「性は等価値?」


作・鰹節さま


第弐話

シンジはマンションに着いたのだが先に帰ったアスカのことを
考えると敷居が高かった

・・・アスカ怒ってたよな?・・・

ここで何時までもこうしてるわけにはいかないので意を決して入ることにした

カードキーを通してドアを開ける

「ただいま」

そう言ってシンジは家に入った

「お帰り」

ソファーに寝転がって雑誌を読んでいたアスカが此方を見ようともせずに返事をする

シンジは部屋に行くと制服を脱ぎいつもの
Tシャツと短パンに着替えた
そのままリビングに出てゆきアスカから少し間をあけて座りテレビをつけた
夕方は何処のチャンネルも子供向けのアニメーションをながしていた
特に見る物があるわけじゃないのだが何となく惰性でそのうちの一つを見る・・・


しばらくしてアスカが此方を見ているのに気付いた
シンジは気付かない振りをしていたが
アスカが全く視線を外さないのでシンジはおずおずと口を開く

「どうしたの?」

アスカの視線は依然としてシンジの顔をとらえている

「・・・・・・まるでファーストが此処に居るみたい」

シンジは気付かなかったがそう言えばレイと今のシンジがずいぶん似ている・・・

「そんなに似てる?」

「そうね姉妹って言ったら信じると思うわ」

「そう・・・」

誰かに似てると、あまり言われたことが無かったから何か変な気分だ

「リツコは何か言ってた?直る見込みはあるの?」

「今リツコさんが考えてる、一応今のままでも日常生活に支障
 は無いって・・・エヴァにも乗れるし・・・」

「あんたこのままで良いって言うんじゃないでしょうね」

「何言ってんだよ!14年も男として生きてきたのに・・・今更女にはなれないよ・・」

「もし直らなかったらどうするつもり?」

「そんなの分からないよ!考えたくもない」

シンジは悲鳴を上げるようにアスカに言った
アスカはシンジの反応にちょっと驚いた風だったが
落ち着いた声で返してきた

「そうね」

「・・・取りあえず直るまではこの身体で居なきゃいけないんだけど
 やっぱりなんか違和感がある」

「そうよねシンジは男だもんね・・身体が女になっても」

「うん・・・」

そう言ったアスカは身体を起こすとシンジの隣に並ぶように座り
シンジの肩にもたれ掛かって身体を預けた
たまにあるアスカとシンジのスキンシップ・・・
今日はごく自然に行われた
ベランダの方を見ると空に青から薄紅へのグラデーションが見える
淡い色調の変化が美しい・・・
後一時間と持たない儚い一瞬・・・美術館なんかでは見られない日常の美
そんな美しい光景を二人はじっと見ていた


傍目には仲のいい美少女が二人ほほえましく身を寄せ合っている風だが
その雰囲気は恋人同士のそれだった







静かに過ぎる二人の至福のひととき・・・・

こんな穏やかな時を共に過ごせるアスカという存在が
今のシンジには嬉しかった



今日起こったことそれ自体がシンジにとって衝撃的だったのだが
帰り道、一般ネルフ職員や通りすがりの人達から浴びせられる
好奇のまなざしはシンジを傷つけるのに十分だった

シンジがマコトと別れてモノレールの駅に向かったいたときのことだ
シンジとは面識もあろうはずもない一般職員とすれ違ったとき
その職員は変な物でも見るような目つきでシンジをじろじろ見まわし
すれ違っていった

街中でもそうだ
主婦らしい一団が変な目つきでじっとシンジを見る
シンジが気付いてそちらを見るとあからさまにうわさ話でもするように
ひそひそ話し出す・・・
すれ違う男達はニヤニヤとしてシンジを品定めするかのように
露骨な視線をよこす

それが今の自分の変な格好から来るものとシンジは考えたが

そう考えたところで不快感が消えるわけではなく
周囲の視線にさらされながらマンションまで帰り着いたのだった

だから一層、こうしてアスカといつものように過ごしている
時間がとても心地よかった・・・・・









そうこうしているうちに夕食の準備に取りかからなければならない
時間になっていた。

「今日は何が良い?」

シンジがアスカに聞いた

「別に何でも良いわよ」

普通ならあれだこれだと要求を出すアスカらしくもない返事だった
そんな雰囲気のせいかシンジはアスカの好きそうなメニューを作ろうと思った


食事の準備に取りかかってしばらくするとミサトが帰ってきた

「たっだいまー」

ミサトは部屋に行って着替えると直ぐにキッチンに出てきた

「あっミサトさんご飯もうちょっと待って下さいね」

「別に急がなくても良いわよあたしはこれで勝手にやってるから」

ミサトは右手に持った”えびちゅ”をぷらぷらとふると
テーブルについて一人で飲みだした

シンジはいつもどうりの慣れた手つきで料理を完成させていく
そのシンジの姿を見てミサトはからかうように言う

「うーん、家事が出来て、控えめで、その上美少女!世の男どもが
 ほっとかないんじゃないのシンちゃん」

「バカなこと言ってんじゃないわよ!」

アスカがミサトの無神経な言葉に腹を立てる

「別に私は見たままの感想を言ったまでだけど」

「どうなろうとシンジはシンジじゃない、心は男よ!」

「そうですよ、僕はこのまま過ごす気はありませんからね」

「アスカはシンちゃんが女の子になって寂しいのかな?やっぱり女同士じゃねー」

「どうしてそうなるのよ!」

アスカの顔が赤い・・・これでは肯定しているのと同じだ・・

無意味な舌戦に疲れを感じたのかアスカは黙ってしまった
ミサトは相変わらず”えびちゅ”を飲みながらシンジをからかっていた

そして玄関でチャイムが鳴った

ピンポーン

「はーい」

シンジがエプロン姿のまま玄関の方に向かっていく

シンジがドアを開けるとそこには綾波レイが立っていた

「あっ、こんばんわ綾波」

「こんばんわ・・・」

「これ」

レイは短くいって紙袋をシンジに差し出した

「赤木博士から・・・それじゃ・・・」

そう言って綾波は帰ろうとした

「ちょっと待ってよ綾波!」

「なに?」

「その・・・夕飯は食べたの?」

「いいえ、まだよ」

「それじゃうちで食べてかない?」

「いいの?」

「もちろんさ!」

「ありがとう」

「ささっ入って」

そう言ってシンジは綾波を招き入れた

アスカはレイが来たことに不満の表情を見せたが
夕食が始まると何もなかったようにシンジの料理を楽しんだ


食事が終わり一息つくとミサトが話し始めた

「ねえシンちゃん、リツコの奴なにを寄こしたの?」

「これなんですけど・・」

そう言ってシンジは紙袋をミサトに渡した
紙袋を受け取ったミサトは

「開けていい?」

と聞いてきた
リツコが荷物を寄こすなんて今まで無かったことだ
きっと個人的な用事ではあるまいとシンジは思い頷いた


そうするとミサトが紙袋の中を物色しだした

「なーるほどね・・・シンちゃん、リツコがこれから必要なものを寄こしてくれたわ」

「何なんです?」

「これよ」

そう言ってミサトが取り出したものを見て僕は凍り付いた

ミサトの手にあったのは女性用下着・・・
ブラジャーだった・・・

シンジはその瞬間凍り付いた






***             ***               ***










シンジとミサトの舌戦が何時終わるともなく続く
アスカとレイは会話に参加しようとしない
アスカは半ばあきれ顔で二人のやりとりを聞いている
レイに至っては”何故揉めているか?”ということ自体に無関心だ

「ミサトさんそれを僕にどうしろと言うのです」

「もちろんシンちゃんが着けるに決まってるじゃない」

「何で僕が・・絶対に嫌です!」

「だめよーせっかくのプロポーションが崩れちゃうじゃない」

「若いんだからから良いです!」

この一言ミサトにはかなりのダメージを与える

「今のあなたは女性なの!同姓の先輩の言うことは聞くものよ」

「同姓としてミサトさんを見習う気にはなりません!」

・・・ぷちっ・・・・

トドメとばかりにシンジに言われてミサトは自分の中で押さえきれない
怒りがこみ上げるのを感じた

・・・・押さえて、押さえて、ここで怒ったら楽しみが減っちゃう・・・・
(をい!保護者だろう)

「じゃ、普段シンちゃんはあたし達にそういう格好をするなって
 言ってるじゃないの?あれは嘘だったの」

シンジは言葉に詰まった
今、彼(彼女?)がしている格好は普段同居している女性達に言っている
「だらしがない」や「なんて格好してるんです!」と言っているときとさほど変わらない

ノーブラでTシャツ一枚を着ているだけ・・乳首が確認出来る分アスカより過激な格好と言える


シンジは自分の格好に自覚がなかった分、衝撃も大きかった






シンジは自分の格好を改めて確認すると、顔を赤くして小さくなってしまった

・・・ふふん、可愛いもんよね・・・・

ミサトは鬼の首を取ったかのように続ける

「シンちゃん、女の子がそういう格好しているのははしたないんでしょう?
 しかもシンちゃんくらいの美少女がそんな格好してたらねーーーーーー」

「ちょっとミサト、シンジに対して美少女なんて使わないでよね気持ち悪いったらありゃしないわ」

シンジが劣勢に立っていると、ようやくアスカが会話に参加してきた

「あらアスカ、シンちゃんに美少女って言うのがお気に召さないみたいね」

「当然よ!男に対してなに言ってんのよ」

「あら、シンちゃんは今はれっきとした女の子よ」

「シンジは男よ!お・と・こ!いくら身体が女でも意識が男のまんまじゃない」

「リツコに聞いたら脳も女性化してるって言ってたわよ」

「ミサトさんそれ本当ですか!?」

シンジが叫ぶように聞いた

「ええ」

あくまで軽く答えるミサト

「それってどう言うことになるんですか?」

シンジすごく不安そうだ・・・

「身体に慣れるに従って情緒とかが女性のそれに近くなるとかあたしも説明良くわかんなかったんだけど

 要するにだんだん女らしくなるって事よ」

ミサトもリツコの専門的な解説は聞き流していたみたいで
適当なことを言っている。言われた当の本人はー女らしくー
と言うのが効いたのか青ざめている。

口を挟んだはずのアスカも黙っている



・・・シンジが女になっちゃう?ホントの女に・・・・


アスカの中にあったシンジが崩れていくような気がしてとても不安になる
彼女の同居人碇シンジは線の細い男の子だった
繊細・・・悪く言うと気弱だが彼女を気遣ってくれる存在であった
駆け足で人生を過ごしてきた彼女にとって初めて対等につき合った同年の男の子だった
煮え切らない態度や内罰的な性格にイライラすることもあったが
同僚として、友人として、同居人として、そして男として
彼女にもっとも近い存在・・・それが彼だった
そのシンジが今、女になった。一時的なものと説明されたがその事実はショックだった
そして、それに追い打ちをかけるようにミサトは言った
直らなければ本当に女性化すると・・・・

アスカの思考はネガティブな無限階段をさまよう
そんなとき沈黙を守っていたレイが口を開く

「どうなろうと碇君は碇君よ・・・」

突然綾波が話し出す

「あ、ありがとう綾波」

シンジはレイの言葉を聞いて救われたような気分になる
変わってしまった自分でも受け入れてくれる人が居る
相変わらず素っ気ない言い方だがレイの心遣いがシンジには暖かかった

「そ、そうよシンジはシンジだもの・・あたしはシンジがどうであろうと変わらない」

レイに先を越されてと感じてアスカは慌ててそう言った

しかし、彼女にとってその言葉は抜けない棘のようにしくしくと彼女の心を痛めるのだった


ミサトは自分の発言がどれほど影響を与えているかと言うことに全く自覚がないのか

また一つと次の缶に手を伸ばすのだった

(第参話に続く)


後書きみたいなもの

  どうも第弐話を読んでいただきありがとうございます。実は私、丸とか点とかいわゆる句読点

 と言われるものの使い方が未だにきちんと理解してないもので、見てのとおり省いてあります。

 会話中に仕方なく入れる物以外は徹底的に省いてあります。妙な文章ですがどうかこれからも

 おつきあい下さるようお願いいたします。

  次回はシンジ君が学校へ行きます可能な限りサービスを致します(嘘かも)


mailto:katsuobushi@lam.agr.tottori-u.ac.jp


 

みゃあ偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの

 

みゃあ「(@_@)!鰹節さまからもう続編が来ましたよ!すごい執筆速度ですね!しかもこの量…みゃあも見習わなくては(かきかき/(..))」

アスカ様「…………」

みゃあ「?ありゃ……アスカ様?まだ凍り付いてますよ(笑)」

アスカ様「……いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!おひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」

みゃあ「だぁっ!…びっくりしたぁ。アスカ様、突然叫ばないで下さいよ」

アスカ様「もういやっ!この話!あたしはシンジが女なんて話は絶対許さないわよっ!!」

みゃあ「え〜。駄目ですよ、早く慣れて頂かなくちゃ。このあと女のシンジくんが強◯とかされちゃったらどうするんですか。鰹節さま、えっちしーんはダークだって言ってましたよ」

アスカ様「ぷち」

みゃあ「あれ?アスカ様?」

アスカ様「ぶつぶつぶつぶつぶつ………」

みゃあ「あらら……精神汚染されちゃったみたいですね(^_^;)どうやらこのシリーズでは、アスカ様耐えられないようです」

アスカ様「ぶつぶつぶつぶつぶつ………」

みゃあ「はっ!ということは、今ならナニをしてもおこられないかも(笑)」

ばきゃっ!!

みゃあ「はうっ!」

アスカ様「ぶつぶつぶつぶつぶつ………」

みゃあ「あう……精神汚染してても手だけは…動く…とは…がくっ」

 

性の価値は2