注:この作品は『RPGマガジン』に掲載中の読者参加ゲーム『機動戦士ガンダム』に基づくものです。
キャラクターは基本的に筆者のオリジナルです。
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左のバーニアを全開にした俺のハイザックの脇を、ゲルググ・イェーガーの放ったビームが掠めていく。
コントロールスティックを思い切り捻って機体をゲルググのほうに向けると、俺は手にした120mmマシンガンを叩き込む。
「糞っ糞っ糞っ!落ちろ!」
なんか知らんが声が出ている。が、弾は二、三発が奴の装甲の表面で火花を散らしたに過ぎない。
(こんなことならビームライフルを使うんだった)
だが、こんな時に無いものねだりをするのは死に急ぐような物だ。
俺はマシンガンの残弾を確認すると、新たな敵影に向かって突っ込んでいった。
俺達の載っていたサラミス級巡洋艦「パース」は、同型艦2隻と共に最近デラーズの残党が出没する補給路の護衛にあたる任務を帯びていた。
これまでは単艦による襲撃しかなかったと聞いていた俺達は「これほど楽な仕事は無い」などと言っていたのだが・・・
『うわぁぁぁぁ!ビリー!助けてくれ!』
ヘルメットに僚機のパイロットの絶叫が響いた。
「何だスミス!何があった!」
『手錬のドムが3機くる!俺一機じゃもたねえ!』
苦しいのはこっちだって同じだ。悪いが…一人でしのいでもらうしか無い。
「こっちだってゲルググが相手なんだ!わりいが耐えてくれ」
『畜生!』
『おい!ビリー、スミス。母艦に取り貼くコースの敵MSを2機見つけた、お前等で始末しろ』
『中尉!んな無茶な!』
何を考えてるんだ、こいつ。
俺達の小隊が配属されていたサラミスは他の艦船と球形陣を組んで対空砲火を打ち上げている。周囲には他のMS隊もいるのに何で俺達が行く必要があるんだ。
『ここからなら奴等が球形陣に入り込む前に始末出来る、行け!』
俺は行きがけの駄賃に目の前を通り過ぎようとしたザクにマシンガンを浴びせると、スラスターを全開にして僚機の航跡を追った。
「!」
上から降り注いだビームの雨が先行するスミスのハイザックを包み込み、ハイザックの頭が、バックパックが、胴体が次々と融解・爆発し、機体は四散する。
上を見上げるとさっき撃ち漏らしたゲルググが、船の残骸の影からこちらの方にビームマシンガンの銃口を向けている。
牽制に追加装備のバルカンを撃ちながらこちらもフェイントをかけつつ手近の残骸に潜り込むことに成功し、マシンガンを構える。
しばらくお互いが動けないまま数分が経過する。
しびれを切らしたらしい敵がマシンガンを撃ちながら残骸から飛び出した瞬間、俺の120mmマシンガンが火を吹く。
放たれた120mmの徹甲弾は奴の頭に次々と命中し、そこを吹き飛ばした!
「この野郎!」
命中と同時に全てのスラスターを全開にした俺のハイザックは、機体の限界に近い加速でゲルググに近づき、左肩のスパイクアーマーからタックルをかます!
吹っ飛んだゲルググはさっきまで隠れていた残骸に叩き付けられ、派手な火花を散らして動きを止めた。
1機を撃破した俺は、まだ母艦が無事であることを祈りつつ帰到コースに機体をのせた…。
―ウィリアム・ハーキュリー少尉
僚機を2機喪失するも敵MS3機撃破。