いじめと笑顔
作・木野神まことさま
ここはとある場所のとある小学校。
教室や廊下を見渡すと子供達が仲良く遊んでいます。
おや?なにやら大きな声が聞こえてくる教室がありますね。
「やーい!やーい!お前の髪の毛真っ青だ!お前の目はまっかっか!」
「へんなやつー」
「きもちわるいぞー」
このクラスのいじめっ子3人組の男の子たちは口々に罵ります。
窓際の席の小さく震える女の子が1人。
よく見ると確かに空色の髪と深紅の瞳が印象的です。
「なにか言って見ろよぉ」
「そりゃそうさ、こいつ全然しゃべんないもんな」
「口もなくしたんたぜ」
いじめっ子達はさらにひどい言葉を口にします。
同じクラスの生徒たちも遠巻きに自分は関係ないとばかりに
誰も見ないふりをしています。
すると反対側の廊下の扉が勢いよくガタっっっっと開きます。
「あんたたち、またレイちゃんをいぢめてるわね!!」
ものすごい形相でいじめっ子たちを睨み付ける少女が1人。
栗色の髪と青い瞳の少女、アスカちゃんがやってきたのです。
「アスカだ、逃げろーーー」
「おっかねー」
「べーだ」
なんて言いながら逃げ出す3人組、そしてアスカはいじめられてた
少女−レイ−のところへやってきました。
「レイちゃん、ちょっと来て」
アスカちゃんはレイちゃんを引っ張って誰もいない校舎の屋上へと行きます。
屋上には当然誰もいませんでした。アスカちゃんはそれを確認すると
レイちゃんにこう言いました。
「さあ、レイちゃんもう安心して」
「アスカちゃん・・・・ありがとう」
安心しきったようにレイちゃんはアスカちゃんに微笑みました。
そして二人は屋上の柵にもたれながら、真上に上がった太陽の
暖かさに身をまかせています。
数分たってからアスカちゃんはこう言いました。
「ねぇ、レイちゃん・・・・あのさ、なんで言い返さないの?
なんでおこんないの?」
あすかちゃんらしいもっともな質問です。
すると少し俯いてレイちゃんは小さな声で答えました。
「だって、恐いんだもん。だって誰も助けてくれないんだもん・・・
アスカちゃん以外は」
少し涙声になったレイちゃんをアスカちゃんは引き寄せてぎゅっと抱きしめます。
「でもさ、レイちゃん。何も言わなきゃ誰も助けてくれないし、何も言わなきゃ
わかんないよ」
アスカちゃんは本当に心配そうにレイちゃんに言います。
「レイちゃんもちゃんと言わなきゃだめだよ。でないとあいつら絶対レイちゃんを
ずっといじめ続けると思う」
心配だからこそレイちゃんにはこの苦しい状況から抜け出して欲しい、
アスカちゃんは心からそう思いました。
「私のこと好きなら約束して欲しいの」
「・・・・・・・」
「あいつらにちゃんと言うって・・約束して、レイちゃん」
「・・・・・うん、アスカちゃん・・・わかったわ」
今度はレイちゃんが少し力を込めてアスカちゃんに抱きつきます。
抱き合っているのは友情の印、信頼の印なのかもしれません。
そして、お昼休みが終わりを告げる鐘の音が響きわたりました。
すべての授業が終わりみんな家へ帰ります。
レイちゃんもいつものようにアスカちゃんと帰るために裏の校門前で
待っていました。
するとあのいじめっ子3人組がやってきたのです。
「あ、宇宙人がこんなところにいるぞ」
「ほんとだ、青い毛の宇宙人だ」
「目が真っ赤な宇宙人だ」
「けーさつの代わりに逮捕してやるぞ」
レイちゃんは罵倒に耐えながらアスカちゃんとの約束を守るために
勇気を出して言いました。
「レイちゃんのこの髪と目の色はおかーさんとおとーさんから貰ったんだから!
レイちゃんは宇宙人なんかじゃない」
恐かったのと悔しかったのとでレイちゃんのお目々には涙がいっぱい。
いじめっ子3人組も予想外のレイちゃんの反撃にビックリしました。
「なんでレイちゃんばっかりいじめるのよ。レイちゃんがあなた達に
なにか悪いことした? レイちゃんがなにか悪いこと言った?
もうこんな事やめてよ」
普段は大人しいレイちゃんが涙まじりの大きな声で叫ぶものだから、
いじめっ子達は何も言えなくなって走って帰ってしまいました。
そこへ物陰から見ていたアスカちゃんがやってきました。
アスカちゃんはレイちゃんに笑顔でこう言います。
「おめでとう、レイちゃん。あいつらレイちゃんの力でおっぱらえたじゃない。
これでもういじめられなくなるよ」
アスカちゃんの優しい声でレイちゃんはとうとう大泣きしちゃいました。
「私もね・・・前にいじめられてたの。赤い髪と青い目で。だからレイちゃんに
初めて会ったわかったの。レイちゃんも私と同じだって。
でもね、私はみんなに言ってやったわ。みんなと違うかもしれないけど私のこの
髪と目はおとーさんとおかーさんからもらった大切なものだってね。
そしたら次の日からいじめられなくなったわ」
アスカちゃんもレイちゃんも少し他人と違った事からいじめられたりしたけども
アスカちゃんは自分で、そしてレイちゃんはアスカちゃんのおかげで克服できた
みたいです。
ようやく泣き止んだレイちゃんは少し驚き、そして次第に笑顔になって
アスカちゃんに抱きつきました。
「アスカちゃん、ありがとう。」
小さくしか言えなかったけどレイちゃんは心をから思ったことを口にしました。
その言葉を聞いたアスカちゃんは少し顔を朱に染めて同じように
小さな声で言いました。
「だって、レイちゃんのこと好きだもん」
夕焼けが二人の影を長く、長くのばしています。
影は仲良く寄り添っていました。
翌日、いつものようにレイちゃんは自分の席から外を眺めています。
するといじめっ子3人組がまたやってきました。
だけど、今度は様子が違います。
「あ・・・・あのさ・・・・いままでいじめてごめんな」
「ほんとはね、きれーな目と髪の毛がうらやましかったんだ」
「それになんにも言わないからなんか腹立っちゃって」
すまなさそうにしている3人は口を揃えて思い切って言いました。
「「「レイちゃんごめんなさい」」」
レイちゃんはびっくりして3人を見つめます。
そして、レイちゃんは笑顔でこう言いました。
「ありがとう」
3人組は少し赤くなりながら笑顔で笑いました。
するといつのまにか後ろにいたアスカちゃんが割って入ってきます。
「レイちゃんも、あんたたちもよかったね」
そして教室じゅうにみんなの楽しそうな笑い声が響きわたりました。
− お し ま い −
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なんかながーーーーい、あとがき。
いつも感想をいただきましてありがとうございます。
新作「いじめと笑顔」です。
さてメルヘンEVA(?)になってしまいました。
うーうーうー、はずかしいぃぃぃぃぃぃぃ。
私も中学生の時にいじめられた経験があります。
私自身が殻に閉じこもっていたため相手にはいじめの対象に
なったのかもしれませんね。
そのせいか今でも人付き合いは下手ですけどね(汗
この話は見た目「髪や目の違い」がいじめの対象になってますが
ちょっとした「違い」で結構いじめられる事ってあるんですよね。
何も言えない。何も言わない。なのに助けだけを待っているずるい自分。
私は小説かSSかでこの手の文面を読んだときやっと気付きました。
つまんないことだったんですけどね。勇気がなかったんですね。
話が横道にそれましたが、レイちゃんとアスカちゃんの小学生コンビに今回は
頑張っていただきました。
何度かキータイプが止まってしまいましたけどなんとか終えることが出来ました。
これもまた幸せの一つの答えだと思っています。
みなさんに気に入っていただければ幸いです。
とか何とか言いながらダークな事も考えている「木野神まことでした」
PS.このSSの性格上、ライトな感覚になってますが、現実はもっと
厳しい場合も有ります。ですから、その辺は考慮していただけると幸いです。
みゃあ
とレイちゃんの感想らしきもの。