「決別へ」


作・鰹節さま


第六話


総司令室・・・

葛城ミサトはネルフ最高責任者碇ゲンドウに呼び出されていた

ワンフロアぶち抜きの無駄とも言える空間が来る者に重圧をかける

何度もここを訪れているミサトもこの雰囲気に慣れることは無かった

古来、絶対者がよく用いた手法である

自らの支配域で相手を圧倒し屈服せざるを得ない状況に誘い込む

おおよそ国際公務員のオフィスとは誰も思わないだろう






ゲンドウはいつものポーズで鷹揚のない声で言い渡す



「葛城三佐・・・訓告、並びにチルドレン監視条項第三項を無効とする」


ミサトの顔が瞬時にこわばる


「サードは退院後、本部において赤木博士の管理下で治療及び療養にあたる」


「承伏できません!」


言い終わるのが早いか

忍耐の限界をあっさりと突破してミサトは食い下がる


「・・・言いたいのはそれだけかね?

 話はそれだけだ・・・部署に戻りたまえ・・・」


ゲンドウの有無を言わさぬ言葉の重圧がミサトにのし掛かる

頭では抗議しなければと思うのだが蛇に睨まれたカエルよろしく

思うように口が開けない

そんなミサトを諭すような口調で冬月が喋る


「葛城君、第三項・・・学校における監視活動の制限は君が言い出したことだ

 まずはその事に責任を取るべきだろう?」


冬月の言うことはもっともだ

言い出したのは確かに自分だ

承認される段階で反対が依然強かったが

ミサトのごり押しにより決定が下った条項だったのだ

チルドレンに僅かではあるがプライベートを

提供する目的が今回仇となったためだ

作戦部の長たるミサトを更迭するわけにはいかず

保安部の責任者の2・3人が免職または降格となりミサト自身には訓告が下る

だからといってシンジまで自分から引き離す事にミサトは納得いかなかった


「それとシンジ君を移すこととはどう関係するんでしょうか?」


語気を荒げそうになるのを必死でこらえ聞き返す


「管理不行き届き、それだけでは不満かね?」


「・・・はい」


「ふうーっ」


冬月はヤレヤレと言った感じでため息を付く

それを見てミサトは一層表情をこわばらせた


「昨日のことは覚えているだろう?

 サードは・・・シンジ君は君らに何を話したのかな?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「何も・・・そう、何も話さなかったろう?

 赤木君からの報告では彼の対応はすべて無意識下らしい

 日常会話のみ、形態的な反射動作、まあ簡単に言うと自閉症に近い

 他人との関わりを一切絶った状態らしい

 赤木君の判断で君たちとはしばらく距離を置かせることに決定した」




「君らは今治療には役にたたん・・・」




珍しくゲンドウが口を挟む

その言葉はあくまで冷たい

ミサトはうつむき加減になるとじっと下を見たまま何も言葉を発しない


「部署に戻りたまえ・・・・」


ゲンドウが言った言葉を冬月が再び繰り返した


「失礼します・・・・」


硬い表情でミサトは一礼すると

総司令室を後にした










「碇・・・・あの事は話さなくて良かったのか?」


「ああ・・・・・・・・」


「今まで同居してきたんだ、話しておくべきでは無かったのか?」


「冬月・・委員会に報告を」


そう言ってゲンドウは冬月の言葉を遮ると冬月に背を向けた


「・・・・・・・・・」


冬月はゲンドウの背をじっと見ていたが仕事を果たすべくゲンドウの元を離る

















***      ***      ***
















「じゃあ・・・レイお願いね」


「はい」


ミサトとすれ違うようにリツコの部屋を出て行くレイ

レイがリツコの部屋にいるのは別に珍しい事ではないが

リツコがレイに頼み事をしていたのが引っかかった


「レイ・・・どうしたの」


ミサトがリツコに聞く


「たいしたことではないわ、ちょっと用事を頼んだだけよ

 それより・・・どうしたの?こんな時間に来るのは珍しいんじゃない?」


「どうせ分かってるでしょ」


ミサトの対応は不機嫌だ


「ええ、思ったより早かったわね・・・じゃあひとつづつ聞きましょうか」


リツコはミサトに座るように促すとコーヒーを入れに奥へ消える

部屋にコーヒーの香りが充満する頃、リツコが二つのマグを持って現れた

ミサトにその一つを渡すと無言で飲み始める

終始リツコのペースで事を進められミサトの追求は第1段階でくじけた


「話してちょうだい」


ミサトは低く、うなるように切り出す


「何を?」


「あの処置の事よ、いったいどう言うことなの」


「第3項はしょうがないでしょ実害があったんだから・・」


「それじゃない!!シンジ君の退院後の話よ」


ミサトは身を乗り出しリツコに迫った

作戦部長という要職に付きながら、ことチルドレンのことになると

ミサトは冷静でいられない

そこはミサトの甘さとも言えるがそんな旧友をリツコは嬉しく思う

しかし職務上彼女を支援することは叶わなかった


「パイロット管理者としての判断よ」


「理由は?」


「サードの精神不安定」


「自宅療養の可能性もあるでしょう?」


「現在彼が心を開いている相手があなた達でない以上許可できないわ」


リツコはサラリと言ったが

それはミサトやアスカが役に立たないと言っているのも同じである

どんな状態であれ共同生活を営んできた3人である

家族とまでは行かないものの絆はある


「じゃあ、一体誰が!?」


ミサトは苦々しげに聞く

リツコは黙ってディスプレイを示す

そこにはレイに抱きついて泣くシンジの映像があった


「これは・・・・・・・」


ミサトは意外さを隠せない


「レイが初めてシンジ君に面会したときの映像よ」


「何故?」


「分からない、でも彼はレイにだけ泣いた・・・・・それが事実よ」


ミサトの顔は真っ青だった

彼女がこれまでしてきた事・・・・アスカとシンジと暮らして

家族だと思いこもうとして

そして築いたと思っていた信頼関係が

今回の事故であっさりと崩れた・・・・・・

レイにだけ心を開くシンジをむしろ憎らしいとさえ感じている


「もう少し回復を待って彼の精神に余裕が出るのを待ちましょう」


リツコはいたわるように言うがミサトには聞こえていない

ただ裏切りに似た感情がミサトの内に膨れていた・・・・・・

 



(第七話に続く)


後書きみたいなもの

 うーん直ぐに挙げるつもりがここまで遅くなってしまった”どこで切るか?”結構悩むんですよね。遅くなったのもこれも私の不徳の致すところ・・・。今回はこの言葉非常に重いです。本当に不徳なことをしてしまったので現在も悩まされています(ご存じの方も多いと思う)。ゆっくりですがきちんと更新したいと思う今日この頃です。
誰かメールちょうだい(;;)


katsuobushi@geocities.com


みゃあと偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの。

 

みゃあ「はやややや〜、アスカ様、一度も出てきませんねぇ。タイトル替えましょうか」

アスカ様「うぐぐぐぐ……」

みゃあ「どう考えても、シンジくんレイちゃんになついてますもんねぇ(笑)」

アスカ様「あううぅ…シンジぃ……」

みゃあ「しかし、ミサトさんの心理描写とか、凄いですね。構成もすっごくしっかりしていて素晴らしいと思います。リアリティがあるし」

アスカ様「シンジぃ〜〜〜〜〜〜!!」

みゃあ「ところでレイちゃん。次回から『みゃあとレイちゃんの感想らしきもの』になるけどいいかな?(笑)」

レイちゃん「……はい……」

みゃあ「ではまた次回」

アスカ様「いやぁぁぁぁっ!シンジぃぃぃぃぃっっっっーーーーーー!!!おひぃぃぃぃぃ」

みゃあ「まだやってる…(笑)」

性の価値は6