【紅天の獣〜赤い翼をもつ獣〜

第九話

作・三月さま


 どれだけ後悔してみても、どんな悲劇があったとしても、誰かを思う気持ちだけは止められない。それを証明するかのように、お互いを求めあっている朱峯と七瀬の姿を見て、芥穂は思わず微笑んでしまっていた。

 良かったと思う。わずかな間の旅だが、芥穂は朱峯には好感を抱いていた。だから、彼が幸せそうならば、それでこちらも満足出来る。この感情は、『紅天の獣』の血に連なる者としての、同族への思いなのかもしれない。そう思うと、何か腹立たしい。それでも、朱峯達の様を見ていると、どうも微笑ましくなってしまう。

 視線を空に向けると、沈黙を保ち続けている竜の姿が目に映る。赤く美しい紅の竜。炎の力を濃く秘めた古代竜だ。あの神にも近い竜ならば、人と子を成すことも出来るのだろう。そして、『稿朱』のような者が、その血筋に現われてしまうことさえもある。

『姉さん!!』

 ふと、耳に聞こえるはずもない声が聞こえてきた。

 芥穂は、自分にだけ聞こえる幻聴に、苦笑せずにはいられなかった。

 あの『紅天の獣』は、十年前の悲劇の原因である竜ではない。だが、当時者の埋もれた記憶を引き出すには、十分足るものだ。あの紅の巨体は、十年前の炎の惨劇を、まざまざと思い出させる。脳裏に、あの時の悲劇と、それに続く惨劇を、鮮やかに蘇らせる。

『姉さん、助けて!』

 芥穂は、どうやっても追いやることの出来ない記憶の呼び声に、思わず額に手をやった。その芥穂の動きに気が付いた安珠が、彼の様子を覗き込んでくる。芥穂は、それを敢えて無視した。わざと彼から顔を背け、面に現われているだろう表情の変化を気付かれないようにする。

『姉さん、姉さん!!』

 繰り返し、呼びかけてくる声。

 これは、自分の声だ。

 芥穂は、かつて聞き慣れた少年の声に、うんざりする。どうして、今になって、あの光景を思い出さねばならないのだろうか。

 彼が思い出すのは、十年前の悲劇ではない。

 芥穂にとって忌むべき記憶は、ただ一つだけだ。

 父と母が炎に巻かれて死んだ日の光景ではない。その後の人々の狂気。それが、彼にとっての悲劇。

「・・・嫌になる」

 当時の人々をあざ笑うように、芥穂は口元を歪める。

 紅天の獣が引き起こした悲劇。それは、北の山に面する全ての村々を襲った。被害の程度はあれど、大概の村が、多数の人々を失い、家々を焼かれてしまった。人々の心には、荘厳なる竜への畏怖と恐怖が残り、彼等の絶望と共に狂気が発生した。

 芥穂の思い出の中で、その二度目の悲劇が起こったのは、ごく普通の日だった。

 紅天の獣の惨劇から一年が経過し、村々はようやく立ち直り始めた。家々も再建され、微かにだが笑顔が見え始める。親を失った者、子供を失った者、恋人を失った者。大切な存在を、あの竜の生み出した炎により、奪われなかった者などいなかった。あの悲劇の中、生き残った者は皆、苦汁を飲んだのだ。それでも、時は緩やかに人々の心を癒し、彼等の心に余裕を取り戻させていった。

 そんな、矢先だった。

 発端は、小さな噂話しだった。『赤い瞳の人間が、紅天の獣を呼んだらしい』と。

 噂が噂を呼ぶと言うのは、事実だったらしい。

 村の新しく開かれた酒場で囁かれた、他の村の噂は、あっと言う間に、人々の間に広まった。膨らみ、虚言を含みながらだ。唯一言囁かれたはずの噂は、すぐに、真実味を持った事実として、村に流布した。いわく、『赤い瞳の人間が、紅天の獣となったらしい』と。

 皮肉なことに、それは真実だった。元の噂とは食い違ってしまったものの、真を得た噂だったのだ。だが、それが元の噂と違っていようと、真実だろうと、村人達には関係なかったらしい。彼等にとっては、再び蘇ってきた、あの竜に対する恐怖こそが、本物だったから。

 恐怖が埋もれていた怒りを呼び、人々を駆り立てた。狂気は近くの村から広まり、芥穂の住んでいた村を経て、他の村々へも広まっていった。

 生き残った赤い瞳を持った者が、狂気に取りつかれた村人達によって狩られていった。

 各々の村の中で、真紅の瞳を持った者など、数えて三人ほどもいなかっただろう。そして、村が小さければこそ、協力して立ち直った後だからこそ、誰がその瞳を持つ者なのか、全員が熟知していた。

 芥穂の記憶では、その瞳を持っていた者は、彼と、若い女性と、幼い赤ん坊の三人だった気がする。彼等は、突然狂気に取りつかれた村人達によって、村の中央に追い立てられ、そこで『処刑』されると、宣言された。

 罪状は何のことはない、『紅天の獣』の罪そのもの。決して竜に復讐することの出来ない彼等は、残り火のように残っていた怨嗟の思いを、赤い瞳の人間へとぶつけたのだ。

 そして、まず、抵抗しようとした女性が殺された。

 十三になったばかりの芥穂は、それを呆然と見ていた。そう記憶している。彼の目の前で、人が死んだのだ。燃えずに、ただ、殴り殺された。私刑だったのだ、それは。人々は、一年間抑え付けられてきた思いをぶつけるように、熱狂した様子で、女性を責めたてた。殴りつけ、蹴り倒す。女性が、罪も判らぬままに懇願するのをあざ笑い、さらに足で蹴る。

 赤ん坊もあっと言う間にくびり殺された。あの地獄の直後に生まれた、再生の証と呼び合った幼子だったのに、村人達はためらいもなく、その子供を殺した。

 後に残ったのは、芥穂だった。

 村人達の狂気。それは、芥穂にとっては理解しがたいものだった。村を駆け巡った噂も、芥穂は聞いてはいなかった。ゆえに、訳も判らないまま、唯々、恐怖に後退った。そんな彼を、後方に回っていた村人の声が、さらに怯えさせる。

『姉さん!!』

 他には誰も頼れない。

 村人全員を見回しても、彼に同情してくれそうな人間は、唯の一人もいなかった。芥穂を救ってくれるような相手は、何処にもいなかった。皆が憎悪を込めて彼を睨みつけていた。

 だから、姉の名前を呼んだのだ。人垣の向こうで、自分を見つめている姉の名を呼んで、助けを求めた。自分でも情けなくなるくらいに、悲痛な泣き声で。

 彼の目の前で、姉の奇麗な茶色の長い髪が、風に揺れた。彼女は、胸元で手を組みながら、芥穂の叫び声に面を歪める。泣きそうな顔になり、彼女は目を細めた。

 そして、姉たる女性は、芥穂から視線を反らしたのだ。罪悪感からか、それとも、それ以上見ていられなかったからなのかは、判らなかったが。

『姉さん・・・』

 一年前の惨劇の時、父も母も返り見ず、姉の事を助けたのは芥穂だった。彼は、自分よりもずっと年上の優しい姉が好きで、彼女が笑ってくれていたのなら、それでいいと思っていたのだ。父と母を見捨てた事実に、夜、うなされることもあった。それでも、姉が火傷を負うこともなく、無事に惨劇を逃れられたことに、彼は満足していた。

 その誰よりも慕って、尽くしていた相手が、自分を裏切った。少なくとも、芥穂にはそう見えた。

 姉が視線を反らした瞬間に、芥穂の中で、憎悪が湧いた。泣いてくれる訳でもない。また、村人を止めようとするわけでもない。それでもよかった。ただ、視線を反らさずに、見守っていてくれれば。利己的に、彼女が己の保身のために、自分に対して死んでくれと願ってくれてもよかったのだ。ただ、最後まで、自分を見てくれていたのなら。

 彼女が視線を反らした瞬間、芥穂の中で、何かのたがが外れた気がした。プツリと、弱い糸を引き千切ったように、心を縛っていた枷が外れてしまった。唯の一瞬の姉の行動で。

『姉さん!!』

 その瞬間、目の前が赤く染まった。どこまでも美しい、紅の炎が照らし出したせいで。

 村人達は皆、突然の異変に騒然となる。今までの狂気はどこにいったのか、彼等は悲鳴を上げ、彼等の後方で起こった炎の柱に色めき立つ。

 かつて、芥穂の姉だった人物が、その炎に飲まれていた。美しかった面も、白い肌も、赤く絡み付く炎に焼かれ、醜くただれていく。風にたなびいていた、豊かで艶やかだった茶色の髪も、あっと言う間に燃えて消えてしまった。生身を焼かれる苦痛に、彼女は絶叫を上げた。

 芥穂は、その様に目を見開く。姉を飲み込んだ炎を、自分が作り出したことは、すぐに判った。同時に、思ってもいないのに、足が地を蹴っていた。彼は、動転仕切っている村人の囲みを抜け、村の外へと、森へと駆けていった。

 森の緑と、北の山の冷たい光景。そして、赤い炎。

 それが、ここには揃っている。

 現実の中、芥穂はまざまざと蘇ってきた記憶に、重いため息をついた。

 出来る事ならば、忘れていたい記憶だった。忘却の彼方に追いやり、そのまま、思い出さずに居たかった事実だ。

 あの後、酷い有様で、地方の神殿まで逃れたことも、神殿の司祭に助けられたことも、神殿に訪れた先の第一軍の将軍に見い出されたことも、全て。そう、全て忘れてしまいたいぐらいだ。あれから続く、思い出の全部が、芥穂にとっては、もう一つの『惨劇』へと繋がっていく。

 それが彼を責めたてるのだ。

(私は、紅天の獣へと、己の罪を、なすり付けようとしていたのかもしれないな・・・)

 朱峯の告げた事実を受け止め、それでいて、『稿朱』の娘である七瀬に、何の感慨も湧かない。憎しみも、苛立ちも抱けない。むしろ、幼い少女を哀れんでさえいる。そんな自分の姿に、芥穂はそう感じずにはいられなかった。

 『紅天の獣』への復讐心も、他の竜への憎しみも、全てが、あの姉を殺してしまった瞬間に行き当たる。

 本当は、ただ、自分が許せなかっただけなのだ。

 私は、朱峯と同じ。

 大切な者を傷つけてしまった、自分と言う存在が認められなかった。



 ふと安珠が視線を北の山へと向けた。血に飢えた将軍として、自軍の兵達にさえ恐れられている彼。だが、その悪名は、敵方によってつぶやかれる際には、畏怖をも込められる。勝利のためにならば手段を選ぶことのない将軍として。また、彼の率いる第二軍の野外での常勝ゆえに。

 その彼が、山の狭間に見える黒い影を認め、満足そうな笑みを浮かべる。安珠は、薄い茶色の髪をかき上げ、芥穂に気付かれぬようにと、その笑みを無理やり抑え付けた。

 だが、芥穂も同じ将軍職の者として、また、友人として、長く安珠の側にいただけはある。この同位の将軍の異変に目敏く気が付いていた。今だ困難はあろうとも、何とか収まったように見える朱峯達から視線を反らし、彼を横目で見据える。

「どうした、安珠?」

「いや、別に・・・そうだな」

 安珠は、わざとらしい口調で、言い訳の言葉を探す。その言い草が、余りにも堂々としたものなので、芥穂は彼が隠しているであろう事をわざわざ聞き出す気には、なれなかった。どうせ、すぐに安珠が喜々とした表情で喋り出すのは判っているのだ。それはいつもの事であり、また、彼がこうやって楽しそうに隠すことなど、戦に関わること以外にはありえないからだ。

 そんな芥穂の思いなどお構いなしに、安珠はのんびりとした動作で空を見上げた。そして、何か思い付いたのか、彼特有の冷たい笑みを浮かべる。

「ただ、どうしてあの竜が、ここに居続けるのかと思ってな」

「『紅天の獣』・・・」

「お前の仇の竜は、アイツが殺してしまったんだろう?」

 安珠はそう言い、七瀬を宥めている朱峯へと視線を向ける。安珠には、あんなか弱く見える少女に構う朱峯が、まったく理解出来ないらしい。

 芥穂は、友人の言葉に苦笑いした。彼には、何度となく『仇』への思いを打ち明けたことがある。それゆえか、安珠は自分のことのように、芥穂が自ら紅天の獣を倒せなかったことを悔しがってくれている。血に飢えているようで、時折こんな仕草も見せる。七年近くも側にいるが、彼のアンバランスさには、今だに苦笑を禁じえない。

「仕方ないさ」

「お前が納得しているなら、別にいいがな。俺にとって大事なのは、戦いだし。てっきり、お前について行けば、竜と一戦でも出来ると思ったんだけどな」

「安珠・・・」

 友人の言葉に、芥穂は目を見開く。

 この友人は、ただ戦いたいがために、ここに来たと言うのだろうか。それとも、まさかとは思うが、自分と共に竜と対峙するために来てくれたのか。

 困惑気味の芥穂の心情を知ってか知らずか、安珠は冷たく笑うのみだった。

「俺はどうでもいいんだ。戦自体はまだ続いているし、これからも続くだろうしな」

「そうだな」

 芥穂が苦笑しながら頷いたのを見て、安珠は疑問を再び口にする。

「芥穂、どうしてあの竜は、あそこに留まっている?」

「私に聞くな、判るはずがない」

「予想は?」

「予想ならば」

 クスクスと笑いながら、芥穂は自分が組み立てていた推論を披露する。

「あの子が・・・七瀬が竜を呼んだことは間違いない。そして、彼女が紅天の獣を呼び寄せたことは、たぶん、伝承が関わっているのだろう」

「血筋がどうのこうのと言っていたやつか?」

 安珠の問いに、芥穂が頷く。

 芥穂は、続けて何かを言おうとしたが、ふと、こちらに注がれてくる視線に気がつき、やんわりと笑みを浮かべた。

 彼等の目の前には、様子を伺うように、七瀬の家から顔を出してきた丁嘉の姿があった。まったく彼を無視する安珠に代わって、芥穂が合図をしてやると、騎士達が戸惑いつつも、丁嘉に続いて戻ってきた。

 村人達は、家の中に残してきたらしい。数人、数が足りない所を見ると、村人達のために置いてきたのだろう。芥穂は、戻ってきた騎士達に労いの言葉をかけると、その事を尋ねた。

「怪我人と残りの者は?」

「生存者のみならば、全員無事です。処置しておきましたから、もう大丈夫でしょう。数名、彼女達の様子を見させるために、残して来ました」

 丁嘉が、騎士達を代表して、そう答える。

 安珠にも向けられた言葉に、芥穂は答えようとしない。ただ、促すように友人であり同僚である青年を見るだけだ。

 安珠は、芥穂の視線に耐え切れなくなったかのように、乱暴に丁嘉に頷いてやった。日頃しない行動のせいで、気分が悪くなってしまったのか、思い切り不機嫌な表情になる。

「お前といると、調子が狂う!」

「いつものことだろう」

「まったく・・・」

 悪態を付き、安珠はこれ以上、芥穂と顔を突き合わせるのは嫌だとばかりに、空に視線を向けた。

 そしてまた、丁嘉達が現われる前に口にした疑問を繰り返した。

「なぁ、なんでだ?」

 言い逃れをするために、口にしたはずの疑問。それを繰り返す安珠に、芥穂は失笑を禁じ得ない。

 安珠は、疑問を抱いたまま鬱々とはしていられないのだ。直情的で、自分の欲求に限りなく忠実だ。彼の暴走気味の行動と態度は、いつもこの直情さから来るらしい。赤い瞳を持つ青年は、友人の時に無謀とも言われる性質に苦笑しつつ、『伝承』を口にした。

「紅天の獣。そは天を紅に染め上げる神の獣なり。北の山を住処とし、村々を守護せん。子と契約をなし、血筋の守護とならん・・・」

「ん・・・?」

「そのままだろう。あの竜は、あの娘『だけ』を守りにきた」

「なんでだよ。お前だって、アイツだって、あの竜の血は引いてるとか言ってなかったか?」

「あぁ・・・だが、竜にはそうは思えないらしい」

 芥穂は自嘲気味に笑みを浮かべ、友人の自分のモノとは対照的な青い瞳を覗き込む。

「竜にとっては、あの子だけが、自らの血筋なんだろう。でもなければ、あれの行動は理解できない」

「伝承どおりならばな」

「そう。伝承通りならば、あの竜は、『紅天の獣』の血を引く全ての者を守らなければならない。北の村々の全てを守護しなければならないだろう」

「・・・血筋は、そんなに広まってるのか?」

「ここら辺りではな、赤い瞳の子供は、ポツポツと、普通の親から生まれる。赤い瞳が現われ易い家はあるようだが。もっとも、そんな子供の大抵が、微弱な炎への耐性を秘めた子供だ。私や朱峯達のようじゃない」

「なるほど。血筋は血筋でも、薄いってことか。・・・お前は濃い方か」

「だからこそ、十年前も、生き残れたのかもな」

 そう言って、芥穂はおかしそうに笑う。

 冗談とも取れない言葉に、安珠は何の反応も示さない。

 芥穂は、皮肉った冗談の一つも通じない友人の鎧を、手の甲で軽く叩いた。

「獣にとっては、竜となれるほどの濃い血をもった『稿朱』と言う者こそが、自分の血筋と映ったのだろう。だからこそ、その『稿朱』の子供を守る。他の何者をも切り捨てても」

「・・・いいんじゃないか?」

 竜の非情な判断は、安珠にとっては心地よかったらしい。彼は、人外の竜のことにも関わらず、嬉しそうに笑っている。そんな安珠の態度に、芥穂は呆れるしかない。

「お前は、いいだろうがな」

「いいんだよ。関係ない連中なんか、守る必要などない。自分と大切な連中だけ大事にしてればいいんだ。後は、強いか弱いかだけだな」

「お前の、絶対に曲げない強行な理論、嫌いではないよ」

 友人を説得することなど、とうに諦めている芥穂は、そうため息混じりにつぶやく。

 安珠は、それにニヤリと笑って見せる。我を通すことが、彼にとっては快感らしい。

 だが、なおも疑問は残る。芥穂は、友人の笑みを黙殺しつつ、不思議そうに竜を見上げた。

「それでも、どうして竜が今も天に漂うのかが、私には理解できない。すでに、七瀬は無事なはずなのに・・・」

「俺達が、害虫に見えているのかも、しれないぞ?」

 含みを持った笑みを浮かべつつ、安珠はそう答える。

 彼の言葉に、芥穂は眉を潜めた。

「安珠、何を知っている?」

「さぁ・・・?」

「安珠」

 不意に厳しい声で、芥穂が安珠の名を呼んだ。叱責するような、強く険しい口調だ。その響きが、余りにも冷たかったために、回りに控えていた騎士達でさえも、自分が叱責されたように、体をすくませた。

 安珠も、騎士達ほどではないにしろ、今の芥穂の声にはひるみを見せる。その自分の反応が、また彼を苛立たせた。そのことに、恨みがましく友人を睨みつける。だが、それでも芥穂は動じない。それどころか、芥穂は安珠の態度に呆れもしなければ、諦めようともしなかった。

 安珠は、どうしても、上手を取られてしまうことに歯噛みしつつ、おもむろに北の山を示した。

「あっち・・・お前の目なら、見えるだろう?」

「何だ・・・?」

 芥穂は、安珠の指し示した方向を、いぶかしげに見つめた。

 そして、忌ま忌ましげに表情を歪める。

「・・・イルバースか・・・」

 イルバース。北の山付近を国境として、このディルニア王国と隣接している大国だ。彼の国は、このディルニアの大乱の中、不思議なほどの沈黙を保っていた。あれほどの大国ならば、この争いを機会として、ディルニアに攻め込み、北の山の外れの地域などを接収することも出来ただろう。もしくは、大乱に介入し、ディルニアを属国にしてもよかったはずだ。その国が、一つの動きも見せなかったのだ。芥穂達などにしてみれば、不気味窮まりない大国の静けさだっただろう。

 それが、今、破られた。

 芥穂の赤い瞳は、北の山の狭間に見える黒い筋の姿を捉えていた。長年の勘と経験で、それが大軍の行軍する様だと気付く。北の山の国境を超えてくる軍など、そうはいまい。間違いない、イルバースの軍だ。

 どうして、戦好きの安珠が悦んでいるのか、芥穂はようやく判った。イルバースほどの国家ならば、安珠にとっては歓迎すべき敵となるだろう。ディルニアにとっては、さらなる災難だとしてもだ。

 朱峯も、芥穂達の様子に気が付いたのだろう。七瀬を横にとどめつつ、彼等に声をかける。

「どうしたんだ、芥穂?」

「イルバースが動いた。よりにもよって、北の山から侵攻してきてな。まさか、あの山を越えてくるとは思わなかったから・・・戦略的には、絶好の不意打ちとなる」

「そうなるか・・・?」

「大公がこちらに逃げてこられていても、王子はいまだ、その追撃を向けられないでいるだろう?」

「あぁ・・・」

「おそらく、追撃の軍が、まだ、まとめられないのだろう。今だ、国内は乱れ切っているからな。速攻で動ける軍がほとんどない」

「長い戦だったからな」

「現在の状況は、イルバースにとっては好都合だ。この国は、戦で疲弊しきっている。しかも、大公も北の山にいらっしゃる。他国に侵攻の文句を言われたとて、血縁のある大公を助けるためだったと、イルバースは容易に言い逃れ出来るからな」

「言い逃れ・・・か」

「他国から、戦乱の国に侵攻したことを責められても、『大公を救うために軍を派遣したところ、ディルニアの方が攻撃を仕掛けてきたのだ』とでも、言うつもりなのだろう」

 芥穂はそう言い、薄く笑みを浮かべた。大国に対する嫌味を含んだ言葉だ。どこか突き放すようであり、また、怒りを含んでいるようにも見える。

 芥穂は、険しい表情のまま、安珠に尋ねるような視線を向けた。言葉を交すことなく、芥穂の意を汲み取った彼は、大げさに肩をすくめる。

「イルバースの迎撃に動かせるのは、俺が要塞まで連れてきた、第二軍の主力五千だけだ。他の兵を呼び寄せるにも、時間がかかる。俺のとこだけで、全部を揃えるのに、三日・・・いや、二日だ」

「足りない。しかも、遅い。あっちは、二万はいるぞ。しかも、それで斥侯だ。この分なら、両日中に来るな」

 忌ま忌ましげに、芥穂はつぶやく。

 辺りを沈黙が支配した。騎士達はもちろん、朱峯だとて、イルバースの国力は知っている。あれだけの大国の派遣する軍を、今の状態のディルニアが迎かえ撃てるわけがない。ただ、安珠のみが、喜々としているだけだ。その彼も、何か思うところがあるのか、やや不満顔をしてはいるが。

 その沈黙を破ったのは、七瀬だった。

「大丈夫だよ」

 彼女は、ようやく手に入れた朱峯の腕にしがみつきながら、おどおどとした動作で、芥穂を見上げた。今日初めてあった青年に対して、人見知りしているらしい。そこには、朱峯達が抱いているような不安はない。ただ、無邪気に芥穂に話しかける。

「『紅天の獣』がいるもの・・・だから、誰もあそこからは、来れないの」

「紅天の獣・・・?」

「うん」

 芥穂の優しげな面を見て、安心したのだろう。七瀬は可愛らしく頷いて見せる。彼女は、そのまま尋ねるように朱峯の面を見つめた。彼は、何をするわけでもなく、無表情に七瀬を見返す。

 芥穂は、突然、少女がつぶやいた言葉に、戸惑って居るようだった。そして、彼女の言葉を考慮する。そのうち、何故、それほど厳しいとは言えない山岳地帯だと言うのに、北の山がまったく人の通らない場所となったのか、合点がいったようだった。片手で額を抑え、小さくため息を付く。

「獣・・・そうか、北の山は、あの竜の領地・・・ならば」

「犯せばぶっ殺されるのが落ちだってとこか?」

 それこそが、安珠の気に入らない点だったのだろう。彼は、親指で首を掻き切る真似をして見せながら、嫌そうに表情を歪めた。

 紅天の獣が、イルバースの軍を壊滅するかもしれないと言う事実が、安珠の不満の原因だったのだろう。できうるならば、自ら戦いたかったと言うことか。

「まったく。せっかくの戦の種を・・・」

「・・・ん?」

 安珠の悪態に、七瀬が首を傾げる。彼がどうして不機嫌になるのか、彼女には理解できないらしい。

 その時、再び紅天の獣が吠えた。低い吠哮の音。遠巻きにあったイルバースの軍が、完全に自分の縄張りを犯した事に対する、怒りの声のようにも聞こえる。朱峯達はまだしも、騎士達は、まともにその竜の吠え声に衝撃を受けていた。ある者はペタンと尻餅を付き、ある者は呆然と空を見上げている。

 竜は身を翻し、北の山へと頭を向けた。七瀬の言葉のままに、北の山を不可侵の領域とするため、飛び立っていくようだった。

 ただ七瀬のみが、のんびりとした表情で、それを見守っている。

「奇麗だねぇ、朱峯・・・」

「そう・・・だな」

 静かな動作で、朱峯が七瀬の言葉に頷く。

 あの竜の姿は、朱峯にとっては、十年前の悲劇と自分の犯した罪を思い出させるものらしい。七瀬に同意しながらも、その声はどこまでも暗く重いものだった。



「シェラザードの要塞に帰還する!」

 紅天の獣が、山の合間に消えたのを見届け、芥穂がそう宣言した。騎士達の本来の上司である安珠は、それに申し訳程度に、

「だ、そうだ」

と、いい加減な口調で付け加えた。せっかくの大軍との戦闘の機会を奪われ、至極機嫌が悪いらしい。将軍のそんなあからさま態度に、騎士達は密やかにだが苦笑する。

 芥穂もまた、友人のそんな態度に失笑を禁じ得ない。芥穂も安珠も、この国の要職にある将軍だ。大国との抗争の恐ろしさは重々承知している。そんな中で、大国の脅威を芥穂と同じように理解しているはずの安珠が、安心などせず、ただ残念がっている。その事が、芥穂にとっては、どうも可笑しく思えた。

 だが、イルバースの脅威が完全に去ったわけではない。斥候が突然にして音信普通になれば、イルバースはそれ以上の軍を、ディルニアへと向けてくるだろう。それが判っていながら芥穂は、どこか余裕を持った態度を崩そうとしない。そればかりか、いつもより、ずいぶんとさっぱりした表情さえ見せている。

「丁嘉」

 不意に芥穂からかけられた声に、丁嘉は彼らしく畏まる。

「何でしょうか?」

「あの村人達は連れては行けまい。置いていっても、支障はないと思うか?」

「イルバースの軍がこない限りは・・・」

 丁嘉がそう告げた後、安珠が会話の間に割って入ってきた。

「帰還途中で、一騎、近隣の村に向けさせとけ。村のことは、他の村に任せておけばいい」

「安珠・・・」

「今の俺達の仕事は、王子にイルバースの侵攻を伝え、国境周辺を固めとくことだろ?」

「そうだな」

 頷き、芥穂は薄く笑った。

「あの方には、こんな状況なのに長く、私個人の我がままを通させていただいた。そろそろ、本腰を入れて、第一軍を復帰させなければな」

「本当に。王子はお前『だけ』に甘いからな」

「私も、『我がまま』とは言っても、彼の方が窮地に立たされるような真似はしなかったからな」

「ふん、どうだか」

 安珠は悪態をつき、芥穂に代わって自分の部下に支持を与えていった。流石に、芥穂と並び称される将軍だけはある。日頃の行動と態度が狂気じみてはいても、部下に与える指示は的確だ。

 自分の部下に対する指揮権を主張し始めた安珠を見て、芥穂はおとなしく引き下がった。彼と張り合うつもりなど、元からないらしい。むしろ、率先して指揮にあたり始めた友人を見て、嬉しそうな表情さえ見せている。

 安珠が指揮を取り始めた以上、他にやることもなくなってしまった芥穂。彼は、ゆったりとした動作で、何時の間にか、かたわらに立っていた朱峯へと視線を向けた。

「朱峯・・・一つ、いいか?」

「何だ?」

「お前、村を出た方がいいよ」

「芥穂・・・?」

 何を言い出すんだとばかりに、朱峯は芥穂を見据える。

 そのきつい視線を、芥穂は平然と受け止めた。そればかりか、短い間とはいえ友人のように接することの出来た相手に、労るように笑いかける。

「さっきの、あの女性の言葉、覚えているだろう?」

「・・・あぁ」

「一度、ああ言う思いが人々の間に生まれるとな、それを止めるのは難しい。お前とその子・・・七瀬が村に居続けたとしても、村の連中はいい顔をしないだろう」

 芥穂のその言葉に、朱峯は一瞬ギクリとしたように、表情を強ばらせた。彼にとっては、自分が爪弾きにされると言うよりは、むしろ、七瀬の気持ちの方が気になるらしい。気づかうように、少女の表情を盗み見る。そして、彼女が何も判っていないらしいことに、重くため息をついた。同時に、芥穂の言葉に頷く。

「・・・そうだな」

「今回のことも、竜が現われたことから、また、『紅天の獣』に結び付けられてしまうかもしれない。そうなれば、その思いは、お前と・・・特に七瀬に向くだろう」

 芥穂の静かな言葉に、朱峯はしばらく黙っていた。彼は、芥穂から視線を反らすと、厳しい表情で、遠くに見える北の山を見据えた。

 七瀬は、朱峯のかたわらに立ちながら、そんな彼の表情を見上げていた。そして、何を思ったのか、ポスンと朱峯の腕に抱きつく。

「七瀬、いいよ」

「・・・七瀬?」

「朱峯と一緒なら、いいよ」

 もう絶対に離れたくない。その思いを前面に押し出し、七瀬は朱峯にそうささやく。

 微笑ましくも思える少女の仕草に、芥穂は苦笑してしまった。

「あててくれるな」

「芥穂!」

「ふ・・・いいじゃないか。ついてきてくれると言うのだから」

 芥穂は、朱峯に対して、からかうような笑みを浮かべる。

 朱峯は、今になって、芥穂と言う人物が、自分とほんの二つほどしか年齢の違わない相手だと言うことに、気がついた。もっと、経験を積んだ年長の人物かと、錯覚することもあった。だが、今笑っている青年は、今だ年若い、活気づいた青年だった。

「・・・どうした?」

 朱峯の戸惑いに気がついたのだろう、芥穂は笑ったまま、そう問いかける。

「いや・・・少し、最初のころの印象と違うと思っただけだ」

「あぁ、そうかもしれないな」

 芥穂はクスクスと笑う。

「何か、ここに来て吹っ切れた感じだから」

「何を?」

「『紅天の獣』のこと。仇がいなくなって、他に何もなくなった気分だがな。妙にスッキリする。そして、彼女の・・・」

 そう言って、芥穂は幼さの残る少女に笑いかける。

 恋人の罪を意にもかけない『女』。ただひたすらに、愛する者を求めている。そんな印象を芥穂は彼女から受けていた。彼にとっては、そこまでの強い思いを抱く事の出来る少女の存在が、少しまぶしくも思えた。

 こんな自分だが、まだ誰かに思われる価値があるのではないかと、彼女は思わせてくれる。それが、芥穂にとっては、一番の救いだった。

 芥穂の笑みに、七瀬も無邪気に笑う。朱峯が、心許したように接することで、芥穂に対して警戒心を抱くなど、思いもよらないのだろう。長年接してきた友人のように、芥穂を見上げていた。芥穂もそれに応えてまた微笑む。七瀬に笑いかけたまま、芥穂は言葉を続けた。

「血のせいかもしれないな。朱峯、お前と会ったときも、この子と会ったときも、始めてと言う気がしなかった」

「・・・俺も否定はしない」

 朱峯の無愛想な返事に、芥穂と七瀬は、ほぼ同時に笑ってしまった。

 七瀬と二人で、一通り笑った後芥穂はふと、何かを思いついたように、楽しそうな笑みを浮かべた。

「なぁ、朱峯?」

「なんだ?」

「私と一緒に来ないか?」

 芥穂はそう言って、右手を差し出す。

「強制はしない。ただ、俺の側にいてくれればいい。お前ほどの腕ならば、第一軍の中にあってもやっていけるだろう。もちろん、お前と彼女の生活は俺が保証するし、国が安定した後の保身も約束する」

「・・・勧誘、か?」

「そうなるな。私としては、同じ存在が、側にいてくれれば、心強いんだ。第一軍を再編成するに当たって、私は右腕が欲しい」

「・・・七瀬はどうなる?」

「どんな時でも、彼女の安全を確保させる」

「ずるいな」

 朱峯は、目の前に差し出された芥穂の手に視線を向けた。ふと、腕が動き、彼の手を掴みそうになる。だが、後もう少しと言う所で、彼はその手を止めてしまった。

 芥穂は、その動きに、わずかだが落胆の色を示す。

「駄目・・・か?」

「判らない・・・お前に『頼る』ような真似をるのが正しいのか・・・」

 その言葉に、芥穂は軽いため息をついた。

「やっぱり・・・」

 そう、芥穂が何か言いかけた。

 それを、後ろから彼の肩に腕を回してきた安珠が遮る。彼は、乱暴とも言える仕草で芥穂に取りつくと、そのまま、腕で彼の首を軽く絞めるような真似をした。彼はその態勢で、芥穂の背後から、二人のぎこちなく差し出されたままの手を見比べる。

「何やってるんだ?」

「安珠・・・」

「勧誘か?」

 安珠は、あからさまな不平を露にして、そう言った。呆れた様子で、戸惑って入る朱峯を睨みつける。

「お前、馬鹿だろ」

「な・・・!」

「あのチビ守るって言ったんなら、とことんやれよ。この村、出るんだろう?」

 先の会話を聞いていた訳ではあるまい。だが、安珠もまた、朱峯達の迫られるであろう決断は見抜いていたらしい。彼ほどの将軍ともなれば、それくらいの人の心の動きを見抜けなければ、職務を真っ当していけないのかもしれない。

 どこか突き放したような安珠の言葉に、朱峯は返す言葉がなかった。それに意を得て、安珠は得意そうに言ってみせる。

「あんなチビに何が出来ると思う。何も出来はしないだろう。お前だって、一人で生きてけるのか?」

「一人ならば・・・」

「あのチビ抱えては?」

「・・・やって・・・いける」

「言い切れよ」

 安珠はそう言って、『チビ』呼ばわりした七瀬を睨みつける。

 訳の判らない七瀬は、朱峯にしがみついてオドオドするばかりだ。その仕草さえ、安珠には気に入らない。彼は、ますます苛立った様子を見せる。

「守ると言った以上、自分の気持ちなど構うな。第一、芥穂が何か気に触ることでも言ったか?」

「別に・・・」

「だったら、いいじゃないか」

 安珠は言い切り、芥穂から離れた。芥穂は、ようやく邪魔者が離れたとでも言うように、わざと大仰に肩をすくめて見せる。

 安珠は、友人の態度に、また不満顔だ。その不平をぶつけるように、朱峯にきつい口調で選択を迫った。

「どうせこの国は、向こう五年は他所者を構う余裕も持てない有様だ。お前らみたいな村からあぶれた連中は、せいぜいが浮浪者止まり。第一、お前には、軍に入れるほどの剣の腕がある。来い!」

 それだけ言って、安珠はそっぽを向いてしまう。

 友人の、取り繕いようもない言葉に芥穂は呆れるだけだった。すまなそう表情を、朱峯に見せる。

「悪いな。あんな言い方しか、できないんだ、安珠は」

「別に、気にしないが・・・だが、芥穂・・・」

「強制はしない。来てくれれば、嬉しいし、助かる。それだけだ」

「芥穂、俺は・・・」

「私も、大切な人を傷つけたことがある。傷を嘗め合うつもりはないけれど、気持ちの整理をつける上では、助けられると思うが?」

 朱峯の最大のわだかまりが、『稿朱』であると、芥穂は見抜いている。

 芥穂が、純粋に朱峯と言う剣士に引かれたことに嘘はない。だが、それ以上に、同じ悲劇の経験者として、同族として、わだかまりを抱いている相手を放って置けなかった。

 側にいれば、何か出来る。何かして貰える。打算づくとも取れるだろう。だが、やましい気持ちはない。

 朱峯は、芥穂の誘いに、かなりの迷いを見せた。

 彼の戸惑いを見て取った七瀬は、先に口にした言葉を、また繰り返した。

「七瀬、朱峯と一緒ならいいよ。どこでもいいよ」

 彼女は、朱峯の腕に額を押し当てる。ためらいも、迷いもない口調で、言葉を紡いでいく。

「朱峯の好きでいいよ。七瀬はついて行くから」

「いいのか・・・?」

「だって、朱峯が側にいてくれれば、七瀬は、それで『大丈夫』だもん」

 そうニッコリと笑いながら、七瀬は言った。

 迷いもない、真直ぐな瞳。羨ましいほどに無邪気で、愚かだけどけれど純粋だ。

 『紅天の獣』のもっとも濃い血を受け継いだ少女。瞳は母親と同じ紫なのに、小さな体の中に真紅の炎を秘めている。それでいて、惨劇からはもっとも程遠いような存在だった。

 そんな少女に、朱峯は微かな笑みを浮かべる。

「そうだな・・・」

 朱峯は頷き、彼女に向かって優しく笑いかけてやった。

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