「これでよかったのか?リリスよ」
神様は御前に跪いている少女に問いかけました
「少年の約束と少女の願い」
〜 続・少女と天使と約束と 〜
「私の願いはヒトの再生です」
紅の瞳は寂しさを秘めつつ神様に向けられました
神様はそんな少女を見て一つため息をつきました
「リリスよ・・・そなたは大切な事を見失っていることに気付かないのか?」
蒼銀髪の少女と神様の間に長い沈黙の時が流れました
少女はただ神様をじっと見つめているだけです
そんな重苦しい時間を先に破ったの神様でした
「天使が「アヤナミレイ」と言う少女のために地上に降り立った。
その天使は祝福された立場と地位を捨ててヒトになったのだ。
そなたにこの意味が分かるか?」
神様は少女の表情が驚きに変わるのを見ながら続けました
「そなたは、確かにヒトを導いた。しかし、「アヤナミレイ」と言うヒトは
救えなかった。そしてその少女を追ってすべてを捨てヒトへと堕ちた天使を
救えなかったのだ」
少女は悲痛な表情を浮かべながら言いました
「私は・・・・・私は・・・間違っていたのでしょうか?」
神様は力強く、そして優しく答えました
「間違っていたのなら訂正すればよい。もう、そなたは使徒としての役目を
果たしたのだから・・・・下界を見よ。少年のあの表情を」
そこには海辺にたたずみ、何をするでもなくじっと彼方を見つめる少年がいました
少女の紅の瞳によりいっそうの哀しみが広がりました
「気付いたのであれば・・・・・、アヤナミレイを救ってやれ、そしてあの少年を
救ってやれ」
その言葉を聞いて少女の紅の瞳に決心の色が宿りました
「私は・・・・わがままです。でも、御父の暖かな優しさに救われました。
私のやり残したこと・・・私の本当の願いを叶えに・・・・行きます。」
神様はその言葉を聞くと優しい表情を浮かべながらこう言いました
「さあ、行くいい。そなたの進む道は決して平坦な道ではないが、そなたが選んだ道だ。
希望と光を見つけ、そして真にヒトの道をヒトと共に歩むがよい。」
少女の体が一瞬目映いまでの光を放ちそして地上へと降りて行きました
神様は光の降りていった下界を見つめながら言いました
「まだまだ、私も見守って行かねばならぬか・・・・。しかしどうして我が子達は
一人立ちできぬのだろうな」
どこからともなく現れた銀髪の少年が御座の前で頭を垂れつつ言いました。
「ヒトも私たちもまだ歩き始めたばかりです。手の掛かる子かもしれませんが、
御父の深い慈愛を必要としています。」
「タブリスよ、お前にはいつも驚かされるな。しかし一番理解しているのは
お前かもしれぬな」
神様はそう言うと下界に視線を移しました
そしてタブリスも下界を見つつ言いました
「あの二人にヒトの新世紀を委ねるのも良いかと思います。
当然私もあそこへ行きますけどね」
「早く帰ってこい。私も寂しいからな」
タブリスは屈託のない笑顔で神様を見つめました
「早めに戻ってきます。私たちにはヒトの一生なんて瞬く間ですからね」
御座の前にいた少年は光に包まれて下界へと旅立っていきました
そして神様は下界に再び視線を移しつつこう言いました
「我が子らに祝福あれ」
神様の視線の先には再会を果たした蒼銀髪の少女と黒髪の少年が海辺で
しっかりと抱き合っていました
木野神レイのあとがき
実は、この作品は別のホームページに投稿しています。
本来ならこちらにupすべきだったのですが、いろいろと忙しいようでしたので
失礼ながらこちらが後になってしまいました。
ただ、この作品の前編はここが初出なのでいろいろと思い出深い作品です。
遅くなりましたがお納めください。