GUESS WHAT!?〜番外編〜

2「三浦祥子の謎(笑)」

作・三月さま

 


 三浦祥子。

 年齢32歳。外見年齢24歳。はっきり言って、謎の人。

 大学卒業と同時に結婚、6ヵ月後には長男出産。次ぎの年には大学院に行って、そのま

ま勉強を続ける。そのまま、ズルズルと人妻と学生を続け、何時の間にやら博士と呼ばれ

る身になり、今は大学で講師なんぞをやっている。

 弟(三浦家にとっては長男)がいたにもかかわらず、自分が家を継ぐと言い張ったお方。

 旦那はその家の一人息子だったのだが、無理やり婿養子にしてしまい、旦那をその家族

から絶縁させる。それでも、まぁるで平気なお方。

 大学で学生が居眠りをしていると、平気でバケツ一杯の氷水をぶっかけてくれるお方。

 父親のライバルの教授のもとで、意気揚々と研究に励んでいるお方。

 つい最近、何やら怪しい物質を発明して、その教授の髪の毛を、全部白髪にしてしまっ

たお方。

 研究室をまるごと吹き飛ばしたこともあるお方。

 レイカよりも料理が下手なお方。

 それどころか、家事をやらせると、家を破壊しかねないお方。

 あの慎太郎がただ一人、本気で怖がっているお方。

 そう言う人である。

 

「し〜んたろう?」

 突然、背後からかかってきた、晴れやかな声。

 普通なら、聞きほれてしまうような奇麗な声なのだが、慎太郎にとっては、これは、恐

怖の雄叫びの以外の何物でもなかった。

「う・・・うえぇ(^^;;;;」

 はっきり言って、慎太郎、怯えている。

 夜も9時の、ほどよい時間。お風呂上がりに、居間でテレビなどを見ていた慎太郎だっ

たが、聞きたくなかった姉、祥子の声に、おそるおそる、後ろを振り返った。

「よ、よう、姉ちゃん・・・」

 どちらかというと、慎太郎よりはレイカと良く似た姉である。だが、レイカが『可愛い』

タイプなのにくらべ、このお方は『絶世の美女』タイプである。もう、女神様かと思うく

らいにお美しい。そんじょそこらの男なら、一発で悩殺ものだ。

 が、その好みの『絶世の美女』タイプなのに、慎太郎の姉の見る目は怯え切っている。

 祥子女史は、こちらもラフなパジャマ姿で、立ったまま、慎太郎を見下ろしていた。

(ちなみに、慎太郎の身長は177cmくらいで、祥子さんは175cmである。モデル

だなぁ・・・)

 祥子さんニコニコと笑ったまま、目の前で拳を作って見せた。

「アンタは、なんちゅー格好してんのかなぁ??」

 ゴス!

 祥子さんの鉄拳。

 思いっきり殴られた慎太郎のほうは、まともに床につっぷしている。頭には、でっかい

タンコブが・・・

 が、すぐに復活。

「いてぇな、なにすんだよ、姉ちゃん!!」

 慎太郎、ギャーギャーと叫びながら、慌てて起き上がる。

 が、祥子さんの目は冷たい。

「おほほほほほ、アンタが真冬だっちゅーのに、そんな格好しとるからでしょうが!」

 そう言って、ビシィ!と慎太郎を指差す祥子さん。

 指差された慎太郎のほうは、『うっ!』とつまっている。

 ちなみに、今の慎太郎の格好だが、トランクス一枚に、肩にタオルを羽織っているだけ

である。

「アンタねぇ、いつも言ってるでしょうが。この家には、3人も若い女性がいるんだから、

そんな格好しないの!!」

「あぁ、誰が女性だってぇ!?」

 慎太郎、吠えてみるが、祥子さんには効果なし。しかも、心無しか吠える声も小さい。

 こりゃぁ、完全にお姉さんに支配されてしまっているなぁ・・・

 が、慎太郎、無駄だと判って居ても、吠えてしまっている。(負けず嫌いなのだろう)

 それが墓穴を掘る行為だとも知らずにだ。

「この家のどーこーに!女性がいるってんだ!!」

「いるでしょうが!」

「レイカか!?アレはただのパーパーのクソガキだろう!」

「パーパーはアンタの方でしょうが!」

 ゴス!

 慎太郎、また殴られている。

 が、めげない。

「ああ言うのをパーパーと言わず、なんて言うんだよ!!」

「レイカがパーパーだったら、アンタなんか、パーパー大魔王でしょうが!!」

「ぐ!」

 またもや言葉に詰まる慎太郎。

 この間、遊び過ぎたせいで、見事にテストで赤点取ったのは、誰でもない慎太郎である。

(その直後、祥子さんに徹底して勉強させられた)

「じゃぁ・・・、百万歩譲って、レイカはいいとしてやるよ。で、他は誰だよ!!」

「忍に決まってるでしょう?」

「あの、乱暴者の男女のレ・・・」

 ゴス!

 またもや鉄拳。

「はーい、慎太郎、禁句ね」

「あぐぐぐぐ」

 頭を三度も殴られ、慎太郎、タンコブ三つもこしらえている。

 が、まだめげない。(学習能力がないのかもしれない)

「じゃぁ、三人目はだれだよ!」

「この私よ」

 キッパリ。

「・・・姉ちゃんは、女性じゃなくて、ババァ・・・」

 ドバキィ!!

 今回最大のパンチ。

 慎太郎、まともに吹っ飛んでいる。しかも、辺りどころが悪かったのか、気絶。

 おぅい(^^;;

「・・・なんの音だ?」

 調度、台所で、明日の朝食の下ごしらえをしていたのは、祥子さんの旦那様の徹雄さん。

いい年(32)して、クマさん柄のプリントのエプロンなんかをつけている(息子からの

誕生日プレゼントだそうな)しかし、この旦那のようなずーたいでかい(186cmくら

いあるらしい・・・)男が、エプロンつけて台所に立っているっていうのも、なかなか不

気味である(偏見)。しかも、違和感がないから、余計に恐い。

 が、しょうがない。この祥子さん、レイカ以上に、料理が『へたっぴ』なのだから。い

や、料理だけではない。レイカの場合は、料理の片付けならば完全に出来るのである。が、

祥子さんの場合はできない。まったく出来ない。やらせると、皿が全部割れるのである。

いや、それだけではない。この方は、家事全般が出来なかったりする。

 たとえば、洗濯をやらせてみせる。そうすると、決まって、洗濯機を使ったと言うのに、

何故か洗濯物がボロボロの雑巾のようになってしまうのだ。洗濯機から溢れた泡で部屋中

が埋るお約束は当り前。洗濯機が踊りだすのもいつものこと。爆発など朝飯前だ。

 ずっと以前に、洗濯物を干させてみたら、何故か、一ヵ月干しても洗濯物は乾かなかっ

た。夏の、天気が続くよい日頃だったのにである。

 布団を干させて見れば、何故か自爆霊・・・もとい、地縛霊がついてしまい、慎太郎が

1か月ほどうなされていた。

 掃除機を使わせたら、何もしないのに、掃除機が勝手に暴走して家中がメチャクチャに

なってしまった。それでもと、祥子さんががんばってみたら、今度は床が抜けてしまった

と言う・・・。ちなみに、レイカがその床にはまって喜んでいた。

 しかし、世の中旨くできているようで、祥子さん、徹雄さんのような、家事万端の『理

想のお嫁さん』のような、『主夫』を見つけたのである。

 ま、長い余談であるが。

 で、祥子さん、最愛の旦那様が相手なのでご機嫌である。(さっきまでの怒りが嘘のよ

う)

「ちょぉっと、教育的指導を(^^)」

「・・・またか(−−;」

「なんか文句ある?(^^)」

「・・・ないです(−−;;」

 こりゃ、完璧にかかぁ天下だな、この夫婦。

 『じゃ、明日、一時限目の講義があるから寝るわねぇ』と言って、二階の寝室に消えて

いく祥子さん。後には、頭の痛い旦那が残される。

「おーい、慎太郎、生きてるかぁ」

「・・・死んでる」

「いい加減、更正しろ、慎太郎」

 祥子さんを中学のころから追っかけ回してゲットした徹雄さんは、慎太郎の事も、ヤツ

がちみっこい頃から知っている。慎太郎のほうも、何時も姉の回りを、ウロウロチョロチ

ョロしていた徹雄さんを一部、兄のように思っているので、二人の仲は、実の兄弟並であ

る。

 慎太郎は、痛む頭をさすりながら、なんとか起き出した。

 で、ヒタリと義兄を見上げる。

「兄ちゃん、エプロン似合わねぇな、あいかーらず」

「ぬかせ」

「家庭科教師なんて、やめたら?(^^;;」

 ・・・身長186の家庭科教師。しかも男。しかも臨時。

 いや、性別で差別する気はない。身長だって、いくら大きくったって、文句は言わない。

 だが、この祥子さんがラブラブな旦那が家庭科教師・・・。

 慎太郎の言うように、はっきり言って、似合わない。

 祥子さんは、あんまりおバカな人は嫌いである。面食いである。注文も多い(注文の多

いレストラン以上に多い)。そんな彼女が惚れ込んだお方が、家庭科教師。(他にも副職

のような物を持ってはいるが・・・)

 世も末のような気がする。

「まぁったく、兄ちゃんの様な相手を、姉ちゃんも良くも旦那にしたもんだ」

 よっこらせっと起きながら、慎太郎、ブツブツと文句を言っている。やっぱり、機嫌は

悪いらしい。

 が、徹雄さんのほうは呆れ顔である。

「その俺に『やったもん勝ちだから、子供作って、責任取るふりして結婚しちまえ』と言

ったのは、どこのどいつだ」

「・・・兄ちゃん、あんな小学生の言葉、本気にしたとか?」

 シーン。

 シーン。

 シーン。

 さらにシーン。

 小学生で言う方も言う方だが、そんな小学生の言葉を間に受けて実行する方もする方で

ある。

「慎太郎・・・」

 沈黙を破ったのは徹雄さんの方だった。

「これ、祥子にバレたら、俺たち二人とも八つ裂きにされるから、秘密にしとこう」

「同感」

 ここに、義理の兄弟の結束は、さらに強くなったのだった。

 ・・・って、いーかげんにせい!!

 

 しかし、不幸なことに、祥子さん、『お休みのキス』を忘れたとのたまって、下に戻っ

てきていたのである。

 合唱(__;

 

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