チャキ
弾装を差し込む音が、闇の中を響いていく。
「行くぞ」
彼は右手に拳銃を握っている。すでにロックは解除されていた。
「うん」
あたしはマシンガンを肩からかけると、バイクから降りた。
ホントウニ、イイノ?
あたしのなかのあたしが警告を告げている。
コレヲヤッタラ、モウオシマイナノヨ?
あたしは頭を振って迷いを打ち消した。
あたしは間違ってなんかいない!
ウィーン
機械的な音を立てて自動ドアが開いていく。
24時間営業のコンビニエンスストア。時間のせいか、店内に客は誰もいなかった。
レジの奥で冴えない学生らしき男が暇そうに煙草を吸っている。
彼はあたしに目配せをして、雑誌コーナーのほうへ歩いていく。
あたしも彼についていく。
店員はあたしたちのほうを胡散臭げな目でながめていた。あたしたち、というよりあたしたちの持っているモノの方を、なのだが。
あたしはダイエット・コークを手に撮ってながめた。
『そんなのやせるわけないじゃん。やせたいんなら牡中茶飲めよ』
『いーじゃん、好きなんだもん、これ』
彼との楽しい思い出が一瞬頭を過ぎる。
あたしは何も言わずにダイエット・コークをカゴにほうり込んだ。
「……いらっしゃいませ……」
店員はあたしを胡散臭そうに見ながら、カゴの中の商品を取り出していく。
あたしはマシンガンの先を店員に向けながら、彼からの合図を待っている。
「おい」
ふいに彼が声をかける。合図だ。
彼はカレーパンをあたしに向かって放り投げた。
弧を描くように飛んでくるカレーパン。
あたしは片手でそれを受け取ると、カゴの中に投げ入れる。
店員はこちらを上目遣いで睨みながらカレーパンをとりあげ、バーコードを読み取る。
イマダ!
あたしは決意すると、引き金を引いた。
大音量で飛び出す数個もの弾丸。店員のエプロンは真っ赤に染まっていく。
崩れ落ちる店員を眺めながら、あたしは何故か笑顔だった。
店内の監視カメラを撃ち抜くと、あたしは商品を、彼は現金を手に店を飛び出した。
涼しい風に吹かれながら、バイクが道を疾走していく。
あんなことがあった後だというのに、あたしと彼は何故か楽しそうだった。
「ほら、食べな」
バブル時代に建設が開始され、バブルの崩壊とともに造営が中止になった。その典型的な廃虚。
あたしたちは、その廃虚の一つに腰掛けていた。
彼がわたしにカレーパンを手渡してくれる。あたしはそれを受け取るとビニールを破り捨てた。コークをひとくち飲む。
「うまいか?」
彼は缶コーヒーの缶を灰皿代わりにしながら、煙草を吸っている。
「煙草はやめてっていったじゃない」
「そうだっけ?」
笑いながら煙を吐く。が、あたしの険悪な視線に気付いたのか、慌てて缶の中にほおりこんだ。
「ねぇ、電話してきてもいい?」
「PHS持ってたんじゃなかったっけ?」
「圏外。そこの角にあったよね?」
「あー、あったなー。いいよ、いってきな」
彼は横になったまま手を左右に振った。疲れているんだろう。
「いま、留守にしてまーす。ピーってなったらメッセージをどうぞっ!」
あたしの声。楽しそうな声。もう戻れない時間。
あたしは2、3言話すと、受話器を置いた。
空が、とてもきれいな夜。
あたしは、彼の胸に身をあずけて、目を閉じた。
(つづく)
ぽんたのあとがき\(^▽^)/
はい、第3話です。
あー、また延びるかもー、です。まいったまいった。
なんか前回と話がつながっていない気がしないでもないけど(^^;
コンビニ強盗してるし、あいつら。
さぁっ! もう戻れません、ひとり死にました。
堕ちていくふたり。でも「大好きな人と一緒なら、一緒に死ねるなら」というのがこの小説のテーマだったりします。だからいいんだ。多分(^^;
それでは、ロスト・ユニバース並みににかけない「願い事〜」ともども、よろしくお願いします。