【Doll】

第3話

作・setuさま


 

茶色のロングの髪に白い肌の少女・・・・・・・・・。

 

写真では、僕と似たような年頃にみえた。

目の前の少女も・・・。

 

「僕と同い年なのかな。」

 

それにしても、きれいだ。

なんだろう、この気持ちは・・・・・・・・。

 

それは、愛情。

 

少女をみているだけで泣きたいほど幸せ。

僕は自覚する。

 

「好きなんだ。この子のことが・・・。」

 

触りたい、とゆう衝動にかられそうになる。

愛しい心がやまない。体中の血が逆流しそうなほどに。

 

触れる。

 

髪に、そして、その顔に。

 

「え・・・!」

 

白い肌に触れ、僕は驚いて手を引っ込めてしまった。

 

「冷たい。」

 

少女の体は冷たかった。そして、息をしていなかった。

「どうして・・。まさか。」

 

ド−ル?

 

(「ドールは人の想いで心が魂が宿る。ドールも人間と同じだ、シンジ。」)

 

レイを目覚めさせたとき、父さんが僕にそう言ったのを覚えている。

レイがいきているのは、父さんの想いの証。

少女に再び視線をむける。

裸身であったことに、今更ながら気づく。

慌てて、少女から視線をそらす。

 

人の想いで目覚める。

 

「僕の想いで起きてほしいな。」

 

青い瞳をみせてよ。

声をきかえてよ。

僕を見てよ。触れてよ。

名前を呼んでよ。

 

「アスカ・・・・。」

 

僕は無意識のうちに心に浮かんだ名前をつぶやいていた。

アスカと・・・。僕の知らない名前。

これが、少女の真名。

父さんがいっていた。ドールには名前はない。あるのは、真名。

マスターになる者にしかわからないという。

ドールがマスターを選択する。

 

「アスカ」とゆう呼びかけに反応するかのように、少女の長いまつげがふるえ、ゆっくりとその瞳がひらかれる。

 

2つの青い宝石。

青い瞳。

 

 

心の中にいた女の子が成長した姿で僕の前にいる。

存在するこの喜び。

アスカと呼んだ少女にまた見とれてしまっていた。

心がみたされていく。

 

アスカが僕を見つめかえす。

目覚めた少女は、視界に僕をとらえると突然、胸の中にとびこんできた。

僕にまぶしい笑顔をむけて・・・・・。

 

「うわ!」

 

僕は、抱き着かれた勢いで、今日、2度目の転倒。

今度はしりもちをつく形になってしまった。

いきなりのことに、呆然とする。

 

「マスター。」

 

嬉しいといわんばかりにアスカは僕に抱きつく。

「やっと、きてくれたのね。」

 

戸惑う僕に気づいてないのか、アスカの言葉はつづく。

 

「わたしを見て、マスター。今度は忘れないで。

もう、心を閉ざしたりしないから・・・・・。」

 

アスカは僕をマスターと呼んでいる。じゃあ、僕の想いで命が宿った?

先ほどまでの冷たいアスカの肌を思い出す。

確かめるかのように、僕はアスカの顔にふれる。おそるおそるアスカの頬に、首筋に。

 

「暖かい。」

 

安心したのか僕はアスカの細い腰に手をまわし、自分のほうへと引き寄せて強く抱き

しめた。暖かい肌、アスカの鼓動を感じる。

すべてが愛しくてたまらない。

僕の鼓動も感じる。

2人の鼓動が1つになって聞こえる。

 

「マスターと同じ鼓動だわ。」

 

アスカも同じことを思ったらしい。

アスカほどに愛しく想った人は今までいただろうか。

わからない。

僕は、レイは大切。でも、家族としての愛情。ミサトさんやリツコさんも。

愛情をそそいでくれなかった父さん。どんな人だったのか覚えていない僕の母さん。

優しい人たちにかこまれた幸せな日々。でも、なんにもなかった日々。

ただ、時間だけが過ぎって行ったこの9年間。自分からなにもしなかった、つまらない時間。幼いころの記憶がかけている僕。

 

もしかしたら、アスカはそんな僕の心のなにかを満たしてくれるのかもしれない。

青い瞳をキラキラさせてアスカは笑顔で僕を見つめている。

洋服をとおして、アスカのやわらかさを感じる。

どくん、僕の鼓動がはやくなる。

 

なんとか理性を保って、しどろもどろになってアスカに言う。

 

「君はなに?」

 

アスカの笑顔が凍り付いた。

僕にはわからなかった。アスカはなぜ、僕を待っていたのかが。

アスカはさっき、「今度は忘れないで」と言った。

それは、どうゆうことなんだろうか。

 

「マスター・・・。」

 

アスカの宝石のような瞳から涙があふれだす。

その涙さえ、けがれない美しいもののように感じる。

 

「なぜ、わたしを呼んだの?」

 

僕はアスカに自分がなにをいったのかやっと気づいた。

それは、アスカを否定する言葉。

ドールの生きる存在理由はマスターがドールを必要とするから、ドールがマスターを必要とするから・・・・・・。

お互いが求め合って初めてドールに命が宿る。

 

僕がアスカを必要としたからアスカは今ここにいるんだ。

 

「ごめん。アスカ。」

 

「僕がアスカを呼んだのに・・・・・・・。」

 

僕は泣きじゃくるアスカを安心させようと、また、抱いた。

「アスカ」 それか少女の目覚めの鍵。少女の名前となる言葉。

アスカは僕の胸に顔をうずめる。

 

「マスター。わたしにはマスターしかいないの。だから、わたしを見て!」

 

アスカはこの世に生をうけたばかりの赤子と同じといってもいい。

目覚めて最初に、親ともいえるマスターから「君は何?」といわれて、傷つかないわけがない。拒絶されたと同じ。

 

「アスカ。」

 

愛しいと想ったのは僕の真実。

家族の愛情とはまったく違うもの。

夢のなかの女の子が実在すると知った瞬間の嬉しさ、喜びに偽りはない。

アスカは僕が「アスカ」と言うのを聞いて、嬉しそうに笑ってくれた。

 

「もう1度、わたしのことを呼んで・・・・・。」

 

確認するかのように、僕にお願をするアスカ。

僕の表情が、ほころんでいくのがわかった。

やっぱり、かわいい。

 

「何度でも呼んであげるよ。アスカ。

それとね、アスカ。僕のことはシンジでいいよ。」

 

「シンジ?」

 

アスカが聞き返してくる。

 

「うん。シンジでいいよ。」

 

「シンジ・・・・・。マスターじゃなくて・・・・・・・。シンジ・・・。」

 

 

アスカは恥ずかしいのか頬をほんのり赤くして、はにかみながら僕の名前と呼んでくれた。

 

そして、あふれんばかり笑顔を僕にむけてくれた。

その、笑顔には僕に対する愛情であふれていると思った。

 

 

 

 

第3話終わり

 

 


 

第3話書きました。

ふう、なんだかスラスラと書けて。)^o^(

やっと、アスカがしゃべってくれて、わたしも嬉しいです。

でも、まだまだ、元気なアスカじゃない。(T_T)

勝手にシンジが動いて・・・・。

アスカも勝手にシンジに甘えてるし。

まあ、いいか。

幸せそうだし。

 

3話のここが気になる、おかしいのではなどの、アドバイス&感想くれると嬉しいで

す。5、6月はいろいろ忙しくなってくるので、書けるときにssを書こうと思って

います。

 

第4話をお楽しみに。

 

By setu

 

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