『A.S.K.A』

(2)後任

作・H&Rさま

 


 

「レイ、どこまで行くのよ?」

 

「・・・・・・」

 

「本当に心当たりがあるんでしょうね?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・ちょっと、聞いてるの!?」

 

「頼むから、少し静かにしててくれない?」

 

「・・・#」

 

マジ切れ寸前のアスカとやっぱり冷静なレイは、電車を乗り継ぎかなり郊外の方まで来ていた。

もうアスカの家からはかなり離れている。

 

「・・・その『心当たり』に相田の代わりが出来るんでしょうね?」

 

「それはわからない・・・」

 

「なっ!! それじゃ話が違うじゃ・・・」

 

「でも、きっと出来ると信じているわ!!」

 

!!

 

物静かなレイの力強い言葉にアスカは圧倒される。その後はただ黙々とレイについていった。

 

(レイの信頼を得た人物・・・ どんなやつなんだろ?)

 

二人はしばらく歩いていたが、ふとレイが足を止めた。

 

「・・・聞こえてこない?」

 

「え?」

 

レイに言われ、アスカは耳を澄ます。するとかすかな、しかし美しい音が耳に流れてきた。

 

「行くわよ。」

 

「・・・あ、ちょっと待ちなさい!!」

 

 

音の源は古いアパートの一室からだった。窓が開いており、そこからその美しい音を創造している人物を少しだけ見ることが出来た。

 

「あの人?」

 

「そうよ。」

 

「ちょっとちょっと!! 弾いてるのはチェロじゃないの!? あたし達はベースを探してんのよ?」

 

「・・・・・・」

 

アスカの質問に答えず、レイはアパートに足を向けた。

 

「レイ!! ・・・・・・・・・・もうっ!!」

 

しかたなくアスカもレイについていった。

 

 

ぴんぽーん。

 

「・・・はい。」

 

ほどなくドアが開き、中から少年が顔を覗かせる。

 

「・・・あなたのチェロに引かれてここに来たの。中でじっくり聞かせてもらえないかしら?

訳あって名前は明かせないけど、決して怪しいものじゃないわ。」

 

(このスカタン!! とことん怪しいじゃないのよ!!)

 

しかし少年は怪しまなかったらしい。にっこりと微笑むと、

 

「そうですか。そういうことならどうぞ。」

 

と言って、中に2人を招き入れてくれた。アスカは一人別の世界にいるように感じ、首をかしげた。

 

 

少年は座布団を敷き、二人に座るように勧めた。

 

「えっと、何が良いですか?」

 

「何でもいいわ。あなたの一番好きな曲を弾いてくれれば。」

 

レイが答える。心なしか言葉が弾んでいるようだ。

 

「わかりました。それじゃ・・・」

 

やっぱり少年はにっこりと微笑む。

 

(ふむ、顔はまあまあね。)

 

アスカのチェックは厳しい。

 

 

少年の演奏が始まった。心に染み入るメロディが部屋を満たす。最初の方は目ざとく少年の技術をチェックしていたアスカであったが、曲が進むにつれて知らぬ間に魅了され、曲が終わった時には放心状態となっていた。

 

ぱちぱちぱち。

 

レイが拍手を贈る。途端にアスカは現実に引き戻された。そして少年の演奏に魅了されていた自分を驚き、それ以上に少年の醸し出す魅惑の世界に驚いていた。

 

(・・・すごいわ、こいつ・・・)

 

拍手を受けた少年は恥ずかしそうにお辞儀をした。

 

「ところで、唐突で悪いけどあなた職業はなに?」

 

ごん。

 

レイのあまりにも唐突な質問にアスカはずっこけて頭を打ってしまった。

 

でも少年は全然気にしていないらしい。

 

「今は高校に通っています。音大を目指しているんですけど・・・ 学費の関係で無理そうなので

どこかに就職するつもりです。」

 

(これだけの力をもっていて音大に行かないなんて・・・)

 

「そういえば、あんたどうして高校生でアパート暮らしなの? 親と別居する理由があったの?」

 

アスカが少年に問い掛ける。少年は少し表情を曇らせ、

 

「両親は僕が小さい頃に離婚しました。それで母さんが女手一つで僕を育ててくれたんですけど、

その母さんも去年死んじゃって・・・ 今は一人なんです。」

 

「・・・・・・ごめんなさい。」

 

聞いてはいけないことを聞いてしまったアスカは素直に少年に謝る。少年はにっこりと微笑んで、

 

「いえ、別にあなたのせいじゃないですから。えっと、そっちの・・・ あ、名前は言えないん

でしたっけ。えっと・・・」

 

「綾波レイよ。」

 

「レイ!! 名前を出すのは御法度でしょ!?」

 

「・・・・・・もういいの。で、何?」

 

「綾波さんですか。もしかして毎週僕の家の近くに来てませんでした?」

 

「!! ・・・気づいてくれていたのね・・・」

 

レイは頬を染め、かすかに微笑んだ。

 

(!! レイが笑った!?)

 

笑ったレイを初めて見たアスカは驚愕した。

 

(しかも、レイのあの顔・・・こいつに惚れてるわね。しっかし、レイが恋愛とはねぇ・・・)

 

「えぇ。窓の外をふと見たら電柱の影に人影が見えて。それも毎週同じ時間に。そして今日綾波さん達がここを訪れた。それでもしや、と思ったんです。」

 

「あんた、もしやストーカーか、とか思わなかったの?」

 

少年はまたにっこりと微笑んで、

 

「僕はそんなに女性にもてないですから、ストーカーの心配はないですよ。」

 

「レイは限りなくストーカーに近い行動を取ったと思うんだけど・・・」

 

そのとおりである。

 

 

しばらく差し障りのない会話が続く。しばらくしてレイがアスカの方を向いて問い掛ける。

 

「・・・どう?」

 

「うーん・・・ 技術は申し分ないわ。良い音楽性を持っていると思う。けどねぇ・・・」

 

「フレットレス(*1)を使えば大丈夫。おそらく・・・」

 

「全然違うじゃないのよ!!」

 

「わたしが彼に教えるから・・・ お願い!!」

 

レイがアスカに頭を下げる。

 

「・・・レイ。あんた、個人的な感情に動かされてない?」

 

「・・・・・・」

 

「私たちはグループなの。あんたのわがままでへたに事を進められると困るわ。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・でもま、確かに可能性はありそうかもね。いいわ、とりあえずこいつで行ってみましょ。」

 

「・・・・・・ありがとう・・・」

 

少し涙声でレイは言った。アスカは照れくさいのか、そっぽを向いている。

 

「あ、あの・・・ 何がどうしたんですか・・・?」

 

一人取り残された少年が会話に入ってきた。アスカはキッと少年の方を見ると、

 

「あんた!! 今日から『A.S.K.A』の仮メンバーとして特訓だからね!! 死ぬ気で

がんばんなさい!!」

 

「??? な、何のことですか・・・?」

 

ぐいっ

 

状況を全然飲み込めていない少年の胸座をつかんでアスカはさらに詰め寄る。

 

「いい!? わ・か・っ・た・わ・ね!?」

 

ぐぎぎっ

 

「は、はひ!! わがりまじだああぁぁぁぁぁ・・・」

 

首を絞められ死線をさまよっていた少年が無意識のうちに言った返事にアスカは満足した。

 

「よっしゃ!! それじゃ、急いで戻るわよ!!」

 

「・・・うん!!」

 

その時のレイの返事は、普段のレイからは考えられないような、喜びの感情のこもったものだった。

 

 

『チェロの少年、『A.S.K.A』に仮加入決定!!』

 

 

・・・まだ続けるか(笑)?

 


 

(閑話休題)

 

少年の家からの帰路、気を失っている少年を引きずりながらアスカがぽつりと言う。

 

「そういえば、あたしらこいつの名前知らないじゃない。」

 

その言葉に反応して、レイがポケットから手帳を取り出す。

 

「名前は碇シンジ。」

 

「何だ、あんた知ってたんだ・・・」

 

「身長○△□cm、体重○×kg、@が丘保育園から∽美台小学校、√山中学校を経て

現在の%谷第3高校に至る。好きな色は青。正確は温厚、しかし少々抜けているところあり。

肩の後ろと左ももの内側にほくろが一つづつ。おねしょは保育園年長組まで。小学校3年の時

犬にかまれる。中学校2年の時に盲腸を手術・・・」

 

「・・・・・・あんた、本当にストーカー?」

 

「・・・・・・(ぽっ)」

 

(閑話休題:おしまひ)

 


 

(*1)フレットレスとはフレットレスベースのことをいいます。通常ギターやベースにはネックの部分にフレットと呼ばれるでっぱりがついているのですが、フレットレスベースにはこのフレットがついてないです。ようするにバイオリンに代表される弦楽器に近い構造になっている特殊なベースなんですね。レイちゃんが「フレットレスなら・・・」と言ったのはこういうわけなんです。

フレットレスを使うことにより、普通のベースには出すことの出来ない微妙な音が出すことが可能になっています。ただし、完璧に使いこなすのは至難の技です。よほどの技術がないとまず無理ですね。

これを読んでいるみなさま、ベースは普通の物を使いましょう・・・って、だれもやらないか(笑)


 

・・・こんな解説をつけなきゃならん物を投稿するなってーの>へっぽこH&R

 

てなわけで、『A.S.K.A』第2弾です。ま、よーするに自分の趣味の世界に走っている

へっぽこ作品です(笑)。かみそり待ってます(爆)


 

みゃあと偽・アスカ様(笑)とレイちゃんの感想らしきもの。

 

みゃあ「ああ……うまいなぁ。すっごく読みやすい。それはつまり文章が上手だってことですよねぇ。素晴らしい……」

アスカ様「……ちょっと」

みゃあ「……はい?」

アスカ様「↑の。なんであたしが偽・アスカ様(笑)で、ファーストがちゃん付けなのよ?」

レイちゃん「………」

みゃあ「それは…この作品を読んでいると、H&Rさまのレイちゃんへの想いがひしひしと伝わってくるから…(笑)」

アスカ様「あのね!この作品の主人公はあたしよっ!ファーストなんてただのおまけなのっ!」

レイちゃん「(ぽそり)誰が決めたの……?」

アスカ様「え……?」

みゃあ「そうですよ。誰がアスカ様主役だなんて決めたんですか?」

アスカ様「だ、誰って……そんなのとにかくあたしに決まってるじゃないの!」

レイちゃん「………」

アスカ様「ちょっと、ファースト。その勝ち誇ったような顔は何なの!?」

レイちゃん「……別に(フッ)」

アスカ様「は、鼻で笑ったでしょ、アンタ!今!」

みゃあ「まあまあ。じゃあ、次回までにH&Rさまに聞いてみましょうよ。どっちが主人公なのかね」

レイちゃん「……いいわね」

アスカ様「この……後で泣きを見るわよっ!!」

みゃあ「というわけでH&Rさま、回答をお願いいたします(笑)」

『A.S.K.A』2