GUESS WHAT!? 7
暴走、ファンクラブ!!
2 レイカの遭遇した事件簿
さて、数日遡って、レイカの遭遇した奇妙な事件とやらを追ってみよう。
まず一回目。
ガコン、ガコン、ガコン、ガコン。
学校からの帰り道を急ぐレイカ。しかし、この『足音』はちょっとおかしい。
そう、これはレイカの足音なのである。
しかし、実際にそんな音を立てて歩いているのだから、しょうがない。
と、自宅近くの公園にさしかかって、レイカはふと立ち止まった。そして、公園内に侵
入する。
「ゴミ箱めっけ!」
レイカはそう言うと、自分の足に『填めて』いた『空きカン』を外し、ゴミ箱へと投げ
入れた。
そう、このレイカ、空きカンを見つけて、ゴミ箱に捨てようと思い立ったのはいいのだ
が、よりにもよって、その空きカンを、足でふんずけ、靴にはめこんで運んできたのだ。
普通に運べ、レイカ。
「ん?」
と、レイカ、すぐ隣に人が居るのに気が付いて首を傾げる。
本当は、この『怪しい人物』、不意に現われたのだが、レイカ、とろいので自分が気が
付かなかったものだとばっかり思っている。
しかし、レイカがとろいのは、それだけではない。
この、見るからに『怪しい人物』、なんと、忍者スタイルなのだ。
時代劇に出て来る忍者よろしく、黒い装束を着こみ、背中には刀まで差している。悔し
いことに、顔も黒い布で覆ってしまっているので、どんな顔つきをしているかまでは、判
らない。で、そんな格好で、片膝をつき、レイカを見上げている。
「三浦レイカ殿とお見受けするが!?」
「そうですけど?」
「しからば、これをお受け取りいただきたい!」
そう言って、サッと、懐から何かを差し出す忍者!
『コ○ラのマーチ』お徳用だった。
「わー、コ○ラのマーチだぁ」
レイカ、それを何の疑いもなく、喜んで受け取ってしまう。
「ありがとぉ(^^)」
ニッコリ笑って、お礼まで言っているレイカ。
それに、忍者は、覆面に隠れた顔で、思わず笑いかけてしまう。あんまり、レイカが無
邪気に喜んでしまったせいだろう。
で、フッと、体を浮かせる忍者。
次ぎの瞬間には、その姿は消えていた。
「あれ?」
不意に視界から消えてしまった忍者に、首をひねるレイカ。が、それまでだった。
のんきに、『コ○ラのマーチ』を片手に、テーマソングの鼻歌を歌いながら、家へと帰
っていくのだった。
宇瀬学園、生徒会室での会話。
「馬鹿ものぉ、俺は『お菓子でつって、三浦レイカを誘拐してこい』と言ったのだぞ!!
それを、お菓子だけあげてきてしまうとは、何事だぁ!!」
「も、申し訳ありません、若!」
生徒会長・沢田タカユキが、三年A組の学級委員長に怒鳴り捲っていた。
「えぇい、この役立たずめが!」
そう言って、わーんと泣き出す沢田。どうやら、あの『コ○ラのマーチ』は沢田のおや
つで、泣く泣く、今回の作戦のために提供したらしかった。(しかし、マコトでもない限
り、引っかからないと思うが・・・)
で、他の生徒会役員に引きずられて、退場していくA組の学級委員長。
それと入れ替わるように、一人の美少年が現われた。生徒会室に入る直前に、学級委員
長によって、足を引っかけられ見事に転んだ彼こそが、宇瀬の生徒会長秘書である。
倒れた拍子に、鼻を打ったのか、出て来る鼻血を押さえるためハンカチを差がしまくる
秘書。だが、生憎、彼のハンカチは、教室に置いてきたカバンの中だったらしく、なかな
か見つからない。
しょうがないので、鼻血を無視する秘書。でも、鼻血の方は待ってはくれない。バタバ
タと、どんどんこぼれている(__;
「若・・・いえ、会長、次ぎはこのわたくしに、お任せを!」
「おぉ、やってくれるか、秘書!」
「はい。わたくしが、必ずや、憎き三浦レイカを誘拐して見せましょう!!」
熱血している秘書。だが、鼻血はあいも変わらず、こぼれっぱなし。
誰か、ティッシュを貸してやれ。
さて、次ぎの日の登校途中。例のごとく、慎太郎と忍をバス停で待っているレイカ。
そこに、やっぱり黒装束・忍者姿の会長秘書が現われた。
いきなり、空から降ってきたかと思うと、地面に激突。めりこんでやがる(なんとも、
おいしいキャラである)どうやら、電柱に上って、そこから降りたらしい。
「ぐう・・・」
地面に頭からめり込んで、一人で抜けられない秘書。
が、そこはレイカである。回りのサラリーマンなんかは存在さえ無視している彼を、ひ
っぱって助けてやる。
「大丈夫ですかぁ??」
「だ、大丈夫、ありがとぉ!!」
秘書、無常な資本主義の社会で、自分を助けてくれたレイカに感動し、彼女の手を握っ
て、叫んでいる。
が、そこに飛んできた、謎の鞄!
『ゴス!!』
鞄は見事に秘書の頭にぶちあたり、その場に落ちた。
秘書は当然、沈没。
それを見たレイカの一言。
「あ、リクちゃんの鞄だぁ」
ちょうどそのころ、加奈子がリクに、
「あんた、鞄投げちゃって、どうするのよぉ・・・」
と、空の彼方を見ながらつぶやいたと言うが、これは余談である
ともあれ、秘書、リクの謎の鞄攻撃に、ぶっ倒れている。
「大丈夫??」
「ちょっと、ダメかも・・・」
頭を押さえて、起き上がれない秘書。やっぱり、山南やケイとは違って、体が頑丈には
出来ていないらしい。
が、それでも復活するあたり、ギャグキャラである。
この時になって、秘書、やっと自分の目的を思い出した。一回目の墜落で記憶喪失にな
っていたところを、今の鞄激突で思い出したのだ。
で、そこは秘書である。そつなく任務を遂行する!
「君、三浦レイカさんですね?」
馬鹿丁寧な口調で、そう尋ねてくる。それに、コクコクと頷くレイカ。
「そうだよ??」
「大変なんですよ!」
「ほへ?」
突然悲壮に叫んだ秘書に、レイカ、小さく首を傾げる。
秘書、そのまま勢いに任せて、用意してあった台詞を、棒読みする!(カンペ所持!)
「君のお母さんが急に倒れられてね。すぐに、僕といっしょに、病院まで・・・って、え??」
だが、残念ながら、秘書、昨晩必死になって考えた台詞を、全て言うことは出来なかっ
た。
何故って、レイカが泣き出してしまったからである。
「うえぇん、お母さぁん(;;)」
そうである。三浦夫人は、ずいぶん前に、若くして(って言っても、30台前半ではあ
るが)、亡くなっているのだ。当然レイカの前では、母上のことはタブーである。泣いち
ゃうから。
そのタブーを犯してしまった、秘書。
悪いことに、調度、慎太郎と忍が、おりよく走ってきたりする。
「レイカ!」
まだ、200メートル以上、距離が離れているのに、レイカが泣いて居るのを目敏く見
つけた忍。すさまじい形相で、秘書の方へと突っ走ってくる。(慎太郎は白けている)
秘書も馬鹿ではないから、忍の危険性に気が付き、逃げようとする。
だが、いかせん、忍の投げた鞄が、彼の頭を直撃してしまう!
『ガス!』
鉄板を仕込んである忍の鞄である。その破壊力は、リクの鞄の5倍!
「うえぇん、シン君!!」
レイカは、自分を構いに来てくれた兄に抱きついて、わんわん泣き出す。この時ばかり
は、さすがの慎太郎も、妹を慰めてやっている。
忍は、倒れた秘書忍者を折檻している。(ただ単に蹴り殺そうとしているだけかもしれ
ない)
そんな3人+秘書の横を、バスが無常に通りすぎていった。
余談だが、レイカ達(リク達も含む)が見事に遅刻してしまったことを追記しておこう。
「ぶぅわぁかぁもぉのぉぉぉぉぉ!!!!!」
その日の朝礼の後、生徒会室に再び沢田の絶叫が響いた。
「誘拐出来なかったばかりか、破れ、逃げ帰ってくるとは何事だぁ!!!」
忍にボロボロにされた秘書に、ギャンギャンと怒鳴っている沢田。(しかし、秘書も危
うく東京湾に沈められるところだったのである。もうちょっと、労ってやっても良いので
はないだろうか)
秘書は、包帯グルグルの松葉づえである。やっぱり、こいつはギャグキャラだ。
そんな、哀れな秘書を後ろから蹴り倒して現われたのが、第3の忍者。今度は、絶世と
は行かないまでの、なかなかの美少女だ。
彼女こそは、投票ギッチョンで当選した、この生徒会の会計だ!
彼女は、悠然と破れた秘書の上に立ち、どこから取り出した扇子で口元をかくし、『オ
ホホホ』と笑ってみせる。が、やっぱり、この笑いをさせるなら、加奈子の方が様になっ
ている。事実、朝礼の後に山南をイヂメている加奈子の女王様笑いが、ここ、生徒会室ま
で響き、会計の笑い声を、見事に消し去ってしまっている。
「う・・・相変わらず、柏木、すごいな・・・」
加奈子の高ビーな笑い声と、山南の悲鳴に脂汗ダラダラの沢田。諸事情により、この沢
田、一時期加奈子達と親しくしていたのだ。
一方、会計、笑い声で負けてなるものかと、一層、声を高くする。が、質、音量ともに、
加奈子のほうがまるで勝っている。
どこから現われたのか判らない黒子が、秘書を退場させる中、沢田は会計をどついて黙
らせ、話しを進め始めた。
「で、会計、何か策があるのだろうな?」
「も・・・もちろんでございますぅ」
会計、どつかれた拍子にめり込んだ黒板の中から、返事をする。結構、健気なやつであ
る。
「チョイ役ばっかりとはいえ、わたくしも一応、演劇部所属でございます。この演技力で・・・!」
「木か岩の役しかやらせてもらえないくせに、何を言う」
柏木、素早くつっこんでいる。
会計、帰す言葉もない。(しかも、いまだ黒板に頭をつっこんでいる)
非常な柏木、会計を無視して、パムパムと、二回手を叩いた。
「おぅい、書記、お前が行け!」
柏木がそう行った途端、どこに居たものか、生徒会に置いてある机の下から、別の女子
が現われた。(多分、ずっと机の下で、出番を待っていたのだろうが)会計なみの美人だ
が、こっちの書記は、会計の2倍はグラマーである。よって、書記の勝ち(何がだ)(^^;
「はは、書記、ここにおります!」
書記、何を勘違いしているのか、時代劇よろしく、片膝ついて、沢田に頭を垂れたりし
てみせる。
それにイチャモンをつけたのは、やっと黒板から出られた会計。
「ちょっと、今度は私の番・・・ぐぇ!」
書記、うるさい会計を再び黒板にめり込ませる。で、平然と、柏木の命令に伏したりし
ている。結構、恐いぞ、この書記(^^;
「若、わたくしに、お任せ下さいませ。この書記が、あなた様とリク様の幸せのため、必
ずや、レイカちゃんを誘拐してまいります!」
「うむ、期待しておるぞ!・・・って、何故にレイカ『ちゃん』なのだ?」
「決まっているじゃ、ありませんか。いやん(〃^^〃)」
そう言って頬を赤く染める書記。
これに、沢田と会計が凍り付く。
辺りに、冷たい風が吹く中、第3番目の忍者がレイカを狙う!(__;
さて一時限目が終わった直後、珍しく、レイカは一人で廊下に立っていた。次ぎの授業
で使う教材を、加奈子とリクが取りに行っているので、廊下で待っているのだ。ちなみに、
山南だが、加奈子が折檻をやりすぎたので、保険室で眠っている。
そこに現われたのが、書記。しかも彼女、学校内だと言うのに、やっぱり忍者姿なので
ある。ただし、今回は書記が女性なためか、グラマーな『くの一』姿ではあるが。
で、やっぱり突然現われた忍者に驚いていないのがレイカ。回りの生徒は、皆、すでに
逃げてしまっている。
「あぁ、レイカちゃん(はぁと)」
書記、危うく目的を忘れかけ、そんな事を口走る(ネコ吐血)
が、幸いと言うか、なんと言うか、レイカ、鈍いので気が付いていない。
「どなたですかぁ?」
「あぁ、わたくしのこと、判っていないのね!」
そう言って、ヨヨヨ・・・と、廊下に倒れ伏す書記。
レイカもレイカで、そんな書記を本気で心配している。
「あぁ、泣いてるよぅ(;;)」
レイカ、山南を心配してやるように、書記に気をかけてやっている。
これには、さすがの書記もクラクラである。密かに『佐伯リク秘密ファンクラブ』と掛
け持ちで入会していた『ラブラブお姉様の会』の規約を忘れ、思わず抱きついてしまう。
「あぁ、し・あ・わ・せ(はぁと)」
「ふにゃ?」
幸せそ〜な表情の書記。
今だに気が付かないレイカ。いい加減、気が付けよぅ!!
ともかく、こんな状況だが、長く続くはずがなかった。
そうである、『嫉妬魔神』とネコに名付けられてしまったリクの登場である。
「うるさい、黙れネコ!!」
ゴガス!
リクの投げた地図が、次元を超越して、ネコに直撃!
毎回思うが、何故に佐伯兄弟は、次元を超越するのだろうか(__;
ともあれ、リクの登場である。メチャクチャ怒っている。そりゃ、もう、加奈子が恐れ
をなして、1メートルも離れてしまうくらいに。
「リ、リ、リクちゃん、落ち着きなさいよ!」
「これが落ち着いていられるか!こら、そこの生徒会書記、レイカから離れろ!!」
書記、もう正体バレてやんの。
しかし、そこは書記である。彼女がパチンと指を鳴らすと、どこから来たものか、数人
の、やたら華奢な体格の連中が、天井から降ってきた。(黒いタイツを履いた戦闘員達と
も言う。または、雑魚)しかも、秘書のように、着地にも失敗していない。しかし、この
戦闘員達、覆面していないので、顔は判らないが、同級生のリク達には、正体バレバレで
ある。
「ほほほほ、我が生徒会役員達よ。さ、丁重にお連れしなさい!」
さらに自分の正体をバラす書記。
が、彼女の考えは甘かった。
いくら生徒会の役員であろうとも、所詮は雑魚。今のリクを止められるはずがなかった
のである。
「し〜らないっと」
自分自身、おこぼれにあずかるつもりで、乗馬鞭を何時のまにか用意している加奈子。
白けた表情で、始まった乱闘を見守っていた。
しかし、やっぱり加奈子も『保護者』である。乱闘が始まると同時に、レイカを保護し
てしまっている。
「あれ、加奈ちゃん?」
「レイカ、平気だった?」
「うん。でも、あれ、隣のクラスの、大島さんだよね?」
そう言って、書記を指すレイカ。
ちなみに、大島とは、書記の本名である。レイカにもバレていたらしい。
「そうよ。どうしたの?」
「あのねぇ、レイカねぇ、大島さんから、一年生のときラブレターもらったことあるのぉ」
「は・・・そう(^^;」
呆れるしかない加奈子。
乱闘のほうは、今だ続いているが、やっぱりリクの方が有利である。
後日、この乱闘を見かけた3年が、軽いノイローゼにかかったようである。やっぱり、
リクの様な一見か弱い美形が乱闘するのは、世のため人のためにならない。
密かに、これからはリクに乱闘だけはさせまいと誓う加奈子であった。
再び生徒会室。
失敗したばかりか、リクと乱闘騒ぎを起こしてしまった書記は、頭にバケツをかぶせら
れ、廊下に立たされていた。胸には、『罰ゲーム実施中。展示物には触れないでください。
エサも与えないでください。かみつきます』と、会計のミミズの、のたくったような字で
書かれてあった。
「ふ・・・残るは会計、お前と副会長くらいだな」
そう言って、遠い目をしている沢田。
だが、見ているのは、生徒会室に何故か張ってある、リクの白雪姫のパネル(先月演劇
部で演じられた劇で撮影された写真より作成)だった。
沢田の斜め横には、会計が直立不動で立っている。そして、その横には、身長2メート
ルはありそうな大男がのそ〜っと立っていた。
この大男が、沢田の右腕であり、もっとも信頼する部下である副会長だった。
「会計!」
もう10分は、リクのパネルを見ていると思われていた沢田が突然叫んだので、会計も
副会長もビクリと震えている。二人とも、案外小心者かもしれない。
「次ぎはお前の番だ、いけ!」
「は!」
「失敗は許されないぞ!」
「心得ております!」
いよいよ第4番目の刺客・・・じゃない、忍者がレイカに迫る!
ま、この会計では、高がしれているが。
さて、その日の放課後、部活がなかったレイカは、早々に家に帰っていた。いつもなら、
加奈子やらリクやらが部活を終えるのを待って、一緒に帰る・・・と言うか、送ってもら
うのが常だ。だが、今日は久々に、姉の祥子やら父親やらが、そろって家に早く帰ってく
るので、レイカ自身も、早々に帰宅したと言う訳だ。
で、レイカ、さっそく祥子さんのご依頼で、お使いに出された。祥子さんの、『レイカ
でも、やっぱり、少しは厳しくしなくっちゃね』と言う方針のもとである。ちなみに、慎
太郎であるが、2キロ先の酒屋に、徒歩で一升瓶で5本の酒を買いにいかされている。そ
れも、徒歩で。
さて、レイカである。ポテポテと、近くの商店街へと、牛肉バラ200グラムと、葱を
買いにきていた。
レイカ、へっぽこだと思われがちだが(いや、実際にかなりの、へっぽこなのだが)、
買い物くらいならば、完璧にこなせるのである。彼女が完璧にこなせないで、それどころ
か、完璧に違う方向にいってしまうのは、料理だけである。本当は、レイカ、学年2位の
才女なのだ。誰も信じないだろうけど。
「ふん、ふん・・・」
今だに『コ○ラのマーチ』のテーマソングを歌いながら、帰路につくレイカ。
しかし、それは、彼女が駅前に続く通りに来たときに起こった。
見るからに怪しい、忍者の格好をした少女が、突然、レイカの目の前で、腹痛を訴え、
しゃがみこんだのだ。もちろん、こんな物、皆が皆、無視、あるいは、見えないものとし
て、誰も心配したりしない。この資本主義、せちがらい世の中なのである。
が、ここに、そんな世の常識とは無縁の少女が居た。レイカである。
怪しさ大爆発の、忍者少女、いや、下手な演技を平然と、恥ずかしげもなくやっている
会計を、本気で心配していた。
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
まるで、この世の終わりの様な悲鳴を上げて、会計に駆け寄るレイカ。
ここまでは、演技うんぬんはともかく、会計の思惑通りだった。
そう、『彼』が来るまでは。
「だ、大丈夫・・・家に、この持病を押さえる薬がありますから・・・」
そう言って、顔をしかめる会計。だが、台詞は秘書以上の棒読みで、しかも、表情も、
まるで苦しそうでない(梅干しを食べて、しかめ面をしているようには見えるが)
が、そこはレイカである。コロッと引っかかっている。
「ど、どうすればいいんですか?」
「いっしょに、家まで連れていってくれる?そうすれば・・・」
会計の言葉は、そこで途切れた。
後ろから、何者かが、会計を突然どついたのである。
これには、レイカもビックリ、キョトンとしている。
「あれぇ?」
突然倒れた会計に、目を丸くするレイカ。それから、会計をものの見事にどついた人物
を見上げた。
「・・・リクちゃん?」
そうつぶやいて、それから、プルプルと首を振る。
そう、そこに立っていたのは、我らが忘れられし主人公ケイであった(本当に、久々の
登場。主人公のくせに、いやに登場回数が少ない)
しかし、レイカ、このケイを見て、リクと間違えるとは、何事か。本当に、貴重な子で
ある。
さて、ケイ、まずいことに、今日は一際機嫌が悪いようだった。
どついた会計に、さらに絡んでいる(^^;
「おい、何を天下の行動でイチャついてやがる?」
「ひ、ひぃ(^^;」
どうやら、会計、ケイの存在を知っているようである。完全に怯えている。(その前に、
今のケイも、目が座っていて、かなり恐いのだが・・・)
「お助けください、お助けください。どうか、命ばかりはぁ!!」
「こんな太陽が高いときから、女口説いて、何を言うかぁ!!!」
そう言って、何かよく判らん理由で、会計をイヂメ始めるケイ。
どうやら、今のいままで、泉に引っぱり回されていたらしい。さもなければ、ここまで、
ナンパに敏感になるはずがない。もっとも、会計、別にレイカを口説いていた訳ではない
のだが。
「ほちょぅ・・・」
レイカ、冷たい物で、もの珍しげに、ケイが会計をイヂメる様を眺めていたりした。
止めてやりなさいってば(^^;
さて、携帯で、会計さえも失敗したことを知った沢田。自宅の自室で、ヒステリーを起
こしていた。
「きー!!!おのれ、おのれ、おのれぇ!!!三浦レイカめぇ!!」
レイカニ向かって怒っている沢田。
だが、沢田の部下は、ほとんど自滅したようなもので、レイカは何もやっていない。
しかぁし、当の沢田はそうは思っていないので、怒りまくっていた。
それを、何故かそこにいた副会長が、やたら低い声で宥める。
「会長・・・いえ、若。わたくしにお任せ下さいませ」
「おぉ、副会長、お前がまだ残っていたのか!!」
忘れるなよ、自分の右腕の存在を(^^;
沢田、信頼する副会長の言葉に、やっとヒステリーをやめる。しかし、部屋はすでにヒ
ステリーのせいで、グチャグチャだったりするのだ。恐るべし、沢田!!
「で、副会長、どうするつもりだ?」
「簡単です。実力行使あるのみ!!」
そう言って、馬鹿笑いする副会長。たぶん、脳味噌も筋肉で出来ているのだろう、こい
つは。
しかし、沢田の脳味噌も、変わった物で出来ているようだった。アッサリと、副会長に
同意してしまう。
「おぉ、なるほど。三浦レイカが一人になったところを、無理やり連れ去るのだな!」
「そうです。それがもっともシンプルで、確実な方法です!」
「やはりな(ニヤリ)。よし、いけ、我が下僕、副会長よ!!」
そう言って、何時の間に来ていたのか、羽織っていたマントをはね上げ、バッと、あら
ぬ方向を指差す沢田。TVの見すぎである。
それに、お前ら、それって、唯の幼児誘拐じゃないのか・・・って、レイカは幼児じゃ
ないから、かどわかしか。
ともあれ、これが唯一成功した作戦だと言うから、世の中判らないものである(__;
@おまけ。
ネコ『・・・なんてこったい(__;』
久々の人間バージョンで登場のネコ。
頭を抱えている。
ケイ『どうした?』
ネコ『この回、まぁるで忍者じゃないかぁ!!!(^^;』
ケイ『お前だろうが、これ書いたのは』
ネコ『ふふん・・・そうだよ( ̄ー ̄)ニヤリ』
いつもと、ま〜るで調子の違うネコ。
それに、当然ケイ、(殴ろうかと思ったが)警戒している。
ケイ『さ、作者??(ーー;』
ネコ『ふ・・・ふふふふふ』
ネコ、なんか笑っている。
恐い(^^;
ケイ『頭にウジでもわいたのか?』
ネコ『・・・そこまで言うか、普通(__;』
ケイ『じゃなきゃ、いったいなんだってんだ(ーー)ジトォ』
ネコ『そんなもの、決まってるでしょうがぁ!!』
ケイ『せ・・・』
ドバキィ!!!
ケイ、禁句を口走りそうになったので、見事に殴られてしまった。
今回出番がなかったリクに(^^;
リク『ぶわかもの!』
ネコ『おや、リクちゃん(^^;』
リク『”今回”は、”久しぶり”に出番がなかったから、暇で遊びにきたんだ(^^)ニ
コニコ』
ネコ『うぅ、無言のプレッシャー・・・(^^;;』
ケイが伸びているのを放っておいて、リクとネコ、後書きを進行させてしまう(^^;
リク『ときに、ネコ・・・』
ネコ『ふわぁい(^^;』
リク『・・・レイカがさらわれたようだけど、無事なんだろうな(ーー)ギロリ』
ネコ『(どビクゥ!!!)・・・も、もちろんですよぉ。もちろん、ですともぉ!!』
ネコ、慌てて繕っているが、顔色が悪い。
はてさて、どうなることやら・・・次回に続く。
ケイ『・・・ちょっと待て、”お約束”はどうしたぁ!!』
ネコの機嫌が悪いんだ、あきらめろ。
ケイ『機嫌?』
食べようと思っていた桜餅を母親に横取りされたらしい。
ケイ『・・・うがぁ!!!』
見事に沈没するケイ。
ネコの『甘い物』に対する食欲には、さすがのケイも勝てな勝ったらしい。