「うぃるぅ、本当に行っちゃうの?」
マギーは枕を抱きながらたずねた。
「あぁ」
ウィルは、短く返事をした。
月明かりに照らされた小さな部屋、その中でマギーとウィルは向かい合っていた。開け放たれたままの窓からは、まだかすかに寒さの残る風が吹き抜けていく。
「……行かないでぇ」
「まぎぃ……」
少し鼻声になったマギーの肩を、ウィルは抱き寄せながら
「でも、しょうがないんだよ。エドの奴の仕事もあるし、くそ親父の残した借金の工面もしなきゃいけないし、年に一回ゼフィッツイにまで出向かなきゃならないんだから」
「でもぉ……、淋しくなっちゃうもんっ!!」
「バズもいるし、学校には友達もいるんだろ? 兄夫婦に初めての子供が生まれるらしいし、1ヶ月なんてあっというまだよ」
マギーを慰めようと、やさしく諭すウィル。しかし、マギーはウィルをきっと睨みつけて、
「そりゃあ、ウィルはいいわよっ! ゼフィッツイに行ったって友達がいるだろうし、いろいろお仕事してれば1ヶ月なんてあっというまでしょうよ! でも、わたしは、わたしは……」
言葉を切って、ウィルの瞳を下から見つめあげる。
「大好きなひとがいなくなっちゃうんだもん! 1ヶ月も辛いよおっ」
「まぎぃ……」
「それに、それにウィルが二度と帰ってこないような気がして、私の手の届かないところまで飛んでっちゃうみたいな気がして、すんごくハラハラドキドキするんだもん!」
「大丈夫、マギーを置いてどっかに行ったりなんかしない。約束する。用事が済んだらすぐにヨルカ村に戻ってくるよ」
マギーの瞳をやさしく見つめながら、ウィルはぎゅっとマギーを抱きしめた。ぐずっと鼻をすすり、マギーは顔をほころばせた。
「じゃあ、キスして……!」
「っ!!!」
いきなりの発言にびっくりするウィル。
「いきなり、何を……」
「だ・か・らぁ、キスしてぇ」
瞳を閉じて、ピンク色のかわいいくちびるをちゅっとつきだして言う。ウィルは慌てて
「え? でも、うん、だけどぉ、」
「約束のキスよぉ! ぜったいこの村に戻ってくるって! 約束して!」
「うん、でも、ぼくたちまだ13歳だしぃ」
おろおろするウィル、しかし、やがて決意したようにマギーを抱き寄せた。
「じゃ、じゃあ、いくよ……」
「うん……」
マギーの顔がだんだん近づいてくる。少し大人っぽくなった幼なじみの表情にドキドキしながら、目を閉じた。
次の瞬間、ウィルのくちびるにやわらかいモノが触れた。
「んん……(これが、ウィルのくちびるなんだぁ、やわらかぁい)」
「…んっ(マギーのくちびる、甘い感じがする)」
くちびるが触れあうだけの軽いキス。
甘い、甘いキス。
約束だよ、ぜったいまた戻ってくるよね……
永遠とも思われた長い時間のあと、二人はくちびるをはなした。
照れたように視線を合わせないウィル。そんなウィルにマギーは満面の笑みを浮かべて抱きついた。
「うぃるぅ、だぁいすき!!」
「……ぼくも、マギーが好きだよ……」
まだまだ照れっぱなしのウィル。顔を真っ赤にして呟いた。まだ2月なのに(^^;
「でも……、約束する。マギーのために、何があってもこの村に戻ってくるよ。遠距離恋愛はキツイらしいから……さ」
「うぃるぅ(感涙)」
いつのまにかすっかりラヴラヴな二人。そんな設定じゃなかったのにぃ。
次の日の朝、村の教会前広場に、1台の馬車が到着した。
「やぁ、ヘンリー。朝早くから、ご苦労さんだね」
「エドさまにすぐに逢いたいとの、公爵さまからの伝言がありましたので」
「借金の催促かね? それなら行かんぞ」
「ご心配なく、そちらのほうは後ほどじっくりお話いたします」
御者のヘンリーと、ウィルの祖父エドウィンが無駄話をしている。その横でウィルがバズとマギーが別れを惜しんでいた。
「ウィル、ぜったい帰ってこいよ! ライバルがいないと淋しい、いや、つまらないからなっ!!」
「わかったわかった、心配しなくてもちゃんと戻ってくるから心配するなって」
バズを適当にあしらって、ウィルはマギーに耳打ちした。
「きっと戻ってくる。そうしたら昨日の続きをしようね」
マギーは耳まで赤くしながら、
「う、うん(きゃあ、うぃるったらだいたぁん)」
バズがそんな様子に怪訝そうな顔をするが、エドの声にはばまれた。
「おーい! うぃるぅ! 出発するぞぉ」
「うん、わかった! じーちゃん!」
ウィルはエドの声に応えると、バズとマギーに手を振った。
「じゃあね、また来月ぅ」
そのまま馬車にのりこんだ。ヘンリーが鞭を振るい、馬が高く嘶く。じょじょに小さくなっていく影を見つめながら、バズは呟いた。
「あ〜あ、さびしくなっちゃうなぁ、ねぇマギー」
返事がない。
「マギー!?」
姿もない。
「もしや……ついていっちゃったんじゃ……」
(つづくかな?)
ぽんたのあとがきぃ\(^▽^)/
どうもっ!
お初にお目にかかります! ぽんたと申します!
ふと頭に浮かんだおはなしをいきあたりばったりで書いていくとゆういわゆる神坂 一風に書いていきました。ぷろっととかはいっさいなし!
というわけで、せっかくですので投稿させていただいちゃいました。
元ネタは「必殺!お捜し人」(小林めぐみ/著・富士見ファンタジア文庫刊)です。
こんなへぼ〜いお話でよろしければ、みゃあさまに捧げさせていただきたいと思います。