偽・GUESS WHAT!?
〜第V話〜
作 Koujiさま
第V話 リクの麗らかな休日
「自分が不幸だと嘆くものは多い・・・
だが、本人にとってどれほどの不幸であろうとも
より不幸な者から見て、それが羨ましいほどの
幸福であることが多々あるものだ」
「えぇと、これで全部かな?」
黒の横下げ鞄の中味を見ながら、リクがそうつぶやく。
自室で、リクは、鞄の中に本やノートをテキパキと詰め込んで言った。その結果の台詞だ。 また、何かやったのか、下のほうから、マコトの声が聞こえる。
「リクちゃ〜ん!!ケーキ出来たよぉ!!」
「は〜い!」
下から漂う匂いにニコニコ笑っているリク。 が、マコトがリクの姿を見たら、頬を抑えただろう。
露出癖があるわけではないが例のごとく、やっぱり裸なのだ。
さすがに、学校に通うときには男子の学制服を着ているリクなのだが、 それも、平日、家の中となると、しっかり、脱いでいる。 いや、パンツだけははいているが。
もしその裸を見れば、襲わない人間はいないと言うほどの美しさなのである。 しかも、それが似合ってしまっているから、始末に置けない。
端から見れば、美術品として飾れるほどの美形である。 いや、もしリクを撮った写真があればその写真も、もし彫刻を彫ったらその彫刻が全て大賞を得るくらい美しい。
リクもそれが判っていて楽しんでいる。
あぁ、まったくもう。
「さぁて・・・気が進まないけど、行くかな・・・」
そうつぶやくと、服を着たリクは鞄をつかんで自室を出る。 部屋の中は主を失って、なんとなく寂しくなってしまう。
理由は簡単。『華』がなくなったからである。なんといっても、 劇でいうなら花形『ヒロイン』である。華の雰囲気なら嫌と言うほど持っている。
非公式のファンクラブ(覗き中心)があるのも、 リクは知っているのだろうか。それは、置いておいて。 リクは確かに、『気が進まない』と言った。
『気が進まないけど、行く』と言った。
なぜに、最強無敵のリクが気が進まないのだろうか。気に入らなければ、ニッコリ笑って魅了するか、ぶっとばせばいいのである。
が、世の中は奇妙なもので、ぶっとばしても、それでも『寄ってくる』奴が居るのである。
言っておくがストーカーではない。山南秋子である。(行動がストーカーじみていると言う・・・)
もう、あれは、オレは親の敵か?と思うほど、追っかけてくる。(なんじゃそりゃ)
いくらリクが断ろうが、ファンクラブの群にリンチを受け、 殴られようが、蹴られようが、どつかれようが、足蹴にされようが、 階段から叩き落とされようが、二階のベランダから落とされようが、 給食に薬を混入されて運ばれようが、生きている。 いや、生きているだけではない、執念でリクを追っかけてくる。
いくら、爪の間に針を入れようが、爪をはがそうが、 口の中に折った鉛筆を入れて殴ろうが、鼻の中に思いっ切り割り箸を突っ込んで鼻を突き破ろうが 、髪の毛を掴んで引きずり回そうが、 靴の中に画鋲をたっぷり入れ100mダッシュさせようが、 やっぱり諦めない。
ようするに、山南はリクにベタ惚れなのである。もう、あれは、気違いの域だ。 だが、告白はしない。ただ見つめているだけである。その健気さに周りのファンも諦めている。
ちなみに加奈子の家の隣人であり、仲がいい。で、問題を元に戻す。リクの『気が進まない』理由である。
なに、簡単だ。今日、これから勉強会があるのだが、場所が『山南の自宅』だからだ。
「あぁ、なんで、よりにもよって(;;)」
タン、タン、タンと、階段を重い足取りで降りながら、リクは頭を抱える。 こうなっては、もう、問答無用のレイが恨めしい。
今回の勉強会を主催したのが三浦レイなのだが、あいつ、 よりにもよって、場所を直前まで教えなかったのだ。
「ねぇ!、リクちゃん、電話!」
朝、着替えたばかりだったリクは、マコトの呼び声に慌てて部屋を出る。 まだ、今日の勉強会の場所を聞いてなかったからだ。 確か、クラスメートのレイが電話してくれるはずであった。
「誰?」
一応、用心して、名前を聞いておく。 (以前、ファンから熱烈なラブコールが散々かかってきて、 リクがファン一同を集めて注意したことがあった。
その際、リクがファン全員に髪の毛(美容院に行って切ってきた)を上げて勘弁して貰ったことも公然の秘密である。 以来、電話は無くなったが、髪の毛のバッタモンが出回って大変である)
「三浦って、・・・人ぉ!」
「ん、行く」
パタパタと、下に降りていく。
下の廊下でマコトから受話器を受け取る。 その際、電話相手の違和感にマコトが訝しげな視線を向けてきたので、唇を奪っておく。
「ん・・・」
真っ赤になってパタパタと、リビングに駆け戻るマコトを優しい視線で見つめ、 受話器に耳を傾ける。
「あ、レイ?」
「はいよん。リクちゃん?」
「なに?」
「なにって、一つしかないだろぅ」
受話器の向こうで、クスクス笑っている。彼は男だ。しかも名前に似合わずごつい。 おねぇ言葉がなければ友人として最高なのだが、
「今日の場所だけどね、リクちゃあん」
「ん、どこ。加奈子のとこ?、それとも、お前んち?」
「ううん。山南の家」
「ふぅん、山南の・・・」
沈黙。
静寂。
「んだとぉ!!!!!!」
んで、絶叫。
思わず怒鳴ってしまった、受話器の向こうから、『キャラキャラ』と楽しそうな笑い声が聞こえてくる。 声はしっかり低いが。
「だってぇ、山南が、『わ、私の家で・・いいよ・・・』って、言ったんだもぉん」
「こら、レイ!」
「加奈ちゃんも、いいって、言ったもぉん」
「おい!」
「じゃぁね、リクちゃん」
ガチャン。
電話は切れてしまった。後に残るのは呆然とするリクだけ。
ここにもう一人、リクが苦手とはしないが、よく『負ける』相手がいた。
三浦レイ。問答無用のおかまだ(^^;
山南家。結構大きい。
その家の二階の一室、要するに山南の部屋で、 二人の女の子(一人はおかま)がわきあいあいと、 『怪しい』話しに花を咲かせていた。
「うわぁ、うわぁ!」
青のシャツにGパンと言う出で立ちの、やたらごつい男が、 もう一人の美少女が見せている薄っぺらい本を食い入るように見ている。
美少女のほうは、あの加奈子である。で、もう一人はレイ。
レイは加奈子と同じく空手部員でクラスメートである、 ごつい。格闘能力はリクとならぶが、性格が性格なだけに今一つ力を出し切れない。 部員によっては、加奈子よりレイの方が戦いやすいものもいるだろう。
「うわぁ、加奈ちゃん、見てってばぁ!」
レイは、何を興奮しているのか、本のあるページを指して、やたら喜んでいる。
加奈子も何が楽しいのか、そんなレイをみて喜んでいる。
「うえぇん、ラブラブだよぅ」
ついに絶えられなくなったのか、本を加奈子に押し付けて突っ伏してしまうレイ。怖い。
加奈子はケラケラと笑っている。というかバカにしてる。
「駄目だな、レイは。これくらいの『やおい』で喜ぶなんて!」
「だってぇ、ラブラブなんだもぉん。あぁん、恥ずかしいぃ」
怖いんだよてめぇ!!シュワルツネッガーみたいな顔で紅くなるんじゃねぇ!
どうやら、二人の読んでいたものは『やおい』本であるらしい。勉強会の場所に間で、そんなものを持ち込んでくるな。 ともあれ、二人とも、山南の家で暴虐無人に振る舞っている。
肝心の山南と言えば、二人の向かいに座って、その様を『慣れた』ようすで眺めていた。
「・・・そんなに楽しい?・・・」
「山南も読めば?」
加奈子は、そう言って同意を求めるようにレイを見る。 当然、レイの方は、ブンブンと頭を縦に振る。風が起きる。
「山南には判らないよん。だって、・・・男×男だもん」
「いや、言わないで、気持ち悪いから、アンタの感想は・・・(^^;」
レイの素朴な感想にさすがの加奈子もげんなりしている。
言っておくが、内容は美形が少年を可愛がるという奴だ。 加奈子はもっとドぎついやつを、もっているが、レイに見せる気はなかった。
「なんでぇ」
レイカは、少し頬を膨らませながら、むくれて見せる。嫌すぎる。
が、ふと視線を動かした表紙に目に入ったものに、すぐに関心を奪われていた。
「あ、サブだぁ、見せて、見せて!」
部屋の本棚にあった雑誌類のなかから、目敏くホモ雑誌を見つけて、とたんに山南にたかっている。
「お願い、お願い、お願い。見せてぇ」
山南の方も、レイに頼み込まれて気分が悪くなり、じゃれるように頼みこまれる前に、さっさと許してやる。
「・・・いいよ、勝手に・・・見て」
「あぁん、山南、大好き!」
言うが早いか、本棚に突進していくレイカ。
こいつのここに来た目的は何なんだろうか。勉強なのか、それとも遊びに来たのだろうか。
なんとなく、悩んでしまう山南だった。(加奈子は面白がっているだけ)
キンコーン。
突然に響いたドアベルの音。
それに、山南は異常に喜び、加奈子は『やっぱり来たか』と思い、 レイは酷く驚いていた。読んでいた薔薇族を放り投げている。
「うわぁ、ビックリした」
「アンタ、学校で誰かのカンペンが落ちても、机ひっくりかえすくらい、驚いてるからね、似合わないわよ」
それは、ちょっと異常である。っていうか、コイツが驚く度に周りが驚いてパニックを引き起こすのだ。 ともあれ、ベルの応答に、すでに山南は部屋を出ている。ほとんど、高速の早さである。
「おぉ、早い、早い・・・空手部に入れば面白いのに」
山南の行動の早さに感心している加奈子。やっぱり、面白がっている。
「あ、レイも行くぅ」
山南よりはるかに遅れてレイカも立ち上がった。同時に空気が動く。レイの身体がでかいのだ。
加奈子のほうは動く気配がない。 おそらくベルはリクが鳴らしたであろうから、 わざわざ全員で向かえてやる理由もないと行った具合である。 面倒くさがっているだけと言う話しもあるが。
レイが部屋を、というか家を揺らせて出て行ったのを見届けて、 先ほど見せていたペラペラ本を持ってきていた鞄にしまう。
さらに、そこから厚い本を出した。 言っておくが、教科書や参考書の類ではない。さらなる同人誌である。
その取り出した同人誌を読み出す。が、すぐに、
『ドガーン!、ゴゴゴゴゴゴ!』
と、雪崩もかくやというすさまじい音が、 部屋の外の階段の方から聞こえてきた。
「あ、また落ちたか」
先ほど、レイが下にジュースを貰いに行って、 その時も落ちたのを思い出す。
レイ、学校でもよく階段で転んでいるため、 今もそのときも、誰も驚いていない。
しかたなく、処理のために立ち上がる加奈子。 今ごろ、レイは階段の下のほうで泣いているはずである。
レイはタフだ。車にはねられて頭から地面に叩きつけられたのに、 すぐ立ちあがって歩き出したのを見ている。
「おい・・・」
目の前にレイが降ってきた。下敷きになっていたら圧死していただろう。
が、学校でレイの下敷きになる犠牲者が日常茶飯事となっているリクには、 これもまた、予想内の出来事だったらしい。ただ、あきれているだけである。
「あ、いらっしゃい、リクちゃん」
『上』にいるリクに困ったように笑うレイ。
そうである。レイはリクの上に降ってきたのである。 もちろん避けたリク。ついでに言うと、レイの下には山南がいる。 (レイに下敷きにされても、近くにリクがいるので喜んでいることも追記しておこう)
「なんだぁ、山南が下敷きになったの」
階段の上から、キョトンとした様子で三人の惨状を眺めている加奈子。
「加奈ちゃん、パンツ見えてるよぅ」
無邪気に、そんな事を言っているレイ。 で、それを聞いて、思わず視線が動いてしまうリク。
この後、リクめがけて、加奈子の飛び蹴りが飛んでいたりする(^^;
ガチャガチャガチャ。
必死にボタンを叩く音。
連中は何をしているのか。
簡単である。格ゲーをしているのである。
・・・って、お前ら勉強どうした!!
「もう、終わったもぉん」
これは、レイ。気持ち悪い。
なるほどね。二時間でお開きですか。 加奈子とリクが対戦している間、すでに加奈子にボロクソやっつけられた 山南と、対戦ゲームの下手なレイは喋ったり、 マンガを読んだりしている。
が、午前中から勉強会が始まって、今はすっかりお昼である。 自然、お腹も空いてこようものだ。
当然、誰かのお腹もなろうと言うものである。
このメンバーの場合、鳴るのは決まって、レイのお腹だったりする。
『グロログギューウー』
(未知の生物のうなり声)のような音。(空間が軋む音)という人もいるかも知れない・・・
レイは『おや』と言った感じで、お腹を抑えて、物欲しげに加奈子を見る。 それを受けて、加奈子が握っていたコントローラーを投げ出した。
「お昼にしよ。リク、なんか作って」
「はーい」
リクもコントローラーを手放して、立ち上がる。
それを見て、山南が、
「なんで・・・リクが作るの・・・・」
と、言う。
「だって、おばさんいないし、いたとしても、作ってもらうの悪いし、 山南は食えるものしか作れないし(味付けも何もない生のまま)、 レイには作って欲しくないし、 出前も嫌だし、リクのご飯おいしいし」
「・・加奈子、が作れば・・」
山南は、自分も読んでいた本を片付けながら、文句を言ってくる。
「嫌だよ」
「・・なんで・・・」
「だって、私がやると、当然レイも作るって言うもの」
「・・・それは・・・イヤ・・」
加奈子の言葉に思わず吐きそうになる山南。
先週、家庭科で調理実習があったのだが、そこでレイは、 どうやって作ったものか、 材料からはかけはなれた物質を作り出したのである。
学校中の生徒を集めるほど芳醇な香り、輝いて見えるほど美しい料理、 涎が溢れるのを抑えきれない信じられないほどの旨そうな料理だったのである。
が、実際に食べた者以外は、事実を知らない。
レイのクラスメートは全員、その料理を食べ、中毒になった。 もはや他のものが食べられなくなり、ずっと食べていたくなる、まさに中毒になったのである。
精神力の強いリクや加奈子でも、 歯を食いしばってその料理の誘惑に耐えたのである。
ましてや山南、レイとは中学からのクラスメートである。 レイの料理の中毒性は、加奈子並みによく知っているはずである。 だから、すぐに加奈子の意見を受け入れてしまった。
「・・・佐伯様が作るので・・・いい」
「だろ?」
山南が青くなり、様付けでリクを呼ぶ。
当のレイはキョトンとしている。
「なに、リクちゃんのご飯、食べられるの?」
「ああ」
「やた!」
山南と加奈子の話しが聞こえなかったのか、それとも理解できなかったのか、単純に喜んでいるレイカ。何なんだろうか、この子は(^^;
昼食。極めておいしかったらしい。
ちなみに、後片付けだが、なにもしなかった山南が加奈子の指名を受けてやらされていたりする。なんだか、加奈子には逆らえない山南。
「お邪魔しましたぁ!」
頭をかがめて山南宅を出るレイと、『やっと出られる』と言った具合のリク。 (やっぱり、山南にずっと見つめられてたらしい)
もう夕方なのだが、加奈子はご近所なので、もう少し入り浸たるそうだ。 と、言うより、帰ってきた山南の母親に止められて、 夕食ご相伴になるそうだ。
リクも誘われたのだが、マコトが夕飯を作って待っているので、こっちは断わっている。
レイも、ついでだから、帰るそうだ。 (彼女なりに、加奈子に気を使っているらしい。そんなものが、 この子にあるかどうかは不明だが)
「リクちゃん、大学、何処行くの?」
「ん?」
「皆、言ってるから。リクちゃん、何処に行くのかなぁって」
「ん・・・」
帰り道。大分暗くなっている。
家ではマコトが待っているだろうなぁと思いつつ、 レイがとろいので、のんびり歩いていたリクである。
そこに、レイが普段言いそうもない台詞を言ってきたもので、 少し面喰らっている。
「どうしたんだよ、急に」
端目には、クマが美形に襲いかかっているようにしか見えないような風景である。 お忘れかもしれないが、美形はリクである。しかも、完璧な美しさ。
背がでかすぎ、身体がでかすぎるレイは、リクを見下ろして、 小首を傾げた。ちょっととろそうだが、気持ち悪いことは、気持ち悪い。
気持ち悪いよな。 隣を歩いているレイを見上げて、やはり、そう思ってしまうリク。
そうなのである。
リクには、よりにもよって、レイぐらいがまともに話してくれる友人である。 他の男子生徒は妬むか、尊敬するかのどっちかの反応しかないのである。
が、作者思うに、レイの方はそんなこと、気が付いているのかどうか。 いや、一年ほど前は、気が付いていないどころではなかったのである。
部室内で突然の加奈子の発言。 それに、リクは持っていた道着をバサリと落とす。
「な、なんだよ、加奈子、突然に!」
空手部の部室内。女子の部室は別にあるが、 リク達以外はまだ来ていない。朝練なのだが、リク達が早すぎるのである。
そこでの、加奈子の発言であった。幸いに、誰も他にはいないから、 誰かに聞かれている心配はないだろうが。
「だから、『マコトの事、好きだろう』って言ったんだよ!」
笑っている加奈子。ちなみに、彼女はすでにリクに告白して振られている。
「な、何を根拠に!」
「だって、マコトの事、構いまくってるじゃないの」
「あれは、マコトがとろいから!」
「シスコンの極みねぇ」
そう言って遠い目をする加奈子。彼女はリク対する思いを、克服したようだ。
しかし、世の中には『良いところに出てくる邪魔者』が必ずいるものである。 この時、グッドタイミングと言うか、バッドタイミングと言うか、 レイが現われたのである。 ちなみに彼はいつも早い。
ドシンドシンドシンと言う地響きがしたかと思う、 『ズドーーン!』と言う音。この時点で、リクも加奈子も、 走って来たのがレイだとわかってしまう。
ガラリと、突然あけられたドア。そこには、リク達の予想通り、 レイがいた。
「ねぇ、加奈ちゃん、加奈ちゃん!!」
レイは、ドアを開けるなり、加奈子に突進して行った。 加奈子は慌てて逃げ出す。加奈子がもたれていた棚がひしゃげた。
「こ、殺す気!?レイカ!?」
「知ってる、リクちゃんて、ノーマルだったんだって!!」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
「え、えぇと・・・」
さすがの加奈子も青くなっている。
当然、リクは絶句。
「あれ、加奈ちゃん?」
せっかくのビッグニュースなのにと言う様子で、加奈子を見上げるレイ。
そこでやっと、リクの存在に気が付いたようである。 今度はリクに突進していく。
ただし、今度はリクの1メートル手前でストップしている。 だが、やはりリクも逃げていた。
「ねぇ、リクちゃん。リクちゃんて、ノーマルだったんだってね!」
「えぇと・・・」
「さっき、皆が言ったの。もう、ビックリしちゃったぁ!」
キャーキャーと、興奮し捲っているレイ。目がつぶれそう。 それを見て、加奈子が頭を抑えながらブツブツとつぶやいていた。
「おかしいと思ったのよね。おかまのレイが、 リクにあんなに懐いてたんだから。 呆れられてて、変態だと思われている山南でも、一歩離れてるのに、 リクとは仲良かったし。私としたことが、考えが甘かったのかしら・・・」
なおもブツブツとつぶやいている加奈子。
なにも言えないリク。
まだ興奮し捲っているレイ。
後日、レイにリクがホモだという嘘の情報を吹き込んだのが 彼を妬む男子生徒だと言う事が判り、 彼はリクにどつかれ、加奈子にボロクソにされたらしい。 (しかし、真実は男子生徒が『佐伯って、いいよなぁ』 と言っただけである。どうやら、レイの単語帳では、 『いい』と言うのは相手がホモの美少年だけに対するものらしい)
しかし、どこをどうやったら、学ランを来た少年がホモになるのだろうか。
後に加奈子が聞き出したところによると、
『えぇ、レイ、リクちゃんて、事情があってノンケのフリしてると思ってたんだもん』
だ、そうだ。なんなのだ、その事情とは(^^;
が、ノンケだという事実が判った後、 レイはよりリクに懐いていた。どうやら、彼を狙っているらしい。
レイは無理矢理押し倒すようなことはしないが(オイオイオイ) もちろん、それだけで、懐いたりも、しないだろうが。ちなみに女嫌いである。
男っぽい加奈子はともかく、山南を平気な理由は、彼女がリクを一途に好きだからだそうだ。 他の女の子はほとんど駄目。すぐ切れそうになり、対抗意識を燃やす。メチャクチャである。
「あ、じゃ、レイ、行くね。送ってくれて、ありがとう(^^)」
ニッコリ笑ってそう言うレイ。やっぱり、気色悪い。岩盤のような顔は止めて欲しい。
が、家を目の前にして、やっぱり転んだ。アスファルトにヒビが入る。 しかも、鞄の中味も器用にぶちまけている。
「おい、おい、おい(^^;」
さすがに、ここまで来て転ばないだろうと思っていたリクだから、 呆れてしまった。
が、レイカの場合は、何かしら副産物があったりする。
「いたい・・・」
起き上がったはいいが、どこかボウッとしているレイ。頭を強く打ったのかも知れない。
しかたなく、リクは本を拾ってやっている。
「ん、起きれるか?」
手を貸して、レイを起こしてやる。があまりの重量に離してしまう。
メチャ。
潰れたような音がしたがしかしレイは、ゆっくりと立ちあがる。 が、変化は突然やってくるものである。
起き上がる拍子に、レイが唇を寄せてきたのである。
つまり、キスだ。しかしリクは接近してくる顔のあまりの恐怖に慌てて頭をガードする。
ガツン
ガードした両手にレイの頭がぶつかり、ガードが弾けとぶ。
「な・・・」
レイのおかまぶりを心得ているリクである。 当然怯える。いや、心得ていなくとも、この場合は怯えるだろう。
「ばいばい」
レイは、本をリクからひったくるようにして受け取ると、そのまま、家へと駆けこんで行った。 が、やっぱり、ドアの手前で転んでいた。
顔を血で真っ赤にして、起き上がり、家の中に逃げ込むレイ。 リクは・・・心あらずだったりする。
さて、その夜の電話の内容である。
『ねぇ、加奈ちゃん、レイやったよぅ!』
『ん?』
『キスぅ(〃^^〃)』
『ゲゲェ!!』
『偉い、偉い??』
『気色い気色い!!』
『・・・まぁ、良くやったんじゃない? ま、アンタがリクの事、好きだって聞いた時には、なんか納得したけどねぇ』
『えぇ〜。だって、リクちゃん、強いし、やさしいし、頭いいし、美形だし、 カワイイし、お兄ちゃんみたいだし、裸が色っぽいし・・・』
『アンタ、アタシに喧嘩うってんの?、吐かせたいの?』
『ん?』
『あぁ、もう、いいわ(このおかま野郎が!)』
おまけ
リク達が帰った後。加奈子と山南の会話。
「ちょっとぉ、山南の方が、ご飯多いわよ!」
「・・・だったら、自分で盛れば・・・」
「なにぃ?、山南の癖に、アタシにそう言う事、言うわけ・・・フフフフフフ」
「(ギクゥ!)」
山南母の夕飯の手伝いをしていた加奈子だったが、突然高笑いをすると、 鞄の中から、何やらグローブのような物体を取り出した。
「おばさぁん、ちょっと、借りますねぇ!」
そう言って、リビングの隣の部屋へと山南を引きずっていく加奈子。
「・・・助けて・・・・」
「あら、加奈子ちゃん、がんばってねぇ」
「・・・私なんてどうでも良いのね・・・・」
キャラキャラと笑って、二人を見送る山南母。
後には、加奈子の高笑いだけが響いていたりする。
「はーはっはっはっはっは!!!」
座談会
獣『ふぅ、やっと終わった』
リク『お疲れさん』
獣『へぇ?リク、今回は機嫌いいんだな、レイにキスされたのに』
リク『生きてるだけマシだよ』
獣『ほいたら、今回のキャラの紹介いっか』
獣『まず一番手は初登場の三浦レイです。こんにちは、レイちゃん』
レイ『こんにちわぁ』
獣『(うげげ!)えぇと、こいつは書いてて実に楽しいかったね。 ま、胸にこみ上げてくるキャラですが・・・』
レイ『どう言う意味?』
獣『いや、レイは、本物だから。貴方は受けね』
レイ『やったぁ!!嬉しい!!』
獣『うぉえぇぇぇぇ!』
獣『次は柏木加奈子様です。こんにちは、加奈子』
加奈『こんちわ。ここ、初めてだよね、アタシは』
獣『そうっだね。前回は、元の作品の加奈子だったから』
加奈『今回、アタシあんまりリクに絡めなかったねぇ。つまんない』
獣『振られちゃってるしね』
加奈『リクも、レイも最後、キスしてるのに・・・』
獣『だって第T話でリクとキスしてたじゃん?』
加奈『ま、そうだけどねぇ・・・』
獣『結構良いねぇ加奈子は。・・次いこうか』
獣『三人目は山南秋子です。こんにちは、山南』
山南『・・・・疑問があるの・・・』
獣『なんやねん?、突然???』
山南『・・・どうして名字なの?・・・』
獣『は?』
山南『・・・・佐伯様は、名前で判るけど、 ・・・・・私だけ名字・・・・・・・綾波みたいなしゃべり方・・・』
獣『それは・・・』
山南『・・・それは?・・・』
獣『実は、貴方の性格設定は根暗ってなってんのよ』
山南『・・・名前は?・・・』
獣『元の作品がそうだから』
レイ『あれ、加奈ちゃん、獣さんがいなくなったよ?』
加奈『あれ、本当だ?』
山南『・・・別にいい・・・邪魔だし』(オイオイオイ)
リク『なんか、急用が出来たからって、帰ったよ』
加奈『え〜!?無責任な!、どうする?』
山南『・・・・どうするって?・・・・・』
加奈『アタシ達だけで、ここにいても、しょうがないだろ? どっか、行こうか?』
リク『どこ行く?』
レイ『レイ、どこでもいいよ?・・今夜は帰りたくない・・・』
全員『!?うげぇぇぇぇぇっぇ!!!!!!』
空気感染的な吐き気に、全員退場。
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本小説と作者の人柄は全く無縁です。前の作品が1と2です。
みゃあの感想らしきもの