願いごとひとつだけ

其の一

作・ぽんたさま


「ウィル、次はこの棚おねがい」

「はいはい」

 ウィルは首にかけたタオルでひたいの汗をぬぐった。

「まぎぃぃ、水、汲んできたよぉ……」

「ありがと、バズ。じゃあ、窓ふいといて」

「……うん」

 バケツを置いて、ちょっとふらふらした足取りで窓へ向かうバズ。窓を雑巾でふく。

「この部屋は、これからお兄ちゃんひとりのものになるから、せめて掃除でもしていかなきゃ。すぐに汚くなっちゃうもん」

 マギーは、今は畑に出ているはずの四男を思い浮かべて言った。

 ディーバ家四男であるジェイムは、現在16歳。サンマリーズ市立の高等教育機関を卒業後、この村で農業に従事している。

「そういやぁ、ジェイムは結構ずぼらなところがあるからなぁ」

 ウィルも、マギーと同じ部屋に住む四男を思い出した。

 ジェイムは性格のためか、ずぼらである。ひどいときは、部屋の約半分に資料だのなんだのがうず高く詰まれていたりもしたのだ。

「でも、マギーもよかったね。自分の部屋をもててさぁ」

「うん♪」

 マギーは嬉しそうにうなずいた。

 ディーバ家の長男が、この度めでたく結婚し、新居を王都ゼフィッツイに構えた。

 自分の仕事と相手の事情によるためなのだが、結果的にディーバ家にはひと部屋の空きが生まれたのである。

 マギーは、その部屋を自分の部屋にして! と両親に頼み込んだ。父親のグラハムはあまりいい顔はしなかったが、母親の「もう、マギーも年頃なんですから」という意見にしぶしぶうなずいたのだった。

 そのため、今日はマギーの部屋のお引越しである。当然ウィルとバズは手伝わされていた。

「おぉい、マギー! 机とイスはここでいいのかぁ!?」

「あ、お兄ちゃん! 今行くぅ」

 ジェイムの声に、マギーは駆け出していた。ジェイムは重い家具担当である。

 すでに、ベッドとタンスは運び込まれていた。ウィルは鏡などの小さ目の家具、バズは掃除を担当していた。

「ウィルぅ」

 とてとて駆けてくるマギー。今日は父親が留守なので、「家の中を走り回るんじゃないっ!」と怒られる心配がない。

「その棚、ちょっと持ってきて」

「は〜い。……よいしょっと」

 ウィルは、両手で棚をもちあげると、マギーの後をついていった。

 バズは、一生懸命窓を拭いている。さっきから、床拭き、埃払いばっかりやらされているバズだった。

 

「じゃあ、次はこっちの本をもってって」

「はいはい」

 ウィルは、紐で縛られた本の束をもちあげた。

「よいしょっと。これも部屋に置いとくの?」

「うん、そうよぉ。あ、このいちばん上にある本覚えてる?」

「え? あ、これ俺があげた本じゃん。まだもってたんだ」

「当たり前じゃない・だって、この本はウィルがあたしに買ってきてくれた本だもん。あたしの宝物よぉ♪」

 おしゃべりしながら荷物を運んでいくふたり。その後ろ姿にバズが声を掛ける。

「まぎいぃ、窓拭き終わったよぉ。僕もなんか運ぼうか?」

「いいわよバズは。危なっかしぃし。ねぇ」

「え? 俺はそんなことないと思うんだけど」

「ウィルは学校のバズを知らないからそんな事言うのよぉ」

「そーなの?」

「そーなの!」

 バズはかなり図星だったが、このままウィルにばかりいい格好をされたくない、という理由でか、部屋を見回した。

「あ、あれなら……」

 部屋の隅にあった金属製のごみ箱を持ち上げると、バズはマギーの新しい部屋をめざして歩き出した。

「平気、平気」

 前をしっかり見て、とてとて歩いていくバズ。

 しかし、前方をしっかり見ていたため、足元の障害には気付かなかったようである。

 「何か」につまづき、ひっくりかえるバズ。がらんという「何か」が倒れるような音がして、顔になにかの液体が飛び散った。

 手に持っていたごみ箱は、ひっくり返った拍子に手を離したために無事だった。

「どうしたの?」

 マギーは「何か」が倒れる音に驚いて部屋から顔を出した。ウィルもひょいと顔を覗かせる。

 そこには、上半身を白い液体まみれにしたバズが倒れていた。

「バズ! いったい何!?」

「ふえぇぇぇ、ねばねばして、どろどろして、きもちわるいぃぃぃ」

 廊下の隅においておいた“糊”をいれていたバケツが倒れているのを見て、マギーは瞬時に状態を理解したようだ。

「まったく! この忙しいのによけいなことしてぇ!。お兄ちゃん、バズを井戸まで連れてってあげて!!」

「あいよ。ほら、バズ、立てるか?」

 ジェイムはバズを連れて家の外に出ていった。そこへ、マギーの母親ジューン=ディーバが顔を覗かせる。

「あらあら、どうしたのかしら?」

「ママぁ、バズがバケツをひっくり返しちゃったのよぉ!」

「あぁら、そうなの。大丈夫かしら?」

「冷めたたから、たぶん平気よ。今、お兄ちゃんに井戸まで連れてってもらってるの」

 ジューンは倒れたバケツをひょいと持ち上げた。

「ウィルちゃん、今日はご苦労さま」

「いーえっ!」

「悪いわねぇ、いつもいつも。じゃあ、一段落ついたらお茶にでもしましょう」

「わかったわぁ、ママ」

 

「バズくん。なんか○射されちゃったみたいだねぇ」

 ジェイムは、バズにかかった白くてどろどろしてねばねばしている液体(糊)を落としながら冗談っぽく言った。

「なんですか? その……ガ○シャって?」

「なんでもないなんでもない。気にしないでいいよ」

 が、バズが真面目に聞いたため、慌ててぶんぶん手をふった。バズには下ネタはあまり通用しないようだ。からかいがいはあるのだが。

 石鹸を泡立てて、髪を洗う。糊が冷めていたことも幸いし、どうやら髪を切る必要はないようである。

「ありがとうございます」

「いえいえ、今度からは足元にも気をつけて歩けよ」

 ジェイムに頭をごしごしタオルでこすられながら、バズはブルーになっていた。

 

『いっただっきまーす』

 マギーとウィルの声がきれいにハモった。

 あのあと、マギーがバズに文句を言っていたが、ウィルがどうにかなだめて、作業を再開した。そして、ほぼ8割完成したところで、一旦休憩である。

 マギーの母、ジューンは3人のためにケーキを焼いてくれていた。

 香茶を飲み、ケーキを食べながらジューンと3人はとりとめのない話をしていた。

「あ、そういえば、今日の手紙にウィルちゃんの家行きの手紙が来てたわよ」

「え? 本当?」

「仕事? よかったわね」

 身を乗り出すウィルとマギー。ジューンは封書を1枚差し出した。

「差出人は、『プラム』さんだね」

 バズがめざとく封書の裏の文字を読む。

「仕事の依頼だといいな♪」

 ウィルが封書の封を切った。

 

 

(つづきます)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 第1話です。ちょっと長くなっちゃったかな?

 内容は、、、ないです(爆) ほんとに。

 だって、マギーちゃんのお部屋の引越し☆という

 何にも捜してないし。最後の最後にちょっとテイスト入ってるかな?

 

 と、ゆーことで、ぽんたでしたん☆ 

 

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