GUESS WHAT!? 6
ケダモノ参上!!
4 ケダモノはゲテモノにあらず
某U市内には、3つも進学校があったりする。一つは県立の宇瀬学園。公立の超のつくほどの進学校である。そして、それと並び称されるのが三院男子・女子高校の両校。
なぜ、県下有数のこの3校が同じ市内、しかも結構近くにあるかというと、三院の理事長のオッサンが、
『宇瀬に対抗する進学校とするなら、イヤガラセで隣に建てちまえ。ふっふっふ』
と言う、曲がった根性だったからである。(反政府主義者かもしれない)
ちなみに、その陰謀は土地の買収関係で実現はしなかった。
が、やっぱり近い学校。
理事長があんなだから、三院の宇瀬に対するライバル意識はすごい。(対する宇瀬は、現3年のトップ二人が全然そんなもの気にしない質であるにくらべ、三院のトップクラスの生徒よりやたら頭がいいので、全然気にしていない)ちなみに三院の理事長は、『制服指定をしなければ、やたらグラマーな服を着てくる生徒がいるかも。グフフ』と言う理由で、制服も指定していない。ようするに、私服でオッケーにしてしまったのである。
さて、三院の方だが、宇瀬の隣には建てられなかったが、三院男子と三院女子は隣どうしである。隣どころか、ベランダからお話しが出来てしまうほどである。
だから、カップルがともに三院ともなると、休み時間やら、昼休みやらは、楽しかったりする。(たまにクラスメートに突き落とされそうになったり、実際に落とされたりするのもいる)
が、ここ3−Aの教室に対するものは、他とはちょっと違ったりする。
慎太郎がいるせいである。
「慎太郎く〜ん!!」
休み時間になって、向かいの方から、なぁんか、甘い声。
それに、教室中の男子がムッとなる。(ちなみに、男子校だからクラスメートは全員男子である)
「よっと」
慎太郎は、そんなクラスメートの嫉妬の視線には慣れきった様子で、ベランダの方へ向かう。途中、今年になってクラスメートになったばかりの生徒に足を引っかけられそうになったが、しっかりそいつの足を踏み付けてやっている。
「お〜い、さつきちゃぁん!!」
斜め向かいのクラスから、クラスメートの殺意を背に受けて、慎太郎に手を振っている、結構可愛い女子生徒。それに、営業スマイルで手を振り返してやる。
そんな慎太郎の横に友人Aがうらやましげに、ため息を付いていたりする。
「お前、『ゆみ』とかいう女子大生の人、どうしたんだ?」
「あ、誰それ?」
慎太郎はまったく覚えがないとばかりに、友人Aを見返す。
「ほら、あの人、先週の日曜にお前が連れてた・・・」
「あぁ、あれ。なんか、『電話してね』って言うの無視ししてたら切れた」
「オイ」
「なんかなぁ。皆、電話しないと、怒って、『別れる!』って言ってくれるんだよなぁ」
「オイ」
「なんか、『どうせ新しい女の子でしょう!』とか言ってさ。なんで、あんな台詞が出てくるのかねぇ」
「オイ」
「アイツらってさ、俺様とそんなに長く付きあってないだろ。『新しい女の子』もクソもねぇはずなんだよ。なのにさ、知ったかぶりの口、きくんだぜ?」
「・・・もう、いいです」
今だ彼女の一人もいない友人Aはそう言って退場していく。
後にはケタケタと笑っている慎太郎が残る。
・・・絶対、こいつ意識して言ってる。
さて、その週の日曜日である。
我らが主人公ケイは、フラフラと駅前にやってきていた。
とある人物に呼び出されたからである。
相手は言わずとしれた、西宮泉。
この呼び出しを無視すると、どうやってかは不明だが、他校だと言うのに、下駄箱やら机の中やらに爆竹をしかけられるので、ケイもしぶしぶと応じている。
が、駅前の待ち合わせ指定された噴水の前にきたところで、ケイ、凍り付いた。
なんか、泉がナンパされているのである。
「も、物好きな・・・」
それが、その現場を目撃したケイの第一声。
それをしっかり地獄耳で聞きつけた泉は、持っていた白いバッグをケイに向かって投げつけている。
『ゴガシ!!』
なんか、当たった鞄から、小型爆弾がこぼれている・・・
「泉ぃ!!」
当然どなるケイだが、泉がそんなもの気にするはずもない。ツンと横を向いてしまっている。
「フン、何よ」
「いきなりカバンを投げるなぁ!!」
「人の気に触ること言うからよ」
そう言って大威張りの泉。なんか楽しそうである。
回りに、少しヤジ馬が出来始めているが、ケイも泉も、そんなもの構わない質である。それに気が付いた時点で、八つ当たり気味に吹っ飛ばすだけである。(オイオイ)
さて、泉を今の今までナンパしていた少年。もちろん、慎太郎である(^^;
ケイがやってきたのを見て、意外そうな表情になった。
「あれ、これ、君がさっき見せてくれた彼氏の写真と違うじゃんか」
その発言に、ケイが思い切り白ける。
「オイ、泉・・・」
「何よ」
「お前は、あのクソ坊主の写真を持ち歩いてんのか」
「だって、アキラちゃん、カワイイでしょう?」
「ショタが・・・」
ボソッとケイが一言。
『ゴガス!!』
今度は泉の履いていたパンプスがケイの顔面に直撃した。
「いってぇ!!」
「ノロマ、それくらい避けなさいよ!!」
投げたのは自分なのに、ケイを責めている泉。ちょっと違うぞ。
「大体、アンタだってマコトちゃんの写真を持ち歩いているそうじゃないの、このシスコン!!」
「な、それをどこて聞いたんだ、お前!!」
泉に馬鹿にされるのが嫌で、それだけは隠してきたケイである。それが知れていたことに、どビックリしている。
が、泉の答えはあっさりしている。
「弟に聞いたのよ」
「弟?」
「そ、『良』って言うんだけど、知ってるでしょ?」
「・・・良?」
なんか、ケイ、首を傾げている。
なんか、考えている。
そうやって、しばらく考えこんだ後、やっと、『ポン』と拳でもう片方の手のひらを叩いた。
「あ、あのマコトのクソ彼氏だ!」
「そ」
「・・・って・・・え?」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
なんか、ケイ、沈黙している。
「なにぃぃぃぃ!!!!!」
ついで響いたケイの絶叫。
あらかじめ予想していたのか、耳を塞いでいた泉は全然平気だったが、他のヤジ馬連中は、何の準備もしていなかったので対外が、その声の大きさに頭をクラクラさせている。
「弟!?」
「あら、知らなかったの?」
「なんでだぁ!!」
「あは、そういえば良もちょっと前にやたら悩んでたわね。『なんでマコトちゃんのお兄さんが、あの先輩なんだよぅ(;;)』って。二人ともおバカよねぇ」
コロコロと笑い声を上げている泉。
その傍らでは、のけ者にされた慎太郎が困って居た。
「あのぉ・・・」
「はい?」
ニッコリ笑って答える泉。完璧に慎太郎を馬鹿にしている。
「君、アイツと用があるわけ?」
「そ、デートするの」
オイ、泉。
「・・・デートねぇ。俺とヤッたほうが楽しいと思うけどなぁ」
なんか物騒な事を言っている慎太郎。
ヤジ馬及びケイ、凍り付きである。(ネコも凍り付いた)
「嫌だわ」
泉、それも笑ってあしらっている。
「なんだかんだ言っても、やっぱり、ケイを爆竹で『しばいた方』がストレス発散にはいいですよ。だから、お断りしますね」
「ふぅん。やっぱり、俺のほうがいいと思うけどなぁ・・・って」
そう言った直後に慌てて頭を下げる慎太郎。ノイのおかげで反射神経はけっこういい。
その頭の上を、ケイの足がヒュッと通っていたりするから、恐いものである。
「あら」
町中で、いきなりケイが切れたのに泉が酷く意外そうである。
「やだわ、ケイ、アンタ焼き餅??」
「むかついただけだってば!!だから、しばく!」
「判ってる、判ってる」
そう言って頷く泉。う〜む。
「ナンパ者、底抜けに嫌いよね、ケイって」
なんか、うんうんと頷いている泉。自分が原因だと判って居ない。
中学3年の一年間、しょっちゅうケイを振り回した彼女の回りに、ナンパ野郎がよってこなかったことはないのだ。何と言っても、外見は超のつく美女である。そのナンパの数の多さには、同行させられていたケイもうんざりするほどだった。それが何時の間にか、ナンパ野郎に対する、後天的嫌悪の先入観となってしまったわけである。(なんじゃそりゃ)
もっとも、相手が慎太郎なら、いくらでも、しばいていいが・・・
慎太郎もバカではないから、ケイが化け物らしいのは、察しがついた。まともにやっても、殺されかけるのが落ちである。だから逃げ出す。
が、ケイも、逃がしてやるほど甘くはない。しっかり襟首掴んで引き戻している。
「どぉこぉにぃ、行くのかなぁ??」
「うげ」
「とりあえず、死ね(^^)」
なんか、イビリ倒す相手が見つかって、ケイ、やたら楽しそうである。
なんだ、かんだ言いながらも、泉についていくのは、こうやって合法的(嘘)にナンパ野郎をしばけるからかもしれない。
が、世の中そうそう旨くはいかないものである。
いざケイが、慎太郎をしばこうとしたとき、しっかり邪魔が入った。お約束である。
いきなり、そろそろ逃げ出そうとしていたヤジ馬の中から、そのヤジの一人が飛んできたのである。おそらく、何者かに投げ飛ばされたであろうそれを、ケイは無常にも避けてしまう。投げられたヤジ馬は、しっかり、噴水の中へと突っ込んで行った。(一説には、それは直感でリクがここにくるのではないかと、駅前をうろついていた山南だったということである。まぁ、実際に、リク、駅前で待ち合わせてのおデートだったのだが)(^^;
その間に、慎太郎、旨く逃れている。
「助かったぁ」
のんきにそんな事を言っている慎太郎。やっぱりレイカの兄貴かもしれない。
さて、ヤジ馬のほう。ケイのやたら険悪な表情にビビッて、大抵が走って逃げる。(中には、へたりこんで、動けなくなってしまっているのもいるが)
そんな中、一人だけが、全然平気な無表情で残っていた。和倉忍(わくら・しのぶ)である。
「なんだよ、お前」
よっぽど機嫌が悪いのか、ケイ、めちゃくちゃ恐い声である。
忍はそれでも平然としている。神経がないのかもしれない。
「悪いが・・・そんな馬鹿でも、怪我をすると心を痛める人がいるのでな。邪魔させてもらった」
なんか、どシリアスな台詞を口にする忍。しかし、それが忍のキャラクターなので、しょうがない。
しかし、それにはケイの方が拒絶反応を起こしていた。ますますブチ切れている。
「むかつく」
ボソッと一言。
が、これがやたら恐かったりする。
でも、この場に残った連中は、あんまり怖がっていない。泉なんか、さっき投げたパンプスを回収し、その後に拾った鞄をゴソゴソやっている。
泉の、ちょっとズレている行動は置いておいて、ケイと忍は、どシリアスな方向で対峙していた。
でも、やっぱりそれでは許されないのが、お約束。
またも唐突に
『ドン、パパパパパパン、パン、パンパパパパパン、バンババババババババン!!!!』
と、花火でも打ち上げたのかと言う様な騒音。
音は主にケイ中心でる。
音のもとはもちろん、改造爆竹である。
仕掛けたのはもちろん、泉である。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
忍に注意を向けすぎて、泉が自分の回りをウロチョロしていることにまるで気が付かなかったケイ。超マヌケだが、忍が無表情なだけに、その表情から泉が動き回っていることを察することが無理だった分、しかたない・・・のか?
ともあれ、あわれケイは、泉の爆竹によって、意識ヘロヘロ、ズタボロになっていた。もっとも、ケイだから、全然平気だろうが。(ダメージがまた減ったので、泉も今度から火薬の量を増やそうと考えているし)
「失礼しますね」
泉は、ケイの襟をムンズと掴むと、そのまま、彼を無造作に引きずって連れ去っていく。
後に残るのは無表情な忍と、爆竹にビビッた慎太郎。
「な、なんだったんだ、あれ(^^;」
それはこっちが聞きたい。
で、その場に二人残された慎太郎と忍。
手持ち無沙汰に、慎太郎は忍の方を向く。
「あんがとな、和倉。いくらなんでも、あんな化け物、俺様じゃぁ無理だ。俺様はあくまで人間レベルだからな」
「別にいいさ。お前が怪我をすると、祥子さんが心配し、レイカが泣く。それだから助けただけだ」
「・・・なるほどねぇ。あ〜ぁ、俺様としたことが、絶好の美少女を逃してしまった」
慎太郎はそう言って、惜しそうに、ケイを引きずって去っていく泉の後ろ姿を眺める。
「獲物(コラコラ)を逃がすなんて、何年ぶりだぁ?」
「柏木以来だから、丸々3年くらいじゃないか?」
「・・・うぅ、プライドがぁ」
そう言って、がっくりと崩れる慎太郎。そんなものにプライドをかけるな。
「くそぉ、これじゃぁ気にいらん、和倉!」
「なんだ?」
慎太郎が意味不明の熱血をしている割りには、忍、滅茶苦茶に冷めている。白けてはいないが、何か、別世界にいるような顔をしている。
「どうした、慎太郎?」
「お前、一応邪魔したんだから、代わりにデートしろ」
「断わる」
これまたアッサリ。
あわれ慎太郎、一日で2人にも振られるハメになった。自業自得だザマー見ろ。
「けっ。つれないやつ」
慎太郎、なんとなぁく、つまらなそうにそう言っている。
ちなみに、この後、爆竹の音を聞きつけてやってきた警察から、二人とも見事にバックレたことだけ追記しておく。
で、その夕方のことである。
「たっだいまぁ!」
今日のナンパが見事に失敗してしまったため、機嫌の悪くなった慎太郎。バックレ途中に忍とはぐれた後、近くのゲーセンでカップルを見事に破壊、彼氏に(当然)からまれ、それに八つ当たり。(これでも、一般人よりは強いのである。ケイはそういう『一般』の枠外)
で、家に帰ってきた。たまに、帰ってこないこともあるし、よくても夜中が多い、超不良者にしては、滅茶苦茶早い5時という時間である。
玄関の、並べてある靴を見れば、見慣れた靴が一足だけ。
「ふぅん、忍は帰ってきてるか」
靴から、家にいるのが忍だけと判断して、自分も中に入る。
で、そのまま、洗面台のある風呂場に直行。姉に、『帰ったら手を洗って、うがいをしなさい!』と、口うるさく言われているので、反射的に向かってしまうらしい。(夜中に帰っても、朝に帰ってもやっている。ちなみに、これをしないと、姉に張り倒されてしまう)
が、そのドアを開けようとしたところで、慎太郎、動きが止まってしまう。
『ザァアアアアアア』
明らかに、シャワーの音である。
「し・・・忍か?」
思わず、自分に尋ねてしまう慎太郎。なんか、顔が赤い。
(し、忍がシャワー浴びてるのか?ってことは・・・)
なんか、いけない想像をしている慎太郎。
『ゴク・・・』
オ、オ〜イ(^^;
ソロソロと、ドアのノブに手を伸ばす。
オイ(^^;
で、何を考えているのか、もの音を立てないように、ゆっくりと、扉を引いていく。
『ザァアアア・・・』
と、シャワーの水音が不意に止んだ。
慎太郎のほうは、相変わらず、ゆっくりとドアを開けている。もう、完璧に、下着泥・・・じゃぁない、覗き魔の心境である。
そんなこんなで、ドアをなんとか開け切る慎太郎。何を考えているのやら。
そして、それとほぼ同時に、バスルームの方のドアが開いた。
『カタン・・・』
湯煙が、サァッと、バスルームの方から流れてくる。
期待に満ちた慎太郎の目の前に、その期待通り、水滴をまとった、どこか疲れた忍が出て来た。
服の上からは余り判らない(あるいは、判らないような服装をわざとしているのかもしれない)が、体つきは結構柔らかい感じがする。全体的に細くて、普通よりは、魅力的にはやや劣るかもしれないが、それでも十分、女性らしい体つきである。
・・・そう、女性らしい。
「慎太郎?」
忍、目の前に慎太郎がいることに、なんとなぁく、冷めたような感じ。いや、怒っているのかも、しれないけれど。
で、慎太郎。もう、こいつに付いては何も言うまい。ただ、ワンちゃん状態だとだけ、言っておこう。
「ラッキー!!」
もう、かなり喜んでいる、慎太郎。この後、どうなるかなんて、もう、考えて居ないだろう。
それに引き替え、忍のほうは、冷め切っている。すっ裸だと言うのに、慎太郎の前を横切って、かけてあるバスタオルを手に取る。で、それを体に巻き付けた上で、改めて、慎太郎に向き直る。
「で、なんだ、慎太郎?」
「なにって・・・」
「覗きか?」
「・・・」
悲鳴も上げられないで、冷めた様子でそう言われると、もう、身も蓋もない感じ。しばらく二人、黙ったまま、シーンとなってしまう。(正確に言うと、慎太郎が何も言えないだけなのだが)
さて、忍があんまりにも冷めているので、慎太郎のほうも少し冷静になったらしい、なんか、汗をダラダラ流してる。
「あ、あのさ、和倉、これ、姉ちゃんに言う?」
「一応、ご報告する」
「・・・・」
もう、慎太郎、油を放出するガマ状態である。いや、蛇に睨まれた蛙か?
いや、ムングかもしれない。
半ば石化している。
が、それが、とある考えにぶち当たり解けたとき、慎太郎、大恐慌に陥っていた。
「そ、それだけは、やめてくれぇ!!」
慎太郎、突然叫ぶと、頭を抱えてドタバタと、右往左往しだす。いや、本当に突然に。
「こんな事が、姉ちゃんにバレたらブチ殺されるぅ!!!!!」
「自業自得」
「お前に夜這いをかけた(未遂)のがバレたときなんか、半殺しどころじゃなかったんだぞぉ!」
「それもお前が悪い」
夜這いって、アンタら・・・
「うぎゃぁぁぁ、いやだ、姉ちゃんの拷問だけは、いやだぁぁぁ!!!!」
うるさい、慎太郎。まだ、ドタバタ走り回っている。
「愚か者が」
それを、腕を組ながら眺めている忍。いやはや、女の子だったとは。いや、知ってはいましたが、やっぱり、改めてこうなると、ビックリ(^^;
ついでに言っておくと、この10分後に勤め先から帰ってきた姉によって、慎太郎が文字どおり『半殺し』の目にあったことを追記しておく。
罪状、『のぞき』
で、月曜である。
今朝は、慎太郎に入れ込んで居る女子でギュウギュウ詰めのバスに乗り、あんまり気が乗らないが、レイカをリクに任せる。そうやって、いつものように学校にやってきた忍。
取り巻きの女の子達が机を取り囲んでいる中、彼女達に無関心で、向かいのベランダでバカをやっている慎太郎を見ていたりした。
「和倉さん、どうしたんですかぁ?」
クラスメートの女子が、キャラキャラと声をかけてくる。
忍が答えないのは判って居ても、やっぱり声をかけちゃうらしい。健気と言うか、なんと言うか。
「いや、馬鹿がまたやっていると思ってな」
「あぁ、あのケダモノですかぁ。また、彼女変えたんですって」
別の女子が答える。
忍が答えてくれたので、話題は一気にケダモノ慎太郎の話しになってしまう。
「いやですよね、あのケダモノ!」
「女の敵ですよぅ」
「不潔だわ」
などなど、言いたいことを、他にも言い放題である。
忍、外見が美少年だから、女子にモテモテである。しかも、忍、それでマンザラでないらしい。(オイオイ)しかも、やっかいになっている家にいる、大馬鹿ケダモノと対比され、さらに人気が増している。
しかし、この美少年(美少女)、何故に、あんなのと同じ屋根の下に居なければならないのか!!
実は、両親が『海外赴任でアラビアいってきまぁす。後の事は、三浦さんにまかせてあるからね』と言って消えてしまったので、三浦家に居候しているのである。(ちなみに、両親からの連絡と言えば、『元気?』と書かれた年賀状が届くくらいである。何と言うアバウトな両親)
ふと、忍の存在に気が付いた慎太郎が、忍に向かって笑いかけてくる。
が、忍は無視シカト。(昨日の事を怒っている訳ではない。いつものことである)
本当に、慎太郎、報われない。ま、あんだけ、あっちゃこっちゃに手を出していれば、嫌われて当然である。
自業自得。
5 ふぁいなる対談
ネコ『あぁ、これで終わるぅ!!』
忍 『めでたいやつだな。『ふぁいなる』はネタばれだろう。骨が折れるぞ?』
ネコ『いいです、いい加減にしかお話ししないから(はーと)』
忍 『・・・』
ネコ『では、最初は忍ちゃんの事からですね。最後の最後に、”女性”だってことをバラしました。が、一応、伏線らしいものはあった』
シン『嘘付け』
ネコ『本当だよぉん。2箇所だけだけど。正確に言うと1箇所だけかも(^^;』
シン『そういうのを伏線と言うのか、お前は・・・』
ネコ『ウン(^^)』
シン『もう、いい・・・』
ネコ『では、皆さん、がんばって探しましょう。ヒントはセリフです』
ネコ『さて、今回の新しいキャラですが、実はネコの違う話しから引っぱってきたキャラなんですよねぇ、大体が。あ、レイカちゃんも、そう言えばそうだな・・・』
シン『こんなところには、来たくなかったけどな、俺様は。あっちのほうが、女をひっかけやすかったのに』
ネコ『だまれ』
忍 『ま、あっちだと、俺が慎太郎のもとキャラをぶち殺しているからな・・・』
ネコ『い、いきなり、なんて言う事を(^^;;第一殺してません、半殺しです!!』
シン『同じようなものだろうが・・・(自棄)』
ネコ『え〜、大分違うと思うよぅ』
忍 『そうだな』
ネコ『あとはねぇ、名前』
シン『???』
ネコ『慎太郎は新しく名前を考えたけど、忍さんのほうは、そのままにしようと思ったんですよ。漢字でも書けるから。でも、やっぱり変なので、直前に・・・って言うか、書いている途中で変えちゃったの(^^;;』
シン『そういう事するから、変な名前に・・・』
ゴス!!
慎太郎、不注意な発言のため、退場。
ネコ『バカだね』
ノイ『俺の名前は、祥子さんが考えたという裏設定なんだ。侮辱する奴は殺す』
ネコ『この性格だからなぁ(^^;』
ケイ『で、今回は俺、なんだったんだ?』
ネコ『主人公』
ケイ『かき回しただけのような気がする。第一、今回、あんまりオチがついてないぞ』
ネコ『・・・(遠くを見る目)』
ゴガス!!
問答無用で蹴り倒されたネコ。
ネコ『は、はうぅぅぅ(;;)』
ケイ『人を無視するな』
ネコ『自分だって、無視するクセにぃ。それに、アンタもある意味『ケダモノ』なんだもぉん。だから、この話しで目立ったの』
ケイ『ほ〜う』
ネコ『だって、イヂメッ子だし・・・って、なにそれ(^^;;;』
なんか、ケイ、手に三味線を持っている。
それに、かなりビビる猫。
ネコ『あ、あのぉ(^^;』
ケイ『いや、これでブン殴ろうかと思って』
ネコ『い、いつものパターンだぁ!!!(^^;;;;;』
バキ!!!
やっぱり張り倒されたネコ。
瀕死である。
ケイ『あーすっきりした』
なんか、溜まっていたらしいストレスを発散していったケイ。
ネコにしてみれば、堪ったものではない。
ネコ『しくしくしくしく(;;)』