Parallel World

 

作・うーさま

 


――僕には将来なりたいモノなんて何にも無い。

  夢とか希望のコトも考えたコトが無い。

  14歳の今迄なるようになってきたし、これからもそうだろう。

  だから何かの事故か何かで死んでしまっても別に構わないと思ってた。

  ……てなコトを作文に書いたら、案の定真面目にやれ、と先生に怒られた。――

 

 

「こんなコトの為に僕を呼んだのか!?

僕に死ねって言うのかよ!?

今迄、放ったらかしにしてたくせにムシがよすぎるじゃないかっ!」

 

 

――僕を必要としなかった父さんが造ったロボット……そいつが今僕を必要として

  いる?

  フン、面白いじゃないか、やってやる!――

 

「死ぬコトなんて怖くはないんだ!

父さんに臆病者なんて言わせないッ!」

 

 

「と、止ま……

くっそう!

そのまま行けぇッ!

うおおおああああ!」

 

 

「うああああああッ!?

嫌だっ、待ってくれよっ!

死にたくない!

まだ死にたくないんだ!

助けてよ、父さん!

母さーん!」

 

 

「そんな……立派なモンじゃないですよ……

僕がエヴァに乗ったのは人類を救う為でも、あの娘を護る為でも、ないんです。」

 

「判ってるわ。

理由はどうあれ、あなたは立派によくやった。

自信を持ちなさい。」

 

「ミサトさん、僕は……」

 

――その言葉を、あの時、あの場所で聞きたかった。――

 

 

「お前や!

お前のせいや!

チヤホヤされてええ気になってんちゃうわ!」

 

「そんなにいちいちカッカして疲れない?」

 

「彼にはもう……

此処しか居場所が無いのかもしれない。」

 

――何時の頃からだろう?

  僕の心と体は少しづつバラバラになってきているような気がする。

  悲しいコトや辛いコトがあるたびに、これは自分ではないと他人事みたいに、

  見つめてるもう一人の自分が居るみたいだ。

  ……大丈夫、僕はやっていけるさ……

  心をもっと体の奥に閉じ込めてしまおう。

  そうすれば体の痛みも心の痛みも恐怖も何も感じなくて済むだろう。――

 

 

「僕は何時死んだって……」

 

 

「な、何で早よ逃げへんのや!?」

 

「僕らが此処に居るから……自由に動けないんだ!」

 

 

――どうして……僕は何の為に……誰の為にこんなコトしなきゃならないんだ……――

 

 

「御免なさい。

今迄色々と無理言って悪かったわね……

エヴァや私達のコトは忘れて以前の生活に戻りなさい。

……元気でね……」

 

「ミサトさ……!

 ミサトさん……」

 

 

「あたしは同情や仕事の上だけで他人と一緒に暮らせる様な物事割り切れる人間じ

 ゃナイわ。

 誤解しないで。」

 

「僕は……昔(まえ)の所に帰りたくないです……」

 

「帰ろうか……

あたし達の家へ。」

 

「……はい。」

 

 

――父さんが……あの父さんが綾波を助けた……?

  そんなにまでして……――

 

 

――綾波って父さんにとって何なんだろう――

 

 

「信じられるワケ無いよ……

あんな父親なんて!」

 

「私は信じてるわ。

私が信じてるのは、この世で碇司令だけ。」

 

 

――父さん……こんな時でも迎えに来てくれないんだね……

 母さん……もし母さんが生きてたら迎えに来てくれた……?

 ……母さん……――

 

「……綾波……」

 

 

「僕は……今迄生きているフリをしてただけなのかもしれない。」

 

――何故?

  僕は何故綾波にこんなコトを話してるんだろう……

  多分綾波には僕よりもっと何にも無い。

  何故だか判らないケドそんな気がする。――

 

「貴方は死なないわ。

私が守るもの。」

 

 

「!!

わああああッ

!!

綾波ッ!」

 

 

「私はこんな時、どんな顔したらいいのか判らない。

本当は嬉しい筈なのにね……」

 

「普通は嬉しかったら、笑うんだよ。」

 

 

――それにしても凄い女だったな……――

 

「まっ……まさか……!」

 

「なあにー

何でアンタがこんなトコに居んのよ?」

 

 

「人類補完計画の要ですね。」

 

「そうだ。

最初の人間−アダムだよ。」

 

「予想されうるサード・インパクトを未然に防ぐ、それがアタシ達エヴァのパイロ

ットの使命なのよ。」

 

 

――何だ、アレ、光球(コア)が2つ!?――

 

 

「あなた達の協調、完璧なユニゾンが必要だわ。

あなた達には、これから5日間此処で一緒に暮らしてもらいます。」

 

『えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』

 

 

「アタシは大勢の中から選ばれてエヴァのパイロットになって、そして闘って使徒

を倒して、それで皆に認めて貰えたら最高に幸せなのよ。」

 

――アスカは本当はごく普通の女の子なんじゃないだろうか……

  その時僕はふとそんな気がした――

 

 

――確かに僕みたいな軟弱な奴とは違うよ、君は――

 

 

「ドン臭い割には、まあよく頑張ったわ。」

 

「君の口からお誉めの言葉を聞けるとは思わなかったな。」

 

 

――こんな楽しいコトは長くは続かない……

  きっとまたすぐ苦しみはやって来るだろうと心の隅でそう思ってた――

 

 

「加持君、少しあたしの父ににてるわ……」

 

 

「ヤだな、此処までなの……?

!?

シンジ!?

……バカ、無理しちゃって……」

 

 

「だから人間って特別な生き物なのかな?

だから使徒は攻めて来るのかな?」

 

 

「僕は父さんの、さっきの言葉を聞きたくてエヴァに乗ってるのかも知れない。」

 

 

「私は母親には、なれそうもナイから母としての母さんは解らないわ。

ケド科学者としてのあの女性(ヒト)は尊敬もしていた。

でもね、女としては憎んでさえいたのよ。」

 

 

「あ、綾波?

綾波、レイ?

綾波レイだよな、この感じ……

綾波?

……違うのか?」

 

 

「エヴァ?

いえ、まさか……」

 

「そう、セカンド・インパクトからその全ての要であり始まりでもある。

……アダムだ。」

 

 

「楽しいコト見付けたんだ……

楽しいコト見付けて、そればっかりやってて何が悪いんだよォオォオォォォオォ!」

 

「もう、いいの?

そう、よかったわね。」

 

「とれないや、血のニオイ……」

 

 

「いいコト無いもの、あたし達とエヴァに関わって……

それを一番よく知ってるのがシンジ君だものね……

これ以上、辛い思いは、させたくないわ……」

 

 

「……トウジ……?

……ゥうアあぁァアあぁぁアアァあァぁア

ああアァアあアぁァぁあアッッ!!」

 

 

「シンジ君、オレは此処で水を撒くコトしか出来ない。

だが君には、君にしか出来ない、君になら出来るコトがある筈だ。

誰も君に強要はしない。

自分で考え、自分で決めろ、自分が今何をすべきなのかを。

ま、後悔の無い様にな。」

 

「僕は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジですッ!!」

 

 

「何を願うの?」

 

 

「馬鹿……

あんた、ホントに馬鹿よ……」

 

――その時僕は、ミサトさんから、逃げるコトしか出来なかった……

  他には何も出来ない、何も言えない子供なんだと……僕は分かった――

 

 

「何でアンタが其処にいるのよオオオオ!!

何にもしない!

アタシを助けてくれない!

抱きしめてもくれないクセにぃッ!!」

 

――ねえ、アタシのコト、好き……?

  ホントに、アタシのコト、好き……?――

 

 

「これは私の心……?

碇君と一緒になりたい……?

……駄目。」

 

「……綾波、レイ?

……ッ!!」

 

「そんなモノにすら、私は負けた!

勝てなかったのよォォォォ……」

 

「エヴァにとりつかれた、ヒトの悲劇……

……あたしも、同じか……」

 

 

「歌はいいね。

歌は心を潤してくれる。

リリンの生み出した文化の極みだよ。

そう感じないか?

碇シンジ君。」

 

「好意に値するよ、好きってコトさ。」

 

「僕は君に逢う為に生まれて来たのかもしれない。」

 

「裏切ったな!

僕の気持ちを裏切ったな!

父さんと同じに、裏切ったんだッ!」

 

「ありがとう。

君に逢えて嬉しかったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈とうとう此処まで来たね。〉

 

〈問題はこれからでしょう?

あの世界では、これから彼は生きる気力を失い、結果、自分も彼女も救えず、世界

まで崩壊させてしまったわ。〉

 

〈うん、ケドね、この世界のあの2人なら大丈夫な気がするんだよ。

彼女に助けを求めるのではなく、自分が彼女を助ける、そう言えるだけの、そう思

えるだけの強さを彼は持っている。

そして彼女も、また……〉

 

〈信じているのね。〉

 

〈まあね。

父に捨てられた少年と母に捨てられた少女、心に同じ傷を持つあの2人が傷付け合

いながらも現実の中で共に生きてゆくコト……

そこには、単なる負け犬同士の傷の舐め合いではない確かな何かがあるはずだ。〉

 

〈けれどその為の試練は、余りにも厳しいわ。

 大丈夫なのかしら、本当に……?〉

 

〈大丈夫な筈はないさ。

あの2人にはこれから、そしてこの闘いが終わってからも数えきれない程の試練が

待っている。

何度も迷い、傷付け合い、苦しむだろう。

だけど、あの世界と同じコトにだけは決してならない。

それだけは言えるとおもうよ。〉

 

〈そうね……

私達に出来るコトは、あの2人を信じて見守るコト。

ヒトの未来は再びあの2人に託されたのだから……〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日が沈んでゆく。

高台の上からその様を見る2人の少年と少女。

少年は黒い瞳に黒い髪、優しげな面立ちをしているが、その顔には相当の修羅場を

潜り抜けてきたと思われる、精悍さが浮かんでいる。

一方の少女は金髪碧眼、類稀なる美貌の持ち主であり、以前の彼女には無かった、

落ち着いた雰囲気と気品を醸し出していた。

ゼーレとの闘いは少年−碇シンジ達の勝利で幕を下ろした。

その闘いのさなか、人知を超えた紆余曲折が有った為、詳細は定かではない。

だが、彼が銀の髪に赤い瞳を持つ彼の親友を殺めてその後も、戦意を失うコト無く

最後の最後まで雄々しく闘い抜いたコトだけは確かである。

エディプスコンプレックスを克服し、母体回帰願望を断ち切り、サードインパクト

を起こさず、LCLの海から彼は帰ってきた。

それらは全て、彼の傍らに在るたった1人の少女の、惣流=アスカ=ラングレーの

為であったコトも。

そしてアスカもまた、そんな彼の心に触れ、全てのわだかまりを捨て去るコトが、

出来た。

 

「あの時、」

 

シンジが言葉を紡ぐ。

アスカは無言。

 

「子宮回帰願望そのままの人類補完計画……そのLCLの海の中で、僕は綾波とカ

 ヲル君に会ったんだ。

2人は、自分達は何時の日か人と人が100%判り合えるかもしれないという希

望なんだと言った。

僕は即座に悟った。

2人はこのLCLの海そのものなんだというコトを。

傷付けるコトも、傷付けられるコトも無い世界……

ケド、僕はそれが幻想であるコトも知っていた。

人と人は100%判り合うコトは出来ない、以前に加持さんがそう言ってた。

あそこには誰も居ないから僕も居ない。

死んでいるのと同じだ。

だから僕は……」

 

「だから此処に帰って来たの?」

 

アスカが口を開いた。

夕日の眩しさにシンジからはその表情を窺い知るコトは出来ない。

 

「アスカ、勘違いしないで欲しいんだ。

僕が此処に帰って来たのはアスカに……」

 

言おうとしたその時、急にアスカが振り返り、顔を突き合わせた。

思わず言葉を中断し、見入ってしまう。

奇麗だ……

掛け値無しにそう思う。

 

「余計なお喋りは控えたほうがいいわよ。

そんなコトより、その唇は別のコトに使って……」

 

シンジはその言葉が何を意味しているのかを理解した。

ゆっくりと顔を近付ける。

そして……

 

――何時死んでも構わない、あの頃はホントにそう思ってた。

  ケド、今は……

  だけどこれからも苦しみは続くだろう、生きている限りは。

  でも、アスカさえそばに居てくれれば……

  そのアスカとも傷付け合うコトになるかもしれない。

  いや、そんなコトはこれから数え切れない程、何度もあるだろう。

  ケド、その度に今、この時の気持ちを思い出そう……

  そうすればきっと……

  これから、僕とアスカがどうなっていくのか判らないケド、僕に関してはたっ

  た一つだけ言える確かなコトが有る、それは――

 

唇を離す2人。

間に架る銀糸が夕日に煌く。

熱い、熱い抱擁。

シンジの耳元でアスカが囁く。

 

「やっと……

今迄誤解とすれ違いばかりのアタシ達だったケド……

今度こそ本当に……」

 

「うん……

今度こそ本当に何時までも一緒だよ、アスカ……」

 

――たったひとつだけ言える確かなコト、それは……

  死んでも構わないなんて、もう2度と思わない、ってコト――

 

 

 

Fin

 

 

 

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うーとヒネくれシンジの後書きとは名ばかりのダベり

 

ヒネシン「って、なんでイキナリ僕が呼ばれるんですか?」

 

うー「いやぁ、ホントはヒネた君が書きたいんだケド、お話の都合上なかなか書け

   ないモンでね。」

 

ヒネシン「で、せめて後書きで書こうという、セコい手段に走ったワケですね。」

 

うー「ぐっ、初っ端からコレかい……

   毒舌では君、みゃあ様の感想のアスカ(下僕ではナイので様はつけない。)

   と、タメ張れるんじゃないか?」

 

ヒネシン「そんなコトより、後書きは?」

 

うー「っと、そうだったそうだった。

   えー、御久し振りです、皆様。

   テストはとっくに終わっていたのですが事後処理が色々と有りまして……

   まぁ、追加課題も出したし、何とか進級できそうかと……」

 

ヒネシン「貴方の近況なんて誰も聞きたかありませんって。(^_^;)」

 

うー「って、こうじゃなくって!

   (コホン)いかがでしたでしょうか、貞本先生のコミック版が実は平行世界

   (パラレル・ワールド)だという、電波的SS。(^_^;)

   途中までコミックから引用し、更にアニメからも引用し、最後はオリジナル。」

 

ヒネシン「何でそんなクソややこしいシロモノに……(^_^;)」

 

うー「それと言うのも、その……映画、観て来たもので……

   ……ぷるわな、ぷるわな……

   まあ、今更感情的な発言をするつもりは御座いませんが。(~-~X)」

 

ヒネシン「どうせ前にも観たんだから行かなきゃいいのに。」

 

うー「いや、DEATHが変わるって聞いたから、一応……」

 

ヒネシン「で、違い、判りました?」

 

うー「んにゃ、全然。」

 

ヒネシン「……をい……」

 

うー「いや、一応何個所かは。

   ケド、これから観に行く人もいるかも、ってコトで……

   ま、収穫らしい収穫といえば始まる前に、鋼鉄のGFのCMがやってたコト

   くらいかな?

   ホンの数秒位だったケド。」

 

ヒネシン「セコい……とことんセコすぎる……(T_T)」

 

うー「ケド、やっぱり何度観てもEOEの破壊力は絶大だね……(T_T)

   エヴァがシト新生で完結していれば、シンジとアスカのキスシーンで終わる

   予定だったという噂まで有ったのに……(T_T)

   まぁ、このSSは判り易く言えば、“コミックをアニメの様にはせんでくれ

   電波”という奴です。」

 

ヒネシン「……判り易過ぎるぞ、それ……(^_^;)

     ケド、その割にはカヲル君が死んでからの一番肝心なトコが抜けてるん

     ですケド……」

 

うー「いやまあ……

   そこらへん書いてると果てしなく長くなりそうだったので……(^_^;)

   しっかし、ヒゲの超超超個人的な理由で2人があんなコトになったなんて、

   とことん納得いかないよね。(T_T)

   みゃあ様が『素直なこころ』連載してた頃、シンジとアスカを幸せにして上

   げたくて書いてたって言う気持ち、よーく判るよ。(T_T)

   同じコンプレックスを持つあの2人が、いかに互いを認め合い、赦し合い、

   愛し合うに至るまでがエヴァの命題だというのに……(T_T)

   どこぞのヒゲメガネが台無しにしてくれやがったおかげさまで、見事に破綻

   しちまいやしたがねェ!(~-~X)」

 

ヒネシン「感情的な発言しないって言って十分してるじゃないですか。(^_^;)

     まぁ、あんな馬鹿作者はほっとくとして、『素直なこころ』いいですよ。

     常連の方々には今更紹介の必要も無いでしょうが、此処に来て日の浅い

     方、映画観て苦しんでる方、是非見に行って下さい。」

 

うー「CMCMぅ(はあと)」

 

ヒネシン「野郎の(はあと)は気色悪ィからよせ。」

 

うー「ほっとけっ!

   って、あれ?

   あの作品って確か18禁じゃなかったっけ?」

 

ヒネシン「(ぎぎくぅっ)」

 

うー「……シンジ……

   ……君ってば、そんなスカしたツラして実は……(^_^;)」

 

ヒネシン「……じゃ、サヨナラ。」

 

うー「……はいッ!(^_^;)

   まるでレイの如く立ち去ったヒネくれシンジと、映画を観てやはり(ヒゲが

   いらんコトさえしなきゃね。(~-~X))シンジとアスカは結ばれる運命であっ

   たコトと、ヒゲへの怒りを再確認した、うーがお送り致しました。(^_^;)

   読んで下さった皆様へ、御礼申し上げます。」

 

追伸:カミソリメール、及び、励ましのメール(無ェか、ンなモン。)等を送ろう

   として下さった皆様、誠に申し訳御座いません。

   その、メールアドレスに少々問題アリ、でして……(T_T)

   この場を借りて、深くお詫び致します。