【Doll】

第8話Bパート

作・setuさま


 

アスカが僕らの家にきて、数日が過ぎた。

ここ数日で、アスカとレイは、すっかり仲良くなっていた。

レイは必要以上のことを言わない。

本当につらかったりしない限りは、僕やミサトさんに話してこない。

何でも、一人で抱え込んでしまうクセがある。

 

レイにとって僕はなんだろうか、と以前に聞いた。

その時、レイは・・・・・・・。

 

 

「シンジはあの人が残してくれた大切な・・・・・・。」

 

 

レイはそこで、言葉を1度きる。

僕はレイがつむいだ言葉がとても嬉しかった。今でも、はっきりと覚えている。

 

 

「大切な家族なの・・・・・・・。」

 

 

レイの言葉。

 

 

 

家族ってなんだろう。

僕にとっての家族・・・・・・。

父さんと母さん。

 

血のつながり。

 

2人とも僕の幼いころに死んでしまっている。親であることは事実。

でも、家族っていえるのかな。

なにかが違うと思う。

 

振り向いてくれなかった父さん。

記憶の欠片にも存在しない母さん。

 

でも、レイを見ていると、ふとした瞬間に脳裏に浮かぶビジョン。

僕に似た面影。

いや、僕が似ているのかな。

ショートの綺麗な女性の笑顔。

 

レイの笑顔ととても似ていた。

でも、どこかが違う。

この女性が母さんなんだろうか、そう思っていたときに見つけた1枚の写真。

 

グリーンハウス。

 

かつての我が家にあったもの。

父さんと母さん。そして、僕とアスカにそっくりな女の子。

おそらく、この女性が僕の母さんなのだろう。

とても、懐かしく感じている僕がいる。

父さんのことを思い出しているときに抱いたことのない気持ち。

幼子が迷子になって、やっと、親と会えたときのような感じ。

 

 

思い出したい。母さんのことを。

 

 

顔は忘れていたけれど、ミサトさん達から母さんのことはいろいろ聞いていた。

思ったとおりの人だった。

慈愛にみちた女性・・・・・。

僕は母さんとどんなことを話したんだろう。

母さんと過ごした数年間。失った僕の記憶と同じだけの時間。

 

 

物心がついたとき、すでに僕のそばにはレイがいた。

僕は他人と触れ合うのが苦手だ。

 

 

初めてレイに会ったとき、そういえば僕は・・・・・・。

プラチナの髪。

見慣れた後ろ姿だと思った。

僕は迷わずその女性にかけよって抱き着いた。

 

「母さん。」

 

そう、確かに僕は、レイに初めて会ったときこう言った。

 

思い出した・・・・・・・・。

 

いつのころだったんだろう。わからない。

「母さん。」と、言ったとき、レイはとても悲しそうな表情をした。

でも、レイは僕の頭をなでると、抱きしめかえしてくれた。

 

「シンジ。これはユイではない。生きた人形、ドールだ。」

 

父さんはレイを「これ」と言った。

一見、人間に見える精巧な人形、からくり人形のドール。

生きているのに、心をもっているのにモノ扱いした父さん。

僕は、この時初めて父さんを嫌った。憎んだかもしれない。

 

僕の記憶するぬくもりは、レイのぬくもり。

父さんと母さんのぬくもりは知らない。

 

父さんはレイに対して、優しく名前を呼んで仲むつまじくしているかと思えば、時々、まるで汚らわしいものであるかのように、レイを見ていた。

 

レイはだんだん、僕以外に心を開かなくなっていった。

僕はレイを一人占めできて嬉しかった。

そして、気がついたら僕とレイは、寄り添うように生きていた。

 

グリーンハウスで・・・・。

 

ミサトさんが僕とレイを迎えにくるまでは。

 

 

 

血のつながり。それはある意味では大切。

でも、性格や人柄。内面は血のつながりとはあまり関係ない。

 

 

心のつながり。

 

 

目にははっきりと見えない。

不思議と感じることできるもの。

 

ミサトさんとレイ。

 

もし、家族と呼ぶのなら、この2人だ。

僕の大切な家族。

守りたい。

 

ミサトさんは僕が生まれたころから僕のことを知っている。

僕が失った記憶の欠片。

ミサトさんが知っていることもあるらしい。

ミサトさんはよく僕のことをからかう。でも、それはお互いのスキンシップ。

気を許しあっているから・・・・・・。

長い時間を共有してきた家族だから。

からかわれて、困ることもある。戸惑うこともある。でも、僕は怒ったことはない。

つい、笑ってしまう。ミサトさんだから仕方ないなと思ってしまう。

 

ミサトさんも僕と同じように両親がいない。

ミサトさんが子供のころになにかの事故でなくなったそうだ。

恋人の加持さんと2人で僕を育ててくれたミサトさん。

加持さんは、僕にとってお兄さんみたいな存在。

ミサトさんやレイの次に大切な人だ。

今は放浪していて行方不明だけどね。

 

 

 

新しい家族、アスカ。

 

 

 

不思議な存在。

数日前に出会ったばかりなのに、僕らの中にもうすっかり溶け込んでいる。

氷のようなレイの心をもとかしたアスカ。

本当の姉妹のような2人。

同じ人形師に作られたのだから、本当の姉妹ということができる。

 

 

ミサトさんも変わりつつある。

加持さんと連絡がつかなくなって以来、久しぶりに楽しそうに笑うのをみたような気がする。

ミサトさんが僕のことをからかったりすると、アスカが怒ってミサトさんと衝突。

必ず口論になる。

時には、取っ組み合いの喧嘩にまで発展した。

2人の喧嘩は絶えないけれど、2人ともとても生き生きとしている。

ため息の多かったミサトさんが、ため息をつかなくなったとにレイが気づいた。

 

 

みんな何らかの影響をアスカから受けている。

 

僕とアスカ、レイ、ミサトさん・・・・・。

 

 

 

新しい家族、アスカ・・・・。

 

 

 

アスカにとっては、初めての家族・・・。

 

 

僕はまだまだ子供だけど、これから大人に近付いていく。

大切な人たち守りたい。

 

守りたい。

 

 

それが今の僕の願い・・・・・。

 

 

 

 

第8話bパート終

 


bパート書きました。

今回は書いていてなんだか疲れました。

家族について考えるのは難しいわ。(^_^;)

両親がいない子供の気持ちはわからなし。わたしは両親いて、仲がいいからなあ。

だから、考え方がかたよっているかもしれないんで、そこのところをご理解ください。

 

さて、アスカを家族として迎えた3人(シンジ、レイ、ミサト)。

これからどうなっていくのか・・・・。(^.^)

過去を振り返った話ばっかりだったから、次回はちゃんと続き書きますね。

 

By setu

 

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