【Doll】

第7話Aパート

作・setuさま


 

空は青く、雲1つないとまではいかないが、すみきっていた。

陽射しが起きたときよりも高く、もう、お昼ちかくになっていた。

今は、6月。

ついこの間、僕は誕生日をむかえて14才になったばっかりだった。

 

ネルフという国は、1年中暖かい気候で、6月〜9月は特に暑い。

冬は、雨の量が増えて、じゃっかん気温が下がるだけだった。気温のわりに湿度が低いので1年を通してすごしやすい。

観光も産業の1つだ。

それよりも盛んなのが、人形。

人形を中心にいろんな産業で成り立っていた。

 

いま

バルコニーに通じるガラス戸が全開になっている。

淡い水色のカーテンが外からはいってくる風で、なびいていた。

バルコニーに、僕とアスカは2人で座っていた。ミサトさんとレイがリビングに来るのを待っていた。

バルコニーはそこで小さなパーティーができるくらいの広さがあった。

 

 

いまもアスカは僕の右手をはなさない。

 

 

はなさないどころか右腕に抱き着いている。

アスカはどうしてはなそうとそないのかな。

 

 

アスカが僕の右手をはなしてくれたのは、僕がシャワーをあびるためにバスルームにはいったときだけ。

アスカもいっしょに入ってこようとしたが、ミサトさんとレイがそれを止めた。

ドールといっても、女性なのだからと、レイがアスカに言い聞かせていた。

レイはやっぱり、姉さんみたいだ。

 

「いや〜〜。シンジといる〜。」

 

アスカは幼い子がだだをこねるようにそう言った。

青い瞳にうすうっらと涙がにじむ。

アスカは僕の姿がみえなくなったことで不安になったらしい。

 

レイはそんなアスカの様子をみて、かつての自分を思い出す。

 

(わたしも、よくマスターの後ろばかりおっかけていた・・・。

でも、マスターはそれでは駄目だといった。ドールも心を持って生きている。

マスターにたよっていては生きてはいけないと・・・。

「自分の意志を。レイ・・・。」と、あの人は言った。わたしに。)

 

「不安になることはないわ。誰もあなたとマスターを引き離したりしない。

ただ、1日中、マスターといっしょにいるわけにはいかない。

わかるでしょ。あなたにも心があるのなら。」

 

普段、決して僕やミサトさん以外に感情をあらわすことのないレイ。

アスカにはじめて話しかけている。

僕はバスルームにいたから知らないが、ミサトさんはこのことにとても驚いたらしい。

 

レイの心になにか変化がおこったのは確か。アスカの存在で・・・・。

 

「本当?」

 

アスカが確かめるように聞き返してくる。

レイはアスカが安心するように何度もうなずいていた。

まるで、姉のように、母のように・・・・・。

 

そして・・・・・・・。

 

僕はあとでミサトさんから聞いて驚いたが、直接その様子を見ていたミサトさんは忘れることができないといっていた。

 

 

微笑

 

 

僕以外には笑顔をむけなかったレイが、アスカに微笑んだのだ。

 

「シンちゃんに向けるときの笑顔となんかちがってたわね。」

 

と、ミサトさんはいう。

なにが違ってたんだろう。僕はその場にいなかったからわからない。

レイが僕に笑いかけてくれるのは、僕を愛してくれてるから。

マスターである父さんが残した忘れ形見だから・・・・。

 

じゃあ、僕が父さんの息子じゃなかったら?

 

レイは僕を愛してくれただろうか?

 

わからない。そんなことは・・・。僕は父さんの息子。

かわることのない現実・・・・、事実。

父さんは死ぬまぎはに、「シンジを頼む。レイ。」と、レイに言ったそうだ。

僕がミサトさんに引き取られ、その生活に慣れはじめたころに、レイが教えてくれた。

もし、父さんがそういわなかったら、狂い死にしてただろうとも、レイは言った。

 

僕では本当にレイの心を理解できない。

僕は、ドールじゃないから・・・。

アスカの存在がレイの心の氷をとかしてくれるかもしれない。

 

 

僕は・・・・、レイの水にはなれない。

 

 

アスカと出会ってしまったから・・・・・・・。

もう、レイからどんなに愛情をそそいでもらっても、それは家族の愛情以外のなにものでもないとわかってしまった。

 

アスカ・・・。

僕の大切なパートナー・・・・。

 

 

アスカは僕以外の人から優しくされたのが初めてだったせいか、最初、レイの笑顔にとまどっていたが、レイがアスカの頭をなでたとき・・・・。

 

アスカは微笑みかえした。

 

 

 

アスカの微笑み・・・・。

 

 

アスカの笑顔は不思議・・・。

アスカの笑顔は光り。

微笑むだけで光りが生じたような感覚。

目には見えないアスカのもってうまれた力なのかもしれない。

 

アスカを見ていると、生きてると感じる。

それは目覚めてまもないアスカの意思なのかもしれない。

生きようとする想いは、輝きがある。

アスカは輝いてみえる。

 

 

種から芽吹いた緑葉・・・・。

 

 

朝日をあびて咲いた朝顔・・・・。

 

 

雨あがりの草花・・・・。

 

 

アスカはサクラのようにもろくてはかない心を持っている。

ひまわりのように明るく、元気なアスカ。

コスモスのように優しく、僕をつつんでくれる。

そして、雪どけに咲く一輪の黄色い水仙のように可憐。

 

 

青の宝石・・・・。

その輝きは、ともされつづける光。

アスカの笑顔が光り、希望になればと思った。

 

 


 

第7話aパート書きました。

今回は会話はないです。シンジの一人語りになっちゃいました。

アスカのことを表現するのに苦労した。

一応、さくら、ひまわり、コスモス、水仙と春夏秋冬の順に咲く花を選んでます。

また、話が分裂!(T_T)

 

アスカの存在がシンジ、レイ、ミサトにどう影響をあたえるか・・・。

今はこのことで頭がいっぱいです。ではでは。

 

 

By setu

 

 

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