ウィルは封書の封を切った。
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ウィル=ゴーダ様
はじめておたよりします。
“捜し屋”であるあなたに、捜して欲しいものがあるのです。
詳しいことは、受けていただけたらお話いたします。
それでは、良い知らせをおまちしております。
クルカ村 プラム=コードウェル
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封筒の中には、便箋が1枚と、2枚のソルト紙幣が入っていた。
「クルカ村? となりのとなりの村じゃなぁい」
「うーん、これだけじゃ何にもわかんねぇや」
ウィルは封筒をテーブルに置いた。
「そうよねぇ……って、ウィル、字読めるようになったの?」
「まぁね。少しぐらい読めないと、日常に困るんだよ」
「そう……」
ちょっと元気がなくなるマギー。
「あ、でもさ、まだ全然わからないからさ、マギーに読んでもらわないと」
あわててフォローするウィル。
マギーにとっては、ウィルのかわりに字を読むことがアシスタントの仕事なのだ。だからウィルが字が読めるようになったのが淋しかったのである。
「ほんとう?」
マギーは上目遣いでウィルをじーっと見つめる。
「ほんとうさ」
「うぃるぅ☆」
ウィルがやさしくマギーに言うと、マギーはウィルに抱きついた。
「あらあら、ふたりとも大胆ねえ」
ジューンさんは、香茶をすすりながらのんきにそう言った。
一方、バズは便箋に何度も目を通していたが、ウィルとマギーのいい雰囲気を見て慌てて口をはさむ。
「う、ういるっ、それで、この仕事受けるの?」
気が動転しているためか、声が少し裏返ったりしてる。
ウィルは、抱きついているマギーを引き離すと、香茶を一口飲む。
「え、どうしよっかなー。これだけじゃ何の依頼かわかんないし」
「えー? ウィル、受けないのぉ?」
「受けない、っていうわけじゃないけど、気が進まないだけだよ。ほら、この前も謎の依頼の仕事を受けに行ったろ?」
「あ、ヒュートンさんちのとき」
「そう、あの時は参ったよな。夫人が自分ちの庭で落としたスカーフを捜してって、ちょー広い庭を探し回るはめになったもん」
「そうよねぇ、あの時はほんっとに疲れたわよぉ」
マギーの発言に、無言でうなずくふたり。
「あらあら、そんなことがあったのねぇ」
ジューンさんはのんきにつぶやいた。
「それで、結局どうするのぉ?」
ヒュートン家での話が一段落ついたあと、マギーが思い出したようにウィルに聞いた。
ジューンさんは、話の途中で調味料を買いに出かけていったので、今は3人である。
「そうだよなぁ。このソルト紙幣がはいってなきゃ、丁重にお断りできたんだけど。」
ウィルは紙幣をぴらぴら振りながら答える。
「あ、バズ。そういえば、ここら辺の最近の価値しらない?」
「え? ソルト紙幣の価値?」
思い出すように腕を組む。こういう政治・経済関係には強いバズである。
「おととい、お父さんがソルト紙幣を受け取ってて、えぇと、」
「わかんないのぉ?」
「うーん、あ、そうだ。確か『ソルト紙幣なら、最近なら銀貨65枚ぐらいよ』ってお母さんが言ってた」
「じゃあ、前金で金貨1枚に銀貨30枚か……。困るなぁ」
ウィルは、紙幣を封筒にしまった。
「しゃあない。とりあえず話だけでも聞きに行くかぁ」
「あ、わたしもいくぅ☆ アシスタントは必要よねっ!」
「ウィル、抜け駆けは許さないからなっ!」
『受ける』と聞いたとたん、意気込むマギーとバズ。
「いや……ただ話し聞きに行くだけだし、それに、抜け駆けって……」
ふたりの勢いにおされているウィル。とりあえず反論してみるが、ふたりとも聞いちゃいない(^^;
「楽しみぃ。いついくの? 早く行こう?」
「いや、あのね、マギー」
「ウィル、今回こそ負けないぞっ!」
「バズ、だから……」
刺激に飢えているのか、俄然元気になるふたり。ウィルは頭をかかえた。
結局、この仕事は受けることになった。
次の日、3人は年老いたロバにまたがって街道を歩いていた。
このロバは、バズの父であるフェナット医師が、遠くの街での診察用に使っているものである。今日は、基本的に外診のない日でなので、お願いして借りてきたのである。
「おっとっと、大丈夫かな? このロバ」
「きゃあ、舌かみそう」
「ぅぅぅ……気持ち悪いぃ」
巧みにロバを操るウィル、文句を言いながらも楽しそうなマギー、何にのっても酔うバズ。
ほどなく、ロバはクルカ村の入り口に辿り着く。ウィルたちはロバから降りて村の中に入っていった。
クルカ村は、ヨルカ村とはちがって、林業が中心の村である。あちこちに多きな建物がたち、煙突から煙がのぼっている。製材工場だ。
サンマリーズでつかわれる材木の約45%が、ここクルカ村の産なのだ。
「ところで、プラムさんのうちってどこなの?」
「さぁ、この手紙には何にも書いてねーもん」
ウィルは封筒をぴらぴらしてみせた。確かに、差出人のところには“クルカ村”としか記されていない。
「意外に大きな村ね。ヨルカ村にはこんな工場なんてないもん」
マギーはあたりをきょろきょろ見ながらウィルの横を歩いていく。腕はしっかりとウィルの左腕にまわされていたりする。
「ここには一回も来たことないから、俺にもわかんないや。あ、そうだ。バズはここに来たことあるんじゃないか?」
まだ青い顔をしながらも、必死でついてくるバズ。
「(くそ、マギーと腕くんでぇ!!)……はぁ、はぁ……なに?」
「ほら、フェナット医師はここらへん一帯の診察もしてるだろ。だから、バズも来たことあるかな? って思ったんだけどさ」
「はぁ、はぁ……5、6回ぐらいなら、あるけど、同じ、患者、さんの、家し、か、ないよ。」
「そうか、バズなら詳しいと思ったんだけどな」
「ウィル、あんなのより、そこらへんの人に聞いたほうがいいんじゃない?」
『あんなの』と呼ばれて落ち込むバズ。が、ふたりは前を歩いているため、気付かれもしないバズだった。
「あ、あの人に聞いてみようよ」
「そうだね」
マギーが指差したのは、こちらに向かって歩いてくる黒いコート姿の男だった。
とてとてとてっとマギーが小走りに駆けていく。
「あのぉ、すいません。あたしたち、プラム=コードウェルさんの家を探してるんですけど、知りませんか?」
「はい? あ、プラムさんの家? それなら、お……」
男は茶髪の少女の方を見てやさしく微笑んだが、そのうしろにいる長髪の少年の顔を見て凍り付いた。
「……ごめん、おれ、ここの村の人じゃないんだよ。えーと、そうだ、ほら、そこの工場に働きに来てるんだ。だから、プラムさんの家って言われても、ちょっとわかんないな」
「えー、そうなんですか。わかりましたぁ」
男はマギーに手を振ると、慌てた様子で歩き出した。
ウィルの顔をもう一度見ると、そのまま村を出ていってしまった。
「なーんだ。クルカ村の人じゃなかったのね。残念」
「うーん、どうもひっかかるんだよなぁ」
「? うぃるぅ、どうかしたのぉ?」
「ほら、今の男の人の態度。急にごまかしたっていうのが見え見えだろ?」
「そういわれてみれば、そうよね。なんか慌てていたみたいだし」
立ち止まり、うーんと悩むふたり。バズはやっと追いついた。
「僕、こんなときのために、患者さんちの住所メモしてきたんだ。ここの家の人に聞けばわかるんじゃないかな」
懐から1枚のメモを取り出すと、ウィルたちに見せた。
男は、村の外に出ると、すぐさま柵を超えて物陰に隠れた。
(あの少年……うぃるとか言われてたな……似てる……)
(あの顔もそうだが、何よりもあの雰囲気だ……)
(似てる……)
男はしばらく隠れていたが、ウィルたちが歩き出したのに気付くと、こっそりあとをつけ始めた。
(つづきます)
ぽんたのあとがき\(^▽^)/
第2話です。
とりあえず、おおまかなプロットはあるんだけど、まだラストが決まってない……
キャラも、いまいち書き分けられてないような気がするしなぁ。
ま、いいかな。がんばろっ!
あ、そうです。やっとメールが復活しました。
感想なり意見なり文句なり、なんでもいいから送ってくださるとはっぴーです。
でわでわ、ぽんたでした〜。第3話も、おったのしみにぃー☆
そのとき、ドアがいきおいよく開いた
マギー「ちょっとぉ、プロローグ読ませてもらったわよぉ!」
ぽんた「は、はい? あ、マギーちゃん」
マギー「原作の裏設定のキャラなんて使ってもいいの? 小林めぐみに折檻されるわよ」
ぽんた「“折檻”って……、マギーちゃんたら古風☆」
マギー「そう? ってそうじゃないの! いいの? 知らないわよ、キャラ違ってても」
ぽんた「う……、でも、いいんです。これはシュミで書いてるんだから」
マギー「ふーん。原作ファンに怒られてもしんないよぉ? じゃあ、あたし帰るね」
ぽんた「ばいば〜い」
マギー「キレイに書いてね☆」
ぽんた「へいへい」