―月と太陽の女神さま―
作・木野神まことさま
少年はてくてくと満月の夜草原を歩いていました。
するとそこには月の女神さまが立っていたのです。
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「月と太陽の女神さま」
written by makoto kinogami
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白い、白い満月を見上げる女神さまはどこか悲しげな表情をしています。
「ねぇ、お姉ちゃん。どうしてそんなに悲しい顔をしてるの」
月の女神さまはこの小さな訪問者の方を見て静かに答えました。
「わからないの」
少年は女神さまの腕を引っ張ってしゃがませました。
「わからないの?」
不思議そうな顔をして少年は聞き返しました。
女神さまは深紅の目で少年の目を見て真っ直ぐに見ます。
「ただ・・・・・ただ私は約束を守るため待ってるのかもしれない」
呟くように女神さまは答えます。
少年はそれを聞くと女神さまの頬にキスをしました。
「お姉ちゃん、その顔の方がいいよ。悲しい顔なんてダメだよ」
少年は満面の笑みをこぼして女神さまに言います。
驚いた女神さまは頬を少し赤らめてビックリしたように立ち上がりました。
少年は女神さまに最後のお願いをしました。
「もう、時間がないや、白夜の日必ずここで待っててね。
お姉ちゃんは神様だろ?約束破っちゃだめだよ。」
少年はそう言うと嬉しそうにまた草原をてくてくと歩き始めました。
月の女神さまは胸にわきおこる不思議な気持ちに戸惑いを隠せませんでした。
また、少年はてくてくと草原を歩いています。
しばらくすると今度は太陽の女神さまが立っていました。
まぶしい太陽を見上げ、腰に手を当てじっとしている栗色の髪の女神さまがいます。
どうもイライラしているご様子。少年は女神さまに近づくと・・・・・
「あんのばぁぁぁかぁぁぁぁ」
どうも女神さまはご機嫌斜め。なんとなく少し後ずさりそうになる少年。
気を取り直して少年は女神さまに言いました。
「お姉ちゃんせっかく綺麗なのになぜ怒ってるの?」
突然声をかけられた女神さまはキョロキョロと回りを見回します。
気付かない女神さまの腕を引っ張ってしゃがませました。
ようやく気付いた女神さまはその小さな訪問者に少し頬を赤らめてこう言います。
「約束したはずなのに来ないのよ。坊やは約束を守らないとダメよ」
「誰を待ってるの?」少年は女神さまに尋ねました。
「・・・・・わかんないの」
少しその表情が暗くなるのを見て少年は女神さまの頬にキスをしました。
びっくりして立ち上がった女神さまは言葉にならない声でパニックになってます。
「せっかく綺麗なんだから怒ってちゃダメだよ」
少年はニコニコしながら女神さまに最後のお願いをしました。
「もう、時間がないや、白夜の日必ずここで待っててね。
お姉ちゃんは神様だろ?約束破っちゃだめだよ。」
少年はそう言うと嬉しそうにまた草原をてくてくと歩き始めました。
太陽の女神さまはビックリした顔のまま少年の後ろ姿を見つめていました。
そして白夜の日二人の女神さまは約束の場所にいました。
お互い声をかけることなく草原の真ん中で少年を待っています。
しばらくするとあの少年がやってきました。
「「坊や」」
二人の女神さまは同時に声を出してお互い同じ待ち人だったことに気が付いて
顔を見合わせるのです。
少年は近づくにつれ大きくなっていきます。
その光景に驚いた二人の女神さまはただ呆然と少年を見つめ続けます。
二人の目の前で立ち止まると背丈や歳、格好が同じぐらいに。
ふたりとも少年の顔を見てビックリ。
そう、待ち人がやってきたのです。
「じゃあ、行こうか?」
少年は背中の羽を羽ばたかせて左手に月の女神さま、右手に太陽の女神さまを。
二人の女神さまの手を握って空へと旅立ちました。
もちろん二人の女神さまは嬉しさと恥ずかしさの混じった最高の笑みを浮かべ
ていました。
その後に銀髪の少年がやってきて溜息一つついてこう言います。
「まったく世話の焼けるんだから」
少年は白夜の草原で嬉しそうに呟きました。
そう、少年に魔法を掛けて二人の女神さまに幸せを送ったのは彼なのです。
「このことはツケにしといてあげるね」
そう言うと背中の白い翼を羽ばたかせて女神さま達が飛び去っていった方へと
羽ばたいていきました。
− おしまい −
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あとがき
おいおい、処女作に感想がついて嬉しさのあまり徹夜の後に書き上げました。
なんとなく「神様」シリーズとか思いつつ前回のイメージを少し拝借しました。
あっ、新しい登場人物が1名いますけどね(^^
アヤナミストなヒトなのに根性なしだからついつい二人同時に幸せになって
もらいました。
神様だから喧嘩しないよね?
たぶん(汗
みゃあ
とレイちゃんの感想らしきもの。