「性別は理不尽」
第四話
あの時私は教室にいた
シンジが当番でファーストと一緒に仕事をしているのを
”ぼおっと”見ていた
シンジはいつも家でミサトの代わりに家事をこなしてるだけあって
見ていて気持ちがいいくらい手際が良かった
いつかミサトがシンジをからかって言った事を思い出す
「シンちゃんこれで女の子だったら男どもがほっとかないわよ」
あの時はミサトのバカな冗談だと思っていた
あの時は気にも留めなかった
それが当然だ
誰もいきなり自分の性が変わるなんて夢にも思わないはず
それが起こってしまった希少な例が目の前で学級日誌を書いている
もし自分とはなんの関わり合いもない他人に起きたことなら
興味深い珍事だったろう
しかし最も私に近い人にそれは起こった
私は当惑した
だけど”シンジはシンジ”
私にとってかわるはずも無い
でも・・・・・・・・
あの時教室で言ったこと
「あんたバカぁ?こんなになって一番困ってるのはシンジよ他人のことも
思いやれないほど貧相な想像力しかないの?いい加減にしなさいよね!
他人が悩んでること興味本位でまくし立てて・・・
そんなことで楽しんでるあんた達ってサイテーよ!」
ああ言ったけど・・・・・
きっとあたしもあいつらと同じ
身近な人に・・・ううん、シンジに起こらなかったら
私もきっとああ言う風に興味本位で根ほり葉ほり聞いたと思う
何でかな?こんなにシンジを近くに感じたのは初めて
シンジにあんな事があったせいかな
あいつが女になったと理解したときから奇妙な近親観が沸いた
まるでヒカリといるような・・・何となく安心できる様な
そんな感じがしたの
今まで私はシンジを見る以前に男として見ていたのかな
・・・はっ!あのシンジを?男として?この私が?・・・
変に強がってみるけどやっぱりそれは否定できない
認めたくない自分が居るのをハッキリと感じる
でもシンジに対する変なフィルタが取れたのは確か
今まで見えてなかった良いところがいっぱいあった
悪いと思って所が許せるようになった
何故?
男じゃなくなったとたんにシンジが気になり始めた
結構気が利いて
家事が上手で
それになかなか整った顔してる男だとしても十分可愛い
それに
どうしようもなく優しくて・・・・・・・・
なんか最近シンジのことばかり考えてる
シンジが女の子として日常生活に不自由しないように
ミサトに教育するように言われてシンジとは最近いつも一緒にいた
けどそれだけじゃない
やっぱり私はシンジが気になっている
変よね女の子が女の子の事気にするなんて
しかもあのシンジを・・・・・
今まできつく当たってきたのに・・・・・
なんで今更気になるのよ!
そうやって最近は思考の海にドップリと浸かってしまう事がふえた
自分の中であの事故の事をまとめようと考えてるのに
寝ても覚めてもシンジの事になってしまう
ふふっ
まるで恋する乙女ね
相手は女なのに
微かだったが声を出して自分が笑っているに気付くと
私は慌てて周りを見渡した
キョロキョロと一通り見渡してだれも笑ったのに気付いていないのを確かめると
ほっと胸をなで下ろした
教室に残っていたのはシンジとファースト
それに私と三バカの残り二人
一応私はヒカリを待っているって事になっていた
なんかまた先生から用事を受けたらしい
シンジ達を見ると週番の仕事も終わりに近づいたみたいだ
「じゃあ僕がゴミを捨ててくるよ」
そう言ってシンジがゴミ箱を持って焼却炉へ向かった
シンジを最後に見たのはその時だった
シンジが教室を出てだいぶ経っている
いくら何でも遅すぎる・・・・
・・・・・・・タタタタタタタタタタタタッタ
ふと廊下を誰かが走ってくる音がした
”バン”
それは私たちの教室の前で止まったかと思うと
大きな音を立ててドアを開け音の主ヒカリが入ってきた
「大変よ!碇君が・・・碇君が・・・」
「なんやイインチョどうした?」
鈴原がヒカリのただ事では無い様子を見ていった
「碇君が・・・体育倉庫で・・・」
ヒカリは全速で走ってきたらしく息が切れてまともに話せない
「どうしたんや?センセがどうかしたんか」
「襲われてたの・・・・・早く・・・早く助けてあげて・・・」
その言葉を聞いた全員が一瞬凍り付く
状況を理解すると同時に全員が走り出した
私ががトップを走りついで鈴原、相田、ファースト
全力で走ってきたヒカリは最後尾をヘタヘタになりながらついてくる
本館を抜け、渡り廊下を過ぎ、体育館を突っ切ると体育倉庫についた
私は勢いよく扉を開ける
中の惨状に私は声も出せなかった
そこには下半身を血と精液にまみれさせたシンジが
マットの上に横たわっている
丁度三人目がシンジにのし掛かろうとしていたときだった
そしてそのシンジを犯した男子生徒3人が一斉にこちらを向く
私の横から鈴原が入るといきなり怒鳴った
「おのれら・・・!!」
怒りのあまり後の言葉が出てこないみたいだった
犯行の現場を見られたにもかかわらずニヤニヤした表情のまま
あいつらはこっちを見ていた
気持ち悪い・・・・
人があんな醜い表情をするのを見たのは初めてだった
暴力と快楽に酔った・・・人の汚いものをさらけ出したような・・・
それが鈴原を切れさせた
鈴原は手近にいたその男子生徒の一人の胸ぐらをつかみ
その顔を力の限り殴りつけた
トウジの渾身の一撃を受けた生徒はそのまま昏倒する
それを見た残りの二人が鈴原に襲いかかった
初めの一人が鈴原に掴みかかったと思うと急に横に吹き飛んだ
鈴原に次いで倉庫に入った相田が横から蹴りを入れていた
飛ばされた生徒の方を見たもう一人に隙を突いて鈴原が顔面を殴る
クシャッ・・・
鼻が折れた音がして血が大量に床に落ちる
そのまま顔を押さえもだえ苦しむ
悲惨な事だが私にはなんの関心も与えない
鈴原は拳を握り直すと
相田に飛ばされた生徒の方を向く
そしてジリジリと近づいていった
もはやその生徒には抵抗する気力もなく近づく鈴原にただおびえるだけだった
拳の届く距離に鈴原が近づくと渾身の力で振りかぶる
しかし何処からかだされた手がその腕を止める
「なんじゃい!われっ!」
鈴原は怒りの表情で止めた相手の方を
むくとそこには私達のクラスの男子担当の体育教師がいた
「事情は見ただけでも大体分かる取りあえずお前達は外に出ろ」
そう言って体育教師は半ば強引に鈴原を外に出した
シンジを襲った男子生徒も外に運び出され体育倉庫の中には
私とシンジそしてファーストが残っていた
鈴原と相田が戦っていたのはほんの数秒だった
私は奥でぐったりとしているシンジに走り寄ると
シンジの身体を後ろから抱く様な格好で上体を起こさせる
呆けたシンジの顔を見ていると殴られた跡があった
シンジの傍らに座ったファーストは汚れたシンジの身体を
ハンカチで拭いている
「ひどい・・・・・」
あまりの惨状に私はそう呟いた
衣服を破られ身体と顔に暴行の跡がある
私は当たり前のようにシンジのある部分を確認する
今更疑ったわけではないがもしかしたらと淡い期待を持っていたのかも知れない
結果は無惨にも予想通りだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シンジは犯されていた
あたしが呆けているとヒカリがシンジの体操着を持って
入ってきた
ファーストはそれを無言で受け取る
私たちはシンジに体操着を着させた
何をしてもシンジに反応が見られず
私は不安になってくる
シンジの身体をぐっと引きつけ抱きかかえる
私の目からはいつの間にか涙が出てきた
同情なんかじゃない
シンジが・・・・私になんの反応も示さないシンジが
ただ・・・・怖かったのだ・・・・・・・・
(第五話へ)
後書きみたいなもの
どうも!作者の鰹節です。いやー書いちゃいましたねー予定ではもっと早くに上がってい
たはずなんですが自分のページにかまけちゃいまして。そんでもって今はテストの真っ最中
こんな事してていいんかいな?この回はもっと直接的なはずだったんですけど思う所があり
ましてこの様なアスカサイドのものになりました、でもこれじゃ終わらないです。
次回は別の視点からになります
みゃあと偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの
みゃあ「ありゃりゃ……シンジくんとうとう……」
アスカ様「……ブッ殺す!!」
みゃあ「だああああああっ!アスカ様、そんな金属バット握り締めてどこ行くんですかっ!?」
アスカ様「決まってんでしょ!作者殴り殺して、シンジに詫び入れさせるのよっ!」
みゃあ「……殺しちゃったら、詫び入れられないような気がするんですけど…じゃなかった、ダメダメダメダメ、ダメですよっ!!やめて下さいアスカ様っ!」
アスカ様「はーなーせーっっ!!!よくもあたしのシンジをーーーーーー!!」
みゃあ「わっわっ、だ、だから、こうして傷ついたシンジくんをアスカ様の優しい心が癒す…っていう展開が待ってるんですよきっと!」
アスカ様「……え?」
みゃあ「だから、結局シンジくんはアスカ様と結ばれてめでたしめでたし、と…」
アスカ様「……ま、まあそれなら……あたしがシンジと…(ぽっ)」
みゃあ「(ふう…次回はもっとヤバイと知れたらどうなることか…)」
アスカ様「ん?何か言った?」
みゃあ「いいいいいいいえええ、何にも(ぶるんぶるん)」
アスカ様「そ、ならいいわ。……ああ、シンジ……あたしの愛で癒してあげるからね」
みゃあ「(……血を見るな、こりゃ(^^ゞ)」
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