願いごとひとつだけ

其の二

作・ぽんたさま


ウィルは封書の封を切った。

 

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 ウィル=ゴーダ様

 

 はじめておたよりします。

 “捜し屋”であるあなたに、捜して欲しいものがあるのです。

 詳しいことは、受けていただけたらお話いたします。

 それでは、良い知らせをおまちしております。

 

 クルカ村 プラム=コードウェル

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 封筒の中には、便箋が1枚と、2枚のソルト紙幣が入っていた。

 

「クルカ村? となりのとなりの村じゃなぁい」

「うーん、これだけじゃ何にもわかんねぇや」

 ウィルは封筒をテーブルに置いた。

「そうよねぇ……って、ウィル、字読めるようになったの?」

「まぁね。少しぐらい読めないと、日常に困るんだよ」

「そう……」

 ちょっと元気がなくなるマギー。

「あ、でもさ、まだ全然わからないからさ、マギーに読んでもらわないと」

 あわててフォローするウィル。

 マギーにとっては、ウィルのかわりに字を読むことがアシスタントの仕事なのだ。だからウィルが字が読めるようになったのが淋しかったのである。

「ほんとう?」

 マギーは上目遣いでウィルをじーっと見つめる。

「ほんとうさ」

「うぃるぅ☆」

 ウィルがやさしくマギーに言うと、マギーはウィルに抱きついた。

「あらあら、ふたりとも大胆ねえ」

 ジューンさんは、香茶をすすりながらのんきにそう言った。

 一方、バズは便箋に何度も目を通していたが、ウィルとマギーのいい雰囲気を見て慌てて口をはさむ。

「う、ういるっ、それで、この仕事受けるの?」

 気が動転しているためか、声が少し裏返ったりしてる。

 ウィルは、抱きついているマギーを引き離すと、香茶を一口飲む。

「え、どうしよっかなー。これだけじゃ何の依頼かわかんないし」

「えー? ウィル、受けないのぉ?」

「受けない、っていうわけじゃないけど、気が進まないだけだよ。ほら、この前も謎の依頼の仕事を受けに行ったろ?」

「あ、ヒュートンさんちのとき」

「そう、あの時は参ったよな。夫人が自分ちの庭で落としたスカーフを捜してって、ちょー広い庭を探し回るはめになったもん」

「そうよねぇ、あの時はほんっとに疲れたわよぉ」

 マギーの発言に、無言でうなずくふたり。

「あらあら、そんなことがあったのねぇ」

 ジューンさんはのんきにつぶやいた。

 

「それで、結局どうするのぉ?」

 ヒュートン家での話が一段落ついたあと、マギーが思い出したようにウィルに聞いた。

 ジューンさんは、話の途中で調味料を買いに出かけていったので、今は3人である。

「そうだよなぁ。このソルト紙幣がはいってなきゃ、丁重にお断りできたんだけど。」

 ウィルは紙幣をぴらぴら振りながら答える。

「あ、バズ。そういえば、ここら辺の最近の価値しらない?」

「え? ソルト紙幣の価値?」

 思い出すように腕を組む。こういう政治・経済関係には強いバズである。

「おととい、お父さんがソルト紙幣を受け取ってて、えぇと、」

「わかんないのぉ?」

「うーん、あ、そうだ。確か『ソルト紙幣なら、最近なら銀貨65枚ぐらいよ』ってお母さんが言ってた」

「じゃあ、前金で金貨1枚に銀貨30枚か……。困るなぁ」

 ウィルは、紙幣を封筒にしまった。

「しゃあない。とりあえず話だけでも聞きに行くかぁ」

「あ、わたしもいくぅ☆ アシスタントは必要よねっ!」

「ウィル、抜け駆けは許さないからなっ!」

 『受ける』と聞いたとたん、意気込むマギーとバズ。

「いや……ただ話し聞きに行くだけだし、それに、抜け駆けって……」

 ふたりの勢いにおされているウィル。とりあえず反論してみるが、ふたりとも聞いちゃいない(^^;

「楽しみぃ。いついくの? 早く行こう?」

「いや、あのね、マギー」

「ウィル、今回こそ負けないぞっ!」

「バズ、だから……」

 刺激に飢えているのか、俄然元気になるふたり。ウィルは頭をかかえた。

 

 結局、この仕事は受けることになった。

 

 次の日、3人は年老いたロバにまたがって街道を歩いていた。

 このロバは、バズの父であるフェナット医師が、遠くの街での診察用に使っているものである。今日は、基本的に外診のない日でなので、お願いして借りてきたのである。

「おっとっと、大丈夫かな? このロバ」

「きゃあ、舌かみそう」

「ぅぅぅ……気持ち悪いぃ」

 巧みにロバを操るウィル、文句を言いながらも楽しそうなマギー、何にのっても酔うバズ。

 ほどなく、ロバはクルカ村の入り口に辿り着く。ウィルたちはロバから降りて村の中に入っていった。

 クルカ村は、ヨルカ村とはちがって、林業が中心の村である。あちこちに多きな建物がたち、煙突から煙がのぼっている。製材工場だ。

 サンマリーズでつかわれる材木の約45%が、ここクルカ村の産なのだ。

 

「ところで、プラムさんのうちってどこなの?」

「さぁ、この手紙には何にも書いてねーもん」

 ウィルは封筒をぴらぴらしてみせた。確かに、差出人のところには“クルカ村”としか記されていない。

「意外に大きな村ね。ヨルカ村にはこんな工場なんてないもん」

 マギーはあたりをきょろきょろ見ながらウィルの横を歩いていく。腕はしっかりとウィルの左腕にまわされていたりする。

「ここには一回も来たことないから、俺にもわかんないや。あ、そうだ。バズはここに来たことあるんじゃないか?」

 まだ青い顔をしながらも、必死でついてくるバズ。

「(くそ、マギーと腕くんでぇ!!)……はぁ、はぁ……なに?」

「ほら、フェナット医師はここらへん一帯の診察もしてるだろ。だから、バズも来たことあるかな? って思ったんだけどさ」

「はぁ、はぁ……5、6回ぐらいなら、あるけど、同じ、患者、さんの、家し、か、ないよ。」

「そうか、バズなら詳しいと思ったんだけどな」

「ウィル、あんなのより、そこらへんの人に聞いたほうがいいんじゃない?」

 『あんなの』と呼ばれて落ち込むバズ。が、ふたりは前を歩いているため、気付かれもしないバズだった。

 

「あ、あの人に聞いてみようよ」

「そうだね」

 マギーが指差したのは、こちらに向かって歩いてくる黒いコート姿の男だった。

 とてとてとてっとマギーが小走りに駆けていく。

「あのぉ、すいません。あたしたち、プラム=コードウェルさんの家を探してるんですけど、知りませんか?」

「はい? あ、プラムさんの家? それなら、お……」

 男は茶髪の少女の方を見てやさしく微笑んだが、そのうしろにいる長髪の少年の顔を見て凍り付いた。

「……ごめん、おれ、ここの村の人じゃないんだよ。えーと、そうだ、ほら、そこの工場に働きに来てるんだ。だから、プラムさんの家って言われても、ちょっとわかんないな」

「えー、そうなんですか。わかりましたぁ」

 男はマギーに手を振ると、慌てた様子で歩き出した。

 ウィルの顔をもう一度見ると、そのまま村を出ていってしまった。

「なーんだ。クルカ村の人じゃなかったのね。残念」

「うーん、どうもひっかかるんだよなぁ」

「? うぃるぅ、どうかしたのぉ?」

「ほら、今の男の人の態度。急にごまかしたっていうのが見え見えだろ?」

「そういわれてみれば、そうよね。なんか慌てていたみたいだし」

 立ち止まり、うーんと悩むふたり。バズはやっと追いついた。

「僕、こんなときのために、患者さんちの住所メモしてきたんだ。ここの家の人に聞けばわかるんじゃないかな」

 懐から1枚のメモを取り出すと、ウィルたちに見せた。

 

 男は、村の外に出ると、すぐさま柵を超えて物陰に隠れた。

(あの少年……うぃるとか言われてたな……似てる……)

(あの顔もそうだが、何よりもあの雰囲気だ……)

(似てる……)

 男はしばらく隠れていたが、ウィルたちが歩き出したのに気付くと、こっそりあとをつけ始めた。

 

 

(つづきます)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 第2話です。

 とりあえず、おおまかなプロットはあるんだけど、まだラストが決まってない……

 キャラも、いまいち書き分けられてないような気がするしなぁ。

 ま、いいかな。がんばろっ!

 

 あ、そうです。やっとメールが復活しました。

 感想なり意見なり文句なり、なんでもいいから送ってくださるとはっぴーです。

 

 でわでわ、ぽんたでした〜。第3話も、おったのしみにぃー☆

 

 そのとき、ドアがいきおいよく開いた

 

マギー「ちょっとぉ、プロローグ読ませてもらったわよぉ!」

ぽんた「は、はい? あ、マギーちゃん」

マギー「原作の裏設定のキャラなんて使ってもいいの? 小林めぐみに折檻されるわよ」

ぽんた「“折檻”って……、マギーちゃんたら古風☆」

マギー「そう? ってそうじゃないの! いいの? 知らないわよ、キャラ違ってても」

ぽんた「う……、でも、いいんです。これはシュミで書いてるんだから」

マギー「ふーん。原作ファンに怒られてもしんないよぉ? じゃあ、あたし帰るね」

ぽんた「ばいば〜い」

マギー「キレイに書いてね☆」

ぽんた「へいへい」

 

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