夢と幸せの形

 

作・木野神まことさま

 


 

「夢を見たよ」

 

第三新東京市の郊外にある土手の斜面に寝っころがりながら僕はつぶやいた。

 

「夢?あんた寝てた訳ぇ、あっきれた」

 

栗色の髪の少女・・・・アスカは夕焼けを見ながらあきれたように言った。

 

あれから・・・・サードインパクトから15年、この街も復興が進んでもう郊外の

 

一部にしかその傷跡は残っていない。

 

L.C.Lの湖の畔で気付いたときはアスカと二人。

 

あの時・・・・僕は母さんと綾波に強く願ったんだ・・・・再びヒトとして生きて

 

行くことを、そしてみんなと生きて行きたいと・・・・・・。

 

アスカとは初めは反発し合い・・・そして生きていく上で助け合うことを必要と感じた時

 

僕たちは過去を振り返らずに・・・・未来を生きていくために・・・・協力しあった。

 

アスカの僕に対する嫌悪感はひどいモノだったけど、それも次第に無くなっていったっけ。

 

そしてアスカと僕が以前のように振る舞える様になったときだったかな?

 

ミサトさんやリツコさんを含むNervのみんなと・・・・父さんと・・・・母さんに

 

出会ったのは。

 

そりゃびっくりしたよ。アスカと二人でとぼとぼ周辺を探索してたらひょっこり出て

 

くるんだもん。僕は母さんの事よく覚えてなかったけど、すぐ解ったんだ、あの人が

 

母さんだって。

 

そしたら頭の中が真っ白になって気付いたら母さんの胸の中で泣いてたっけな。

 

母さんは黙ったまま僕の頭を撫でてくれた。

 

しばらくして僕が落ち着いた時、背中で父さんが一言こう言ったんだ。

 

「すまなかったな、シンジ」

 

その言葉に驚いて振り返ったらそこには優しい顔をした父さんがいた。

 

僕は複雑な心境だったけど、たぶん僕の望んだ世界が来たんだと思った。

 

しばらくしてアスカを捜すとアスカもおじさんとおばさんに囲まれて幸せそうに

 

してたっけ。

 

 

 

ふと昔のことを思い出してたら急にアスカが僕の顔を覗きこんだ。

 

「あんた、こんな時になに黄昏てるのよ」

 

少し不満そうにアスカは言う。

 

「ん、昔のこと思い出してたんだ」

 

「ほんといろいろあったわよね」

 

「うん、いろいろ・・・ほんとにいろいろあったね」

 

僕は遠くを見ながら呟いた。

 

「夢・・・だけどさ、叶ったよね。僕たち幸せになれたよね。」

 

僕は起きあがってアスカの目を見ながらこう言ったんだ。

 

アスカはくすりと笑いながら僕の目を見つめ返して

 

「私の目を見ながらそう言えるようになったんだから幸せになれたんじゃないの?」

 

なんか本当に優しくなったな・・・アスカ

 

「アスカはどうなの?」

 

「私?当然じゃない!幸せよ」

 

女神のような微笑みを浮かべながらそう言った。

 

また二人で夕焼けを見上げてると土手の上から声が聞こえてきた。

 

「パパー」

 

娘の声が聞こえる。

 

「さ、帰りましょ」

 

アスカはスッと立ち、斜面を登っていく。

 

「待ってよ」

 

僕もすぐに追いかけて娘の待つところへ。

 

するとそこには銀髪の青年・・・・・カヲル君がいた。

 

「シンジ君、久しぶりだね」

 

「うん、そうだねカヲル君」

 

僕がそう言うとアスカはカヲル君の隣に走って行きカヲル君の腕を取って

 

「さあ、帰るわよ」

 

照れくさそうにしながら引っ張る。

 

そして少し苦笑気味にカヲル君はそんなアスカを見ながら微笑んだ。

 

「じゃあ帰るよシンジ君」

 

「こんどの日曜、ちゃんと来るのよシンジ」

 

「シンジ君、よろしく頼むね」

 

アスカとカヲル君はそう言うと寄り添いながら帰って行った。

 

「パパー、日曜日ってなにがあるの?」

 

急に娘は僕の手を引っ張りながら聞いてきた。

 

「えっとね。ふたりの結婚式があるんだよ。」

 

僕は娘の頭の上に手を置いてゆっくり撫でてやる。

 

そしてしばらくすると車がやってきて、静かに横に止まった。

 

車から降りてきた妻を見つけると嬉しそうに娘は走っていった。

 

僕も妻の元へ行くと彼女は僕に静かに微笑み掛けてくれた。

 

「アスカ・・・夢叶ったって言ってたよ」

 

妻はそれを聞くとこう言ってくれた。

 

「私の夢も叶ったわ。あなたの夢は?」

 

蒼銀の髪が夕焼けに照らされる。赤い瞳に優しさがたたえられる。

 

「僕の夢・・・・・父さんや母さん、Nervのみんな・・・そしてアスカとカヲル君。

 

・・・・・・みんな・・・みんな幸せに慣れたかな?

 

僕の夢はみんな幸せになることだと思う」

 

一呼吸置いて・・・・・自分の頬が赤くなるのがわかる。

 

「そして、一番の幸せは君・・・・・レイと一緒になれたことだよ」

 

そう言って僕はレイを抱きしめた。

 

「あーーパパとママのほっぺ真っ赤だよ」

 

娘の声にレイと僕は微笑みながら3人で抱きしめ合った。

 

 

 

 

 

夕暮れに映し出される幸せ『あなたの夢、叶いましたか?』

 

 

 

− 終わり −

 

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『夢と幸せの形』

 

あとがき

 

とりあえずアヤナミストの本分達成・・・・いや、私個人の欲望か?

 

しかしシンジ君の視点で話を進めることや、いつになったら綾波を出そうかとか

 

ばれないように最後の最後まで話を持って行くぞとか考えながら書いてたらこんな

 

事になってました。

 

ほんとはアスカとカヲルくんの馴れ初め書きたかったんですけど、長くなる上

 

話が変わるのでやめました。

 

レイちゃんにはいっぱい、いっぱい幸せになってもらいたかったから書きました。

 

駄文ぽくなってしまいましたけど、これも一つの「答え」だと思って大円団(?)

 

とさせていただきました。

 

 

 

木野神まこと


 

みゃあレイちゃんの感想らしきもの。