二日後の朝、ウィルは教会の時計の前に立っていた。
現在時刻は8時。約束の時間より1時間ぐらい早い。
「あら、うぃるちゃん、おはよう。今日は早いのねぇ」
「あ、ジェームズんちのおばちゃん。おっはようございま〜す」
礼拝にやってくる人たちと笑顔で挨拶を交わす。
「今日はおしごとかしら?」
「そう、さる貴族さまの御依頼で捜し物すんの」
「あら、そうなの。今度、なにか必要だったら、うちのジェームズも使ってやってね。じゃ、がんばってね」
「うぃるぅ、おはよ〜〜〜〜っ!!」
遠くのほうから、マギーが手をぶんぶん振りながら走ってきた。腕にはバスケットがさげられている。ウィルはにっこり笑って手を振りかえした。
「はぁ、はぁ、まにあったぁ?」
かなり遠くから走ってきたので、さすがに息を切らしている。
ウィルは腕まくりをして、時刻を確認する。
「今、8時37分だから、全然平気だよ」
「あ、よかったぁ。それより、ウィルが腕にしてるの、何?」
「ん? これのこと?」
腕に巻かれている、小さな機械をマギーに見せるようにする。それを見てマギーがうなずく。
「これは、腕時計って言って、時間を知らせる道具なんだ」
「時計って、教会にある、あの大きなやつ?」
「そう。あれと同じ仕組みなんだ。最近、王都で発明されたんだって。いつでも携帯できるから便利だからかな? この前エドのお客さんにもらったんだ」
「すごい小さいのね。でも、便利ねぇ。あ、ちゃんと秒針まであるんだぁ。いいなぁ、うぃるぅ、ちょうだい☆」
「これだけは、だめ。あげられないから、見るだけにしてお願い」
「えーーーー!?」
不平そうな声を上げているわりに腕時計を楽しそうに見るマギー。いじりたそうに手を動かしている。
「おぉい、うぃるぅぅ、まぎいぃぃ……」
遠くから声が聞こえてきた。見ると、バズが大きな荷物を背負ってやってくるのが見えた。
「バズ、おはよー」
「遅いわよぉ! バズ早くぅ!!」
マギーに急かされ、走ってくるバズ。でも、とても走ってるようには見えない(^^;
「バズ、何そんなに持ってきたんだ?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「ちょっと、バズ大丈夫?、とりあえず、水でも飲んだほうがいいわよ」
そう言って、マギーは水筒から水を注いで、バズに手渡した。バズはカップを受け取ると、一息に飲み干した。少しむせる。
「ごふっ! はぁ、はぁ……マギー、ありがと……」
ようやく落ち着いたバズは、背中から荷物を降ろした。
「これ? お父さんに言ったら、これだけは持っていった方がいいっていうから、もってきたんだけど……」
ウィルは、人一倍優しく、心配症なフェナット医師の姿を思い出して含み笑いをもらした。バズは自分の荷物の量とふたりの荷物の量の差に驚いている。
「ま、いいや。それより、もうすぐ9時になるなぁ。そろそろ来ていい頃なんだけど」
ウィルは街道のほうを見て呟く。
「え? なんか来るの?」
「いちおう、捜す日が決まったからってスレイ夫人に伝えたんだ。そうしたら、馬車を出してくれるって言うからお願いしたんだけどなぁ」
「まだ時間じゃないもの。もう少しまってみましょうよ」
マギーはそう言うと腰を下ろした。ウィルとバズもそれにならった。
やがて、街道の彼方から一台の馬車が姿をあらわした。ウィルたちを見つけると、御者のおじさんは手を振った。
「遅くなってすまないな。今日一日、よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしく♪」
「よろしくね☆」
「よろしくおねがいしますぅ…」
ウィルたちは、それぞれ荷物を持って馬車に乗った。(バズの荷物は、御者のおじさんに手伝ってもらった)
「それで、まずは何処へ行かれますか?」
調子のいい御者のおじさんがうやうやしく尋ねる。
「んー。それじゃ、とりあえずエフェソスに行ってくれる?」
「港町エフェソスかい? わかった。じゃ、行きますよ?」
御者が鞭をふるう。一声いななくと、馬車はゆっくり動き出した。
「なんで、すぐにシドンに行かないの?」
馬車が動き出してからしばらくして、マギーがたずねた。
「ん? だってさ、いきなりシドンに行って何にもなかったら悲惨じゃん。とりあえず情報収集情報収集♪ ほら、バズの好きな情報収集だぞ」
「えーっ! 僕がやるのぉ?」
「そ。俺は捜し屋の星にしたがって行動するから」
当然、といった面持ちでバズを見るウィル。となりでマギーがこくこく肯いている。
「捜し屋の星って……そんな非科学的な……」
「あら、バズは信じてないのぉ? あたしはウィルを信じてるわ」
「ほらほら、そういうと思った。なら、科学的で地道な捜査はバズに決定!」
ぱちぱちぱち、とマギーが拍手する。なんか、うまく利用されてるような気がするバズだった。
「おーいっ! そろそろエフェンスにつくぞぉ!」
「はーいっ!!」
そう言えば、何時の間にか磯の香が漂ってきている。ウィルは元気よく答えた。
「マギー、バズ、そろそろ着くって。ちゃんと降りる準備しろよぉ」
「はーいっ!!」
元気よく答えるマギー、返事がないバズ。
不思議に思ってバズのほうを見ると、バズは青い顔でうずくまっていた。
「バズ、また酔ったのぉ?」
「おーい、バズ、平気か? しっかりして、もう少しでつくからな」
「……うん……」
力なく答えるバズ。
「ねぇねぇ、海が見えるよ。すご〜〜い!!」
そんなことはお構いなしに、マギーは、窓の外を眺めていた。
(つづきます)
ぽんたのあとがき\(^▽^)/
あはははははは……進んでいない……
とりあえず、この次からは宝捜しをはじめます!
多分たいしたおはなしにはならないと思うけど……。
まぁ、お楽しみにしていただけると嬉しいです☆
☆今年の顔! といえば米良。もののけ〜の米良です☆
さて、いまだにメールの使い方がわからないぽんたなのですが、もし、読んでいただいて、何か感想でも残りましたら、掲示板の方に書いていただけると幸いでございます。