【Doll】

第9話Cパート

作・setuさま


 

いつもはアスカがバスルームからあがってくるのを待ってから朝食を食べる。

 

今日は、僕はアスカを待たずにレイの作ってくれた朝食を食べた。

食べ終わると、僕はクロスに行く準備をするために部屋へむかった。

ちょうどその時、ミサトさんが起き出してきた。

 

髪はといでないからボサボサ、化粧もしていない。いつものごとく、タンクトップに短パン。

 

ミサトさんの寝起きの顔。

まだ、眠そうなミサトさん。

ミサトさんは自分の年齢を気にしているけれど、ミサトさんはスタイルもいいし美人だ。

気にすることなんかないのにと思う。でも、女性にとって、20代と30代の差は大きいらしい。年を1つとるたびに、時間のながれの速さを感じるみたいだ。

 

僕はミサトさんの露出の多い姿に目のやり場にこまってしまう。

毎日、目にしていても慣れないものはやっぱり慣れないものである。

おそらく、ミサトさんはこの後、もうひと寝入りするだろうな。

 

「クロス」の閉店日。

 

土日と営業しているから、毎週月曜日は閉店日。

ミサトさんはネルフの3本の指に入る人形師。

人柄も気に入られるのか、ミサトさんの人気はすごい。平日でも、クロスの店内はお客でにぎわう。

土日ともなると、わざわざ、隣国からやってくるお客までいるくらいだ。

それほどに、ミサトさんはあまたいる人形師の中でも有名だった。

 

 

アスカがバスルームから出てきた。

アスカは湯加減に、とてもうるさい。熱すぎてもぬるすぎても駄目。

すぐ怒る。お風呂をわかすのはいつも僕・・・。

バスタオルを身体にまきつけただけの姿。

ミサトさんといい、アスカといい・・・・・・・・・。

注意してもしかたないか・・・・・。

アスカはリビングルームへ行った。そして、数分後・・・・。

 

ドタドタドタドタドタドタ・・・・・・・。

 

家の中にアスカの走る音がひびく。

 

ガラッ!!

 

勢いよく扉がひらかれる。

やっぱり来たか。

 

「シンジーーーーーーー!!」

 

アスカのいいたいことはわかっていた。でも、僕はあえていわなかった。

アスカが先に文句をゆうだろうから。

 

「どうして、さきにご飯たべちゃうのよー。いっしょに食べる約束じゃない!」

 

アスカのむくれた顔。

 

(かわいい・・・。)

 

つい、そう思ってしまう。アスカがどんな表情をしても、その美しさ、愛らしさは損なわれない。そして、その気高さも。

プライドの高いアスカ。でも、それがアスカの魅力の1つでもある。

 

 

最近、アスカの表情が増えてきたような気がする。

「怒る」ということも、最初は僕らにみせなかった感情。

「怒る」という感情を知らなかったのかもしれない。人と接していくうちにアスカが覚えた感情だろう。

最初は、アスカは泣くか笑うかだけだった。それ以外の感情はなかったような気がする。

 

アスカのキャンバスがいろどられていく。

 

確実にアスカの心は成長していっている。

おそらく、レイやミサトさんも感じていることだろう。

 

人との触れ合い。

 

視点をかえる鍵。

 

多様化する思考。

 

アスカだけではなく、僕も必要とする大切なこと。

 

想像、創造。

 

 

簡単なようで難しいこと。人は1つの見方にとらわれやすいから・・・。

以前の僕もそうだったように。

今は違う。アスカがいてくれるから、家族がいるから・・・・・。

僕を支えている存在があるから、僕は多様なことをみることが出来るようになった。

考えるようになった。

そして、答えが1つではないと知った・・・・・・。

 

 

「シンジ!聞いてるの!!」

 

つい、ボーッとしてしまった。僕はなにかを考えていると周りのことをつい、忘れてしまうことがある。今もそうだった。

 

「ごめん。アスカ。また、考え事してた。」

 

僕はアスカに素直に謝った。その方がアスカも怒らないし、僕も気持ちがいい。

謝ることは情けなくなんかない。みじめじゃない。

勇気のいることだと思う。あやまってばっかりも考えものだけど、自分が悪いと認めてそして謝る・・・・・・。

僕は「ごめん」が口癖だった時期があった。

謝ればすむだろうと考えていた。でも、それでは意味がないと気づかされた。レイのおかげで。

 

 

「もう、シンジったら。ちゃんと聞いててよね、わたしの話を。」

 

 

気がつくと、アスカの顔が僕の目の前にあった。アスカは僕の顔を覗き込んでいる。

アスカの顔が近付いてたことさえ気づかなかったなんて・・・・。

僕はよっぽど、集中して考え事をしてたんだな。

思わず、アスカにキスしたくなった僕はアスカの頭に手を回した。それを察したアスカは、瞳をとじる。

 

重なるふたつの唇。

 

ほんのふれただけのキス。

でも、僕とアスカにとってはながく感じる至福のとき・・・・。

 

はなれる僕とアスカ。

 

お互いやっぱり恥ずかしい。でも、お互いの目を見て、僕とアスカは笑みをもらした。

 

 

しばらくして、僕からアスカに話しかけた。

 

「ごめんね、アスカ。先にご飯食べて・・。今日は人形教室の日なんだ。だから。その準備をしたくて早めに食べたんだ。今度からは、ちゃんとゆうから。ね、アスカ。」

 

「わかったわ。わたしも理由もきかないでゴメンね。シンジ。」

 

アスカも僕に謝る。

 

「ところで、アスカご飯食べたの?」

「あ!忘れてた。まだ、たべてなーい。」

 

やっぱり・・・・。アスカはさっき、すぐに僕を追いかけてきたからなあ。

 

「食べてきたら?その間に僕は、準備してるからさ。」

 

アスカはしばらく考えていたが、「うん。」とうなずいた。

 

「そのかわり、わたしも人形教室にいってもいい?」

 

そういえば、アスカはまだクロスに行ったことがない。人形教室に連れて行くついでに、お店の中を見せてあげたいな。

 

「いいよ。アスカはまだ、クロスに行ったことなかったよね。一緒に行こう。」

 

アスカの笑顔が僕にむけられる。

嬉しそうにアスカはうなずくと、いそいそと部屋を出ていった。

そういえば、アスカはまだ着替えていなかった・・・・・。仕方ない。

僕は洋服ダンスからアスカの服を何着か選んでアスカの後を追っかけた。

 

 

 

 

リビングルーム

 

 

 

「今日のご飯なーに?」

 

アスカはテーブルの上においてある果物の皿からさくらんぼをとって口にふくんでいる。

レイはアスカのために朝食を運んできていた。

ミサトさんは、もう、食べ終わっていた。そして、ソファーにねっころがりくつろいでいる。

 

「今日は、サンドイッチに、野菜のジュースよ。アスカ。」

 

レイがにっこりと微笑みながらアスカに言った。

レイの笑顔は、なぜか見ている者を落ち着かせる。僕もそうだ。アスカも例外ではないらしく、ちょこんと椅子に座っている。

レイに笑顔をむけられるとなぜか嬉しい。胸がくすぐったくなる。

見守っていてくれていると感じる。だから、嬉しいのかもしれない。落ち着くのかもしれない。

 

レイは肉類が嫌いだ。だから、レイが作るサンドイッチにはハムやシーチキンが挟まれていない。

レタス、トマト、きゅうり、りんご、卵、アスパラ、などが挟まれている。

パンの表面はうっすらと焦げ目がつけられていた。

 

「美味しい☆」

 

アスカは一口食べて、思わず言った。

ドールは食べ物を食べても食べなくても生きていける。でも、味覚があるらしく、アスカもレイもよく食べる。特に、甘いものには目がない。

こうゆうところは、やっぱし女の子だなあと思う。僕も甘いものは好きだけど、2人はそれ以上に好きみたいだ。

 

 

「アスカ、洋服ここのおいておくからね。」

 

「うん。」

 

アスカは返事も途中で、朝食をまた食べはじめる。

 

 

 

「あ、そうだ!アスカ。」

 

「なに?シンジ〜。」

 

アスカがサンドイッチをほおばりながら僕のほうを振りかえる。

 

「人形教室は午前で終わるから、午後からどこかにでかけようか。」

 

アスカの顔がぱっとかわる。

 

 

僕にしかみせないアスカの最高の微笑・・・・・。

 

 

アスカの笑顔は光り。いつわりのない真実。

 

 

「うん!」

 

 

アスカは元気よくうなずくと、服を手にしてそそくさと隣の部屋へ着替えに行ってしまった。

レイがそんなアスカをほほえましそうに見ていた。まるで、娘をもった母親のように。

レイは本当にアスカのことがかわいいみたいだった。

妹のようで、娘のようなアスカを愛しているレイ。

 

 

「あっついわねえ〜。」

 

ミサトさんがわざと僕に聞こえるように大声で言った。

 

ひやかし。

 

でも、そのひやかしの中にミサトさんの優しさはあることを僕は知っている。

ミサトさんもある意味で素直に思っていることをいえない人。

 

 

素直に・・・。

 

 

簡単なようで難しい。思ったことをそのまま口にするのは。

思考を言葉で表現することは、とても大切だ。

どんなに、相手を思っても、愛していても、伝わらないことってあるんだ。

言葉にしても、言葉不足で誤解を招くことだってある。

 

言葉って難しいな。

 

自分の思っていることを伝えることの難しさ、大切さ。

 

 

僕はいつからそう考えはじめたんだろうか?

必要なことしかいわなかったレイ。

偽りを言わなかったレイ。それが、安心をまねく。でも、嘘じゃないからきついこともある。

 

 

言葉はときには凶器になる。

 

 

心の凶器。

 

 

傷つけるつもりはないのに・・・・。

故意に言葉で傷つける人もいるだろう。でも、僕やレイは、無意識のうちに相手を傷付ける。言葉が足らなくて、言っている意味が思うように伝わらなくて・・・。

 

僕も泣いてしまう。

 

アスカも、ストレートに物事をいう。

でも、いつかは「嘘」をつくことを覚えるだろう。「ごまかす」ことも覚えるだろう。

本心をかくしてしまうこともでてくるだろう。

あんまり嬉しくないことだけど、それは、アスカの成長を促すもの。

 

 

アスカ。

 

僕の・・・・・。

 

 

いつもそばに・・・・

 

 

どんなアスカだって僕はうけとめる。

どんな時も、生きていこう。命を持っているものは歩いていかないといけない。いや、歩んでいくんだ。

どんな時だって、時間は過ぎていくんだから。

 

いつか大人になる僕。

 

体は成長しないアスカ。

 

でも、歩いていこう。一緒に・・・・・。

 

 

それが僕の答え。

 

 

 

第9話Cパート終

 


 

第9話Cパートかきました。

すいませーん。まだ、9話終わりじゃありませーん。m(__)m

わたしが1番かきたい人形教室の話に今回も入れなかった・・・・。

やっとシンジとアスカが起きてきて、ご飯食べて、いちゃつて・・・・・。

これから出かけるのさ。(^_^;)

なんで、こんなに話がのびたのか・・・・。下書きのときにはなかったシンジのいろんな考えがのびちゃったんですね。

シンジの考え=setuの考え、ですね。ほとんど・・・・・。(^_^;)

ま、いいかあ。終わったことはきにしなーい。

ではでは、次回こそかくぞ!人形教室!!

チャットの友人よ、今回は甘いシーンは気に入っていただけたかな?

 

 

Bysetu

 

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