「あ、雨……」
ほほにかかる水滴に、あたしは空を見上げた。
さっきまで、あんなに天気がよかったのに……
「空が泣いているみたい、ね……」
ふいに、目尻から冷たいものがこぼれ落ちる。
「やだ、もう泣かないって決めたのに……」
あたしは、彼の腰に回して腕をぎゅっと締めた。
これだけが、今の私の支え。今の私のすべて……。
「雨がひどくなってきたな? 雨宿りでもするか?」
「うん」
バイクは、二人を乗せたままガード下に滑り込んだ。
「もー、いきなりだったね。はい、タオル」
「サンキュ、な」
ごしごしごしごし
髪の毛をタオルで拭う音が、狭いガード下に響いていく。
ざ―――――
「雨、やまないね」
「あぁ。とりあえず、おまえは休んどきな。疲れただろ?」
「いいよ。別に」
「いいから、寝ろ」
彼はあたしにむりやり帽子をかぶせた。あたしは言葉に甘えて彼にもたれかかった。
たのしそうにブランコで遊ぶ二人。
笑顔で、屈託のない笑顔で。
楽しそうに。楽しそうに……。
ざ―――――
まだ、雨が降ってる。
あたしは目をこすった。
あ、彼も寝てる。
同じようにもたれかかって眠っている彼に、あたしは唇をかさねた。
まるであんなことがなかったかのような幸せな寝顔。
ほんとうは、全部夢で、醒めたら消えてしまえばいいのに。
「う、うーん」
彼が目を覚ます。覗き込んでいるあたしの顔を見て、バツの悪そうな顔をした。
「ごめん、寝てたわ」
「ううん、別にいいよ」
「あー、首いてぇ」
彼は皮ジャンのポケットから、何か黒いものを取り出した。
「それ、なぁに?」
「ウォークマンかな? さっき入ってんのに気がついた」
彼が何気なくスイッチを入れる。
途端、激しいノイズがガード下に響く。どうやらラジオになっていたみたい。
「ザザ……のう…………殺害し…ザザ……二人組……ザザ…」
雑音のなかから、かすかな女性の声が聞こえてきた。ニュースかな? 二人組がどうしたんだろ…………2人組?
「ねぇっ!」
あたしは彼に向かって叫ぶ。彼は無言で頷くとチューニングをあわせていった。
雑音だらけだった声が少しづつクリアに聴こえてくる。
「繰り返しニュースをお伝えします。一昨日の夜、男性が殺害された事件で、その夜男性と一緒にいたと思われる男女が行方不明となり、警察が重要参考人として行方を調べていました。
その後の調べでこの男女が昨日未明に発生したコンビニ強盗に関わっていることがわかりました。
警察ではこの二人の行方を追うとともに、付近の住民にも協力を要請しています。なにか情報を知っている方は、捜査本部××−〇〇〇〇まで、お知らせください。
なお、男性は身長180pぐらいで、服装は黒い帽子に黒い皮のジャンバー。女性は身長155cmぐらいで、迷彩のジャンバーを着ています。
お心当たりの方は、捜査本部まで…………」
彼は無言でボリュームを下げ、スイッチを切った。
肩が震えているのがわかる。彼も、あたしも。
雨は、まだ降り続いていた。
「もう、行くか。いつまでもここにいるわけにもいかないだろ」
彼はそう言って立ち上がった。あわててあたしも立ち上がる。
「今度は、どこに行くん?」
あたしはお尻についた砂を払いながらたずねる、が、彼は首を横に振った。
「さぁな。でも行けるところまでは行こう。そうすればなんとかなるだろ」
彼はバイクのエンジンをかけた。
このまま、どこまでも逃げて行こう。道が続く限り、どこまでも。
(つづく)
ぽんたのあとがき\(^▽^)/
はい、第4話です。
今回もなんかさせようかな? とは思ったんですが(をい)とりあえず、普通のおはなしになっちゃいました。
本当は今回にも犯罪っぽいのがあったんですけどね。なんかまとまっちゃったんで、それは第五夜のほうに……
うーん、たった3分半の曲。しかもそのビデオクリップからどんどん広がって、ねぇ。すでに原形はないですけど。
ま、このクリップをフルで見ればこのおはなしのこれからのネタがばれちゃうんですけどね。うぅ、みゃあさん鋭い。
ではでは、あと3夜(のびてるぞ、をい)おつきあいいただければうれしいです。