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− な‥‥に‥‥ −
− よ‥ん‥で‥る‥? −
− だ‥れ‥ −
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<‥きこえる?‥おきなさい‥>
− おき‥る‥? −
− め‥とじてる‥‥? −
ゆっくりと目蓋があがってゆく。
ぼやけた視界に初めて写ったものは、濡れた自身の体だった。
− これはなに? −
= コレハカラダ ワタシノカラダ =
− からだ? −
= ワタシガココニアルタメノウツワ =
− ここ? −
= ヒトガイキルトコロ =
− いきる‥なに? わからない −
<きこえるの?>
声と共に何かが唐突に視界に入ってきた。
思考が遮断され、ぼやけた視界が徐々に定まってくる。
人の、女性の顔。
<わかる?>
− なに? −
しかし体は勝手にうなずいていた。
<わかるのね、わたしのことは?>
− だれ? −
= アカギハカセ =
− わかる‥どうして? −
<レイ>
!
電気でも流れたように体が反応した、うなだれていた頭が声のした方を向く。
男が立っている。
− だれ? −
= イカリシレイ =
− いかりしれい‥? −
= ワタシヲココニヨンダヒト =
− よんだ? −
= ヒツヨウダカラ =
− どうして? −
= ‥‥ =
<わかるか、レイ>
思考が途切れ、再び体が勝手にうなずく。
<では、あのひとはだれ?>
−いかりしれい−
「いあいいえい」
???
<どうしたの、もういちどいってみなさい>
「いありいえひ」
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「どうした、赤木君これは?」
男が女性の方を見ずに話す、視線は一箇所を捉えたまま動く気配が無い。
「…神経系と筋組織の連動が不充分な様です。 言語を理解し対応しています、
プリントした知識も使用出来ていますので、脳神経系は正常に機能しています。」
「‥レイの肉体括動はまだ開始したばかりですから、単に慣れの問題かと。」
「一時的なものか。」
女性は男の方に向き直り淡々と話している、男も無表情に言葉だけを返す。
「ならば問題ない、‥レイの教育,管理は君に一任する。」
「私一人で、ですか?」
女性の表情に少し変化が現れる、しかし男の視線には、それは写っていなかった。
「不満かね?」
「いえ、ただ‥、」
「子供の面倒をみた経験はありませんので‥、」
「かまわん、この件はまだ外部に漏らす訳にはいかん、予行演習とでも思いたまえ。」
ようやく男の視線が女性の方を向く、その顔には薄笑いが張り付いていた。
女性は表情を曇らせ最後の返事をする。
「 ‥はい。」
男は女性の返事を待たず、薄暗い部屋の闇に溶けこむ様に居なくなっていた。
部屋には、二人だけが残った。
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<そういうことでこれからわたしがあなたのめんどうをみるからね>
− めんどうをみる? −
= イッショニイキルコト =
− このひとといきるの‥? −
= イカリシレイガソウイッタカラ =
− いきなければいけないの? −
= ソウネ‥ヤクソクノトキマデ =
− そう‥ −
レイは体を動かし立ち上がろうとしたが、それは旨く言うことを聞かない。
よろよろと中腰になったところで、コテンと前のめりに倒れた。
「 フツッ 」
口から変な声が漏れ、目の前にいた女性が慌てて駆け寄ってくる。
<ちょっとレイ、だいじょうぷ>
女性に抱き起こされた。
−いたい−
「いあい」
<やだ、はなぢもでてるじゃない>
流れた血が口の中に入る、血の味に不快感を覚えた。
「うあ゛」
表情の変化を女性は感じ取ったらしい。
<がまんして>
−はい−
「あい」
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「泣かなかったわね、助かるわ。」
そう言いながら、女性は白衣から出したティッシュでレイの顔を拭いていった。
「はい終りよ、きれいになったわ。」
「…けど、これじゃ”はいはい”から始めないと駄目ね。」
「司令もとんでもない仕事を押し付けてくれたわ。」
その言葉の割りには、何処となく楽しそうな表情が紅い瞳に写っていた。
〜後書き〜
この章から読んだ方、はじめまして、”ふみ”です。 再会した方、ありがとう。
やっぱり長くなんないね(*_*)。 後半、視点コロコロ変わってるし(@_@)。
調子付いて本編開始。
この辺のお話しは、ヨソ様でもあまり見かけなかった(視野は狭いです、ハイ)のでチャレンジしました。
このSSシリアスに続けていく(つもりな)んで、つまらなかったら御免なさい(__)
では(・o・)/
みゃあの感想らしきもの。