―少女と天使と約束と―
作・木野神まことさま
「神様、あの子はいつもどうして独りなのですか?」
光輝く1人の天使は神様の御座の前で不思議そうな顔をして尋ねました。
「うむ」
御座にお座りになっている神様は少し考えるふうな仕種をしながらその天使に
こうお答えになられました。
「あの子は私の手から外れた子なのだ。私も何とかしてやりたいのだがこれば
かりは難しい」
天使は少し暗い顔をして視線を下界のその少女に向けた。
そう、今日も少女は窓際で独り本を読んでいた。
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『少女と天使と約束と』
written by makoto kinogami
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「神様、私はあの少女を救って上げたいのです」
しばらく下界を見つめていた天使は神様に向かって言いました。
神様はそれを聞いて複雑な表情をしました。
「天使よ、あの少女を救うには大きな代償を払わなければならないのだぞ」
もちろん天使は知っていたのです。その代償がなんであるか。
「もうすぐ試練の時がくる。おまえはその光輝く翼と今持つ記憶をなくしても
彼女を救いたいのか?」
「もちろんです。それに神様の御手を外れたヒトだからこそ私は神様の愛を伝えて
やりたいのです。たとえその結果ヒトに堕ちることになろうとも」
神様は天使の決心が堅いことを知ると一つ溜息をついて最後にこう言われました。
「タブリスが悲しむぞ」
その言葉に天使の表情は少し翳ってしまいました。
「アダムやリリスは下界へ行った。試練の時がくればお前はヒトとして御使い達と
対峙しなければならなくなる。それでも耐えられるか?」
そう、神様はヒトを試す時期に来たと御判断なされて大いなる試練を実行すること
になっていたのです。
やがて天使は決心が付いたかのように顔を上げて神様に言いました。
「私はどうなってもかまいません・・・・・・・・。
私にはどうしても・・・・・・わからないのですが・・・・・・・あの少女を
見捨てることが出来ないのです。」
神様は天使の決心を聞き天界に響きわたるぐらいの大きな声で言われました。
「さあ!天使よ!大いなる試練を前にそは苦界への道を選ばん。
ヒトに与えられた唯一の希望とならん。その持つ12枚の翼は永遠なれど
ヒトの罪にまみれしそはその力を失なわん。我が御子よ、願わくばその前途に
幸あらんことを!」
いつのまにか現れた神様の15の御使い達はその天使を取り囲むように
立っていました。
その中心で神様の前にて頭を垂れている天使が目映いまでの光で包まれて、
そしてその光は 下界へと降りていきました。
光が消えてしばらくすると神様は、残った15の御使い達にこう言いました。
「我が御子たちよ。時は成った。ヒトを含めた我が子達に大いなる試練が来た。」
17番目の御使いは一番前へ出てこう言いました。
「我らが神よ、私たちは神の御業に従うだけです。
それがどのような結果となろうとも。 ヒトに与えられた試練がヒトをより
良い方向へと導かれる事になるのならそれが私たちの幸せです。」
15の御使い達はそろってこう言いました。
「我らが神よ、その御業に栄光あらん。」
神様は御座から立ち上がられて15の御使い達に光を与えました。
「そなたらはあらゆる可能性。行って我が意志を伝えよ」
そして17番目の御使いを残して消えていきました。
1人残った御使いに対して神様は呟くようにこう言われました。
「タブリスよ。これでよかったのだろうか」
少し驚いた顔をした御使いは、やがて慈愛に満ちたような表情でこう言いました。
「私たちは神の御子です。アダムもリリスも・・・・・そしてリリンとなった
天使も信じているのです。ヒトの可能性を。」
ふと下界を見おろすとかなり老朽化したマンションのベランダでこちらを見ている
少女が見えました。
その深紅の瞳がまるでまっすぐこちらを見つめているかのようにタブリスには
感じられました。
蒼銀の髪と深紅の瞳。その表情には哀しみがたたえられていました。
「しかし、ヒトにもその代償を払ってもらわなければな」
その声にタブリスは振り返ると神様は悲しげに少女を見つめていました。
ここはとある中学校の屋上。もう日も暮れてだれもいないはずの
この場所に少女が1人ぽつんと立っていた。
「あっ・・・・あのさ・・・君、・・もう、暗いしこんなところにいたら・・・・」
少し離れた場所から少年は蒼銀髪の少女に話しかける。
静かに・・・本当に静かに少女は振り返ると頬に一筋の涙を流していた。
「月の女神は愛しいヒトの願いを叶えるために無へと帰るの」
少年は呟くような少女の言葉を聞き深紅の瞳を見つめこう言った。
「天使は月の女神のために・・・消えて無くなりそうな女神のためにここへ
来たんだ」
その言葉を聞いた少女は少年に近づいて・・・・そしてキスをした。
「何があっても離さない・・・・絶対に離すもんか」
少年は自分に言い聞かせるように言うと自分の胸で泣いている少女を
ぎゅっと抱きしめた。
「時間よ・・・・待ってる・・・・私は待ってるから」
そう言うと少女は少年から離れて月へと上がっていった。
「待ってる・・・・・絶対待ってるから」
少年は自分の手に残った少女の感触を確かめると見上げて少女に
向かってこう言った。
「今は翼がないけどきっと、きっと君を捕まえてみせる。
だから待ってて。絶対待ってて」
少年の言葉は最後には叫びに変わっていた。
気が付くとベットに寝ていた少年は自分の頬が濡れているのに気が付いた。
「なんだろ・・・・ひどく悲しい・・・・・夢・・・・・」
夢の内容はもう頭には残ってなかった。
体を起こした少年はベットの横の机ある一通の書類とIDを手に取った。
「父さん・・・・・・・何を今更・・・・・・・・」
頭の上にある目覚まし時計が時間を告げる。
「行かなきゃ・・・・約束を守るために」
少年は心に響く声をそのまま口にする。
今日は少年が第三新東京市へ行く日。少年の運命が大きく変わる日。
そして、天使が約束を果たすために行動する日。
神様はこれから起こる試練に御子達の幸を願う日。
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あとがき
実はいままで読者オンリーな人だったんですけど、とうとう書いちゃいました。
むむむ、まとまらないは話は途中で何度も変わるは・・・・・・。
プロットちゃんと作らずに行き当りばったりでしたからね。
しかも落ちなし(涙
さて、少年と少女の出会いはみなさんも知っての通りです。
第三新東京市についた少年が道ばたで見た少女は運命の出会いだと信じてます。
私としては処女作なのでぜひぜひなんらかの反応がほしいです。
ぜひ、メール頂ければなと思ってます。
皆様よろしくお願いします。
木野神まこと(
kinogami@hh.iij4u.or.jp)
ではまた次回作で。(あるのか?ほんとに・・・・)
みゃあ
とレイちゃんの感想らしきもの。