宝物

其の十一

作・ぽんたさま


「……すごい……」

 マギーは思わず呟いた。

 バズもとなりで口を開けて上をみあげている。

「へぇ、外観と違って中はしっかりしてらぁ」

 ウィルは壁をぺしぺしたたきながら言う。

 教会の中は、シドンにあるとは思えないくらい立派だった。ずらりとならんだ木製のイス、白い石彫りの像、そして美しいステンドグラス。

 多少ひび割れたり汚れたりしているが、サンマリーズの教会にも劣らないような内装に、子供たちはびっくりしていた。

 ウィルは、愛用のカバンから地図をとりだすと、いちばん近くにあったイスの上に広げた。マギーとバズは覗き込むように見ている。

「ここで間違いないみたいだ」

「×印は、ここの教会のことだったのね。きっと斜め十字架のことなんだわ」

「へぇ、じゃあ、ここの何処かにあるわけなんだ」

 バズはまわりをぐるぅりと見回した。

「よし、ウィル! どっちが先に宝物を見つけるか、勝負だ!!」

「え〜!?」

 意気込んでいうバズに、不満の声を上げるウィル。

「勝負してもいいけど、今までバズ勝ったことないだろ?」

「そうよぅ、バズ勝てっこないんだからぁ! ウィルに勝てると思ってるのぉ?」

「うるさいっ、今日こそ雌雄を決してやるぅ!」

 ふたりにさんざん言われて、バズは耳をふさぎながら言う。

「ふぅん、あ・そうだ、バズ、雌雄を決するって、雄と雌どっちのほうが偉いんだ?」

「え……、め、いや、雄…かな?」

「なによぉ、あたしより偉いって言いたいわけぇ?」

「え? え? そんなこと言ってないよぉ」

 ぷりぷり怒るマギーに、慌ててフォローをいれるバズ。なおもつづく口ゲンカを見ながら、ウィルはあくびをかみ殺した。

 

 結局、雌雄どちらが偉いかはわからないまま、とりあえず教会全体を見てまわることにした。イスの下や石仏、台上の備品などを軽くチェックしながら、とことこ歩いていく。

「なんにもなかったみたい」

 イスに腰を下ろしながらマギーが言った。

「そんなにわかりやすい所になんかあるわけないだろ? どこかに隠してあるに決まってらぁ」

「へ〜、なんか宝捜しみたい☆ どこにあるのかしら」

「バズは、何処に隠してあると思う?」

 ウィルに話し掛けられて、バズは顔を上げた。

「え? 隠し場所?」

「そ。バズはよく本とか読んでるだろ? 結構くわしいかな?って思って」

 バズはメガネの位置を直しながら、少し思い出すように目を閉じた。

「マギー、もし、大事なものとかを隠すとしたら、どういうところに隠す?」

「そうねぇ、あたしなら、何処に隠すかなぁ……」

「マギーもバズもそんなに悩まないでさ、ほら、例えばこの教会だったらどこに隠すかなってことでいいよ」

 マギーとバズは改めて教会中を見回す。

「ここなら、大の上にある机の、引き出しかな?」

「それは引き出しの中ってこと?」

「ううん、引き出しを抜いて、その下のスペースに隠すってことだよ。これなら結構見つからないんだ」

「へぇ、バズってそういうところに隠してるんだぁ」

 なるほど、と納得したようにいうマギーに、バズはひどく慌てた様子で首を左右にぶんぶん振った。

「ち、ちがうよっ! ここなら、ど、どこに隠せるかってことを言っただけだよっ!」

「へ〜、そー」

 しらじらしく相づちを打つウィル、しかしその表情は今度バズの部屋のそこを捜索してやろうと如実に語っていた。

 

「『主よ、大禍から我が身を守りたまえ』かぁ、これって何か意味あるのかしらぁ」

「うーん、リドルかな? それなら……」

 ウィルは正面にある石仏に目をやりながら、

「災いから身を護るといえば、あの石仏っていうのが定番だけど、教会っていう場所だってそういう神聖なとこだからね。とりあえず適当に見当をつけて捜してみよう」

 ウィルはさっと立ち上がった。マギーとバズも立ち上がる。

「とりあえず、バズが変なものを隠してるところから捜してみよー」

「だ、だからぁ、ボクの隠し場所じゃないんだよぉ……」

 マギーが引き出しを取り出して中を覗き込んだ。

「うわぁ、ほこりっぽぉい。でもバズと違って何にもないみたいだわ」

「違うのにぃ……」

 ウィルは机の回りや、引き出しの底を調べてみたりしている。

「マギー、悪いけどちょっとどいて」

 覗いているマギーを強引にどかすと、机の奥のほうまで顔をつっこむ。

 不平を言うマギーと文句を言うバズを無視して、あちこちすみずみまで調べているウィル。しかし、これといったものは見つからなかったようで、首を横に振った。

「ここにはなかったみたい。二重底っていうわけでもないし、特殊な装置がセットされているわけでもないや。次いこ!」

 

 その後、マギーの言った隠し場所も捜してみたが、これといった成果は上げられなかった。他にも壁に並べてあった棚や、前にあった台の中なども調べてみたが、やはり何も見つからない。

「やっぱり、この石仏かな?」

 ウィルは石仏の前に立つと、そう言った。

「石仏っていっても、これは天然に彫られたものだから、そんな細工は無理なんじゃないかなぁ」

 バズが率直な感想を述べる。

「そうは思うんだけど、……何かひっかかるような気がするなぁ」

「ウィルぅ、それって、捜し屋の星とか言うやつぅ?」

「うん、そう。何か匂うなぁ……」

「また、そんな非科学的な」

 ウィルの『捜し屋の星』を疑うバズ。しかしマギーに後ろから軽く殴られる。

「そう思うならバズはバズで捜してみなさいよっ!」

「……わかったよぅ」

 すごすごと歩いていくバズ。後ろ姿がちょっと淋しそうだった。

 

 気を取り直して石仏を調べはじめるウィル。

「この石仏の、持っているのって、もとからあるのかな?」

「この水晶球みたいなの? 何か取り外せるような気がするけどぉ」

 そう言って石仏が抱いている球状の物体――仮に宝珠と呼ぶよん――に触わってみる。

「何か手触りも違うね。これだけ新しいって感じがする」

「やっぱりマギーもそう思う? これがそうだと、地図の裏に書いてあった聖句とも一致するよね」

「『主よ、大禍から我が身を守りたまえ』ってやつ?」

「そ。この石仏様が大事に護ってるって考えればそうでしょ☆」

「うんうん♪」

「つまりはこの宝珠がそうっていうのが宝の隠し場所ってわけ」

「へ〜☆」

 しんそこ感心した様子で拍手するマギー。そんなたいした推理でもないよっていう表情で微笑むウィル。(ぽんた注・ほんとにたいしたことないや☆ 原作とは雲泥の差だな)

「じゃあ、取ってみていい?」

「いいよ、でも慎重にね」

 そーっと宝珠に手をかけるマギー。しかし、つい手を滑らしてしまう。

 あっさり石仏の手から抜け出たその宝珠は、そのまま教会の床に叩き付けられた。

「あ〜!」

「きゃ〜!」

 ウィルとマギー、ふたりの悲鳴が教会中に響き渡った。

 

 その頃、バズは一旦外に出てみていた。教会の扉に刻まれている斜め十字架のレリーフとかを調べている。

「うーん、外は盲点だと思ったんだけどな……」

 バズはため息をつきながら、それでも根気を入れて調べてみる。

「あれ?」

 バズは、不思議そうな顔をした。左右の扉の斜め十字架の角度が微妙に、それこそ1〜2°ずれているような気がしたのだ。

 バズは、一旦息を吐くと、十字架に手をかけた。

 

(つづきます)

 

 

  訂正とは

 前回のあとがきの最後の一文。確か抹消したはず……。あぁ、妄想ですぅ。あそこは切り捨ててください☆ お・ね・が・い(はぁと)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 全12話(1クール)を目指して、書いているこのおはなし。今回はいつもよりちょっと長めですね。

 そろそろ、くらいまっくすとかいうやつかな?

 でも、話を中途半端に膨らましたり、伏線を張りまくったり(泣き女の沼・魔女・盗賊団等)した割に、いまいち納得の行くような話が書けないよぉ。うるうる。

 

 まぁ、これが初投稿&ほぼ処女☆作品ということで、多めに見てくださいね☆

 

 それでは、ぽんたでしたぁ☆ じゃ、以外になんでもない最終回で会いしましょうね。 

 

 

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