宝物

其の一

作・ぽんたさま


よく晴れた日のお昼過ぎ、ウィル=ゴーダはひとりとぼとぼと村の学校へと向かう道を歩いていた。

昨日マギーに聞いたところによると、今日は確か午前いっぱいで学校は終わるはずだ。

 そんなことを考えていると、突然横から声をかけられた。

「よぉ、ウィルじゃないか。この間はありがとな」

「あれぇ、ホフマンさんじゃないですかぁ。ちゃんと家に入れてもらえましたぁ?」

 ホフマンと呼ばれた若者は、タオルで顔を拭きながらウィルを手招きした。

「あぁ、いれてもらえた。助かったよ、あの時はな」

「いえいえ、どーいたしましてっ! でも結婚指輪なんてなくしちゃだめだよ。でもピアズ夫人に見つからなくてよかったねー」

「しっ! それより握り飯でも食うか?」

「あ、ほんとぅ? ありがとー!!」

 言うやいなや、さっそくホフマンの弁当箱に手を伸ばすウィル。ホフマンは苦笑しながら、

「でも、助かったよ。これからもなんかあったら頼むよ。お礼も弾ませてもらうしさ」

 ウィルはにっこり笑った。大人に頼りにされている!ということがうれしかったみたいで、必要以上に胸を反らせて

「えっへん。これからも捜し屋ウィル・ゴーダにおまかせあぐふっ」

 胸をそらせすぎてむせるウィル。そんな姿を見てまだまだ子供だ……とホフマンは笑った。

 

「あー、おいしかったぁ」

 おなかをさすりながら、にこにこ歩くウィル。すると遠くから賑やかな声が聞こえてきた。女の子と男の子の二人だ。

「なんでだよぉ、今日はぼくんちで顕微鏡を見るってゆったじゃないかぁ」

「そんな約束、した覚えなんかないわよ!!」

「一月前から約束してたじゃないか」

「知らないわよぉっ、そんなこと!」

「まぎいぃ……ひどいよおぉ」

 すがりつくように追いかけてくる眼鏡をかけたひ弱そうな少年――バズ=フェルナットに、茶色い髪の少女――マギー=ディーバは何も言わずに裏拳を叩き込む。

「し・つ・こ・い・わ・よ。しまいにはぶつわよっ!」

「いまぶったじゃないかぁっ」

 眼鏡を直しながら、小さな声で文句を言うバズ。しかしマギーににらまれて慌てて黙りこくる。

 ウィルは「あいかわらずだなぁ」と思いながら、二人に声をかけた。

「やっほー! 仕事しなぁい?」

 

「あ、うぃるぅーっ!!」

 ウィルの姿を見つけ、マギーは手を振りながら走っていく。

「まぎいぃぃ 待ってよぉぉ……」

 仕方なくバズも走る。普段あんまり運動してないせいか、すぐに息が上がってしまう。

「うぃるぅ☆ おしごとがあるの?」

「ん? そうだよ」

「ほんと? ほんと? 今回は何を見つけるのぉ?」

「教えて欲しい?」

「聴きたいぃ〜!! 教えてよぉ」

 楽しそうに話している二人。バズは内心ムカムカしながらも、ようやくウィルのところにたどり着いた。

「はぁ…はぁ…、うぃる…何の…よう…な…の…」

 息も絶え絶えに問いただすバズ。ウィルは苦笑しながら水筒を差し出した。

「とりあえず、水飲みなよ。何言いたいか分かんないしさ」

「はぁ…はぁ………ありがと…」

 ごきゅごきゅ水を飲むバズ。マギーは情けないものを見るような瞳でバズを見ている。

「バズ……医者の息子なら、医者の不養生って言葉知ってる?」

「ぷはぁ、ありがとう。 もちろん知ってるさ。説明してあげようか? マギー」

「ううん。 知ってるからいい」

 得意げに話し出しそうとしたが、あっさり断られてちょっと淋しいバズ。泣きそうな瞳で遠くを見ている。

 ウィルはしばし眺めていたが、なんか雰囲気が悪くなりそうなので、あわてて話を切り出した。

「そうそう、マギー、バズ、仕事しない?」

「だからぁ、なんのしごとよぉ! 早く教えてよぉ」

「仕事? またなんか捜すの?」

くいつきのいい二人の返事に満足そうにうなずくと、ウィルは懐から一枚の紙を取り出した。ちょっと古そうな、黄ばんだ紙である。表面には何か模様のものが見える。

 マギーとバズは懸命に紙を覗き込んだ。

「なにこれ? へんな絵〜」

「これって地図じゃないか。ウィル、これは何の地図なんだよぉ?」

「何だと思う? 考えてみてよ」

「宝の地図ね。そうなんでしょ?」

「まさかぁ、そんなわけないよぉ、ウィル、もったいぶってないで教えろよぉ」

 ふふふ、と含み笑いをもらすウィル。人差し指をピンと立て、地図の一転を指差した。

「×印だわっ!!」

「え? じゃ、まさか……」

「そう」

 ウィルは無意味に胸を張ってうなずいた。

「これこそ、宝の地図なのだ!!」

 きゃー、と叫びながら拍手するマギー、あきれた様子でウィルを見るバズ。

「あれ、バズは信じてないの?」

「だって、宝の地図なんて非科学的な……」

 慌てて理由を考えるバズ。ウィルはニヤリと笑みを浮かべて、

「じゃ、とりあえず今回の仕事について話そうか。とりあえずここから一番近い家は、と……」

「あ、あたしんち、近いわよぉ」

「OK。じゃあ、とりあえずマギーん家に行こう。詳しく話してあげるからさ」

 

(つづきます)

 

 

 ぽんたのあとがき\(^▽^)/

 

 ということで、本編でございます。

 あのおはなし(約束だよ。)は、あくまで外伝です。

 って言うか、こっちを先に読んでいただかないと何が何やらさっぱりということに昨日気がつきました。

 みゃあさま、これを読んでくれているありがたぁい皆様、申し訳ないです。

 

 さて、それでは、皆様には馴染みが薄いと思われる「必殺!お捜し人」シリーズのオリジナルストーリーでございますが、ちょくちょく書いていこうと思っていますので。

 

 見捨てないでください 

 

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