子供たちの挽歌(少し修正版)
第一章 「暗殺者碇」
作:海イグアナ
日本に冬が戻ってもう6年にはなっただろう。
ゼーレが引き起こしたサードインパクトは人類の7割以上をLCLと化し、残った人間も社会生活が完全に消滅した世界での生存競争に耐えられず死んでいった。
人間とはなんとしぶといものだろうか。
それでも生き残った人間は社会を立て直し、徒党を組んで生き延びようとしていた。
そんな社会でも、はみ出し者は存在した。
灰色の雪が降る中を、一人の男がレストランの前で立っていた。
今日は上のほうが何か重要な会議とやらで警備にかり出されたのだ。
懐には国連軍から流出したブローニング・ハイパワーを持っていたが、それでも何かの襲撃があるかも知れない不安は気温以上の寒さを感じさせていた。
ふと当たりを見回した彼は妙な奴がくると思った。
今時誰も着ないような野暮ったいデザインのスーツとスラックスに身を包んだ冴えない20歳位の男がおどおどと近づいてきたのだ。
(ちょうど良い、こいつをいたぶってやるか)
場当たり的な思考しかできないことが、三下の彼の限界だった。
「おい、そこで何やってんだぁ!?」
声をかけられた青年は、ひどくおどおどした態度でこたえた。
「あ・・・あの、みみみみ道に迷迷いまして」
「なぁにびびってんだこら、もっとはっきりしゃべらんかい!」
そうやって近づこうとした彼の目に、左手首に手をやる青年の姿が写った。
それが彼の最後に見たものとなった。
「なぁにびびってんだこら、もっとはっきりしゃべらんかい!」
前からいかにもといったチンピラが近づいてくる。
(邪魔だ)
一歩前に踏みだし、右腰に差してあった鉈を凄い速さで降りかざし相手の頚骨に叩きつける。
一撃で哀れなチンピラの首が半分取れかかり、路上に崩れおちた。
そのまま存在感をあまり感じさせない歩き方で中に入っていく。
「なんだきさ・・」
入ったとたんに前にいる男が声を掛けてきた。
うざったそうに鉈を振るい頚を切断する。
傷口からピィィィィィと音を立てて赤い血が吹き出す。
「たいへ・・・」
逃げ出そうとした男に懐から抜いたサイレンサー付きのベクターCP1を撃つ。
後頭部の柔らかい部分に命中した147グレインの鉛が運動エネルギーをまき散らしながらそこを血と骨と脳の無意味な混ぜ物に変える。
中はパニックに陥っていた。
巻き込まれた一般市民が外に向かって走り出している。
はじき出された一人の子供が前に飛び出してきた。
反射的に子供の首を叩き潰す。
親のものらしい絶叫が聞こえたが、弾丸を撃ち込むとそれは沈黙した。
道をふさぐように倒れた死体を踏みつけ乗りこえながら奥に進む。
奥の部屋では幹部達がポーカーに興じていた。
その部屋は防音になっていたため外の騒ぎにも気付くこと無く、気付いたときには既に外にいた護衛は一掃されていた。
異変に気付いた幹部が中にいた護衛を呼んだ。
「おい、誰か外を見てこい」
扉の横に立っていた男が外を見ようと扉を開けた。
開けられた僅かなすき間から何かがほうり込まれた。
誰も対応できぬ間にその物体は部屋の中央のテーブルの上でバウンドし、着発信管を作動させた。
ほうり込んだMk68手榴弾が炸裂したのを確認すると、男は無造作に中に入った。
まだ死に切れずに呻いている連中と既に人間で無くなっている連中を顔を確認しながら確実に9mmパラベラム弾を撃ち込んでいく。
部屋の中心の方に転がっていた死体は既に原形をとどめてはいなかったが、彼はポケットからデジタルカメラを取り出しその死体の特徴となりそうな部分を撮影していく。
中央に転がっていた死体を撮影し終えると、もはや無人と化した・・・死体しか残っていない廊下を通って外に出る。
警察のサイレンを背に虐殺の現場を去る彼の顔に、もはやさっきまでの脅えは残っていなかった。
あるビルの一室。
さっきの男と別の太った男が話をしていた。
「また完璧な仕事をやってくれたようだな。もうニュースになっているぞ」
「証拠のカメラです」
「君ならこんなものが無くても信頼できるのだがね、私以外の連中は人を信用するということを知らんらしいな」
「有難うございます」
太った男が机の下からアタッシュケースを取り出し、上に置いた。
「今回の報酬だ。キャッシュで1万ドル、10ドル札で揃っている。それより・・・」
「専属になれという話でしたら前回お断りしたはずです」
「碇、これ以上無いという条件を出したのに何が不満なんだ?」
碇と呼ばれた男は何の感情も感じとれない顔でこう言った。
「私は金のために仕事をするだけです。誰かのために仕事をするわけではありません」
「・・・そうか。また次も頼む」
「失礼します」
男が出ていくと残った男は呟いた。
「碇シンジ・・・か。一匹狼にしておくには惜しい腕だ」
次回予告
回復の見込みが無いアスカを、汚れた金で支えるシンジ。
しかし彼の献身も全ては時間の壁の前についえる。
ケンスケの志願は通った。
新たな配属先、第三新東京市治安警察。
それは、誰もが最悪の職場として恐れる危険地帯。
トウジはゴミの山に立ち向かう。
報酬の数ドルのために。
その日の糧を得るため。
黒い雪の降る街に、三人の男が生きている。
次回「しあわせのかたち(前編)」
「そんなん、生きるためにきまっとるやんけ!それ以外に何の目的がある?」
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対談(第1回)
作者 :某最北端短大2年。サボリの鬼。ガンマニア&成人コミック収集家。
相棒F:某アニメーション学園2年。GT○(かくれてねえ)のアシ4号。チャイナ野郎。
作者 :・・・・(とうとうやってしまった)
相棒F:誰が読みたがるんだ、こんなの?
作者 :・・・・(知るか。知ってたら悩まん)
相棒F:これ出だしがほとんど「狼−男たちの挽歌最終章−」のパクリだろ。
作者 :・・・・(いや、シュチュエーションだけ流用させて貰った)
相棒F:どこが違うってんだ?
作者 :・・・・(チョウ・ユンファは子供や一般人は殺してないぞ)
相棒F:それか(笑)
作者 :・・・・(だがこれを書いていて一つ解った)
相棒F:何だ?
作者 :・・・・(俺にLASは書けん)
相棒F:お前がそんなの書いたら恐怖の大王が降ってくるぜ。
作者 :・・・・(言うな。自分の文才の無さにいやけがさしてきた)
相棒F:救い様が無いな(苦笑)。
相棒F:ところでさっきから声出してないんだが、どうした?
作者 :・・・・(イグアナがしゃべるわけねえだろ)
おあとがよろしいようで・・・
※緊急告知!
海イグアナはキャラに非常に困っております。
誰か「うちのを殺してかまわんよ」と言ってくださる、心がディラックの海並に広い方いらっしゃいませんでしょうか?
また、ケンスケの恋人役(不幸)も募集します。
もしおられましたらメール下さい。
海イグアナ juniti@wakhok.ac.jp