【Doll】

第4話Aパート

作・setuさま


 

僕は5才以前の記憶が欠けている。

父さんのことは覚えているのに、母さんのことは覚えていない。

医者の診断結果は、原因不明。

心のなにかが原因だろうと僕を診た医者はいった。

幼いころのトラウマ。

なにがあったのか、考えようとすると頭が痛くなる。

 

「ムリしなくていいわ。シンジくん。」

 

ミサトさんはこういうけれど。

どうかな。

心の傷か・・・・・。

ミサトさんは幼いころの僕を知っている。記憶が欠けてしまった原因も知っているのかもしれない。でも、僕はそのことについて聞いたことがなかった。聞けば、ミサトさんは教えてくれるだろう。でも・・・・・・。

 

恐い・・・・、のかもしれない。

思い出すのが。

思い出したくないから思い出せないのかもしれない。

 

 

記憶とゆう、パズル。

 

 

僕はいつもなにかをさがしていた。

ミサトさんとレイの3人でくらすようになってからずっと。

 

日ましに焦燥感は強まって、僕の心は色あせていく。

なにかが足りない。

心の1部が欠けているような感覚。

 

僕の心をみたしてくれるもの・・・。どこかにあるはずだと思っていた。

そして、見つけた。

僕の心のイチブを。

 

 

「アスカ・・。」

 

 

「なーに? シンジ。」

 

 

よべばかえってくる声。

愛しいモノの音。

 

僕はアスカが裸だったことを思い出す。

自分がきている真っ白なジャケットをアスカの肩にかける。

なるべく、アスカのほうを見ないように。

14才だけど、まだまだ、大人とはいえないけど、僕だって男だ。

異性の裸は刺激が強すぎる。たとえ、相手がドールでも。

ドールといっても、アスカは女の子なんだと、あらためて思ってしまう。

 

アスカは、そんな僕の行為がうれしいのか「ありがとう。」と言った。

腰を抱いていた腕をはなす。

アスカの折れそうなほどの細い腰。

女の子ってふれたら壊れてしまいそうだな。

そんなことを考えていると・・・・。

 

「シンジは覚えてないのよね?」

 

突然、不思議なことをアスカは僕にきいてきた。

 

 

「え?」

 

僕はなんのことかわからなくて、アスカにききなおす。

ききなおした僕をみて、アスカはどこか淋しそうな顔をする。そして、すぐに微笑む

アスカ。

 

「なんでもない。ごめんなさい、気にしないで。」

 

そういわれても・・・・。気にならないといったら嘘になる。

でも、アスカがそういう以上、僕はたずねることができなかった。

いずれ、アスカから話してくれると信じた。

 

 

「ねえ、アスカ。僕はアスカの‘ミズ’になりたい。」

 

 

アスカの瞳をまっすぐにみて話す。

アスカは何事かと、目をぱちくりさせる。

 

「水?」

 

よく変わるアスカの表情は、みていてあきない。アスカは生きているのだと実感させ

てくれる。

 

 

「花のつぼみが水をあたえられるのをまっているように・・・・・・。」

 

僕が最後まで言い終わらないうちに、アスカがその続きを口ずさむ。

 

 

「僕にとってアスカは、‘ミズ’となる存在なんだ。」

「わたしにとってシンジは、‘ミズ’となる存在なの。」

 

ユニゾンする言葉。

 

 

僕はその場に立ち上がった。そしてアスカに右手をさしのべる。

アスカは躊躇することなく、僕の手に右手をかさねた。

 

「行こうか。」

 

「うん。」

 

 

アスカも立ち上がる。

どこへ行くか言ってもいないのに、アスカは僕の手をとってくれた。

それがなによりも、今の僕には嬉しかった。

 

 

アスカの手と1枚の写真を手にして、僕は父さんの仕事部屋をあとにした。

 

 

 

第4話aパート終わり

 


aパート、書きました。

今回は話が短くてすいませんです。

わけたほうが区切りがいいかと思って、わけてみました。

はやく、ほかのメンバーを登場させたいSETUです。

2人は勝手にいちゃついてるし・・・。(^_^;)

アスカがかわいくてしかたないこの頃です。

 

By setu

 

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