【ヴィンセントの戦い】

 第2話

作・Koujiさま


「おいそこのオカマ!!中にはいりてぇなら金だしな!!」

 

「ドン!ドン!ドン!ドン!」

 

ヴィンセントはあっけなくデスペナルティ+《れんぞくぎり》を撃った。

 

(初期レベルの《れんぞくぎり》マテリアは二回しか攻撃できないが、レベルが上がれば4回攻撃できる)

 

ゲートにたむろしていた元新羅兵の腹に巨大な穴が空き、右手・右足が、最後に頭が粉々に吹き飛ぶ。

まず一発目で腹を撃つ。

腹への一発で相手の動きを止めてから二発目で相手の武器を持っている腕を撃ち、

続いて足を撃ち(昔シザーに手痛い目にあって以来必ず撃つようになった)、

最後に頭部に撃ち込む。

必殺と言うにはあまりにも惨すぎる戦法だが、モンスターを何千匹と殺してデスペナルティを最強の威力まで上げた

 

(ヴィンセントの最終武器デスペナルティはヴィンセントがモンスターを倒すごとに破壊力を増す)

 

ヴィンセントが何度も死線をかいくぐって学んだ戦法なのだ。

 

 

元新羅兵はもはや誰が、あるいはどれがどの部分だか解らないような肉の塊に変わっていた。

 

もっともそれは当然だろう。

相手はマスターレベルで、ダメージは9999。

 

それをノーマルの人間が食らえば確実に死ぬ。

胴体なら大きな風穴が空くし、手足や頭に打ち込めば粉々に吹き飛んでしまう。

運が良ければ・・・などという甘い言葉で生き残れるような威力ではない。

 

 

だが重要なのはヴィンセントがあっさりと人を殺したことだろう。

 

「な!なんてことしやがるこのキチガイオカマ!!!」

 

「このクソオカマ!!いかれてるぜ!!」

 

瓦礫の影から男が二人立ちあがる。どちらも新羅の服を着ていた。

この様子では最初の男が相手を挑発し、のこのこと近づいてきた相手を仲間が強襲する手はずだったのだろう。

なかなか良い考えではあるが、相手をまともな人間だと思ったのが間違いだった。

 

「・・・・ドン!ドン!ドン!ドン!」

 

《れんぞくぎり》が二人に集中した。

・・・三体の胴体に大穴の空いて手足・頭がない死体が出来たが、まぁリミット化しないだけマシと言うところか?

 

脳がだいぶモンスター化して理性による行動の抑制が出来ないのかも知れない。

ちなみに《ついでにぬすむ》のマテリアもつけていたため、いくつかアイテムも入手できた。

ポーションにエッチな雑誌、丸まったティッシュ(これは即座に投げ捨てれられた)、ナイフ。

 

「・・・この街にも片づけねばならないゴミが多いな」

 

フッと笑う。

それだけで済せられるヴィンセントはある意味無敵だ。

しかしオカマという言葉に非常に根深い憎悪を持っているようだ・・

 

それはともかくヴィンセントはさっさと街へ入った。

途中ゲートカードがないのでゲートを無理矢理ぶち壊したが、どうやらマジで狂暴化していて・・・なんか笑える。

本当はプレート墜落でゲートは完全に壊れていてカードがあっても開かなかったのだが・・・

 

 

 

ヴィンセントの目に映ったミッドガルは壊滅・・と言っても過言ではない状態だった。

メテオが防がれたとはいえ、その余波でプレートは下のスラムに落下し、街の全機能を支配していた新羅ビルは倒壊した。

魔胱炉は幸運にも暴走はしなかったが、技術者が居ない今では誰も魔胱炉を動かすことは出来ないしパイプラインもほとんどが断絶しているのだ。

 

魔胱の力に頼っていたミッドガルの移動・医療等の機能の大半が麻痺。

そして新羅のない街では救助はおろか秩序さえ維持できなかった。

 

道らしい道はなく、人が何処にいるのさえ解らないまま進む。

もちろんモンスターが少しは登場したが、ヴィンセントの銃弾の餌食となった。

しかし銃弾はどうやって補給しているのだろうか?魔胱銃のように弾ではない何かを撃っているのだろうか?

レーザー?圧縮空気による小石?・・・肉?なんなんだろう?まぁいいか。

しばらくすると少し開けた場所へでた。テントがいくつか立ち集落のようになっている。

 

北コレルのような惨状だ。辺りを見回しながら中へと進む。

なかには商魂たくましい者もいるようで残骸の中から使えそうなアイテムを拾って売る者もいる。

おねぇ言葉を喋るマッチョの集団が残骸の片づけをしていたり、テントを数点開いてそこに「蜜蜂の館」という店を開いている者もいる。

だが、災害地で一番繁盛しているのは食べ物屋のようだ。

この混乱の中からどうやって手に入れたのか解らない妖しげな肉と野菜のような物体のスープが食欲を誘う香りを中たりにまき散らし、そのスープにありつこうと長い列が出来ている。

 

「どんな時でも人は生きようとするのだな

 ・・・悪夢に浸る私と違って・・・」

 

ヴィンセントは自嘲気味に呟いた。

が、呟くだけでさっさと【アバランチ】へと向かう。

途中追い剥ぎに会うがそれもあっさりと殺害してついでにアイテムを盗んで行く。

鬼である。

 

「いらっしゃいませ!!」

 

「・・・ああ・・・?」

 

「・・・あっれ〜!?ヴィンセント!?」

 

比較的被害の少ない一角の、さらに奇跡的に倒壊していない家があった。

家の壁には【アバランチ】とショッキングピンクのペンキでかかれ、

ドアを開けるなり元気の良い声と懐かしい声が薄暗い店内に響いた。

ちなみに元気な声はマリンで、懐かしい声は・・・

 

「?・・・ユフィか!?」

 

「へへ!あったり〜!!」

 

ニカニカと笑顔のユフィがいた。

相変わらずのへそだし忍者ルックに不倶戴天を担いでいる。

 

(ユフィの最終武器不倶戴天は相手のレベルによって威力が上がる。もっとも簡単にてにはいる最終武器である)

 

スラリと伸びた健康的な肢体は相変わらずで、カモシカのような躍動感を感じさせる。

・・・心なしか肉付きが良くなったようだ、16の少女にとっての半年は成長するには充分な年月らしい。

 

思わずヴィンセントはユフィを荒縄で縛った上に体育倉庫の跳び箱を使ってバックから・・・・

なんて一瞬思ったが、そんな事を表面に出すとイメージが崩れてしまうので決して出さない。

無表情かつ冷静に対応する。

 

「どうしてお前がここに?

 マテリアを探して世界を廻っているとバレットに聞いたのだが・・・」

 

「いや〜マテリア集めはあんまり芳しくなくて・・・

 ほら、ここ魔胱炉があるじゃない?そん中に良いのがないかな〜って」

 

「ユフィお姉ちゃんの知り合い?」

 

バーか半分頭を出した(それでも椅子の上に立っている)マリンが聞いた。

確かにマリンにはヴィンセントとの面識がない。と思う。

ユフィにしてもバレットの知り合いのケット・シーの知り合い程度なのだ。

もっともユフィの性格とマリンは馬が合うらしく実に仲がいい。

 

「暗くて何考えてるか解らないけど

 意味の分からないこと言って自分の世界に閉じこもるけど

 ・・・・いい人じゃないかな?・・・

 あ、戦闘では役に立つよ!!」

 

「ユフィお姉ちゃん・・・フォローになってないよ・・・・・

 つまり、友達には向いてない人って事だよね?」

 

ユフィとマリンに好き勝手に言われて思わず銃に手を伸ばしかけたヴィンセントだが、なんとか抑えた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(怒)

 まぁ・・・ユフィが居るのは好都合だな。ケット・シーは?」

 

そう聞いた途端ユフィの顔が曇った。

その変化に良くない物を感じたヴィンセント。

 

「ケット・シーは・・・やられたよ」

 

「なに!?」

 

「・・・上にいる」

 

暗い顔でユフィが立ちあがって、奥の方へ歩き出す。

ヴィンセントもその後をついていった。

 

活動拠点である【アバランチ】は以前バレットが経営していた【セブンス・ヘブン】とは違い、内装と呼べるような物はなかった。

円形の机が数点にその椅子とバーがあるのみで壁紙はおろか照明さえついていなかった。

それでもミッドガルの現況から考えればましな方だろう。

 

ギシギシとなる階段を上り、最初のドアを開ける。

 

(途中ユフィのお尻を触りたいという衝動にヴィンセントが耐えたことは秘密である)

 

中には・・・ガラクタが山のように摘まれていた。

机が一つあってその上になにかの部品が乗っている。

 

「あ・・・・間違えちった(苦笑)」

 

その時キラリとある物がヴィンセントの目に付いた。

ランプで照らされた薄暗い店内の片隅に、店のインテリアに使うつもりで集めたのか解らないが、

絶対に売り物ではないだろうというガラクタの山の中に銀色の筒を見つけたのだ。

 

「こ、これは!!!」

 

ドアを閉めようとしたユフィを押しのけて室内に入るヴィンセント。

 

「ど、どうしたんだよ!?

 ・・・あ、それは倒壊した新羅ビルから入手した・・・」

 

多分ユフィが火事場泥棒的に漁ってきたのだろう。

ちなみに現在の新羅ビルは倒壊し一種の迷宮とかしていて、

旧新羅ビル内の貴重なアイテムを狙う者達が挑んでは迷宮内部で勝手に繁殖した実験体達の餌になっている。

相当強力な実験体なのかユフィ以外では帰ってきた者はいない。

 

ユフィの説明を聞きもしないでヴィンセントはその物体を手に取った。

その筒には・・・・

 

 

 

(つづく)

 

 

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