EVA13

序章 

作・テンプラさま

 


 

 

轟音。

 

 

爆発音。

 

 

悲鳴。

 

 

断続的に響く発砲される機関銃の音。

 

 

弾丸やグレネード弾が飛び交う。

 

 

すでにいくつか転がっている死体を乗り越えるように、兵士や戦車が前進する。

 

 

彼らが目指す先には巨大なロケットがそびえたっていた。

 

 

 

 

オネアミス王国南部の町カレヤの西600レーンに広がるゴビ平原。

現在、リマダと国境を接するこの平原では、王国国境警備軍と共和国リマダ駐屯軍により、

激しい局地戦が展開されていた。

侵攻してくる共和国軍に向けて、王国軍機甲部隊が砲撃を加えている。

上空でも王国空軍機数十機あまりが共和国空軍を相手にドッグファイトを展開していた。

戦況はわずかに王国側に不利であった。

共和国軍におされて、じりじりと後退を強いられていた。

 

 

 

 

「・・・発射台の注水開始!」

 

コンソールにある発射台注水ポンプのスイッチをONに入れる。

ほどなくモニターや計器類が発射台底部への注水が開始されたことを告げる。

すでに現場作業員は全員発射台を離れており、作業台も取り払われていた。

計器類はそのほかに、発射台とその上に鎮座するロケットに関する、

あらゆる情報を管制官達に提供している。

管制官達はそれぞれのコンソールの前に座り、管制室中央に立つ将軍に状況を報告しつつ、

各自の作業に取り組んでいる。

 

(・・・いけるのか・・・・・・?)

 

ゲンドウ=イカリは心の中でつぶやいた。

戦闘による振動は、先ほどから管制室にも響いている。

爆発のたびに管制室全体が揺らいでいた。

 

「・・・ギリギリ間に合うかどうかってところか」

 

ゲンドウの心のつぶやきが聞こえたのか、隣の管制官がつぶやく。

それに相づちを打つかのように、ゲンドウは彼のトレードマークである色眼鏡を左手で押し上げた。

彼は今回の発射では推進担当を務めている。

もっとも今回は、といっても、この次があるのか、彼にはわからない。

ロケットが国防総省によって共和国側を釣るエサとして扱われていることは、

すでに聞かされていた。

発射台が当初の予定より南に移ったのもそのためである。

実際共和国側はまんまと釣られた。

だからこそ、リマダ駐屯軍がこうして侵攻してきたのである。

もっともそれが宇宙軍を廃止するために、国防総省によって画策されたものということまでは

聞かされていない。

だがゲンドウをはじめ管制官全員が、今回失敗すればこの次はない、と感じていた。

情報が故意に漏れていることを見越して急遽打ち上げ時間を2マール繰り上げたにも拘らず、

打ち上げ直前に共和国軍の侵攻を知ったときはあきらめかけもした。

だが、すでにロケットに搭乗しているシロツグ=ラーザットの喝で最終段階にまでこぎつけた。

ふとゲンドウの脳裏にそのときのシロツグの言葉が浮かんだ。

 

 

『・・・ここでやめたら、俺達、ただのバカじゃんか・・・!』

 

『俺はまだやるぞ! 死んでもっ! 上がってみせる!!』

 

『俺はやるんだ! 充分、立派に、元気にやるんだっ!!』

 

 

(・・・最後のは意味不明だな)

 

この非常時にも拘らず、彼は心の中でシロツグにツッコミを入れて、

ゲンドウ笑い(のちにミサトが命名)を浮かべた。

全員がもはや意地でも打ち上げを成功させるつもりでいた。

国防総省の思惑など知ったことではなかった。

 

「・・・発射まであと10セク!」

 

(見ていてくれ、ユイ、シンジ・・・!)

 

先ほどよりも戦闘の音がかなり大きくなっていた・・・

 

 

 

 

10・・・・・・・・・

 

 

 

 

直撃を受けた兵員輸送車が爆発する。

 

 

 

 

9・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・3セクで噴射開始だ!」

 

 

 

 

8・・・・・・・・・

 

 

 

 

主翼に被弾した機が墜落していく・・・

 

 

 

 

7・・・・・・・・・

 

 

 

 

奇声を上げながら兵士達が突撃していく・・・

 

 

 

 

6・・・・・・・・・

 

 

 

 

もはやシロツグの眼にも管制官達の眼にも迷いは見られない・・・

 

 

 

 

5・・・・・・・・・

 

 

 

 

4・・・・・・・・・

 

 

 

 

3・・・・・・・・・

 

 

 

 

2・・・・・・・・・

 

 

 

 

1・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆発した・・・!」

 

それを見た瞬間、その共和国軍兵士は思わずそうつぶやいていた。

彼と彼の部隊が目標にしていたものは、轟音とともに一瞬で炎に包まれた。

その数瞬後、それは眼が眩みそうな光を従えて上昇を始めた。

 

 

 

 

戦場にいたすべての兵士達は、ロケットが上昇していくのを呆然と眺めていた。

皆、自分達が戦闘中であることなど頭の中から消え去っていた。

ロケットのアフターバーナーはかなり眩しかったが、誰も瞬きすることを忘れていたようだった。

 

 

 

 

やがてロケットはあっけなく彼らの視界から消えていった・・・・・・

それを見ていたすべての人々は、何かが終わったような気がしていた・・・・・・

 

 

 

 

さきの兵士は、まだロケットが消えた空を呆然と眺めていた。

彼の視線の先の空には、ロケットエンジンの燃焼によって生じた黒煙が、

うっすらと筋を描いていた。

 

 

 

 

やがて兵士はポツリとつぶやいた・・・・・・

 

「・・・彼は無事に上がったのだろうか・・・・・・?」

 

それは意外にも、敵国のロケットと宇宙飛行士を気遣うものだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

EVA 13 −序章− END

 

 

 

 

 

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[あとがき]

 

みなさま、はじめましてm(__)m

わたくしテンプラと申します。

初めて小説の投稿というものをさせていただきました。

まだ未熟者ではありますが、よろしくお願いいたします。

 

「EVA 13」序章、いかがでしたでしょうか?

この後の展開としましては、序章の話から20〜30年後の世界が舞台となり、

いよいよシンジくん達の登場と相成ります。

話の大筋は映画「アポロ 13」を元にしています、いや、ほぼパクリです(爆)

ただ、そのままNASAのお話にしてしまうのはあまりにも芸がないと思い、エヴァと

同じガイナックス作品「オネアミスの翼−王立宇宙軍」の世界を引っ張ってきました(笑)

 

いずれみなさまが読んでてわかりやすいように、また僕自身、話を整理するために、

そのうち設定集なんかもお送りするつもりでおります。

 

 

こんな駄作にも快く門戸を広げてくださるみゃあ様には、心より御礼申し上げますm(__)m

いきなり「投稿カマして良かですか?」メールを送り付けたりして申し訳ありませんでした。

思っていたよりもずっと早く、しかも快いお返事をいただき、もぉ感謝感激ですぅ(T-T)

これからもよろしくお願いいたしますm(__)mペコペコ

 

テンプラ

 

 

EVA13→GO