瑠璃色の天の川

ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.R




火曜日--空白の時間--



またいつもと変わらぬ生活が始まる。



卒業前という事もあって、 いろいろあるにはあるのだが。

就職や進学に無関係な2人には、 たいした問題ではない。





朝。 いつもの時間帯に2人の自転車が校門を通り抜ける。



「うっす。 おはよー」

「おはようございます。 天川さんに星野さん」

「よう。 天川、 星野」

「おっはよー、 昭人くん。 瑠璃ちゃん」

みんなが2人にいつものように挨拶を掛ける。

2人は挨拶をいちいち1人1人に返していく。






もう春が近いとはいえ、 朝早くではみんなの息は白味が係っている。

そんな中、 少々肌寒さを感じながら、 やっとの事で2人は駐輪所に落ち着く。



だだだっ、 うぃーん



突然、 体育館の方向から大きな音が響く。

何かの工事の音のみたいだ。

2人は何事? と、 顔を見合わせ、 体育館に向かう。



たたたっ



「あっ! 藤崎さん」

2人は体育館の前に1人の人影を見つける。

その人影に向かって昭人が声を掛ける。

「天川君」

相手の方も気付いたようだ。 振り返って返事を返してくる。



彼女の名前は藤崎詩織。 きらめき高校の元生徒会長で、 瑠璃達と同じく三年生だ。

彼女は性格も明るく、 運動・勉強とも得意。 学校でも指折りの美人。

まさに才色兼備。 この言葉は彼女の為にあるといっても過言ではないだろう。

もちろん、 そんな彼女だから憧れる輩も多い。 昭人もその1人だったりする。



「どうしたの? この音 ・・・ 工事している音だよね」

「そう。 伊集院君が世界一の卒業式にするんだって、 体育館にいろいろ工事をしているの ・・」

昭人の質問に話し出す詩織だが、 その目は暗く、 俯いていた。

「伊集院って、 あの大金持ちの?」

「ええ。 生徒会の方も勝手な事はしないで欲しいって、 呼びかけてはみたんだけど ・・」

詩織は話をそこで切るが、 大体の想像はつく。

自分の信念が許さないとか言って、 生徒会の話を取り合おうともしなかったのだろう。

それで急遽、 人望のある詩織に生徒会が頼み込んできた。

断りきれなかった詩織が説得に来た。 とまあこんな筋書きだろう。



話に出てくる伊集院というのは、 伊集院・麗のことだ。 日本きっての大金持ちで、 みんなと同じく三年生だ。

性格はまさにお坊ちゃんって感じで、 何でもお金で解決すると思っているのだが、 割とみんなには受け入れられているようだ。

しかし、 何か行事があるごとに大々的にするのが好きで、 おかげできらめき高校は一種の有名校にもなっていた。



「一方的に物事を解決しようとする。 典型的な自己中。 ああいうのには何を言っても無駄ですから、 相手にしないのが一番です。 藤崎さん」

急に参加してきた瑠璃が、 慰めも含めて詩織に話し掛ける。

「そうね。 私のしている事は無駄かもしれないけど、 ちゃんと話し合いさえすれば解ってもらえる ・・・ そう信じてるから」

詩織が自分の言葉をかみ締めるように答える。

それを見て、 改めて瑠璃は詩織の大きさを感じ取る。

「そうですね。 人はげーむの主人公じゃありません。 いつも決まった答えが返ってくる事はありませんから、 頑張ってください。 応援してますから」

「ありがとう。 瑠璃ちゃん」

笑顔でそう答える詩織。 意外に人望のある瑠璃に賛同してもらえて嬉しいようだ。 しかし ・・

「今の生徒会はだめですね。 この先うまくやって行けるんでしょうか? いつまで経っても藤崎さん藤崎さん。 ほんと頼りない」

瑠璃の鋭い意見に詩織はがっくりとくる。

今まで信じてやってきた事が徒になったのだ。

自分を中心に回り過ぎる今の生徒会。

辞めた今でも最後には聞きに来る。 最終決定権は自分にあるのだ。

責任の重い仕事の先輩として、 少しでも手伝ってあげればと嫌がらずに協力してきた。

それが今の行動力の無い生徒会にしてしまったのだ。

自分の責任。 それが今、 詩織の頭に重く圧し掛かる。



真剣な面持ちで悩んでいる詩織。 瑠璃は今、 それを声にだしたことを後悔するが、 今更どうする事もできない。

どうしようもなくなった瑠璃は、 昭人が居るのも忘れて一緒になって暗くなる。



はぁー



三人が同時にため息を吐く。

「勝手に始めちゃったんだね。 あいつ」

昭人が大惚けをかます。 2人は悩んでのため息だったが、 昭人はあきれてのため息だったようだ。

それを聞いてくすくす笑い出す2人。 鈍感な昭人にはその場の雰囲気が読めなかったのだ。

何の役にも立ちそうに無い事だが、 今はそれがうまく働いた。

その場の雰囲気は一気に和やかになる。



「おーおー。 やってるやってる。 あの噂はほんとだったんだな」

ちょっと和んだところで、 早乙女・好雄が来た。

彼はお調子者でいつもみんなを笑わせてくれる能天気な奴だ。

「よっ好雄」

驚いてその名前を呼ぶ昭人。 昭人はとてつもなく明るい好雄が苦手なのだ。

「おーう昭人。 元気かっ? 瑠璃ちゃんもいつにもましてかわいい ・・・ 」

好雄は昭人が返事を返す前に瑠璃に声を掛けはじめる。 行動も早い。

------確か前までは、 藤崎さんを狙っていたんじゃ。 変わり身の早い奴

「 ・・・ お世辞を言っても何も出ませよ」

冷めた表情で瑠璃が答える。

それを見て好雄は、 逆に喜んでいるようだ。

「くぅー、 その冷めた顔。 瑠璃ちゃんはその顔に限るな」

------あたしのこの顔を見て喜ぶなんて ・・・ 気持ち悪い

瑠璃は好雄から少し遠ざかる。 危険人物と認識したのだ。

「ところで瑠璃ちゃん。 今日暇? 一緒に映画でも見に行かない?」

空かさず好雄が近ずく、 この押しの強さが彼の真骨頂。 昭人の一番苦手なところだ。



ちらっ



瑠璃は昭人の方に視線を送る、 いつもならここで止めに入ってくれるのだ。 (終った後はいつもしょげているが)

しかし、 瑠璃の期待した言葉は今日は昭人の口から出なかった。

「瑠璃ちゃん。 俺1人でも大丈夫だからさ行っておいでよ。 もうすぐ卒業して逢えなくなるんだから、 そいつともさ」

昭人はいつものようには止めてはくれなかった。 正直不安になる瑠璃。



実際、 今日の昭人はいつもと違った。 昭人自身では無く、 周りの状況がだ。

先に言った事もあるにはあったのだが、 何よりも苦手な好雄との腐れ縁を早く抹消したかったのだ、 昭人は。

卒業前まで討論する気も無い。

次いでに憧れの詩織と話す機会がやっと出来たのだ。 みすみす捨てるような事はしたくない。

そんな思いが交錯して今の昭人の言葉を作ったのだ。



「 ・・・ でも」

昭人が助けてくれない事に瑠璃は戸惑ったが、 それよりも問題は断る理由だ。

昭人がああいった以上、 家での仕事は自動的に大丈夫と言う事になる。

率直に「嫌い」と言う事も出来たが、 そこまで言うと好雄が可哀相だ。 それに言う勇気も無い。



「よぉーしっ! 決まった。 2時に公園で待ちあわせ、 瑠璃ちゃん遅れないでよー」

そう言いながらなぜか走り出す好雄。 最後の方は遠くから大声で叫んでいる。



やっほー、 いえーい

よっぽど嬉しかったのだろう。 飛び跳ねながら消えていく

答えに困る瑠璃を見て、 好雄はそれを了解と勘違いしたようだ。



------ばか



・・・ ・・・



------何が?

------好雄君の事? 違う、 昭人さんの事だ

------どうしたんだろう? 胸が ・・・ 胸の奥が ・・・ 痛い



「やあやあ。 君たち、 僕の進めている華やかな卒業式の舞台を視察に来たのかね?」

突然。 体育館の上から声が掛けられる。 伊集院の声だ。

「伊集院君!」

詩織が滅多に上げない大声を張り上げる。

「おや。 藤崎君に星野君ではないか ・・・ ・・・ 本当なら当日まで誰にも見せないつもりだったが、 どうしてもと言うのならば2人には特別に見せてあげてもいいんだが」

「おいっ! 伊集院。 何する気だよ」

昭人もきつめに声を掛ける。 やっとと思った矢先にこれだからだ。

「 ・・・ 天川君。 君も居たのかね。 君には、 そうだな ・・・ ・・・ ・・・ 5万円で手を打とうじゃないか。 妥当な条件だと思うがね」

今気がついたように話し掛ける伊集院。 男女差別の激しいい彼には、 昭人は見えなかったのだろう。

「何言ってる! 今すぐこの工事を止めろっ!」



ぴくっ

「な ・・・ ・・・ に?」

その言葉に反応して伊集院の雰囲気ががらりと変わる。

そして、 突風が昭人を襲う。

「召し使い1に告ぐ、 僕の計画に反抗するものが現れた。 今すぐ排除しろっ!!」

扇風機だ。 普段なら何とも無い物だが、 この寒い時に扇風機に煽られるととんでもない。

「さ"っ、 さ"む"い"」

「はははっ、 この僕に逆らうとこうなるのだ」

高笑いする伊集院にすでに半分凍りかけている昭人。 必死に走って逃げているが引き離せない。

一方、 召し使い1も大変だ。 寒いとはいえ、 がちがちの服で扇風機を片手に昭人を追い掛け回すのだ。

いくら運動の苦手な昭人でも、 追いつくのは至難の技だ。 きっと彼らは伊集院の命令さえあればなんでもする超人なのだろう。



結局、 昭人は全体の70%程凍ったところで開放され、 話は生徒会の意向も聞くという事で合意した。

何がしたかったのか知らないが、 昭人は保健室・伊集院は進路指導室に呼ばれ、 たーっぷり休養することになる。

死者はとりあえず今回は出なかったようだ。





ちりん、 ちりん

今日は一直線に家に帰る。 いつもなら一緒に付いてくる昭人も今日は付いてこない。

好雄とのちょっとしたお付き合いは、 高校に入ってからの初めての大幅な空白時間。

いつもなら遊びに行く時も昭人と一緒なのだ。

------昭人さんと離れるの嫌だな

------でも約束しちゃった以上は ・・

瑠璃はいまだに悩んでいた。 昭人に何も言わず、 知り合いに言づてを頼んだのはその為だ。

昭人に逢うといつ心変わりするかもしれない。 いや、 確実にするだろう ・・・

また一段と瑠璃の胸の痛みは激しさを増していく。





「瑠璃ちゃん! こっちこっちぃー」

好雄が瑠璃を見つけて叫んでいる。 とりあえず瑠璃は他人の振りをして立ち去る。



すたすたすた



「えっ?」

途端に慌てる好雄。 すぐさま追っかけてくる。

「あのっ、 なんか気分悪くした?」

「はい、 とっても」

いかにもって顔で答える瑠璃。

「あぁああぁあって、 ごめんっ!」



ぺこっ

深く頭を下げる。 こんな素直なとこは学校では見せない。

学校ではいつも「もしかして」等と責任回避だ。



とりあえず機嫌の治った瑠璃は好雄の横についてみる。

「うっうわ、 瑠璃ちゃんが俺の真横にっ! 夢みたいだ。 もう死んじゃってもいい ・・・ って、 良い訳無いな。 ここで死んじゃったら瑠璃ちゃんとこれ以上仲良くなれないもんな、 前言撤回! さっ行こう ・・」

振り付けつきで人目を気にせずしゃべれる好雄に、 瑠璃は恥ずかしかったり嬉しかったり。

好意を持たれて悪い気はしない。 思わず口元が緩む。



ふっ

「あぁー! 瑠璃ちゃん今笑わなかった?」

「別に」

元に戻ってしまった瑠璃の笑顔に、 好雄は片膝が付くほどがっくりくる。

------いちいち行動が大きいのよね

------今までので合計 -20点、 やっぱり昭人さんには程遠い

今回、 瑠璃は好雄を観察して得点を付けようとしたが、 感情の起伏の少ない自分には合わないと判断して早々に諦めたようだ。





まあ、 いろいろあったがなんとなく映画館に着く2人。

目的がこれだったのでさっさと入ってしまう。



見る事にしたのは今冬の大人気映画で、 客入りも多かったが好雄の口利きで席を譲ってもらった。

こういう時は役に立つのだと、 お友達にしとこう企画の中に好雄の名前を記録する。



映画が始まると好雄は瑠璃そっちのけで興奮して見ている。

反対に瑠璃は映画を見るどころか物思いにふけっている。

そう、 朝の心の中での出来事を

もっともこの映画は、 前に映画会社の機械に接続した時、 勝手に侵入して見たことがあった。

好雄が是非にと進めるのでこれに決めただけだ。

別に見る必要性は全くと言っていいほどなかった。





------どうしてあの時急に胸の奥が痛んだろう?

------昭人さんに引き止めて欲しかったから?

------違う! なぜ?

------あたしは昭人さんの事が ・・・ ・・・

------好き ・・・

------でも、 そんな事前から解っている

------なのに ・・・ ・・・ ・・・

------あたしは昭人さんの事が好き ・・・

------でも ・・・ 愛している訳じゃない

------そう、 ユリカさんやメグミさんのように ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

------だから諦めた

------あの2人の想いに勝てる気がしなかったから ・・・ ・・・

------今は ・・・ どう?

------昭人さんの気持ちは?

------そう言えばこの好雄君も嫌いじゃない

------でも ・・・ 昭人さんの方が好き!

------なんで断らなかったんだろう?

------昭人さんがああ言うから? 成り行き?

------ううん、 関係無い

------苦しい ・・・ ・・・ 胸の ・・・ 奥が ・・・ とっても

------昭人さん、 助けて ・・・ あたしがおかしくなっちゃう ・・・ ・・・

------早くしないと ・・








映画の後。

好雄は食事にでもと誘ったが、 瑠璃はそんな外で食べる料理よりも昭人の手料理を食べたかった。

それに、 昭人自身にも逢いたくて仕方なかった。 少しの間、 逢わなかっただけなのに。

好雄には悪いが適当に断って帰る事にする。

さようなら





「ただいま」



返事はない。 靴も無い。 出掛けている。

その状況にがっかりする瑠璃だが、 買い物にでも行ってるんだと自分を納得させ、 自分のするはずの仕事をてきぱきこなす。



・・・ ・・・ ・・・



そのうち、 部屋にある物にふと目が止まった。

撫子の全乗組員の全体写真。

みんな思い想いの格好をしている。

定石道理に鋏している人や変な顔、 階級賞、 ぬいぐるみ、 おもちゃ、 旗を振っている人も居る。

------一瞬のためにみんな一生懸命頑張って考えている

------自分は無表情 ・・・ 人生に冷めていた ・・・ たかが10年で ・・・

------もっと大切にしないと、 一瞬を ・・・ ・・・

------気が付いたらお婆ちゃんになってるかも

------それは嫌よね。 想い出は悲しくてもいろいろあった方が楽しい ・・・ ・・・

------卒業写真・証書・想い出 ・・・ 貰ったら大切にしなきゃ

そう思って部屋を眺めてみると、 総てが想い出の品に思えてくる。



がさごそ



何時の間にか瑠璃は部屋の掃除をし始めていた。

いつもならほおっておくような汚れも奇麗に落としていく。

部屋の配置替えもする。 奥に締まってあった想い出の品を一番前に持ってくる。



ともかく気の済むまで部屋を片ずける。 こんなに一つの事に熱心したのは初めてだ。

昭人の事ももう気にならなくなっていた。 何もかも忘れて熱中する。



・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・



片ずけが終ってみると、 時計の針は8時を刺していた。

片ずけに夢中で気が付かなかったが、 もうそろそろお腹の鳴る時間だ。 いくらなんでも遅すぎる。

瑠璃は心配になり、 探しに行こうか迷って部屋の中を何度も回っている。

次第に眠っていた昭人への想いが見え隠れするようになる。



そんな中、 時計が8時12分を指した時。 玄関先から声がいた。



がちゃ



「ただいまー」

間違いなく昭人の声だ。 それを聞いて瑠璃はすぐさま玄関に向かう。

いつもなら何でもない事だが、 今は1秒でも早く昭人の笑顔が見たい。

そう思う想いが、 いつもはしない出迎えを瑠璃にさせる。



「おかえりなさい。 昭人さっ! ・・・ あっ」

声と共に瑠璃の行動が一瞬にして凍り付く、 昭人は1人ではなかったのだ。

隣に美術部の片桐・彩子がいる。

「おっ、 瑠璃ちゃん帰ってたんだね。 御飯 ・・・ 食べてないよね?」

ばつの悪そうに昭人が聞いてくる。

「はい」

別に嘘を付いても仕方が無いので、 素直に答える。

「そっか、 ごめんな瑠璃ちゃん。 好雄と食べてくるとばかり思ってたから、 いそいで作るよ」

そう言って昭人は台所に直行する。 残された瑠璃と彩子は思案顔だ、 怒っていいのやら泣いていいのやら ・・・

「えーと、 そおねー。 よしっ! 瑠璃ちゃん Good evening! こんばんわ」

「はぁ ・・・ ・・・ こんばんわ。 どうぞ、 散らかってますが」

固まっていた2人だが、 とりあえず挨拶を交わして中に入る事にする。

中に入った時にはもう昭人は何か作りはじめてた。 小麦粉、 卵、 葱、 豚肉 ・・・





「Oh! It’s beautiful! 2人とも学校に行ってるのにすごく奇麗にしてるわね」

彩子が感嘆の声を上げる。 もちろん普段から奇麗にしている訳ではない。

先ほど瑠璃が片ずけていたからだ。 もちろん彩子が知るはずも無い。

「ははっ、 瑠璃ちゃんがいつも奇麗にしてるからね。 だから安心して彩子ちゃんを連れてくる事が出来たんだよ」

昭人の声が台所から聞こえてくる。

しかし、 昭人はなんとなく気が付いているようだ。 家の中がいつもと違う事に。

瑠璃に軽く目配せをする。 それだけで瑠璃は結構幸せになったりしている。



・・・ ・・・ ・・・



2人の見事な連携で、 昭人1号(お好み焼き)が机に運ばれる。

さて食べようかという時に、 瑠璃がさっきからの疑問を口にする。

「どうしたんですか? 昭人さんが人を連れてくるなんて、 珍しいですね」

「え"っ? いやっ、 あのさっ。 片桐さんが俺が料理人だって言ったらさ、 どうしても俺の料理を食べたいって言うもんだから。 つい」

悪戯が見つかった子供のように舌を出して誤魔化そうとする。

「Are you crazy? 何言ってんの! 俺の料理を食べて腰抜かすなよって言ってたのは誰? だから来てあげたっていうのに、 失礼しちゃうわ」

「そんな事言ったけな俺?」

「Oh! No 何て事! Good bye さ・よ・うならー」

「あーあー、 認める認める。 俺が悪ーござんした」

「What? 何のつもりぃー? そんなにあたしに食べて欲しくないのかしら」

「いただきます。 当分終りそうに無いので先に食べさしてもらいます」

2人の痴話喧嘩っぽい話を止めさせる為にわざと大きい声で言う。

もちろん少しは僻んでいたりする。

慌てたのは2人の方だ、 言わなくてもいい事まで言ってしまったのだ。

昭人は瑠璃の顔色を伺っている。 瑠璃の顔は張り詰めたように無表情だ。

こんな時はいつも無理をしている。 そう判断して何か言おうとするが咄嗟に声が出ない。



ぱくぱく、 もぐもぐ



そんな間にも瑠璃はどんどん料理を平らげていく。 こう見えても瑠璃の食事の終了は早い。

おろおろ焦る昭人に、 ばっかじゃないという視線を送る彩子、 2人を気にせず食べ続ける瑠璃。

みんな無言。 気まずい雰囲気が流れ出す。



・・・ ・・・ ・・・



そんな中、 最初に口を開いたのは意外にも昭人だった。

「瑠璃ちゃん ・・・ どれぐらい?」

「 ・・・ 」

一瞬訳が分からないという顔をする瑠璃と彩子。

しかし瑠璃はすぐに意味を理解したようで、 少し迷ってから答えを返す。

「80点ですね。 今日は失敗作です」

かなり控えめな点数だ。 もちろん失敗作などではない。

単に瑠璃が拗ねているだけだ。 その答えに昭人は苦笑している。

しかし2人には、 そんな事は解っている。 ただのお遊び、 というような雰囲気が漂っている。

------やっぱり瑠璃ちゃんは、 要checkね。 あたしの入れる隙間なんてどこにも無い ・・

その見て彩子は自分の敗北を感じ取った。

瑠璃には自分に無い、 友達以上の何かがある。

しかし、 新たな決意も同時に出来ていた。

卒業までの約一週間。 全力で昭人を振り向かせようと頑張る事を。



その後、 食事をしながらも彩子は瑠璃と自分の違いを観察していた。

自分に無い何かを見つける為に。

もちろん昭人には猛烈に印象ずけていた。 今日は帰らないと騒ぎ出したほどだ。

普通なら断るところだが、 親に連絡すると言う条件で人のいい昭人は彩子を泊めてしまう。

これで瑠璃と同じ条件。 後は自分次第と彩子は異様に息巻いている。

その様子に昭人は何も感じなかったが、 瑠璃の心に空白の時間の事と共に深く傷を作っていた。

------ばか



<お・わ・り>^火曜日^










後書き

真面目でもないし、 暴走でもない。 どっちつかずの作品でなんか変。
設定に無理がありすぎたか?
次いでに人物の性格があやふや、 最後も決めてなかったりする。
だから題名もおかしいんだよね。 Good? Bad? どっちがいいかな。
瑠璃も彩子も一応、 瑠璃色に近いんだよね。

writted by yuashi
yuashi@z2.zzz.or.jp