真夜中
------昭人さんと片桐さん ・・・ ・・・ か
------昭人さんの優しい瞳を是非描きたい!って、 一度付き合ってたのは知っていたけど ・・・
------あんなに仲が良かったなんて全然知らなかった
------こんなに近くにいつも居るのに、 昭人さんの事全然知らない
------結局、 何も知らないんだ。 昭人さんの事 ・・・
------昭人さんがどんどん遠くに居ってしまう ・・
そこまで考えると、 急に不安になって昭人の方に向く。
ちらっ
! 向く途中に彩子の顔が目に留まる。 まだ寝ていない。
------片桐さんが起きている
その事実に瑠璃は硬直する。
他人の家で寝にくいのは解るが、 こんな時間まで起きているのはおかしい。
今起きた様子でもない。 何か思いつめて考え事をしている。 そう、 自分のように、
今の瑠璃には少なくともそう映った。
暫くして彩子も瑠璃の視線に気付いて、 きっと瑠璃を睨む。
負けない! そう意志が現れている。
------昭人くんは渡さない!
------確かに瑠璃ちゃんは可愛くて、 頭も良くて、 私の勝てるところなんか少ない
------でも ・・・ 昭人くんを思う気持ちは別!
------昭人くんの居ない生活なんて、 嫌!
------2人の間に昔何があったとしても、 今は今、 負けるもんですか
------片桐さんの目 ・・・ ・・・
------あたしはあんなに昭人さんに真剣なんだろうか?
------自分では負けないとは思っていても、 周りの人達から見ればどうだろう?
------積極に頑張る片桐さんに、 今の生活で満足しているあたし ・・・ ・・・
ぐぉー、 ぐぅーぐぅー
昭人の大きないびきが2人の考えの仲に割って入る。
それを聞いて2人は心持ち、 心が軽くなった。
心配しなくても昭人はここに居る。
悩むだけ無駄、 昭人なら何も考えずに好きな方を選ぶだろう。
そんな安心感が2人を襲い、 深く本当の眠りに就く。
瑠璃色の天の川
ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.R
水曜日--眺めるだけの生活--
「Horry up! 早く早くっ」
彩子が2人をせかす。 朝食が1人分多かったので少々いつもより遅い。
しかし、 まだ急ぐ必要の無い時間だ。 昭人はちょっと不服顔だ。
------まだ大丈夫なのに何急いでんだよ。 彩子の奴
------料理は奇数の数の時が一番難しんだ。
------そんな事も知らないくせに、 食べるのだって ・・
------そう言えば昨日、 料理教える約束だったんだよな
------そんな事気にしてんじゃないだろうな?
------あれは瑠璃ちゃんが ・・・ って、 瑠璃ちゃんは関係無いだろ!
「今、 私の悪口考えてなかった?」
1人で考え事してる昭人に、 彩子が声を掛ける。
「んあ? あっああ ・・・ ・・・ 違う違う!」
「あらあら、 素直に認めたらどう?」
「何言ってんだよ! 俺が何考えてたってお前には関係無いだろうし、 どうやったらそんな事解るんだよ」
「女の勘よ。 好きな人の事は何でも解るものなのよ」
「そんなむちゃくちゃな」
「いいのいいの、 気にしない気にしない、 気にしたら負けよ。 The End ってね」
------はぁー、 百合香ばりの考え方だ
嫌な想い出を思い出す昭人。 彼にとっての一番の不幸は撫子の艦長が百合香だった事だからだ。
「今度は何? 嫌な想い出とだぶらせないでよね」
「なっ!」
またまた正解だ、 絶句する昭人。
彩子に悪魔でも着いているのかと疑問の目で、 彩子の周りを良く見てみる。
もちろんそんな物どこにも居る訳が無い、 さすがのアキトも無意味さに気付いてすぐに止める。
「ところでさ、 彩子。 どうやって学校に行く気だ? 電車か?」
話題を変えたかった昭人がうまく話を摩り替える。
「Why? こんな可愛い娘を1人で行かす気? もちろん自転車で行くわ。 by bicycle よ」
「どこにあるんだよお前の乗る自転車は? もしかしてこの近くなのか? お前の家」
「Non、 Non! そんな訳無いでしょ、 昭人くんの自転車を使わしてもらうわ」
「えっ? ・・・ てーことは、 俺は歩いて行かなくちゃいけないのかよ」
がっくしとして頭を抱える昭人。
「さあ、 乗って乗って」
「へっ?」
訳が分からずに口をあんぐりと開けている。
「2人乗りよ、 昭人くんが運転手で私がお客さん。 どう? 解った」
出来の悪い生徒に諭すように彩子が振り付けつきで説明する。
「はははっ、 人が悪いや彩子も、 最初っからそう言ってくれればよかったのにさ」
やっと意味の解った昭人が、 彩子に抗議の声を上げる。
「人が悪い? あなたが勝手に勘違いしたのよ ・・ 」
彩子がすぐさまそれを切って返す。
------仲の良い夫婦ほどよく喧嘩する ・・・ か
2人を注意深く観察する瑠璃。 2人は喧嘩をしながらも自転車に乗って動き出す。
瑠璃にはそれがとても不安に思えた。
いつもなら待ってくれる昭人。 そして置いてきぼりを食らった自分。
自分との間に誰か入るだけでこうなってしまうのか?
彩子だからなのだろうか? と ・・
そして瑠璃も2人を追いかけるようにして自転車に飛び乗る。
「ねえねえ、 知ってる? 片桐さんと昭人君出来てたんだって ・・ 」
学校の廊下を歩いているとそんな声が瑠璃の耳に入ってきた。
瑠璃の足がぴたっと止まる。 しかし、 確かめる勇気は自分には無い。
結局自分にはなにも出来ない。 そう思い直して再び歩きはじめる。
「おはようございます」
いつものようにみんなに挨拶をしていく、 返事はいつものもの「おはよう」。
ほっと落ち着く瑠璃。 自分を見て噂している様子では無い。
「 ・・・ って、 ホントなの?」
遠くから賑やかな集団が通りかかる。 彩子の友達グループだ。
「えっ! Why? なぜ知ってるの? 私まだ誰にも言ってないのに」
いかにも驚いたって顔をする彩子。 そろそろ言おうとしていた所なのだろうか?
「えっっとーー、 とある人から聞いたの!」
彩子に聞き返されて焦り、 大声を出して誤魔化そうとする。
「Who is it? 誰?」
「名前を教えないって約束で聞いたから、 教えられない」
「何言ってるの、 そんな事言わないで教えなさいよぉ」
さらに追求しようとする彩子だが、 通り過ぎてこれ以上瑠璃の耳には入らなかった。
------誰なんだろうか?
------みんなも聞こえてる筈なのに ・・・ ・・・
------昭人さんとあたしの事なんとも思ってないんだ
------噂になるのも困るけど ・・・ 舞い上がってたのはあたしだけって事?
------噂といえばやっぱり好雄君
------今は居ないみたいだけど、 帰ってきたら聞いてみよう
・
・
・
待っていた瑠璃だが、 とっても大切な事を忘れていた。
こんな卒業前、 授業がある訳も無く自分の担当の仕事をこなすだけ。
用事が開いた人だけここに居るのだ。
好雄が帰って来るという保障はない。 案の定、
「好雄君は、 何処へ行ったんですか?」
と聞くと、
「学校中の女の子の趣味を聞いてまわる! とか言って出て行きましたよ」
と返ってきた。
これでは教室に居てもしょうがない、 一年あたりの教室に行ってみる事にする。
「ねえねえ。 住所と名前だけでもいいからさ、 教えてくれないかな? この学校を去る先輩のお願い! 聴いてくれるよね?」
一年のとある教室、 思った通り好雄はそこに居た。
意外と人気のある好雄はこれだけでほとんどの女子がOKする。
今も、 可愛い子に迫っている所だ。
「好雄君」
邪魔にならないように小さな声で呼ぶ。
気を使ってる訳ではないが、 大きな声で呼ぶのがなぜか嫌だった。
「うん? !! あっ瑠璃ちゃん! はいはい、 なになに?」
それでも好雄には届いたようだ。 すぐさま寄って来る。
質問されていた娘が膨れてたりするが、気にしてない。
階級では瑠璃の方が上なのだろう。
ぱしっ
好雄の頬が瑠璃の手によってぶたれる。
好雄は叩かれた所を押さえて困惑顔。
「好雄君! 間違いだったら後で謝ります。 とにかく付いて来てください」
それだけ言って瑠璃は向きを向き直り、 さっさと歩き出す。
好雄の方も大体事情が解ったのか、 真面目な顔になって付いてくる。
つかつかつか、 ぴたっ
人気の無いところで瑠璃が止まり、 釣られて好雄も止まる。
「あのっ、 えーとーー。 なに怒ってるの?」
先に切り出したのは好雄だ。
「心当たりがありませんか? だったら ・・ 」
「あの事はそのっ、 俺のせいと言うか違うと言うか ・・ 」
間違いならば謝ってさっさと行ってしまおうとする瑠璃だが、 好雄が最後まで言わせてくれない ・・・
「はっきりしてください。 最初に始めたのは好雄さんですか?」
「 ・・・ いやっ。 昨日振られちゃったのかなと思ったりして、 後付いていったらさ。 たまたまあの2人が仲良く入ってくのみて、 そん時むしゃくしゃしてたから ・・・ つい」
悪びれずにいつもの軽い口調で答える。
「 ・・・ 」
「 ・・・ 本当にこんなに噂が広まるなんて思って無かったんだ。 しゃべる奴選ばなかった俺も悪いんだけどさ ・・・ ほら、 ○×! あいつって口が軽いだろ?」
「素直に謝まりもせず、 自分の罪を人に擦り付けようとする。 人間として終ってますね。 それに何時間も外で待ってたんですか? ストーカーです。 それは ・・・ これ以上あたしに付き纏わないでください! しつこいようだと訴えます!!」
物静かな瑠璃の大声、 好雄の答えに少しばかり取り乱す。
「瑠璃ちゃん、 俺は一緒に家に入っていった! ってしか言ってないんだ。 本当なんだ、 ○×が勝手に ・・ 」
「噂ってそんなもんです。 有りもしない事を付けたしていって ・・・ そのことは一番好雄君が解ってるはずです。 あたしには言い分けにしか聞こえません。 じゃあ、 さようなら。 永遠に ・・・ 」
好雄が何か言う前に、 そう言ってここを後にする。
今更謝っても遅すぎるし、 言い分けがまだ続くかもしれない。
どっちにしろ好雄とはこれっきりにしたかった。
「あっ! 居た居た。 瑠璃ちゃん」
突然声が掛けられる。 昭人だ、 彩子も一緒に居る。
「どうしたの? 好雄が放心しちゃってるけど ・・・ なんかあったの?」「別に」
「でっでも ・・・ ・・・ ほんとに何も?」「はい」
「そ ・・ う」
押し切られた昭人、 先が続かない。
「何やってるの! 瑠璃ちゃんを美術部に誘うんじゃなかったの?」
止まってる昭人に彩子が面倒臭そうに助け舟をだす。
「美術部に? あたしが」
「そっそう! そうなんだよ瑠璃ちゃん。 瑠璃ちゃんもどの部にするか決まってないんだったら、 一緒にどうかと思って ・・ 」
もちろんこの時期に入部なんてする訳有りません。 これはきらめき高校の伝統の一つで、 何か理由(家の事情とか続かない等)があったりして部活に入ってなかった人が、 最後だけでも仮に部活に入って写真や記念をもっと盛り上げようっていう企画で、 別に強制じゃないんだけど参加する人が多いみたい。 あたしは別に興味が無いから決めてないんだけど ・・
「そうですか。 でもあたし絵は苦手なので別の部にしようかと思ってますので ・・・ 」
「そうなんだ。 じゃあ関係無いよな ・・・ じゃあ 」
しょぼんとする昭人、 力無く言う。
絵の苦手な自分が絵のうまい彩子と比べられたくないからだ。
「美術部は最後にとっーてもBigな作品をみんなで作るの、 落書きみたいなもんだから上手じゃなくても大丈夫よ! 気が変わったら来てね。 瑠璃ちゃんの描く所開けといてあげるから」
それを見た彩子が雰囲気を壊すように大きな声で提案する。
どうせなら対等に勝負したい! それが彩子の思いだ。
「はい、 でも開けなくてもいいです。 たぶん行きませんから」
別にさしたる理由もなくそう答える。
「そう ・・・ じゃあ、 何か3人でしましょう! あって、 みんなが驚く事を」
「卒業式でも逃げ出しましょうか?」
「Oh! Niceな考えね。 伊集院君のやる卒業式なんてそうしましょう!」
指を鳴らして大きく賛成を表現する。
「おいおい、 ちょっと待てぇーー。 なんで俺までそんな事しなきゃならないんだよ。 俺はそんな事やらないからな!」
大きな声で叫ぶ昭人、 目が本気だ。
「っもう! 冗談の判らない人ねぇ、 嘘に決まってるでしょっ」
「えっ、 そなの?」
まさにって感じで昭人の惚けた顔、 本気だからなおさら際立つ。
しばし笑いが続く、 彩子は我慢するのに精いっぱい。
・
・
「昭人さん、 昔の顔に戻りましたね。 昨日まで少し恐かったけど、 今は大丈夫です」
「Buuuu! 昔の話はしないでっ! 私解んないもの ・・ 」
「じゃあ、 今から教えちゃいます。 昭人さんってHeroになるのが夢で、 いつも玩具の主人公なんかに声を合わせて叫ぶんです。 「止めだぁ!」とか」
「Really? ほんと? 今時小学生でもしないわよ。 そんな事ぉ」
お得意のばっかじゃないのって目をしている。
「いいだろ! 好きなもんは好きなんだからさ」
昭人側の反論、 それ言っちゃお終い。
「そうです。 個人の趣味にとやかく言うのは良くありません。 意外と役に立つもんですよ、 替わりに殴られてくれたりとか ・・ 」
瑠璃の想い出話、 前の事で良く思い出してる。
「Knightのつもり? じゃあ、 あたしはPrincessでいいわ」
「ちなみにあたしはNatural Raichでした」
「What? 何それ?」
「Knightに助けてもらう人のことだそうです」
瑠璃でも間違えて覚える事があるのです。
「へぇー、 知らなかった」
納得するなする彩子も彩子だが ・・
「おーい」
脇役その1が声を掛けて来る。
「あっ、 やばいぞ」
「じゃあねぇー、 See you!」
急に昭人達が駆け出す。 美術室の方からだ、 作業を始めるんだろう。
------今朝は一言もしゃべれなかったのに ・・
------彩子さんのお蔭かな?
------片桐さんのさっぱりとした感じ、 好雄君とは大違い
------昭人さんも戦争の事忘れれたのかな? 一瞬でも、
------いい笑顔してた、 いろいろ辛かったもの。
------たまには息抜きしなきゃ。
結局、 美術部には行けなかった。
途中で漫研に捕まって何時の間にかのめり込んじゃって ・・・
描いた漫画「伝説の樹」 ・・・ この学校が舞台、
今まで何にも興味を示さなかった少女がふとしたきっかけで恋をするの。
最後は相手と結ばれてHappy Endって話。
自分にだぶらせて描いたから良く出来てると思う。
文集に載せるんだって、 恥ずかしぃー!
こんなうまくいかないのが現実だけど、 夢見るぐらいは良いよね?
あたしはまだ「華の乙女」、 少女ですから、
<お・わ・り>^水曜日^
後書き
もっと熱く喧嘩させようと思ったら、何時の間にか仲直り(?)
最初は好雄じゃなくて彩子を叩かそうと思ってたのに ・・
手が勝手に打ったので最初と終りが違い過ぎ!
そういえば好雄は? 最後は瑠璃で終らしちゃいけないよね?
彩子と昭人も何処行った? 脇役その1って誰?
謎だらけの水曜日、卒業までは大丈夫?
writted by yuashi
yuashi@z2.zzz.or.jp