宝物

其の十

作・ぽんたさま


 

「本当に廃虚ね……」

 マギーが誰に言うでもなく呟いた。

 確かに、そこは一部の外壁以外は瓦礫と化していた。とても昔城塞都市であったとは思えない。

「想像してたとおり……というか想像以上にすごいよ」

「とりあえず、教会だけは無事だって言ってたね、えぇと、あのおばちゃん」

「エミルさんでしょ? うぃるぅ」

「あ、そうそう」

「でも、どこにあるのかな? 一面瓦礫みたいだよ」

 バズの言うとおり、ざっと見回したところ何も見えない。背の高い外壁と瓦礫の山のせいで視界がふさがれている。

 ウィルは御者に話し掛けた。

「とりあえず、この町のまわりぐるりと一周してもらっていい?」

「わかった。じゃあ、ぐるりと回るぞ。早く乗って!」

 急いで馬車に飛び乗った。一声馬が嘶くと、がたごと馬車が動き出した。

 

「あ、あれそうじゃない!?」

「え? どれどれ、マギー」

「ほら、あの斜め十字架のある建物っ!」

「あ、ほんとだぁ! 多分あれだよ! おっさん、ちょっと馬車とめてっ」

 馬車がとまると同時に、ウィルは馬車から飛び降りた。つづいてマギー、バズも降りてくる。

「ここから行けるかしら? ちょうど外壁も跡切れてるわよ?」

 マギーの言うとおり、ここの箇所だけ外壁がきれいに崩れ落ちている。最初の地点からちょうど真裏にあたる部分である。

 その壁の裂け目からは、離れた所にある建造物がはっきりと見えた。よぉくは見えないが、確かに建物のてっぺんには斜めに傾いた十字架が見て取れた。

「行ってみよっか。駄目なら駄目でいいし、馬車には乗り飽きたもん。ね、ば・ず☆」

「う、うん、行ってみようよ」

 極度に馬車に弱いバズ、あわてて首をぶんぶん振る。

「マギー、バズもOKだって!! じゃあ、御者のおじさん、行ってきまぁす!」

「行ってらっしゃい。気をつけていきなよ」

 御者は手を振って応える。ウィルたちは瓦礫の中へ消えていった。

 

「うわっ! 助けてぇ!!」

 情けない声が響きわたる。ウィルとマギーは「またか……」という顔をしながら、声のしたほうへ歩いていく。

 そこには、瓦礫の山から足を滑らして必死につかまっているバズの姿があった。

「バズ、平気ぃ?」

「へいきじゃないよぉ……」

「また落ちたのぉ? もう、しっかりしてよっ」

「まぎいぃ……ごめんよぉ……おねがいたすけてぷりーづ……」

「しょうがないなぁ、ほら、俺の手につかまって、早く」

 ぐいっと腕につかまるバズ、ウィルは必死な顔をして持ち上げる。瓦礫の出っ張りに足をかけ、やっとのことでバズは上にのぼった。

「きゃ〜☆ うぃるすごーい☆ 力もちぃ☆」

 マギーが瞳を輝かせながらウィルを褒め称えている。

 ウィルは、「お願い、ちょっとは手伝って」と思いながらも、バズに向かって諭すようにいう。

「バズ、危ないからさ、もう馬車んとこに戻れって、これで足を滑らせたのは6回目だぞっ!」

「そうよっ! そのたびに助けなきゃいけないウィルの身にもなってよっ!」

「いやっ、僕はウィルのライバルだからなっ! どっちが先に宝物を見つけられるか勝負だっ!」

 これだけは断固として譲らないバズだった。

 ウィルはやれやれという表情をしながら

「わかった、ついて来てもいいからさ、これ以上転ばないこと! いい!?」

「もちろん、これ以上ウィルに貸しはつくれないからなっ!」

 バズは胸を張って答えた。

「でも、そろそろ教会に近づいて来たわね。宝物って何かしらぁ」

「う〜ん、でも、そんなに期待しない方がいいかも。宝の地図ほどあてにならないものはないよ。まだ、村長さんちの生まれる犬とかに賭けたほうが確実に決まってらぁ」

「へぇ、でも、やっぱり楽しみ☆」

 その時、背後のほうで大きな音がした。ウィルとマギーはいや〜な予感を感じながら振り返った。

 バズの姿はなく、瓦礫の隅のほうに必死につかまっている手が見えた。

「まさか、ねぇ」

「まさか、ねぇ」

 ふたりとも、互いの顔をながめながら呟いた。ため息をつく。

「お〜い……、まぎい……うぃるぅ……」

 ウィルはものすごくいや〜な顔をした。

 

「ふぅ、やっと着いたぁ」

 ウィルは思わず伸びをした。

 あのあと、バズがさらに3回も転んだため、すっかり疲労が溜まってしまっているウィルであった。

「ウィル、おつかれさま。水でも飲む?」

 マギーがポケットからさっきの食堂で補給した水筒を取り出した。ウィルはそれを受け取ると一口飲み干した。

「ぷはぁ、ごちそうさま」

「いえいえ、どういたしまして☆」

 バズは、あちこち傷だらけで座り込んでいる。転んだ時に出来た傷だろう。持参した薬箱から薬草を取り出して傷口にこすりつけている。

「うぃるぅ、ありがとう。迷惑かけちゃって、ごめん」

「ん? いいよ。でも、帰りに転んでも助けないから♪(かなり本気☆)」

 ウィルはそう言うと立ち上がった。

 目の前には、斜め十字架のついた建物がそびえたっていた。硝子なんかはところどころひび割れてはいるが、建物自体はしっかりしている。

 マギーとバズも立ち上がった。

「それじゃあ、入ってみますか♪」

 ウィルはそう言うと階段を上っていった。錆びついたドアの金具に手をかける。

 マギーが、ウィルの手の上に自分の手を添えた。あわててバズも手を乗せる。

「それじゃ、1・2の3で開けよう。行くよ」

 無言で頷く2人。

「1・2の3!」

 ぎぎぎ……といやぁな音を立てながらドアが開いていった。

 

 

(つづきます)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 よしっ、今回はちゃんと話が進んだぞ!

 でも、これ書いている今って、世間一般ではX-DAYイヴと言われている日なんだよなぁ。うにゃあ☆ 今年もひ・と・り♪

 ま、いいや。イヴェントに行くし、それなりに楽しいだろうなぁ。

 

 それでは、あと2回、いや3回かな。それで終わるはずです。

 んじゃ、よいこのみんな、サンタさんが来るといいね☆ 赤い服着てトナカイを虐待する変態おじいちゃまがね☆

 

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