GUESS WHAT!?

7a「暴走、ファンクラブ!!」

作・三月さま

 


GUESS WHAT!? 7

暴走、ファンクラブ!!

 

 

 1 レイカ、誘拐される

 

 草木も眠る丑三つ時。

 県立宇瀬学園の校庭では、何やら怪しげな宴が繰り広げられていた。いや、本当に怪し

い。

『ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ・・・』

 何やら、原始時代を彷彿とさせるような太鼓のリズム。

 それに合わせて、校庭中央のキャンプファイヤーを円で囲むようにして、人が踊ってい

た。

 連中が物と言うのが黒いシーツをすっぽりと被っているような服装。目の部分だけに穴

を開けているもの達は、窒息してそこら辺りに転がっているところをみると、ビニール製

なのかもしれない。そんな、幽霊見たいな格好で、腰は帯で止めた怪しさ爆発の連中。チ

ラリと見える足元には、カラフルな足袋(赤やら、紫やら、花がらやら、キティーちゃん

柄やら)を履いている。

 鼻にもちゃんと穴を開けていたり、用意よく酸素ボンベを背中に背負って居たもの達は、

元気良く、キャンプファイヤーの回りをグルリと囲んで、盆踊りを踊っていた。怪しげな

太鼓のリズムも、今や、ドラ○もん音頭に変わっていたりする。

 その、怪しい様を悠然と眺めている人物がいた。

 校庭の朝礼台に、腕を組み、左右に人を控えさせている、王子様タイプの美形。

 何を勘違いしているのか、髪を金髪に染め、長く伸ばし、皮の紐でしばっている。制服

も、パッと目には宇瀬の指定制服なのだが、だいぶ改造してあったりする。目も、いまは

暗くてよく見えないが、緑色だ。カラーコンタクトを入れているせいで。

 彼こそは、この宇瀬で、いや、この県で最大の勢力を誇る秘密組織、『佐伯リクファン

クラブ』の会長、沢田タカユキ。そして、背後で控えているのは彼の下僕1〜5号。

「ふ・・・今日も、佐伯への愛が燃えているようだな!」

 そう言って、さっと手を上げる沢田。

 それにともなって、下僕1号が、彼にマントを羽織らせる。ちなみに、そのマントの柄

だが、ミニリクちゃんの柄と『LOVE・LOVEリクちゃん!』の文字である。しかも、裏地

は金ピカ。

「皆のもの、聞け!」

 マントを翻し、拡声器で叫ぶ沢田。様になっていない。

 だが、ファンクラブ意識と言うものは恐ろしいもので、沢田の声にしたがって、メンバ

ー達は一斉に、盆踊りをやめ、彼の声へと耳を傾ける。

「我々は、今日の今日まで、佐伯リクのために活動しつづけてきた!」

 熱血している沢田の声。

 それに泣き出している馬鹿ども。

 誰か止めろ!

「だが、ここにきて、ファンクラブに入っていないにもかかわらず、我々の最愛の佐伯リ

クと付き合い始めた女がいる!!!」

 沢田の悲壮な声に、メンバー達全員が、大きく叫ぶ。中には、悲壮に泣き出した者もい

るし、怒りで洋服ビリビリ破き始めたものまで居る。月に吠えているものもいるし、野郎

同士で慰めあっているものもいる・・・って、気持ち悪いんですが(^^;

 さて、この叫び声の感じからするに、ほとんど男のようである(男9の女1というとこ

ろだろうか)。ともかく、リク、不幸。

 やっぱり、これは、非公開・非公認のファンクラブのようだ。(女子がメインの非公開

ファンクラブも、一応あったりする。宝塚ファンとかが多いが・・・)

「今回の決起集会の目的は、その女、三浦レイカを、いかようにして排除するかを取り決

めるものである!!」

 また吠える男ども。気持ち悪いことこの上ない。

「我々こそが、彼に『もっとも深い愛』を注ぐ者だと、なんとしても、証明しなければな

らないのだぁ!」

 なんか、間違っている気がする。激しく間違っている気がする。

 が、連中にはそれが正しいらしい。狂信も、こんなものなのであろう。

 ともかく、ここに、レイカ排除作戦が錬られていくのであった。

 余談であるが、沢田、無断で校庭を夜中に使用し、なおかつ、キャンプファイヤーまで

炊いてしまったので、翌日、教師に呼び出しをくらったそうである。しかし、この教師、

いったいどうやって、この騒ぎを聞きつけたものか。

 ともあれ、表の顔はこの宇瀬のやり手の生徒会長、裏の顔は『佐伯リク秘密ファンクラ

ブ』の会長である、沢田タカユキ。いったい、どうやって『あの』レイカをあの『嫉妬魔

神』のリクから引き離すつもりだろうか。

 絶対、無理だと思う・・・

 

 宇瀬学園の放課後。

 リク達の班が、せかせかと、お掃除にいそしんでいた。

 ここでも、やっぱり、一緒な班になっている4人。しかし、ここで避けられているのは、

山南と加奈子であって、山南とレイカではない。山南は、例のごとく『佐伯、佐伯ぃ!!』

と煩いので、どこの班からも拒絶されていた。それはいい。

 問題は加奈子である。要領のいい彼女であるから、どこの班からでもひっぱりだこのよ

うに見える。が、彼女の場合は、掃除をサボった者をホウキで叩いて、仕事をさせるよう

な性格なのだが、いかせん、すぐにそれが、趣味に移行してしまうのだ。そう、一回叩く

だけでは気が済まずに、しつこく叩きまくる。これに耐えられるのは、山南くらいなもの

である。

 よって、リクと山南が一緒の班にされ、そこに、加奈子が加わる。さらに、加奈子が他

の班からもひっぱられそうになるレイカを、無理やり班にいれる。こんな具合である。

「おっそうじ、おっそうじ♪」

 楽しそうに、ホウキで丁寧に床を掃いているのはレイカである。何でも楽しめる、幸せ

な性格だ。

 その近くで、シンデレラ宜しく床磨きをさせられているのは山南。加奈子の絶対命令で

ある。

「リクちゃぁん、そっち終わった?」

 ホウキをブンブン振り回し、向こうの方で、ゴミをまとめているリクに声をかける加奈

子。リクが頷いたのをみて、

「カッちゃん、机はこんで」

と、命令する。

「あ、レイカも運ぶ!」

「レイカはいいわよ。ぜーんぶ、男子にやらせればいいのよ」

 そう言って、『おほほほほ』と笑う加奈子。男子なんぞは、馬車ウマか何かとしか、思

っていないのだろう。ま、彼女の場合は、自分も机を運ぶが、レイカにはらやらせないと

いうパターンではあるが。

 ガタガタガタ。

 リク達が机を運び出したのを見て、レイカはそれでも、何かやらないと気がすまないの

か、すでにまとめてある黒いゴミ袋にかけよる。

「ねぇ、じゃぁレイカ、ゴミ捨ててくるね、加奈ちゃん」

「え、いいわよ。カッちゃんが行けばぁ」

「おい、加奈子、お前、オレをなんだと・・・」

 何か言いかける山南だが、加奈子の妖艶な笑みの下に隠された冷たい瞳に、すぐに押し

黙る。・・・と言うか、ほぼ条件反射的に、黙ってしまう。

「いいよ、レイカ、ゴミくらい運べるもん」

 そう言って、ゴミを持ち上げるレイカ。が、見事にヨロケている。

 それに慌てるリク。過保護である。

「あ、レイカ、俺が持っていくから!」

「いいよぅ、リクちゃん。レイカだって、出来るもん」

 そう言って、ぷぅっと膨れるレイカ。相変わらず可愛い。

 どうやら、過保護な状態を、チョピッとだが、気にしているらしい。反抗期みたいな感

じだ。

 加奈子もそれを感じたのだろう。ついに、オーケーを出す。

 ただし、山南に、ついて行けと命令しているが。

「じゃ、カッちゃん、ついていってあげて」

「・・・いいけど、オレ?」

 リクの激しい視線を感じながら、汗ダラダラの山南。

 同じく、リクのこの視線に気が付いているはずの加奈子だが、まぁるで気にしているよ

うすはない。それどころか、早く行けとばかりに、レイカと山南をおっぱらう。

「ほぉら、いった、いった!」

「じゃぁ、行ってきまぁす!」

 元気良く、ゴミを持って旅立っていくレイカ。山南も、重い方のゴミを持って、レイカ

のあとに続く。

 残ったのは、ニッコリ笑った加奈子と、何やら機嫌の悪いリクである。

「加奈子・・・、なんで、山南の方を行かせたんだ?」

 最後の机を元に戻し、リクはそこに座りながら、加奈子を軽く睨んだ。美人なので、そ

れもかなり迫力がある。演劇部では、お姫様役がメインなリクだが、この分なら、美形の

冷たい女性役もこなせるだろう。

「ん、なに、リクちゃん?」

「だから、どうして、俺じゃなくて、山南をレイカと一緒にいかせたんだよって」

「あぁ、だって、リクちゃん、過保護なんだもの」

 いけしゃーしゃーとそう言う加奈子。この台詞も、加奈子が言うと、まるで説得力がな

くなってしまう。

 リクも、それが判って居るだけに、頭を軽く押さえて悩んでいる。

「何だって、加奈子?」

「だから、リクちゃんが過保護」

「それは、加奈子の方だろう!!」

 そう言って、さらに悩むリク。

 過保護どうしで論議しているので、50歩100歩である。

「そうなのよねぇ。私だって、カッちゃんなんかに、レイカ、任せたくなかったわよ」

「なのに、なんで・・・」

「でも、私かリクちゃんじゃ、絶対、ゴミ全部持ってあげちゃうでしょ?今のレイカは、

『ちょっぴり』だけ、自立したいのよ。・・・多分」

 レイカの自立が無理な事をしっている加奈子なので、断言できない所が悲しい。が、そ

の一番の原因は加奈子だったりする。

「だからね、カッちゃんを行かせたのよ」

「加奈子・・・」

「私だって、悲しいし、辛いのよ、リクちゃん!」

 そう言って、涙目になる加奈子。

 恐ろしいのは、これがいつものような『演技』でなく、本当に泣いて居ると言うことだ

った。

 こうして、過保護2名、レイカ保護者の絆を深めたのだった。

 ・・・誰か、止めてやれ。

 

 さて、コンテナに向かう途中のレイカと山南である。ポテポテと、廊下を荷物をかつい

で歩いている。が、レイカはゴミを持っていない。何故か、山南が二つとも持ってやって

しまっている。加奈子の思惑、どこへやらである。

 と、レイカが何かを思い出したように、山南を見上げた。(山南のほうが、レイカより

ずっと大きい)

「ねぇ、山南ぃ、レイカね、一昨日あたりから、変な人にいっぱいあうんだけどぉ?」

「変?」

 そう言って、自分を指差してしまう山南。この場合は、リクや加奈子も含まれている。

どうやら、山南、自覚はあるようである。

 が、それにフルフルと首を振るレイカ。

「違うの。『もっと』、変な人」

「も、もっと??(^^;」

「うん。なんかね、黒い忍者」

「おい!」

 思わず、レイカの平然とした様子にのけ反ってしまう山南。

 鈍いとは思っていたが、ここまで鈍いとは思わなかったらしい。

「おぉい、レイカ、それはすでに、『変』の域、越えてるぞ??」

「それって??」

「だからぁ、『怪しい』ってこと」

「すごぉい、山南、かしこい!」

 そう言って、感心してしまう、レイカ。

 しかし、これに喜んでしまう山南も山南かもしれない。

「で、なんか変な目にはあわなかったのか?」

「ううん。4回くらいあったけど、一回目はお菓子くれたし・・・」

「そのお菓子、捨てただろうな??(^^;」

「うん。なんかね、お姉ちゃんと忍さんが、捨てなさいって言うから」

 名残惜しそうに言うレイカ。山南はホッと胸を撫で下ろしている。

「で、他には?」

「二回目に会ったときは、忍さんが、なんかわかんないけど、怒った」

「ほぅ・・・(__;;;」

 山南も、忍とは同級生である。彼女が逆上したときの恐ろしさは、嫌と言うほど判って

居る。と、言うか、一回、レイカを泣かせて、ぶちのめされたことがある。あのときは、

さすがの山南も、死ぬかと思ったそうだ。恐るべし、忍!

「三回目は?」

「うんとねぇ、忘れた」

 困ったように笑うレイカ。が、相手がレイカなので、山南も呆れるだけである。つっこ

むだけ、無駄だと判って居る。ここで、下手につっこんで泣かれれば、どこから来たのか

判らないリクや加奈子に、どつかれるのがオチである。

 おぉ、山南、学習能力があったのか!

 で、やっとコンテナまでやってきたレイカと山南。山南が、手早くポンポンと、ゴミを

コンテナに捨てていく。

「じゃぁ、四回目は、レイカ?」

「うんとねぇ、なんか、変な人が怒ってたよ」

「変?(^^;」

「うん。・・・なんか、リクちゃんに、ちょっと似てた・・・」

 そこで途切れてしまうレイカの言葉。

 その後、しばらくして、山南の悲鳴が響き渡ったのだが、あいにく、リク達の待つ教室

までは響かなかった。

 

 

 @ おまけ

 

ネコ『いやはや。GUESS WHAT!?の7回でございますぅ(^^)/』

ケイ『やかましい!』

 

     プチ!!

     出た途端に踏み潰されるネコ。

 

ネコ『な・・・なんで、いきなり踏むんですかぁ!?』

 

     ジタバタジタバタ

 

ケイ『やかましい!!!この、俺の出番がちっともないじゃないか!!』

ネコ『・・・ふっふっふ』

ケイ『な・・・なんだぁ!?』

ネコ『だーいじょうぶ!!』

 

     そう言ってネコ、なにやら紙をとり出す!!

     その表紙には、『第7回目プロット』と書かれている!!

 

ケイ『なんだそれ??』

ネコ『今回、始めてこしらえたプロットです』

ケイ『始めて?』

ネコ『そう!いままで作者はぶっつけ本番でこれを書いていたんですね!!』

 

     ゴス!!!

 

ネコ『い・・・いひゃい・・・(;;)』

沢田『それって、ただの恥じ晒しじゃ・・・』

 

     沢田登場!!

     しかも、しょっぱなからネコに『手裏剣』を投げている!?

 

沢田『ふ・・・俺はこれでも・・・』

 

     ゴチ!!

 

ケイ『えぇい、消化材料の脇役がめだつなぁ!!!』

ネコ『あらら。出番が無くて苛立っているケイに殴られてしまいましたね(^^;』

 

     ともあれ、ネコ、プロットをケイに差し出す

 

ネコ『ほらほらぁ、ここに出番あるでしょう??』

ケイ『・・・本当だ』

 

     なんか沈黙が恐い感じがするケイ

 

ネコ『あ・・・あのぉ??』

ケイ『・・・でも、やっぱり、定例通り締めなくちゃなぁ?(^^)』

ネコ『エ!?』

 

     ごすぅ!!!

 

ネコ『はうぅぅぅ』

 

     カクン

     ネコ、ケイに例のごとく三味線で殴られ沈没

     以下、次回 

 

GUESS〜7a