「性は等価値?」


 

作・鰹節さま


第壱話


「いつもの天井だ・・・・」

シンジは意識を取り戻すとそう言った
初めてこの天井を見たのは何時のことか・・・
はじめの頃は無機質で単調なこの天井を見ることが苦痛だった
白に統一された塗装と無駄を廃した合理的な形の天井は
いいしようのない恐怖を与えるからだ
ここで意識を取り戻すのはもう何度目になるだろう
回を重ねる度に気にならなくなったが決して好きにはなれなかった

病院の天井をみなれるなんて・・・・あまり健全とは言い難いな・・・

自嘲を込めた回想をしていると不意に入り口が開いた

「見舞いに来てあげたわよバカシンジ!」

太陽のような眩しい存在感を放つ彼の同居人・・・・・
惣流・アスカ・ラングレーが入ってきたのだった。
アスカはシンジの寝ているベットの方へツカツカと歩み寄ると
両手を腰に当てたいつものポーズで話し始めた

「なによ!このアスカ様が直々に見舞ってるのよ、もっと嬉しそうにしなさいよ。」

「ご、ごめんアスカ」

やっぱり反射的に謝ってしまうシンジ
構わずアスカは続ける

「もう、あんたも成長がないんだから!一々暴走させてたら任務に
 支障をきたすじゃない」

「そっか・・・また暴走したんだったね・・・」

試験中の事故は災難だったがいつもの調子で話す彼女を見ていると
自分が無事に此処にいることが嬉しかった

「どうしたのよ?」

シンジが何か考えるようにじっと下を見ていたことに不安を感じたのか
アスカがそう言ってきた

「いや、助かったんだなって・・・今頃思って・・」

「元気出しなさいよ・・」

シンジは珍しい物でも見るような目でアスカを見た普段の二人を知る者が聞いたら
さぞかし驚いたであろう、アスカがシンジを心配しているところを見せるなんて・・・
シンジはアスカが気遣ってくれた事が嬉しくて心が温かくなった
そう思ってアスカの方へ視線を移すと目が合った
何を言うでもなく見つめ合う二人・・・


そんな気恥ずかしい状況にシンジが気付くと
照れ隠しか身体を起こそうとした

「よっ・・と」

シンジが身体を起こすと掛かっていたシーツが上半身からずり落ちる

「あっ・・」

アスカはシンジの裸にちょっと驚く、普段バスタオル一枚でうろつき
シンジをドギマギさせている彼女とは思えない
アスカは顔を赤くしてうつむいたが視線は外してなかった

シンジの裸を見ていたアスカの顔は次第に驚愕の表情へと変化したのだ

「なっ・・何なのよそれは!」

「へっ?どうかしたのアスカ」

「どうかしたって・・その胸よ、胸!」

「えっ・・」

シンジはアスカに言われ自分の胸を見る、いつものようにプラグスーツ
を脱がされた状態・・・いわゆる裸・・・・そしてそこには・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・うわーーーー!!」

あまりのことに理解するのに時間が掛かったようだ


そこにはシンジの胸には本来無いはずの二つの膨らみ・・・・・
まさしく女性のそれが確かに存在した











***         ***          ***

 

 

 

 

 

 




プッシューー

圧縮ガスの音がして入り口のドアが開きミサトとリツコが入ってきた

「ハーイ!シンちゃん元気してた?」

ミサトの脳天気な挨拶にも反応できないくらいシンジもアスカも呆けている

「あら?どうしたのかしら」

ミサトのその言葉でアスカがいち早く現実への帰還を果たすと当然の疑問を投げかけた

「ちょっと!どうなってるのよ?何なのよ?何でシンジの胸がああなってるのよ?

 ミサト何とか言いなさいよ!」

アスカがもの凄い剣幕でミサトに詰め寄る

「えっ・・あっ・・その・・・」

ミサトはアスカの剣幕に当てられてしまって咄嗟に口が開かない
ミサトが答えを渋っていると思ったアスカは今度はリツコに喰ってかっかった

「リツコあんた技術部の責任者でしょう?説明しなさいよ」

「ええ・・」

アスカの剣幕などさして気にしてないような落ち着きで
リツコは説明を始める

「今回、初号機は四度目の暴走をしたわ・・それも戦闘中で無く連動試験中にね。
 前にシンジ君が取り込まれたときと状況的には似ていたの・・
 シンクロ率の急激な上昇とパイロットの生体信号そのもののロスト・・
 気付いたときにはエントリープラグ内には裸のシンジ君とプラグスーツが
 浮かんでいた・・・・」

「それって・・どういうこと何ですか?」

シンジが訪ねる


「・・・シンジ君は一度取り込まれて瞬間的に再構成されたのよ」


「けど、それとこれとはいったい何の関係があるって言うの?」

「シンジ君が再構成された際に何らかの外的要因によりシンジ君の
遺伝情報が書き換えられた様なの」

「そんなことが実際起こりうるの?」

アスカの疑問には答えずそのまま続けるリツコ

「あの時、あのほんの僅かな時間にいったい何が起こったかは今現在調査中だけど

 あの時シンジ君が生命の危機にさらされた事に間違いはない・・・シンジ君が危機的

 状況に陥ったがために初号機が自らシンジ君を取り込み守ったとも考えられるわ」

「エヴァっていったい・・・・」

エヴァには意志があることを暗に知らされた訳だが、アスカは初号機がシンジを守ったということより

エヴァは”得体の知れないもの”という認識が暗く影を落としていた

二人の反応をよそにリツコはさらに続ける


「シンジ君、あなたが感じているとうり初号機のなかにはあなたの
 お母さん・・碇ユイさんがいるわ。今回シンジ君が再構成されるときに
 シンジ君の遺伝情報の一部がにユイさんのもに書き換えられたせいだと
 考えられるのよ」

シンジには衝撃的な事実のはずだが、今は自分の身体が気になってその言葉の意味
するところを完全に理解することは出来なかった


「一部って・・・」

「性別よ・・」

「えっ・・・」

性別って事はもしかして・・・・
シンジはあることを思い出しおそるおそるシーツをめくってそこにあるべき
モノを確かめようとした

「なっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そこにはシンジにとってあるべき
モノが無く多分女性のものだと思われるモノに変わっていた・・・・・・

思考回路が火花をあげショートしたような気がした
視界がホワイトアウトしてゆく

そうしてシンジはもう一度意識を失ったのだった





 

 

 

***       ***       ***

 

 

 

 

 

 



シンジが再び意識を失ってから30分くらい経った頃だろうか

 


再びシンジが意識を取り戻すとそこには心配そうな顔をしたミサトとアスカがシンジの顔を
覗き込んでいた

「シンちゃん大丈夫?」

「ええ、何とか・・・」

僕は先ほどのショックから完全には立ち直っていなかったが
かなり落ち着いていた

「シンちゃん、あなたにこの現実は辛いものかもしれないけど
 目を逸らしちゃだめよ!幸い命とかには問題ないんだから」

ミサトが仕事の時のような真剣な・・しかし慈愛に満ちた表情でシンジに話しかける

「ミサトさん・・・・」


「ほら、シンちゃんてば元々可愛いかったからこのままで十分美少女で通じるわよ。
 スタイルも良さそうだし・・・・・きっと学校行ったらモテモテよ!」

前言撤回・・・・

やはりミサトはミサトだった、このシチュエーションをとことん楽しむみたいだ・・・・・

この様な状況下でもペースを崩さずにからかおうとするミサトを見てアスカは
心底呆れたようだ


「あたし帰る!」

後ろにいたアスカがつきあってられないといった風なジェスチャーをして
病室を出ていった

そんなアスカを見送ったミサトは


「取りあえずシンちゃん着替えよね”き・が・え”ちょっと行って持ってくるから待っててねん」

そう言って嬉しそうに出ていくミサト
異様なほど楽しそうなのがシンジの気分を急速に暗くした

「シンジ君」

小躍りしながら出ていくミサトを見送ったリツコが話しかける

「取りあえず日常生活には何の問題もないから・・・
 早急に対策を練るから我慢してね必ず元に戻すから・・・」

「リツコさん・・・・・・・・・・ありがとうございます」

「お礼を言われてもね・・・私たちの管理責任でもあるんだから・・・・」

そう言うとリツコは病室を出ていった

「はあーーー」

思わずため息が出てしまう

これからどうなっちゃうんだろう?不安を拭えないシンジだった

 




「おっまたせー」

そう言ってミサトが入ってきた

「はいシンちゃん着替え持ってきたからこれに着替えてね」

ミサトは下着から上着までの一式をシンジに渡そうとした

「こ、これって女子の制服じゃないですか!」

「あらーシンちゃん自分の立場ってものを考えなさい」

ミサトはそう言うと何処からか姿見を持ち出してきた
姿見をシンジの前に持ってくるとからかう口調でこう言った

「ほらーこんな美少女がせっかくの美貌を隠しちゃだめでしょ」

そう言われて鏡を覗き込むと可愛い女の子が此方を向く
確かにシンジの顔ではあるが輪郭や肉の付き方は女の子のそれだった
体に至っては以前と同じくすらりとしていたが完全に女の子の体つきだった
シンジは思わず鏡に映った自分に見とれてしまった
アスカとは比べようもないがバランスの取れたプロポーションが
整った顔と相まって自分で思うのも何だが綺麗だった・・・

「シンちゃん、まだ意識は男のままなんだからエッチなこと考えちゃだめよ」

ミサトに言われ女の子(自分)の体に見とれていたシンジはとたんに顔を赤くした・・

「あらー図星だったかしら?」

この人何処までからかえば気が済むのやら・・

「それじゃ着替えましょうか」

そう言ってミサトはシンジに服を渡そうとする

「いえ、結構です!」

慌てて拒否するシンジ

「えーーーっ」

残念そうな声あげるするミサト

「ロッカールームに僕の制服があるはずです、それを着ます」

「せっかく持ってきたのにーー、ねえシンちゃんお願い!チョコットでいいからさー」

ミサトがシンジを拝むように手を合わせて言う
しかしシンジに彼女の要求を聞く義理はない

「持ってきて下さい!」

シンジに強い口調で言われ渋々といた風にまた病室を出ていくミサト

それにしても何処から第一中学の制服なんか・・・・・

それ程時間を掛けずにミサトは戻ってきた

「はいこれ」

そう言ってシンジに制服を差し出す

「ありがとうございます」

そう言って受け取るとシンジは着替え始めた

「あれっ??」

普段どうりに着替えたシンジはなんかいつもと違うような異質な感覚があった
それもそのはず、着替えたのは良いがズボンのウエストは余り
ワイシャツはぶかぶか、何か身体が違和感だらけだ・・・

「似合わないわよ・・・シンちゃん」

ミサトが言ったシンジは姿見の前に来て自分の姿をみた
そこには”男の子の服を借りました”と言う状況の女の子がいた
髪はかなり短い部類に入るが街を歩けば誰もが振り返るような美少女が
男子中学生の格好をしている・・・・特殊な嗜好を持ち合わせた人種には
さぞかし好評だろう

「スカート穿くよりかはいいです!」

「似合うのに・・・」

ボソッとミサトが言う

「いいんです!!」

ミサトを諦めさせるためにシンジは強い口調で言い返した

しつこく食い下がるミサトを振りきりシンジは家路についた

ミサトは無駄になった女生徒の制服を持ってトボトボと歩いていく

丁度自販機コーナーの所でレイに会った

「ゴメンねーやっぱり無駄になっちゃったみたい」

「いえ、構いません」

「それじゃー返しとくわねこれ」

そう言ってミサトは制服と下着類を含めたものをレイに渡す
ミサトはレイから借りてきていたようだ・・・・・下着まで・・・・・





 

 


***          ***           ***

 

 

 

 

 

 

 






ミサトと別れたシンジは帰る途中ネルフ施設内でマコトに会った

「おや、シンジ君もう身体はだいじょうぶかい?」

「はい、なんとか・・」

「あれ?シンジ君ずいぶん可愛い声出すね、風邪でもひいたのかい?」

「いえ、何でもないです!」

シンジはそう言ってそそくさとその場を離れた

・・・声まで変わってるなんて・・・

シンジは今さながら身体が変わってしまったことを思い知ったのだった

 

(第弐話へ続く)


後書きみたいなもの

 既にどっかでやっているかもしれないネタですけど、何となく書きたくなって書いてしまいました。

同時に小説または物語という形態の文章を初めて書いたと言えるかもしれません。そんなものを

投稿しようなんて思ったのは読ませる人が身近にいないからです。苦情はいくらでも承りますので

感想下さい。


katsuobushi@lam.agr.tottori-u.ac.jp


 

みゃあ偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの

 

みゃあ「やったぁ!また新人の方が投稿して下さいましたよ、アスカ様!ありがとうございますぅ。いやぁ…しかも凝ってるんですよ。ちゃんとタイトルグラフィックまでご自分でお書きになっているんです。しかも、初投稿とはとても思えない、見事な出来ですよねぇ」

アスカ様「…………」

みゃあ「?あの……アスカ様?」

アスカ様「……いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!なんなのよ、一体これはっ!?」

みゃあ「うわっ!…びっくりしたぁ。何って……投稿作品ですよ、鰹節さまからの」

アスカ様「なっ、なっ、なっ、なんでシンジにむ、胸、胸があるのよっ!?しかも、あの、その、男の子についてるべきモノが……ないのよっ!?」

みゃあ「ははは……それがこの作品のコンセプトじゃないですか。……もしかして、アスカ様。シンジくんのアレが無くなっちゃったから、気が動転してるんですか?」

アスカ様「あああああああああああああああ……シンジ」

みゃあ「……(^^ゞ。聞こえてないようですね」

アスカ様「シンジ……シンジが女の子になっちゃったら…あたしは一体どうすればいいのよぉ……!!」

みゃあ「あらら……やっぱりアスカ様はシンジくんにらぶらぶのようですね」

アスカ様「シンジィーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ、カムバーーーーーーーック!!!」

みゃあ「…相当錯乱状態にあるようです(笑)」

みゃあ「さて、鰹節さまによれば、この後Hなシーン(笑)はちょっぴりダークになるそうです。みゃあはそういうのが書けないタチなので、ちょっとどきどきです。第弐話をお待ちしておりますm(__)m」

アスカ様「あーーーーーーーーーーーーーーっっん!(号泣)」

 

性の価値は1