【ヴィンセントの戦い】

 第4話

作・Koujiさま


・・・・あたしは知っている。

 

外から戻ってきたヴィンセントはちょうどあたしの対面に座った。

美味しそうな朝食にもほとんど手を着けずに、何かを考え込んでいる。

 

朝食に遅れてきたヴィンセントが外で何をしていたのか。

 

ヴィンセントは朝の散歩なんかしていない。

早朝に外に出たのはその方が深夜よりも人目を引かないからだ。

 

モンスターの出る地域では深夜はもちろん早朝人がいることはありえない。

入り込まないか、食われて死んでしまった後かのどちらかだ。

 

・・・何のために人目を忍んで外へでていったのか、恐らくあたしだけが知っている。

みんなは気が付いていたのかな?

 

ヴィンセントが・・・・

 

モンスターを食べていることに。

 

 

最初におかしいな?と想ったのはヴィンセントに初めてあったとき。

ヴィンセントが薄っ気味悪い新羅屋敷の地下で、棺桶から飛び出てきた。

 

あたしは変な感じを受けた。

その時はそれが何なのか気付かなかったけど・・・・

 

後になって解ったんだ。

ヴィンセントが全然やせていないって事に。

 

モンスターの徘徊する屋敷に一人で、しかも地下室の棺桶に何年もいながらやつれていない。

 

じゃぁ、食料はどうしてるのか・・・

何を食べているのか・・・

 

 

その考えが確信に変わったのは大空洞内でのこと。

あたしは見てしまった。

 

 

別れ道の途中ではぐれてしまったヴィンセントが物陰で、

うずくるようにポーランサリタを食べているのを。

 

最初にヴィンセントを見たとき嫌な予感にかられてあたしは物陰に隠れた。

寝ている誰かにヴィンセントがうずるように覆い被さっていた。

 

倒れているのがポーランサリタだとすぐに解った。無表情な、それでいてゾッとするような美貌。

力無く投げ出された手足の細さ、白さが印象的だった。

 

最初はアレかな?と思ったんだ。

ヴィンセントも男だろ?だから・・・・してるのかと思ったんだ。

 

あたしだってそのくらいの知識はある。現にシドやバレットは街に着く度に娼館にイッテタし、クラウドはエアリスやティファと・・・。

 

ナナキは雌犬を追っかけてたし・・・・。

 

そういうことをしないのはあたしかヴィンセントぐらいなもんだった。

ヴィンセントは外見にそぐわずけっこうな年だから、しないんだろうと思ってた。

 

最初はそう考えた。

 

でも、もう一つ納得できなかった。

 

風の流れにも注意したし、ちゃんと気配も消した。

悪さをしてオヤジにばれる度に隠れていた(結局最後にはばれてしまう)

隠形の術。

 

リミットブレイクしたときのヴィンセントなら解る。

あの時のヴィンセントはモンスターと変わらないから。

 

・・・・でも、普通のまんまだった。

 

嫌な音がずっと耳から離れなかった。

時折ポーランサリタの頭が揺れる。多分ヴィンセントの体の何処かが当たったんだろうけど・・・

あたしには首を振って叫んでいるように、助けを求めているように思えた。

 

ヴィンセントが満足したのか、立ちあがった。

 

口元にこびりつく血と肉片。

赤いマントが血に染まって黒く変色して・・・・

 

 

物陰で見ていたあたしは・・・恐くて声も出なかった。

ヴィンセントは口元をマントで拭うと何事もなかったように再び歩き出した。

 

しばらくして見たポーランサリタは・・・内蔵がごっそりと無くなっていた。

不気味なことにヤローを魅惑する顔には何の傷もなく、無表情にこっちを見つめていた。

 

多分・・・麻痺させられたんだ。

麻痺させられて・・・・そのまま・・・・

 

あたしは・・・それ以来ヴィンセントには絶対隙を見せなかった。

今もよくよく注意してみればヴィンセントの襟元には血が・・・

 

 

「なんだ?」

 

突然ヴィンセントに声をかけられてあたしは大げさに体をひきつらせた。

 

「な、何でもないよ!アハハハハ!!

 じゃぁ、へ、部屋で食休みするから!!」

 

あたしは急いで階段をかけ登る。さっき食べたものがでてきそうだった。

口元を抑えて部屋に飛び込む。

 

 

 

「・・・・フ、私も罪な男だ」

 

ヴィンセントは大きな勘違いをしていた。

 

 

 

(つづく)

 

 

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