恋心

第三夜

作・ぽんたさま


 

 

 チャキ

 弾装を差し込む音が、闇の中を響いていく。

 

「行くぞ」

 彼は右手に拳銃を握っている。すでにロックは解除されていた。

「うん」

 あたしはマシンガンを肩からかけると、バイクから降りた。

 

 ホントウニ、イイノ?

 あたしのなかのあたしが警告を告げている。

 

 コレヲヤッタラ、モウオシマイナノヨ?

 あたしは頭を振って迷いを打ち消した。

 

 あたしは間違ってなんかいない!

 

 ウィーン

 

 機械的な音を立てて自動ドアが開いていく。

 24時間営業のコンビニエンスストア。時間のせいか、店内に客は誰もいなかった。

 レジの奥で冴えない学生らしき男が暇そうに煙草を吸っている。

 

 彼はあたしに目配せをして、雑誌コーナーのほうへ歩いていく。

 あたしも彼についていく。

 

 店員はあたしたちのほうを胡散臭げな目でながめていた。あたしたち、というよりあたしたちの持っているモノの方を、なのだが。

 

 あたしはダイエット・コークを手に撮ってながめた。

『そんなのやせるわけないじゃん。やせたいんなら牡中茶飲めよ』

『いーじゃん、好きなんだもん、これ』

 彼との楽しい思い出が一瞬頭を過ぎる。

 あたしは何も言わずにダイエット・コークをカゴにほうり込んだ。

 

「……いらっしゃいませ……」

 

 店員はあたしを胡散臭そうに見ながら、カゴの中の商品を取り出していく。

 あたしはマシンガンの先を店員に向けながら、彼からの合図を待っている。

 

「おい」

 ふいに彼が声をかける。合図だ。

 彼はカレーパンをあたしに向かって放り投げた。

 

 弧を描くように飛んでくるカレーパン。

 

 あたしは片手でそれを受け取ると、カゴの中に投げ入れる。

 

 店員はこちらを上目遣いで睨みながらカレーパンをとりあげ、バーコードを読み取る。

 

 イマダ!

 

 あたしは決意すると、引き金を引いた。

 

 大音量で飛び出す数個もの弾丸。店員のエプロンは真っ赤に染まっていく。

 崩れ落ちる店員を眺めながら、あたしは何故か笑顔だった。

 

 店内の監視カメラを撃ち抜くと、あたしは商品を、彼は現金を手に店を飛び出した。

 

 涼しい風に吹かれながら、バイクが道を疾走していく。

 あんなことがあった後だというのに、あたしと彼は何故か楽しそうだった。

 

「ほら、食べな」

 

 バブル時代に建設が開始され、バブルの崩壊とともに造営が中止になった。その典型的な廃虚。

 あたしたちは、その廃虚の一つに腰掛けていた。

 彼がわたしにカレーパンを手渡してくれる。あたしはそれを受け取るとビニールを破り捨てた。コークをひとくち飲む。

 

「うまいか?」

 彼は缶コーヒーの缶を灰皿代わりにしながら、煙草を吸っている。

「煙草はやめてっていったじゃない」

「そうだっけ?」

 笑いながら煙を吐く。が、あたしの険悪な視線に気付いたのか、慌てて缶の中にほおりこんだ。

 

「ねぇ、電話してきてもいい?」

「PHS持ってたんじゃなかったっけ?」

「圏外。そこの角にあったよね?」

「あー、あったなー。いいよ、いってきな」

 彼は横になったまま手を左右に振った。疲れているんだろう。

 

「いま、留守にしてまーす。ピーってなったらメッセージをどうぞっ!」

 あたしの声。楽しそうな声。もう戻れない時間。

 あたしは2、3言話すと、受話器を置いた。

 

 空が、とてもきれいな夜。

 あたしは、彼の胸に身をあずけて、目を閉じた。

 

 

(つづく)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 はい、第3話です。

 

 あー、また延びるかもー、です。まいったまいった。

 なんか前回と話がつながっていない気がしないでもないけど(^^;

 コンビニ強盗してるし、あいつら。

 

 さぁっ! もう戻れません、ひとり死にました。

 堕ちていくふたり。でも「大好きな人と一緒なら、一緒に死ねるなら」というのがこの小説のテーマだったりします。だからいいんだ。多分(^^;

 

 それでは、ロスト・ユニバース並みににかけない「願い事〜」ともども、よろしくお願いします。 

 

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