GUESS WHAT!?

4「がんばれ西宮君!」

作・三月さま

 


 

 1 西宮君の家庭環境

 

 西宮良。

 佐伯兄弟の末っ子マコトの彼氏である。

 が、マコトの彼氏であるがゆえに、ケイに目の敵にされていたりする。

 ところがどっこい、西宮、結構タフなようである。そこら辺りの中学生のように、登校

拒否になったり、別れてみようかと思ったりしたことは、一度もない。

 あたりまえである。

 彼はケイ以前の相手に遊ばれている。

 誰でもない姉である。

 

 土曜の半ドンで、早く帰ってきた西宮。三年なので部活免除状態になっている。

 本当はマコトと一緒に帰りたいところだろうが、マコトは二年なので、部活で帰られな

い。と、言うか、熱血音楽教師のせいで、帰らせてもらえない。

 で、一人寂しく家に帰って来た訳である。

「たっだいまぁ・・・」

 こぢんまりとした住宅地の自宅に帰った西宮。

 玄関で、『姉』の靴をみて、顔をしかめた。別に、靴に問題がある訳ではない。ただ単

に姉が先に帰って来ていたことが、気に入らないだけである。

「姉ちゃん!?」

 とりあえず、呼んでみるが、返事はない。

 靴は登校用なので、別の靴で出かけたのかと、半ば安心、半ば不安がりながら、トテト

テと階段を上がり、二階の自室に向かって行った。

 が、自室の引き戸を開けたところで、西宮、見事にのけ反った。

 部屋の中に姉がいたからである。

 いや、いたどころではない。しっかり寛いでいる。

「あ、ほはへり」

 西宮姉、結構美人(と、言うか、加奈子並みに美人)なのだが、いかせん、制服のまま、

口におせんべくわえて、床にねっ転がっている。ちょっと離れたところには、お茶がお盆

の上に乗っていたりする。

「だぁ、姉ちゃん、人の部屋で何やってるんだよ!」

「何って読書・・・」

 加えていたおせんべをはずして、そう答える西宮姉こと、西宮泉。ついでに、読んでい

た雑誌を、西宮に見せてやる。

「うわぁぁぁ!!!!!」

 とたんに響く、西宮の絶叫。

 泉はそれを聞いて、ニッコリ笑っている。

「やーね、良ちゃんたらぁ」

 泉がご機嫌でみているのは、何でもない、『いかがわしい』類の物である。

 簡単に言ってしまえば、唯のH本である。

 しかし、姉は全然動揺していないのに、西宮のほうは動揺しまくりである。もう、これ

でもかというくらいに慌ててしまっている。

「ど、ど、どこで見つけたんだよぉ!!」

「ベッドの下」

「そんなところ、あさるなぁ!」

「やぁねぇ。自分の能力のなさを、人のせいにしないでよ」

「なんだよ、その、能力って!!」

「あら。どうせ隠すんだったら、もっと旨く隠せってことよ。あたしてっきり、面倒くさ

くて、ベッドの下に放ってあるもんだとばっかり、思ってたわよ?」

 そう言って爆笑している姉。

 別に弟がH本を持っていたからといって、何を言うわけでもない。ただ、からかってい

る。

 いや、弟をおもちゃにして遊んでいる。

「あぁ、もう、人の部屋に勝手に入ってくるなよ!」

 頭を抱えてそう叫ぶ西宮。

 だが、その悲痛な思いは、まぁるで泉には届いていない。

「そんなに言うなら、『鍵』つけなさいよ」

「この『引き戸』で、どう付けろって言うんだよ!」

「頭使いなさいよ、頭」

 泉、自分の方が成績がいいので、弟を馬鹿にしまくりである。

 西宮のほうは、いいかげん切れそうなものだが、いかせん、小さい頃から、『女の子は

ぶつな』を親に言われ続けているので、姉に手が出せない。サブリミナルかインプリンテ

ィングと言ったところだろうか?

 泉のほうも、嫌なことにそれを判っている。しっかり、西宮の理性の境界線あたりでキ

ープしながら、遊んでいる。

「ほほほ、アンタのものは、私の物ぉ。私のものは、私の物ぉ」

 まぁるでご機嫌で、立ち上がった泉。

 発見したH本を、西宮に手渡して部屋を出る。

「姉ちゃん!」

「今度はしっかり、隠しときなさいよ。さもなきゃ、彼女にみつかるぞぉ?」

「そんな、マコトちゃんが・・・」

「私、アキラの所で見つけたわよ?」

 その泉の一言で思わず凍り付く西宮。

 ちなみに、アキラとは、泉の彼氏である。

「い・・・泉ぃ」

「ま、別にいいわよ。何もないほうが、かえって不気味だし」

「そ、そぅかぁ??」

「あたしの場合だけどねぇ」

 泉はニッコリ笑ってそう言うと、

「で、何か食べる?」

と、聞いてきた。一応、受験生の弟を気づかっている。と、言うか、毎回この調子である。

イヂメたり、優しかったり。西宮としては、どう対応していいのやら。もっとも、生まれ

たときから付きあっている姉である。別段考えずにお互い行動しているといったほうが正

しいかもしれない。

「あー・・・ラーメン」

「おっけ。作ってあげるから、呼んだら来なさいよ?」

「ほいよ」

 鼻歌謡ながら去っていく姉の後ろ姿を見送る西宮。

 基本的にやさしいので、姉は好きなほうである。・・・って、シスコンかい、お前も

(^^;;

 

 

 2 西宮君の友人関係

 

「西宮ぁ、ここ、判らないぃ!」

 数学の授業の直後。

 次の授業である理科の準備をしていた西宮の席に突進してきたのは、友人君である。

 教室内、移動のために大分人がバラけているが、それでも残っている者が特に注意を払

わないところを見ると、お馴染みの光景なのだろう。

「アキラ・・・」

 小犬宜しく、目をキラキラさせて、数学のノートを広げてくる友人・アキラに、西宮は

思わず頭を抑えた。

 明朗快活と聞こえはいいが、本当は唯の脳天気。そんな友人を抱える西宮。

 今日も今日とて、ひっつかれている。

「西宮?」

「なんでもない」

 一年の頃は、まぁるで勉強しなかった友人が、二年の中頃から必死になって勉強し始め

た理由を知っているがゆえに、西宮は頭が痛い。

 が、友人であるアキラの方は、まるでそれが判っていないので、どうして西宮が何か悟

ってしまった様な表情をしたのかも、判っていない。

 アキラはちょっとチビっこいが、それを補って余るほど、元気である。本当に元気であ

る。どうしてそんなに元気なのかと思うほど、元気である。

 今日もその元気さで、西宮を押している。

「早く教えてくれ」

 アキラは、数学のノートを西宮の前に広げると、後はジーッと待っている。

 西宮のほうも、面倒見が良すぎるほうだから、それに付きあってしまう。

 

 さて、この山乃瀬アキラだが、二年になるまで、西宮とはまぁるで関係なしの人物だっ

た。一年のときはクラスも違えば部活も違う。さらに、学区域の関係で、小学校も別だっ

た。その結果、一年の間は、ただ単に、『こんな奴がいる』程度の顔見知りだったのであ

る。

 が、運命の転機と言うやつである。

 二年になってのクラス替え、西宮は見事にアキラと同じクラスになってしまった。(余

談だが、ここの学校のクラス替えはコンピューターでシャッフルさせるという、いい加減

な方法である。ちなみに、猫の中学もそうだったらしい)

 が、そこまでなら『親友』とまでは、ならないだろう。

 西宮とアキラが仲良くなった背景には、アキラの方から寄ってきたと言う裏事情がある。

 が、アキラの場合、どっかの高校生のように、女装した相手に一目惚れして、言いよっ

た訳ではない。

 奴の場合は、西宮との暖か〜い友情にくっついてくる『おまけ』に引かれたのである。

 何でもない。目的は西宮の姉の泉である。

 そうなのだ。このアキラと言う奴、西宮の姉目的で近づき、友人面し、旨く泉の彼氏に

収まったのである。

 もっとも、ここまで言うと、唯の酷い奴である。しかし、アキラも根はいいほうだから、

今は純粋に西宮の友人をやっている。(しかし、純粋な友人とはいったいなんだろうか・・・)

 

「お前も良く続くなぁ。いくら泉に馬鹿にされたとはいえ、感心ものだよ」

 アキラの数学の間違い(+と−を間違えていたらしい)を指摘して、理科室までダッシ

ュする西宮。後ろでは、アキラもダッシュである。(理科室に遅れて入ると、実験やらの

後片付けやらされるのである。一説には、最後の時限で後片付けをさせられると、理科教

師の実験台にされると言う話しもある)

「だって、大山受かったら、させてくれるって言ったもぉん」

「は?」

「だから、泉さんが」

 キーーーーーーーーーー!!!!!

 廊下で急ブレーキをかける西宮。

 不思議なもので、車は急に止まれないのに、西宮のほうは急に止まっている。しかもピ

タリと。

 が、アキラの方は、車だったらしく、まともに西宮に突進してしまった。

『ドグワシャァ!!!』

 場所は理科室も面している一年の廊下に響き渡る大騒音。

 交通事故である。

 大分ド派手な音がしたのだが、三年の仕業と判っているのだろう、一年は怯えて、覗き

にさえ出てこない。

 結果、十分程、背中に頭付きを食らった西宮と、脳震盪を起こしたアキラは、廊下に転

がされたまま、放られたのだった。

 なんともおいしい連中である。

「に、西宮ぁ、急に止まるなぁ・・・・」

 十分も経過して、やっと、アキラが気が付いたらしく、頭を抑えながら、そう呻いた。

ちなみに、まだねっ転がったまま。

 西宮のほうも、背中を抑えながら、

「うるさい・・・」

と、呻いている。

「お前が変なこと言うからだろ・・・」

「変?」

 どうやら、アキラの方が頑丈だったらしく、そっちはもう、以前頭を抑えているとはい

え、廊下に座りこんでいる。いまだ転がったままの西宮とは大違いである。

「何が変なんだ、西宮?」

「だから、うちの姉ちゃんが・・・」

「泉さん?」

「大山受かったらってやつ」

「あぁ、あれ?」

 アキラ、やっと判ったのか、頷いた。

 何とか回復した西宮が起きるのを手伝ってやりながら、ニヘラと笑う。

「泉さんがね、俺が大山受かったら、いいって」

「おい・・・」

「へへ、いいだろう」

 アキラ、気持ちの悪いほど笑っている。本当に嬉しそうである。

 西宮と言えば、頭を抑えて悩んでいる。

「姉ちゃん・・・」

「へへぇ、泉さん、やっさしぃ」

「お前、馬鹿にされてると、思わないのか!?」

 ヘラヘラと笑ってばかりいる友人に、突然怒鳴る西宮。多分に嫉妬も入っているだろう

か。

 が、怒鳴られたアキラの方は、どうして怒鳴られたのか判っていない。キョトンとなっ

てしまっている。

「なんだよぅ、西宮」

「姉ちゃん、お前が受からないだろうと思って、そう言ったかもしれないんだぞ!」

「まさかぁ、泉さんに限ってぇ。もしそうなら、勉強教えてくれる訳、ないじゃん」

 自身をもってそう言うアキラ。

「う・・・」

 西宮のほうも、それは見て知っているので、何も言えない。

 もう、アキラ、爆走である。もう、ニヤニヤしまくって、手におえない。

「だから、俺、絶対に大山合格するもんね。泉さんと『キス』するために!!!」

 熱血なのか、一瞬、アキラの後ろで、波がザパーン!となったような気がした。

 見えないはずの幻覚に、『疲れてるのかなぁ』と悲壮になってしまう西宮。

 が、ふと、聞き捨てならないことを聞いた様な気がして、こめかみにやりかけた手を止

めた。

「な、アキラ、お前、いま、なんて言った?」

「ほへぇ?」

「だから、何のためだって?」

「なんのって・・・決まってるじゃん。泉さんとの『ファーストキス』のため」

 沈黙。

 沈黙。

 沈黙。

 んでもって、西宮の心の叫び。

(なぁんだってええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!)

 頭を抱えて、ムングになってしまう西宮。

 そんな友人をアキラは面白そうに見ている。

「おもしろいリアクションだな、西宮」

「お前、まだ、キスも済ませてなかったの!?」

「『キスも』って・・・やだなぁ、そんなふうに言わなくったって」

 ポッと赤くなってしまうアキラ。本当に、さっき熱血してた奴だろうか。感情やら、反

応やらのはばが大きい奴である。

 その横で、西宮の心の叫びはいまだ続いていた。

(姉ちゃん、付きあって、2年目入ってるだろぉ!?)

(なんで、いまだにキスもやってないんだよぉ!?)

(アキラも、そんなので赤くなるなぁ!?)

 その他にもエトセトラ、えとせとら。

 まぁるでご機嫌なアキラと、悩む西宮。

 しかし、二人とも、忘れてないか?とっくに授業、始まってる時間だぞ?

 

 後片付け、決定。

 

 

 3 西宮君の部活事情

 

 三年・西宮良。

 陸上部所属。

 陸上部は去年までは、悪魔の巣くう部として、全校の恐怖の対象であった。

 悪魔とは誰でもない、あのケイである。

 が、その別名『悪魔部』だが、今年に入って、印象を爽やかに変えてしまった。

 唯一県大会にまで出場し、さらに、1位もかっさらいまくっていたケイが消えて、部と

しての入賞数は減ったが、逆におおいに平和になったのである。そこで部員に今と昔とど

ちらがいいと聞けば、絶対、10人中10人が『今』と答えるだろう。

 部長もごくごく平穏で平和主義。(一部の噂では、ケイが超反面教師になったため、こ

こまで丸い部長になったといわれている)さらに副部長は非常に面倒身がよく、さらに

『とある』武勇伝まである西宮。

 平穏でないほうがおかしいのである。

 いまではこの陸上部、去年の名前も影響してか、『天使部』と言う名前にされてたりす

る。

 

 さて、これから語るのは、西宮の『とある』武勇伝の話しである。

 陸上部の間では『爆竹』事件と呼ばれている事の顛末なのだが・・・

 時は一年前。そう、ケイが三年として、横暴極まっていた頃のはなしだ。

 

 二年のとき以来、部活は真面目にやっているケイだが、部活の間のイヂメも、やっぱり

欠かさずこなしている。

 最もイヂメがいのある上級生が消えたため、心無しつまらなそうだが、その分、教師や

ら下級生やらに時間を割いてやっていた。(このころ、同級生の三年は諸事情によりイヂ

メが軽減していた)

 しかし、この時間にも差がやっぱりあったりする。

 ついこの間、新入生が入って来た。が、一年は何と言ってもマコトの上級生なのである。

だからか、イヂメの度合が少し少ない。

 で、その少ない分が、二年へ向かう。

 最もイヂメられている二年。その中で、程度は少ない様に見えても、実は接している時

間が長いために、実は量的には一番イヂメられている人達。それが、陸上部二年である。

 今日も今日とて、ケイはやっていた。(しかし、今日のはイヂメというよりは、唯の退

屈しのぎのような・・・)

 西宮は、二年として、真面目にスタートの練習をしている。スタートのタイミングと、

一瞬のスピードを伸ばすためである。

 何人かの二年も、西宮といっしょに、スタートの練習をやっていた。

 コースの向こうでは、陸上部の顧問が、笛を構えて待っている。

 が、平安にスタートを二年が切れる訳がなかったのである。

 教師が、『用意』と、言ったとたん、

『ピ!』

と、スタートを告げる笛がなったのである。

 それで慌ててダッシュする二年。が、タイミングが早すぎて、皆メチャクチャになって

いる。

 しかも、その後も笛の音、

『ピ、ピ、ピ、ピ、ピーッピ、ピピピ、ピッピッピピー!!』

と、続いているのである。音楽と化している。

 しかも、笛の音の音楽、かなり間抜けなのである。

 その間抜けさに腰砕けになった二年が、バタバタと、コースの途中でこけまくった。

 もちろん、西宮もこけた二年に後ろから突進されて、ブッ倒れた。

 で、背中の痛みを我慢しながら、笛の音を探って見れば・・・

 やっぱり、ケイだった。

 しかも、ケイ、笛は笛でも、音楽で使う縦笛をもって、それを吹いていたりするのであ

る。腹の立つことに、二年がこけた後を平気で踏んで、笛を吹きながら行進している。

「さ、佐伯ぃ!!!!」

 絶叫する教師。

 が、ケイは聞いちゃいなぁい。

 そのまま教師を無視して、ロッカーのある部室まで、行進していってしまった。(今日

はマコトの帰りが早いので、一緒に帰る気らしい)

「あんの、バカ先輩ぃ!!」

 いまだ、地面に這いつくばったまま、怒りに振るえるのは西宮。

 基本的に、面倒身の良い優しい奴なのだが、こういうのに限って、切れると恐いのであ

る。

 そして、いま、西宮は切れていた。

 

「姉ちゃん、爆竹くれ」

「はい?」

 その日の午後、泉の部屋にかなり怒った表情で乱入した西宮。

 泉のほうは、西宮の部屋からかっぱらって来た雑誌を床に座りながら読んでいる。

「いいけど、どしたの?」

「先輩のロッカーにしかける」

「先輩?」

「佐伯先輩!」

「あぁ、佐伯ケイね・・・」

 実はケイを同じクラスの泉、『まぁた、なんかやったのか』と言った様子で、納得して

しまっている。

 しかし、この泉も強者である。ケイと同じクラスだというのに、一度も登校拒否をした

こともなければ、悩んだこともない。

 逆に、何故か同じクラスになった3年から、喜んで学校に行っているようなフシもある。

 西宮などは、アキラが彼氏になったからと思っているようだが、本当はあのケイで楽し

んでいるとは、誰も思わないだろうなぁ・・・

 ともあれ、動くのが面倒なので、弟にクローゼットを開けさせる泉。

 姉の指示にしたがって戸を開けた西宮。だが、

『ドガラ、ガラガラガラ、ガラン!』

と、戸を開けたとたんに、中に押し込んであった荷物が雪崩を起こした。

 それを見て、爆笑している泉。

「あはははは、馬鹿ぁ!」

「姉ちゃん!!」

「ほら、早く持って、行きなさいよ」

 泉は、荷物の山に埋ったままの西宮に、その荷物の一番上にある箱を示した。

 ・・・しかし、この荷物の山、花火やら、爆竹やら、鞄やら、本やら、とんかちやら、

縫ぐるみやら、多種多様である。やっぱりケイで楽しめる女である。なんか、変。

 

 二日後、姉経由で手にいれた爆竹を、ケイのロッカーに仕掛けた西宮。

 その日の部活で、ケイがのんきにロッカーを開けると、

『ドンパパパパパパパパパパンパンパンパンパンバンバンバンバン!!!!!!!!』

と、ド派手な音が、部室の中にこだましたのであった。

 事情を何故か知っていた一年も二年も三年も、要するにケイ以外の全員が部室の外にい

たので、幸い、被害者は0だった。(リクに『かわいがられまくっている』ので、ケイは

異常に頑丈である。交通事故にあっても、車のほうが壊れるだろうなぁ)

 音のなった後、ビクビクとしながら、一年が代表で見にいってみる。(三年に行かされ

たともいう)

 部室内は煙で真っ白。

 その煙が引いて見ると、なんか、黒くなったケイがヨロヨロと出て来たりした。制服、

一部ボロボロである。たぶん、リクにこっぴどく叱られるだろう。その恐怖もあってか、

ケイ、かなり恐い表情をしている。(その時の光景は、かなり恐かったらしい。その一年、

いまでもその様を悪夢として見ているそうである)マコトが見たら、一発で泣くだろう。

「誰だぁ!!」

 当然、声もドスが聞いていたりする。はっきり言って、恐い。

 その時、愚かにも固まっていた部員達にダッシュで駆けより、一人一人を締め上げるケ

イ。

 こんなふうに、怒りまくりのケイに逆らえるやつも、そうはいまい。(いるとしたらリ

クか、両親くらいなものである)いつもはイヂメているといっても、精神は正常なのであ

る。が、今は怒りで正常精神状態も何もない。もう、いまなら、熊でもライオンでも殺し

てしまいそうな剣幕だ。

 そんなケイに、二年の一人が、余りの恐怖から、友人であった西宮を売ってしまった。

「に、西宮ですぅ、先輩ぃ・・・(;;)」

「西宮!?」

「ほら、あの、ちょっと見ため、のんびりの、面倒見がよい・・・」

「あ、のんびり・・・あいつか!?」

 下級生の名前なんか、覚える気もないケイ。特徴を言われて、やっと判っている。

 吐いた二年をその場に捨てると、校舎のほうへとつっ走っていった。

 さて、残された二年。友人を売ったことで、残った部員にこき下ろされそうだが、何故

か、回りに労られていたりする。理由は簡単。他の連中は、喋りたくても、恐くて口が聞

けなかったのである。

 喋ってくれたことで、感謝される二年。もう、こいつら、西宮なんか、どうでもいいん

だろう。

 人間、わが身のほうが可愛いのである。とくに、怒りのケイと対してしまったときなん

か、そんなもんである。

 

 その日のうちに、と、言うか、一分後に、部活に行きかけていた西宮はケイに見つかり、

その場で、二階の窓から、プールに叩き落とされたのであった。

 しかし、もしかしたら、下にプールがあったのって、唯の幸運じゃ・・・

 

 ともあれ、ケイは西宮を今にも投げようとしていた。

「おちろぉぉ!!!」

「誰が、落ちるかぁ!」

 必死に窓枠にすがっている西宮と、それをひっぺがそうとするケイ。

 しかし、ケイに抵抗できるだけでも、すごいぞ西宮!

「さっさと、落ちろぉ!」

「だから、誰が落ちるかってば!!」

 もう、押し問答に、力比べ。

 本当なら、教師が止めに来そうなものだが、冷たいもので、誰もこの様を止めようとし

ない。

 みんな、ケイにビビッて、手が出せないのである。生徒は勿論、教師さえも、おとなし

く西宮にケイの怒りを収めるための生贄になってもらおうとしている。

「お、ち、ろぉ!!!」

 しかし、やっぱりケイは強かった。

 とうとう窓枠からひっペがされた西宮は、そのままケイの手によって、外に放られてし

まったのだった。合掌!

『ズワッパァーン!!!!』

 隕石でも落ちたのかという巨大な水飛沫を上げてプールに落ちていった西宮。

 季節は春。運良く暖かい日だったが、いかせん、プールは藻まみれである。

 真緑になって、プールから上がる羽目になった西宮。それは一見、緑色のゾンビの様な

様だったという。(騒ぎを聞きつけ、その様を見た泉が、後で徹底的に笑いまくっていた)

 

 ちなみにケイのロッカーだが、一年経った今でも、ひしゃげたまんまである。

 どんな爆竹しかけたんだ、西宮ぁ(^^;

 

 

 4 西宮君の恋愛顛末

 

 さて、マコトと西宮は今現在付きあっている。

 が、このおつきあい、結構日が浅いのである。

 実はまだ、二ヵ月しか、経っていない。

 

「せーんぱぁい!」

 昼休み。

 やたらトロ臭い声で走りよってきたのはマコトである。

 が、廊下を走ったりするもんだから、しっかりこけている。

「あぁ、マコちゃん!?」

 やっぱりやったかというように、走りよる西宮。

 廊下にいる三年連中、その様を見て見ぬ振りしている。もう、これも毎度のことである。

気にするだけ、損なことだと判っている。いや、本当に損するんですよ。

「どしたの、マコちゃん?」

 マコトには、さらに輪をかけて優しい西宮。

 学校の廊下なのに、すっかり熱々である。

 当てられた三年の数人が、『キー!!』とか言って、教科書やら図書の本やらを床にた

たきつけ、不貞腐れて行ってしまったが、そんなもの、この二人はかまっちゃいない。

 ただ、のんびりとニヘラと笑っているだけである。

 だから、言ったでしょう。損をすると。一人ものなんか、あてられて、悔しい思いをす

るだけなのだ。

 ともあれ、西宮、やたら幸せそうだ。

「マコちゃん?」

「先輩の顔がみたくて、きちゃった」

 床に座り込んだまま、そう言って笑うマコト。

 はっきりいってカワイイ。メチャクチャかわいい。

 しかし、普通、下級生がこんなことを言っていれば、同性の上級生に『ぶりっこだ』な

んだと言われそうなもんである。(いや、言われるんですよ、本当。そういう友人が猫に

はいた)

 が、いかせん、これはマコトである。とろすぎるのと、人なつこすぎるので、誰も文句

が言えない。(一部、マコトの兄がケイだとちゃんと知っているものもいる。そう言う連

中は、ケイが恐くて、何も出来なかったりする)

「はい」

 そう言って、手を差しだし、マコトが立つのを助けてやる西宮。

 実はこれ、西宮が優しいのも理由なのだが、助けてやらないと、マコト、何回でも転ぶ

のである。起きようとして転び、起きようとして転び。これである。だから、助け起こし

てやらないと、何時までたっても、起きられないときもある(^^;

 

 さて、そんな二人のなれ染めである。

 

 この学校、図書室は二年の廊下に面してあったりする。

 で、そこで本を手っ取り早く、無断で借りる手続きをして(図書委員がまともにいたた

めしがないため。これは、一説にはケイが給食前やら、昼休みに、一時期図書委員いびり

にこったためだと言われている)

 で、昼に間に合うようにと、ちょっと廊下を急いだ西宮。そのころはとっくに三年にな

っていたので、もう一階上に戻らねばならない。

 が、事故はそこで起こった。

 ちなみに、被害者は西宮である。

 後ろから、弁当のことしかすでに頭にない二年女子がつっこんできたのである。

『ドングワシャ!!』

 またまた、派手な音を立てて、突っ込まれた西宮。

 やっぱり、背中に頭突きをを食らっている(^^;

「ぐわ!」

 まさか、いきなり後ろから突っ込まれるとは思っていない西宮。まともにぶっ倒れた。

 しかも、その上に突っ込んだ二年が勢い余って重なってくる。

 かなりのもの音だったのだが、幸い、飢えた二年はすでに弁当を食べ始めているらしく、

誰も、食事以外に興味など示さなくなっていた。

 で、しばらく倒れたまんまの二人。

 先に気が突いたのは、しょっちゅうこけている二年女子・マコトの方だった。

「うぅ、痛いよぅ」

 度重なる突進やら、転ぶ行為などで、痛みに鈍感になっているのか、マコトは口ではそ

う言いながら、結構平気そうである。

 マコトに続いて気が突いた西宮も、結構突っ込まれているので、大丈夫だったりする。

 人間、何事も慣れだなぁ・・・

「あ、大丈夫だった?」

 突っ込まれたのに、人の心配をしている西宮。いい奴である。

 マコトは、一瞬ポカンとして、それから、突然ガバァッと、頭を下げた。

「ごめんなさぁい、『また』突っ込んじゃったぁ(;;)」

「あ、あのぉ・・・(^^;」

「うえぇん(;;)」

「え、えぇとぉ・・・(^^;」

「ごめんなさい、ごめんなさい(;;)」

 痛くても泣かなかったマコトだが、今はしっかり泣いている。

 その泣き顔がまずかったらしい。

(カ、カワイイ・・・!!)

 廊下にペタンと座り込んで、涙目で謝ってくる少女に、不幸西宮、一目惚れである。

「あ、あの、大丈夫だから(^^)」

 実はまだ、背中が痛いのに、やせがまんしてそういう奴。

 マコトも、リクとケイの妹である。その突進能力は、半端ではない。

 それなのに、西宮我慢している。(根性だなぁ)

「あ、あの、さ?」

「はい?(;;)」

「名前・・・」

 どさくさに紛れて、名前を聞き出そうとする西宮。

 が、マコトは違う方向に取っていた。

「あぅ、後で呼び出すんですねぇ?」(先輩の呼び出しくらうと思っている)

「あ、まぁ・・・・」(呼び出して、告白するのもいいかなぁと思っている)

「うぅ、マコトです。佐伯マコト(;;)」(どうしようかと、必死に悩んでいる)

「マコト・・・」(カワイイ名前だなぁと思っている。が、恋路に血迷って、名字のほう

に気が付いていない)

「どうしようぅ(;;)」(ケイに泣き付こうかと思って見る)

「あ、あの、マコトちゃん?」(どさくさにまぎれて、もう、名前で呼んでいる)

「はい?(;;)」(でも、ケイに頼ってばっかりもだめだ!と、一代決心をする)

 二人とも、考えがちぐはぐのメチャクチャである。

 本当に、大丈夫かいな・・・

「あの、さぁ(何か話しておいたほうが、いいよな。やっぱり)さっき、なんで、走って

たの?」

「え・・・あの、リクちゃんが、ご飯の前には、手を洗えっていつもいうから・・・」

 そういって、ハタと、今が食事時であることを思い出すマコト。

 突然立ち上がると、西宮が止めるのも聞かずに、教室へと走っていってしまった。

 もう、マコトの頭は弁当だけである。今あったことも忘れてしまっているだろう。

 が、皮肉なもので、西宮のほうは、頭の中、マコトだけになっている。

 一目惚れなんて、本当に恐いものである。

 知らぬとはいえ、ケイの妹に惚れさせるんだから。

 

 さて、二人で惚気ているところに、アキラがひょっこりやってきた。

 というか、学校内で邪魔をしてくる奴といえば、今やアキラだけある。

「あれぇ、佐伯ちゃんだぁ。また来たの?」

 アキラも、馬鹿に人なつこい方だから、平気な顔で、以前座り込んだままのマコトの横

にしゃがんだ。

「佐伯ちゃん、こんなヤツのどこがいいの?」

 不届きにもアキラ、最愛の人の弟を『こんなヤツ』呼ばわりである。

 一瞬ムッとなる西宮だが、人がいいのですぐに忘れてしまう。

「おまえなぁ、親友に向かって・・・」

 それでも、一応、釘だけは刺しておこうと、口を開きかけた所へ、

「う〜んとねぇ」

と、マコトの言葉が邪魔してきた。

「やさしいところぉ(^^)」

 ふにゃぁっと、表情を崩してそういったマコト。

 この答えに、西宮、真っ赤になっている。(結構純情なのかも・・・・)

 アキラも、またもやニヘラと笑っていた。これ、当てられてもにやけてる・・・・

 誰か、こいつらを止めろ・・・

 

 

 5 西宮君の対談

 

ネコ『どうも。密かに地球に帰還した猫です。しかし、ケイにバレると殺されるので、今

   回は人間に化けてお送りします!!』

西宮『大変っすね、作者も(^^;』

ネコ『ありがとぉ!!!(;;)いままでで、オイラを労ってくれたのは、西宮君だけよ

   ぅ!!』

 

     猫、嬉しさのあまり、泣き出している

     西宮、なんと言ったらいいのか、判らないらしい。

     が、本当に心配してくれている!(;;)

 

西宮『いや、ほら、僕の場合は、割合、あつかい酷くなかったし、最後もほら・・・』

 

     西宮、真っ赤である。

 

ネコ『うぅみゅ。本来なら、人間バージョンのオイラの前で惚気るようなやつ、殺っちま

   うところですが、まぁ、西宮君ならいいかぁ・・・』

西宮『あれ、人間バージョンは、強いんですか?』

ネコ『いや、相変わらず弱いですが、”作者の権利”を乱用出来ますから(笑)』

西宮『作者の権利?』

ネコ『例えば、ここに突然マコトちゃんを呼ぶぅ!!』

 

     猫が手を振り下ろした先に、マコトが突然登場!!

     打ち合わせにはなかったことなので、西宮ビックリしている。

 

西宮『マ、マコトちゃん!?』

ネコ『あ〜ぁ、もう、頭の中、マコトちゃんしかないわね(^^;;』

マコ『あれ、ご飯は?』

ネコ『ちゃぁ、食事中だったかぁ(^^;;;;;』

 

     リクの作ったご飯が突然消えてしまったので、マコト、涙目である。

 

マコ『うえぇぇん、ご飯がなくなっちゃったぁ(;;)』

西宮『あ、あ、あ、マコトちゃん(オロオロ)』

マコ『うえぇん、先輩ぃ、ご飯(;;)』

 

     仕方がないので、ネコ、またもや作者の権利乱用。

     突然、マコトの目の前に料理が出て来る。

     しかも、好物ばっかり(笑)

 

マコ『うわぁ!(感激しているらしい)』

西宮『作者さん、感謝!!』

ネコ『いえいえ〜』

 

     なんか、いつもの対談とはまるで違った、平和な雰囲気である。

     が、世の中そうそう、旨くいくはずもなかった!!

 

どこか、遠くから聞こえてくる声『マコトォ!!!!!』

 

ネコ『ビクゥ!!!』

 

少し大きくなった遠くの声『どこだぁ、マコトォ!!!!』

 

ネコ『あ、あの声は・・・・・(−−;;;;;;;』

マコ『あ〜、ケイちゃんだぁ!』

ネコ『ひぃ、やっぱりぃ!さすがは、シスコン大魔王!!マコトちゃんの位置を直感でぇ!』

 

     『ドグワシャァ!!!!!!』

 

ケイ『誰が”シスコン大魔王”だぁ!!!!』

ネコ『ひぃ!!』

 

     タイミングの悪いもので、作者、変身が解けてしまう!

     (3分しか保たなかったりする)

     ネコの姿に戻ってしまう猫!!

     このままでは、”作者の権利乱用”も行使できない!!!

 

ネコ『ぎゃぁぁぁ!!!!』

ケイ『あ!! 何処かで聞いた声だと思ったら、お前かぁ!!』

ネコ『ひぃ、お助けぇ!!!!!』

ケイ『誰が助けるかぁ!』

 

     やっぱり、いつものパターンである(−−;;

     さぁ、猫の運命はどうなる!?

     以下次号に続かない!!(笑)


 

みゃあの感想らしきもの。

 

読んでいる途中、途中で感想を書く、というリアルタイム方式でお送りいたします(笑)

 

 

うがあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!

もう駄目だあぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!

泉さあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!好きじゃあ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!

ぜはーぜはー……(笑)。

うう〜ん、すんばらしいキャラッスねぇ…みゃあは一人っ子でしたので、こんなお姉ちゃん欲しいです(ホントか、おい(^^ゞ)。

性格は個性的ですけど(笑)、とってもいいお姉さんですよ。本当にちょっとうらやましい。

ジャイアニズムなとこが、またスゴイ(笑)

今回のイチ押し。もうメインキャラくうくう(^o^)。

 

さて二人目。アキラくんは、しっぽ振ってる子犬を連想してしまいました(笑)

しかし…「させてくれる」って、ああた……(^^ゞ(うらやましぃぃぃぃぃっっっ!!!(爆笑))

 

またもや閑話休題。この理科教師……この物語の教師って、何者!?(爆)

 

純情(?)で熱血なとこが好きです、彼。

しかし…西宮くんの方がスレてるとは…。ケイが一緒だと、あんなにおとなしく見えるのに。

やっぱりケイはただもんではない(笑)

 

「笛吹いたまま行進」>

大笑いしました。ああ…情景が目に浮かぶなぁ。(笑)

 

ああっ!マコっちゃんだぁ〜〜〜、わーい!

この濃ゆいキャラたちの中にいると、大食いでおばかなくらい、可愛いもの(^o^)。

あああ〜〜〜やっぱし可愛いっ!うらやましいぞっ!西宮!

人なつっこい子猫って感じですかね。うんうん、どじな子ほど可愛いものよ。演技じゃなくて「地」なんだからぶりっ子とは違うし。微笑ましいな、この二人。

ふたりの馴れ初めのトコの全く食い違っている思惑が最高ですね。(^o^)。

 

そして…あいも変わらずお可哀相なネコさん……。あうあうあう…(;_;)。

でも、地球に帰還なさったようで、良かった良かった(^o^)。

 

 

三月さま。これスゴイ人気ですよ。

男読者をみゃあはじめ次々に虜にしていってます(笑)。

いらっしゃらなかった間のも含めると、感想はハンパじゃないです。

ぅぅぅぅぅぅぅありがとぉうございますぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!

いつもこんなに素晴らしい作品を投稿していただいて…(;_;)。

こちらも頑張って、ノゾミ&冬月を書きます。絶対。

 

次も泉さんが沢山出てくるといいなぁ(笑)

どっぷりと幸せにはまりこんでいるみゃあでした。

GUESS〜4