卒業式

 

作・海イグアナさま

 


海イグアナ奇跡の卒業記念SS

 

注:意味はありません。探さないで下さい。

 

 

 

目を覚ます。

 

古ぼけた天井が目に入ってくる。

 

妙に狭い視界は、周りに段ボールが積み上げられているからだ。

 

(動けん・・・)

 

朝はいつもこうだ。

 

布団のなかで一時間動けずにいると、最初は6:30を示していた時計が7:30になる。

 

ここまで来ればいい加減体も動く。

 

上体を起こす。

 

妙に生活感溢れる部屋。

 

こことも後数日の付き合いだ。

 

明日からは部屋を引き払うための準備に追われる事になる。

 

ため息をつきながら部屋着に着替える。

 

黒のジャージに着替えた俺は、廊下に出た。

 

「なんだ。帰ってきたんかい」

 

ここ一ヶ月程度顔を見なかった下宿の連中が全員そろっていた。

 

「相変わらず汚え部屋だな」

 

「うるせえ。ところで卒業式何時からだっけ」

 

「九時だったと思う」

 

「俺の聞いたところじゃ九時半からリハーサルだったが」

 

「受付があるだろう」

 

「そりゃそうだな、ところでどんな格好していく気だ?」

 

「俺はこのまま」

 

普段のジャンパーの奴が答える。

 

「一応スーツ着て行く気だけど」

 

まだパジャマ姿の奴が言う。

 

俺はどうしよう?

 

決まっている。

 

今日は勝負の日だ。

 

 

 

午前八時四五分。

 

卒業式用の服を愛車に積み込んだ俺は学校についた。

 

玄関から中に入る。

 

もう大量の人間が集まってるのがわかる。

 

ほとんどがスーツだが、ちらほらと袴の女共も見える。似合わねえ。

 

中にはどう見てもヤクザにしか見えない奴もいる。

 

そういう奴にかぎってとなりにいる女は小さいんで、端から見てりゃあヤクザとその娘(中学)だ。

 

受付をすませると、周りにいた奴に声をかける。

 

「おまえ、スーツきてるとほんっとヤクザだな」

 

「ほっとけ!」

 

 

 

午前九時半。

 

リハーサル(といっても誰かがやる訳じゃない。単にどーこーしろと言うだけだ)が始まる。

 

俺も卒業式用の着替えをすませて席に座っている。狭い。

 

さすがにこれを着て来るのはまずかったか?

 

そして十時。

 

式は下らない賛美歌の合唱、学長の挨拶、証書授与と進んで行く。

 

中には『中核』と書いたヘルメットや『蛙』を被った奴がいる。

 

大したウケではない。

 

そろそろ俺の番だ。

 

通路を引っかかりながら歩く。

 

後ろの方でなんか言ってるが、予想された事だ。

 

これで勝負は俺の勝ちだ。

 

卒業式コスプレ勝負、ウケた方が勝ち。

 

ドムのコスプレをした俺が優勝したのは言うまでもない。