず叱りつけるワンダ。

 何で、姉さんだって酷い目見てきたじゃないか。俺はみんなのためを思ってるのにそれなのに。

「みんな嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 聞いてる方が恥ずかしくなるような台詞と共に、ピエトロは音速で走り去っていった。

 

 ニューヨークのとあるビルの屋上。深夜。

 スパイタ゜ーマンは天に向かって吠えていた。

「俺がいったい何をしたぁっ」

 スパイダーマンは、時々自分は不幸な方ではないかと思っていたが、ここん所の不幸はちょっと度が激しかった。妻のメリー=ジェーンが流産したのを皮切りに、高まる反ヒーロー感情の矢面に立たされたり、それがエスカレートしてスパイダーマン狩りなんてのにあったり。こないだなんか、宿敵が脱獄したんで捕まえようとしてたら、助太刀に来たシルバーサーファーが逆に乗っ取られて騒ぎが大きくなったりと、ろくな事がない。吠えたくもなろうというもんだ。

 と、遠くでソニックブームの音が聞こえた。セイラムセンターからここマンハッタンまで走ってきたクイックシルバーであった。よく見ると、泣きながら走っている。

 気になってスパイディは、己の不幸を一時棚上げして−この棚上げできる所が彼の不幸の要因の一つであるのだが−声をかけてみることにした。

 

 ハーレムは、最近観光地化が進んだと言われるが、それでもちょっと横道に入れば十分いかがわしい店がある。ボブが経営する店も、そんなあまり上品とは言いかねる酒場の一つであった。その日も、客の入りはそこそこであり、ボブは陽気に口笛を吹いたりしていた。

 二人のアヴェンジャーズがその店に現れたのは、11時半頃のことであった。

 凍り付く店内。

 無理もない。地上最強のヒーローチームのメンバーが二人も入って来たのだ。普通の人でも結構びっくりする。加えてこの店にたむろする連中の大半は臑に傷持つ奴らであった。

 何だ、おまえ、なんかやったのかよ。

 馬鹿いえ、俺達みたいな小物を相手にする連中じゃねえぜ。

 そういった囁きを無視して、クイックシルバーは自慢の超高速で店の親父の前に行くとカウンターに紙幣を叩き付けた。

「うんと強い酒持ってこい。」

 そして、店中の小悪党どもが見つめるなか、二人のヒーローはカウンター席で酒をあおりはじめた。

 飲みに行くことを提案したのはスパイディの方だった。泣きながら走っていたクイックシルバーをなだめ、愚痴を聞いてる内に憂さ晴らしを提案したのだ。

 クイックシルバーはそれにのった。そして、自分が奢るからと、目に付いた酒場に入っていったのだ。

 スパイダーマンがマスクをちょっとだけ上げてちびちび飲むのに対し、クイックシルバーは、最初からペースをあげてがんがんいきだした。さすが経験者は違うという勢いだった。トニーに負けるものかという勢いだ。

 そして、最初はすっかりできあがったクイックシルバーが、それにつられるようにしてスパイディも愚痴を小声で呟きはじめた。

「・・・ぶつぶつ何で姉さんは解ってくれないんだ。僕はいらない子なんだ・・・ぶつぶつぶつ。」

「・・・ぶつぶつ、僕は一生懸命平和を守ってるのに、それをあのJJJのヤローぶつぶつ・・・」

 こうなってくると、悪党達もようやく、彼らが飲みに来ただけだとわかってリラックスしてはじめた。

 その矢先、

 クイックシルバーは、一人の客を指さした。

「おい、おまえ」

「はいっ、なんでしょう。」

 油断しきってた男は、すっかり声を裏返らせて飛び上がった。

「俺は、親父なんか怖くねえぞっ」

「・・・・・・」

 あまりのことに呆然とする客その1。

「何っうたがってんのかぁ?」

 ヒーローにあるまじきからみ方をするクイックシルバー、その隣では、

「うぉぉぉ、死んじゃ嫌だよう、おばさん、おじさん。僕を一人にしないでぇぇ。」

 結構泣き上戸なスパイディ。

 で、二人ともこの状況でさらに杯を重ねる。ボブは逆らうことも出来ずひきつりながら酒を注いでいく。

 お願いだ、速く出てってくれ。

 しかし、彼の願いも空しく、二人はまだまだ居座るつもりのようであった。

・・・続く

 

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どうも、GM−Xで御座います。

スパイダーマンの小説を書くっとかいきまいときながらいきなりこれです(笑)

しかも続いてるし・・・

多分プロット完成してるんで後半は早めにお届けできると思います。

ではでは。

 

 

酔っ払い〜1→GO