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「じゃあ、あらためて紹介するよ。」
僕はアスカとソファーに腰掛けている。当然、アスカは腕に抱きついている。
リビングの真ん中にソファーが2つあって、テーブルをはさんで、みんなが座っている。
バルコニーからリビングへと、心地よい風が吹いてくる。
ミサトさんのこめかみがひくついていた。
(子供のくせに、いちゃいちゃして・・・・。一人身にはつらすぎるわ・・。)
いつもは感情を顔に出さないレイは、どうしてかわからないが、ほほえましそうに僕
らのことをさっきから見ている。
僕は着替えて、水色ポロシャツに白のジーパンをきている。
アスカは、レモン色の半袖のセーターに、茶色のミニのプリーツスカートを着てい
た。
ミサトさんが10代のときに着ていた服が何着かあって、その中からアスカに似合い
そうなものを僕が選んだ。
僕が選んだせいもあるのか、アスカは喜んでその服を着た。
「むかって、右側に座っているのが葛城ミサトさん。
僕の保護者になってくれてるんだ。」
ミサトさんにはめずらしく、タンクトップではなく若草色のカットソーを着ている。
「また、会えたわね。ミサトでいいわ。よろしくね、アスカ。」
アスカはミサトさんを見て一言。
「はん!若作りしてるわね。」
ミサトさんのこめかみに怒りのマークができるのを僕は見た。
慌ててフォローをする。
「アスカ、そんなことをいったらミサトさんに失礼だろう。
確かに、ミサトさんは29才だけど。」
一言が多い僕。フォローどころか、ますますミサトさんを怒らせてしまう。
「シンちゃ〜ん?なんて言ったのかな〜?」
(やばいな。これ以上なにか言ったら、ミサトさんが怒る・・・・・。)
ごまかすようにミサトさんを無視してレイを紹介する。
レイは真っ白な体のラインがはっきりとわかるワンピースを着ていた。
膝上までの短いワンピースだった。
「で、隣に座っているのが、綾波レイ。レイは僕の父さんのドールだったんだ。
今は、僕らの大切な家族だよ。」
レイはアスカのほうを見る。
感情がないレイの顔。でも、そのまなざしはどこか優しさを感じる。
「あの・・・。」
アスカはくちごもっている。下を向いていたが、アスカはレイを見上げる。
「さっきは、わたし、とりみだしってしまって・・・。」
うまく言葉にならないらしい。
「アスカ、こういうときは、ありがとうっていえばいいと思うよ。」
アスカの手に力がこもる。アスカに右腕をしっかりと抱かれている僕はアスカが緊張
しているのがすぐにわかった。アスカの指先にさらに力がはいる。
「あ・・・、ありがとう・・・。」
アスカが人に感謝の言葉をいった。
ありがとう・・。感謝の言葉。
とても、きれいな言葉。気持ちのいい言葉。
いう人もいわれた人も気持ちがよくなるいい言葉。
感謝の言葉にレイの頬が、ほんのり赤くなる。
ミサトさんが口をあんぐりと開けたまま固まっている。
僕も驚いた。
あのレイが・・・・照れている。
レイはめったに顔に感情を出さないのにアスカに会ってからというもの、表情が少し
ではあるがではじめている。
これは・・・・、良いことだと思った。
レイは父さんが亡くなってからというもの、感情をどこかに忘れてきてしまったかの
ように表さなくなっていた。
アスカの存在がやはり、レイになんらかの影響を与えている。
「アスカ、あなたはマスターがすぐそばにいるのだから・・・、その手をはなしては駄目よ。
たとえなにがあっても・・・・。」
レイは寂しげに、どこか遠くをみているような、そんな感じでアスカに話し掛ける。
「あなたのマスターは?」
アスカは無邪気ににレイに聞いた。
その問いにレイの顔がこわばる。
ミサトさんは心配そうにレイを見た。
部屋に緊張がはしった。僕もなにも言えなかった。
「マスターはいないわ。」
レイの淡々とした口調・・・・・・。
聞いてはいけなことを聞いてしまったのだと、その時、アスカは気づいたようだった。
アスカは僕のポロシャツの袖をひっぱる。
アスカに心配をかけないように、僕はアスカの手に左手を重ねる。
アスカが泣きそうなことにレイが気づいた。
「もう、むかしのことだもの。マスターのことは忘れたわ。」
しかし、その言葉にはレイがマスターを失ったとき、どれだけ悲しんだのかが誰にも
わかった。
とくに、ミサトさんは父さんが死んだ時のレイの様子をしっていた。
僕は覚えていない・・・・・。
レイがどれほど取り乱したのか知らない。マスターは、ドールにとってこの世のすべて。
家族であり、主であり、恋人・・・・・。
絶対的存在。
かけがいのないもの。
ミサトさんはレイが狂い死しなかったのが不思議なくらいだったと言っていた。
「むかしのこと」と、言い切ってしまうレイ。
そういえるようになるまで、どれくらい自分の心と葛藤したのだろうか。
「むかしのこと」と言い切るレイに、僕たちはなにも言えなかった。
第7話bパート書きました。
レイのかすかな心の変化!
これからどうなっていくのか、わたしにもわからないです。
アスカも成長させないとな。レイとアスカの触れ合い。なんかいな〜。
それにしても、全然シリアスじゃないよ(T_T)
オリジナルの小説じゃあ、「ドール」はシリアスなのに・・・・。
このごろはレイが話し掛けてくれるようになって嬉しいsetuです。