〜 雲一つ無い、晴れ渡る青い空 〜


〜 いつものように眩しい日差しが照らしつける 〜


〜 もう二度と使われない武装された街を優しく見守るように 〜


〜 平和になった第3新東京市の朝は静かに始まる 〜




Jealousy






「こらぁぁぁ!ファーストぉぉぉぉぉ!!
 アぁンタ何やってんのよっっ!!!」



・・・・・そんなに静かでもないようだ・・・・・


この怒声の発端は、シンジがキッチンでいそいそと朝食の準備をしている姿をアスカがリビングの椅子に腰掛けて、テーブルに肘をつき、幸せそうに眺めていた時だった。



ピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピポピンポーン!



呼び鈴が鳴り響く。まるで早く開けろ、ぶち破るぞ、と言わんばかりであった。

ただでさえシンジを眺めるという幸せを打ち砕かれたうえに、催促するような呼び鈴16連打を浴びせられて、アスカはかなり御立腹のようだった。

アスカはちらっとキッチンを見る。

シンジは手が離せないようだったし、アスカもシンジの邪魔をしたくなかった。

「シンジ、アタシが出るわ」

「うん、お願い」

シンジは振り向いて、アスカの求めていたとうりの笑顔を見せた。

アスカは大好きな少年の、大好きな笑顔を見て微笑みながら席を立った。

しかし、シンジの視界が自分に映らない所まで歩くと、天使の微笑みは途端に鬼のような形相に変化して、心の中で猛毒を吐き出した。

(ぐああぁぁぁぁぁぁぁ!何処のどいつよ、アタシのささやかな幸せをぶち壊した奴は!?
 ボコボコ阿呆みたいに連打なんてしちゃって・・・・・高橋名人かっつーの!)

しかし、この止めど無く溢れる怒りを決して声には出さなかった。

『愛するシンジにそんなはしたない姿は見せられないもんねっ♪えへっ♪』アスカ談

そんな怒りとへっぽこな想いを胸に抱きつつも玄関に辿り着いたアスカ。

ドアノブに手を伸ばし、不機嫌そうに声を出してドアを開けた。

「はあい、どぉちらさまでぇすかあ?こぉんなあさっぱらからぁ」

「・・・・・おはよう・・・・・弐号機パイロット・・・・・」

そこに居たのは、日曜日だというのに制服を着ているレイだった。

予想もしてなかったバオー来訪者にアスカは思いっきり戸惑った。

だが、それも数秒の事で、直ぐ様いつもの調子で捲し立てる。

「アンタ何でここに居るのよ!?」

「・・・・・私が何処に居ようと私の勝手だわ・・・・・」

「むっきゃー!何よその言い草は!?人が大人しく尋ねてあげてんのに!!」

「・・・・・大人しく尋ねられた覚えはないわ・・・・・」

どうやらアスカは自分の行動、言動がどのように相手に伝わっているか理解出来てない・・・いや、自分の都合のいいように解釈出来る便利な頭脳を持っているようだった。

「へ理屈捏ねるんじゃないわよ、全く!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

どちらがへ理屈かは一目瞭然である。レイは相手にするのを諦めたのか沈黙している。

「アスカー、誰だったのー?」

食事の準備が出来たのか、シンジの声がリビングから聞こえてきた。

「・・・・・碇君・・・・・」

「あっ、コラ!勝手にアタシとシンジの家に入るんじゃないわよ!」

トコトコとアスカの横を摺り抜けて部屋の中に入っていくレイに、とんでもないでたらめを平然と言ってのけるアスカ。(彼女の中ではこの家はアスカとシンジの物らしい)

言うまでもないが、この家はミサトの家である。

「コラ〜!待ちなさ〜い!!」

振り向いて慌てて後を追いリビングに向かう。

そして。

「こらぁぁぁ!ファーストぉぉぉぉぉ!!
 アぁンタ何やってんのよっっ!!!」

(はぁ、やっと冒頭に繋がった(^^;;)←これを書いた人間の独り言

そこでは朝食の準備をしているシンジの服の裾を引っ張り、口を開けて御飯くれ、と要求しているレイと、困り果てた顔でアスカの方を見るシンジが居た。

「あっ、アスカぁ」

「あぁん、シンジぃ♪」

シンジにこれ以上無い微笑みを向けるアスカ。

「ファーストぉ!やめなさいよっ、シンジが嫌がってるじゃないのよっ!!」

レイに極上の殺意を込めて睨みつけるアスカ。

『天使の顔を持つ悪魔』

誰が名付けたかは不明だが、彼女を良く知る人間達は言い得て妙だな、と思っていた。 彼女に好意を寄せる者達はシンジが羨ましくて仕方が無い事だろう。
何故なら、天使の顔になるのはシンジの前でだけなのだから。
閑話休題

ボキバキッ、ベキバキッと北斗神拳伝承者のように指を鳴らしてレイに近付くアスカ。

それを見たレイはシンジの背中に隠れるようにしがみ付いた。

「あ、綾波ぃ」

「シンジっ!その女を庇おうっていうの!?にやけた顔なんかしちゃって!
 アタシよりもその女の方がいいっていうの?何よバカッ!シンジのバカッ!!」

ちなみに、レイが一方的にしがみ付いているだけで、シンジは庇うつもりは毛頭ないし、にやけた顔もしていない。むしろ困った顔をしていたのだが、アスカアイにはそうは映らなかったようだった。

「・・・・・碇君・・・・・あの赤い猿人・・・・・恐い・・・・・」

ボソっとシンジの耳元で呟き、更にその背中に密着するレイ。

「ファーストぉぉぉ!アタシのシンジにそれ以上くっつくんじゃないわよ!!
 そぉれぇにぃぃ、だあぁれが赤い猿人ですってぇぇぇ!?」

「・・・・・貴方の他に誰が居るというの?・・・・・」

ピクピクとこめかみを引く付かせて震えるアスカ。

この場にアデ※ンスの中野さん(アニメ版キ※肉マンに出てきたキャラ)が居たら、間違い無く 『そんなに青筋立てんでもええやねん』と言っているだろう。

「・・・・・殺すっ!即殺すっ!!」

レイも殺気を感じたのか、シンジから少し離れて身構える。

「・・・・・貴方・・・・・本気ね・・・・・」

「フフフフフ、当ったり前じゃない」


二人は背中から炎と氷のような相反するオーラを発生させ、視線からはバチバチと激しく火花を散らせて向き合っている。そしてその闘気に反応したのか、辺りの物が揺れだす。今聞こえるのは闘気の燃え上がる音とテーブルの上に置いてある朝食の皿達がカタカタと鳴る音だけだった。

「ああぁ、二人とも落ち着いて、ね?ね?」

今迄オロオロと成り行きに流されるままに見ていたシンジが、勇気を振り絞って二人の間に飛び込む。このままではせっかく作った朝食がひっくり返るのも時間の問題だと判断したのだ。

しかし、今のアスカにはそんな想いは通用しなかった。

「やっぱりシンジはその女を庇うのね!?何よバカシンジ!!
 こうなったらシンジを殺してアタシも死ぬわ!!一緒に死んでちょうだい!!」

何故こんなぶっ飛んだ考えになるのかシンジには不明だったが、彼女が本気だという事だけは長い付き合いで分かってしまった。

「ちょ、ちょっとアスカ。僕は別に庇うつもりなんて無いし、それに・・・」

「うるさい!問答無用よ!愛しているからこそアタシの手で殺してあげるのよ!」

アスカは何処から出したのか、ポジトロンライフル(対人用)を手に持った。

「アスカ!僕の話を聞いてよ!」

「まずはファースト!アンタからよ!」

そして狙いを定めてライフルを構える。

「であぁぁぁぁぁぁ!!」

チャキッ!ドォムッ

アスカが引き金を引くと、一筋の閃光がレイ目掛けて一直線に走っていく。

パキーン

その光は、今まさにレイに当たろうかという直前で跳ね返され、そのままの勢いでミサトの部屋に直撃した。

「ぐはぁ!」

「ちっ!ATフィールド!!」

アスカは遠くで聞こえるミサトの断末魔の悲鳴を無視して舌打ちする。

そう、レイは生命の危機を察知してATフィールドを発生させたのだ。

「・・・・・無駄よ・・・・・弐号機パイロット・・・・・」

「くっ!」

アスカはライフルを放り投げてレイに飛び掛かっていった。

「うりゃぁぁぁぁぁ!!」

そして気合いと共に、ATフィールドに向い拳を放つ。

「アスカ!そんな事したら拳が!」

バキキーン!!

しかし、シンジの心配をよそに、アスカの拳はATフィールドを粉々に撃ち砕いた。

これにはシンジは勿論、流石のレイも、珍しく驚きの表情を見せた。

「フフフフフ、このアタシにはそんな物通用しないのよ」

レイをチラリと見てニヤリと微笑む。

「・・・・・素手でATフィールドを破壊するなんて・・・・・貴方、超人ハルクのようね・・・・・
 ・・・・・全く・・・・・猿人の馬鹿力は恐ろしいわね・・・・・」

「むっきー、猿人って言うなぁぁぁぁ!!」

顔を赤くして怒り狂うアスカを気にもせずにレイは歩き出した。

「・・・・・碇君・・・・・私はこれ以上猿人には付き合いきれないわ・・・・・」

そう言い残し、レイは台所に行くと冷蔵庫をゴソゴソと漁りだした。

「あっ、ちょっと綾波・・・・・」

レイの不可解な行動を呆然と見ているシンジ。
レイは懐から風呂敷きを取り出し、冷蔵庫の中の物を包み始めた。

「あ、綾波・・・・・?」

包み終わった風呂敷きを背中に背負って、レイはベランダに駆け出して行く。

「・・・・・それじゃあ・・・・・さよなら・・・・・」

「え?綾波、ちょっと」

「コラー!逃げるんじゃないわよ!!」

しかしレイは二人の声を無視してベランダから飛び去って行った。

「・・・・・綾波・・・・・何しに来たんだよ・・・・・」

シンジは呆然とレイが飛んで行った方を眺めていた。

「ああぁぁぁ!この怒りどこにぶつけりゃいいのよ!!」

不完全燃焼なのかアスカは地団太踏んで叫んでいた。

そしてギラッとシンジを睨む。どうやら怒りの矛先はシンジに向けられたようだ。

「シンジぃ。アンタを殺してアタシも死ぬって言ったわよねぇ、アタシ」

ユラリとゾンビのようにシンジに近付いて来る。

「アスカ・・・・・僕の話を聞いてよ」

シンジはアスカが話を聞いてくれない事が少し悲しかった。

「何よ・・・・・言いたい事があるならはっきり言いなさいよ」

アスカは歩みを止めて、不機嫌そうに口を開く。

まるっきり聞く耳持たなかったくせに、とシンジは思うが口には出さない。
もし言ってしまったら、その瞬間シンジの時間は永遠に止まってしまうだろう。

「さっきの話だけど・・・・・僕は綾波を庇ったつもりはないよ・・・・・それに・・・・・」

「・・・・・それに何よ」

「・・・・・それに・・・・・僕が好きなのはアスカだけだから・・・・・」

ピクッとアスカの肩が震える。

「・・・・・え?」

目を見開いてシンジの目を見詰める。

「何度も言おうとしたのに聞いてくれないんだもん・・・・・少し悲しかったよ・・・・・」

「・・・・・シンジ・・・・・」

ふるふると身体を震わせるアスカ。

「シンジぃ!ゴメンなさい、ゴメンなさいシンジぃ!」

そしてシンジの胸にむしゃぶりつく。

「ふえっ・・・・・シンジぃ・・・・・ゴメンなさい・・・」

「もういいよ、アスカ」

シンジは左腕でアスカを抱きしめ、右手で頭を優しく撫でてあげる。

アスカが泣いた時にはいつもしてあげている事だった。

「ひっく、アタシ嫉妬してたの。シンジの傍にあの娘が居るだけなのに・・・・
 嫌な女だよね・・・・シンジも嫌いになったでしょ?こんな嫌な女なんて・・・ぐすっ・・・」

涙声で喋るアスカ。シンジはシャツに染みこむアスカの涙を感じていた。

だから、出来るだけ優しく、そして本当の気持ちを伝える。

「嫌いになんてならないよ」

そう言うとシンジは俯いたアスカの頬に両手を添えて、自分の方に持ち上げる。

「嫉妬してくれるのはそれだけ僕の事好きでいてくれてるって事だろ?
 だから・・・・・嫉妬してくれて嬉しいよ、アスカ・・・・・」

シンジは微笑む。アスカにだけ見せる優しい笑顔で。

「ひっく、本当?・・・・・怒ってない?・・・・・シンジぃ」

アスカは不安でいっぱいといった顔で上目でシンジを見ている。

「うん、本当だよ。怒っても無いし、嫌っても無いよ」

「シンジぃぃ♪大好きぃ♪」

満面の笑みでシンジの顔中にキスしまくるアスカ。チュッチュッチュッチュッ

そのままシンジは床に倒れこんでしまうが、そんな事は今はどうでも良かった。

「アスカ・・・・・駄目だよ?まだ朝御飯食べてないんだから・・・・・」

そう言いながらもアスカを抱きしめて離さないシンジ。

「後でちゃんと食べるから、今はこのままでいさせてよぉ・・・・・シンジぃ・・・・・」

甘い声を出して、シンジの顔にキスをし続けるアスカ。

「・・・・・うん、もう少しだけ・・・・・だよ・・・・・」

「・・・・・うん、分かってるよ、シンジぃ・・・・・んっ・・・・・」

幸い無傷に近いリビングのど真ん中で幸せそうに抱き合って寝転ぶ二人。

二人が朝食を食べたのは、これから1時間30分後の事だったとさ。





この間、二人が何をしていたのかは皆さんの御想像のままに・・・・・





おしまい





おまけ

ポジトロンライフルを食らって瀕死の重傷を負ったミサトが病院に運ばれたのは、二人が朝食を全て平らげて、もうひと頑張りした後だったとさ。(爆)



後書きと言う名のお詫び

何なんでしょう?これは。自分でも何書いてるのか分からなくなってしまった(;;
タイトルもあんまし関係無いし・・・うーん、困ったもんだ(ってオイ
みゃあさん、これ捨てても構いません(いや、マジで)


みゃあ偽・アスカ様(笑)の感想らしきもの

 

みゃあ「うっうっ…またもやk−tarowさまが記念作を送って下さいました。…お忙しいのにすみません。でも、とっても嬉しいですぅ」

アスカ様「……ヒマねぇ、k−tarowも」

みゃあ「な、なんてこと言うんですかっ!k−tarowさまのこの素晴らしい作品の良さが分からないんですかっ!?」

アスカ様「……このあたしのことを『赤い猿人』とか言ってるのよね、コイツ。…いつかシメてやるわ」

みゃあ「えっ!?k−tarowさまのモノを締めてあげるんですかっ!?そっ、それはk−tarowさま大喜びですよ」

 

どばきぃっ!

 

アスカ様「…そーいう意味じゃない」

みゃあ「ふぁい……」