宝物

其の七

作・ぽんたさま


 

「着いたぁ!」

 ウィルは馬車から降りると、大きく伸びをした。

「ここが、港町エフェソスなのね。なんか活気があるわぁ」

 マギーが腕を前に組んで言う。ほっといたらどこかへ行ってしまいそうな雰囲気だ。

「そりゃあ、ここら辺でいちばん大きい港町だからなぁ。魚市場なんかもすごいぞ」

 そんな事を言いながら、御者のおじさんは馬車を店の裏に停めた。

「それじゃあ、俺はここの店で飯でも食ってるから、行ってきな。帰りに、顔出してくれよ」

「はーい。じゃ、行ってきま〜す」

 ウィルが元気よく返事する。マギーも手を振ったが、バズは無言でいた。どうやらまだ気分が優れないらしい。

 

 御者がお店に入ると、マギーが尋ねてきた。

「それじゃ、はじめましょ☆ まず、何すればいいの?」

「とりあえずは、シドンについての情報集めかな? ほら、バズの仕事だぞ!」

「……う……うん」

「頼んだからな。がんばれよっ」

「ま……まかせてよ。マギー、僕がんばるから……」

 しかし、マギーはバズを無視して、

「それじゃあ、ウィルはどーすんのぉ?」

「俺は捜し屋の星が導くままに行動するんだ。いつもみたいに」

「じゃ、決まりっ! わたしとウィルはいつも通り行動するから、ちゃんと聞き込みしなさいよっ!」

 そう言うと、マギーはウィルの手をひっぱって行ってしまった。

「え? やっぱり僕ひとりで聞き込みするのかよぉ」

 ひとり残されて呟くバズ。しかし、その呟きを聞くものは誰もいなかった。

 

「じゃ、まずは地図を買わなきゃ。この街って、2回ぐらいしか来たことないんだ」

「それなら、あっちに市場があるわ。きっと地図ぐらい売ってるわよ」

「そうだね。よし、行ってみるか」

 ウィルとマギーが向かった市場は、ここエフェソス最大の市場であるファンブル市場である。食料品から雑貨、さらに衣服・古書などもある。やや魚屋が多いのが、港町の雰囲気を出していた。

「すごい大きい〜。あ、あのぬいぐるみかわいい。そうだ、おじいちゃんにお土産買って行こうかな?」

 マギーはやや興奮気味にお店を眺めてゆく。

 女の人は、子供の頃から買い物が好きなのかなぁと考えてしまうウィル。

「ねぇねぇうぃるぅ、これ欲しい☆」

「え? どれどれ?」

 声のする方へいくと、マギーが道端のアクセサリーを見ていた。少し古い感じのデザインだが、かわいく作られていた、が、ウィルはそのデザインに見覚えがあった。

 ウィルは、売り子のおばちゃんに尋ねた。

「おばちゃん、これ、何のデザイン?」

「これかい? これはシドンっていうところにあったモニュメントをイメージして作ったんだよ。ほら、この斜め十字架なんかは、あそこの教会を参考にしてるんだよ。

 でも、今の子はシドンなんか知らないかぁ。坊やたちは知ってる?」

 売り子の言葉に、ウィルはぶんぶん首を縦に振った。マギーはその様子をぼーっと見ている。

「おばちゃん、シドンについてくわしい?」

「え? まぁ、ある程度は知ってるわよ。人よりちょっと詳しいくらいだけどねぇ」

「……。少し、時間ある? ちょっと聞きたいことがあるんだ」

「そうかい。でも、あたしゃお客さんとしかはなさないからねぇ。ほら、かわいい彼女になんか買ってあげな」

 売り子がニヤリと笑った。マギーがそれを聞いて喜ぶ。

「ちぇ、商売人だなぁ、わかったよ。マギー、どれ欲しい? プレゼントするからさ」

「ほんと? ウィルだ〜い好き☆ えぇとねぇ……」

 

 その頃、バズは地道に聞き込みを続けていた。人一倍人見知りするせいで、なかなか声がかけられなかったが、おばあさんのお手伝いやけが人の手当てなどをしながら世間話のように聞き出していた。

 医者の息子のため、ある程度の医療知識を持っていたことも幸いし、いつの間にかたくさんの情報とおだちんを手に入れていた。

「シドンかい? あの要塞都市のことかね? 今は廃虚になってるって聞いたけどねぇ」

「シドンは僕たちの遊び場になってるよ。ママは行っちゃだめだっていうけど、ときどき遊んでるんだ。え? がらくたばっかりしかないよ」

「一時期、盗賊団の根城になってたっていうし、子供たちには行かせないようにしてるのよ。あなたも行かない方がいいわよ。え? うわさよ。盗賊団の話は」

「シドンは、ずっと前の戦争で壊れちゃったんだって。教会とかべぐらいしか残ってないって。あたしは行ったことないけど、先生が言ってた」

「お化けが出るんだって。行ってみたいなぁ。お兄ちゃんはお化け怖くない?」

 

 ある程度情報も集まり、バズは疲れた様子で御者のいる食堂に入っていった。御者のテーブルのそばに腰を下ろす。

「お疲れさま。何か食べるかい? おなかすいただろ?」

「え? 平気です」

「……子供が遠慮するもんじゃないの! すいませーん、とりあえずジュース追加してくださーい」

 御者はウェイトレスに追加注文をして、バズのほうにフライドポテトの皿を置いた。

「ほら、いいから食べな。腹が空いたら何にもできないぞ」

「あ……すいません。ありがとうございます」

 バズは恐縮しながら皿に手を伸ばした。

「それもうまいけど、俺が食べたメルルーサの揚げ物もうまいかったぞ。メルルーサの香味揚げも追加な」

「はーい、ジュースとメル揚げひとつづつですね。ありがとうございます。しょうしょうお待ち下さいませ」

 

 

(つづきます)

 

 

 ◇ミス◇

 前回の作品において、一部“エフェソス”の表示が間違っているところがあったようです。申し訳ありません。

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 さて、やっと宝捜しについての聞き込みがはじまりましたぁ。

 今回登場した売り子さん、果たして何者なのか!?

 それは僕にもわかりません。気がついたら登場させていました。次回は売り子さんが活躍するかも!!

 

 ただ、そろそろおはなしのネタがつきかけています。

 ひょっとしたら、次作の前にエヴァかなんかのSSが突発的に送られるかもしれませんが、よろしくお願いしますね。

 

 ではでは、今年の新人賞を小松未歩に送りたいと本気で思っているぽんたがお送りしました。 

 

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