Internet Alert "Frozen Drive"
インタネットアラート、 フローズンドライブ
第弐話..冬眠
新一はゆっくりと顔を上げ、 冷たい緑色の瞳を見つめる。
「俺はドライブを改造したい..今のシステムじゃあバイラスのマインドアタック
には勝てない。 勝つにはバージョンベータが必要だ。」
ヨークが小さく微笑む。
「かつてナガシマ龍蔵がプログラムした幻のOS、 バージョンベータ..風の便りに
よるとインターシーフ達がプログラムを完全にデリートしたそうです。 バージョン
ベータはもうこの世には存在しません。 どうするおつもりですか、 Mr.ナガシマ?」
新一は立ち上がり自分のピアスを指差す。
「あれは俺が流したプロパギャンダだ。 真相を教えてやる! 俺がデリートしたのさ、
インターシーフに似たやり方を使ってね。 バージョンベータが幻になったのは俺が
着けていたからさ、 このピアスとしてね!」
マリーは驚きを隠さなかったが、 ヨークは動揺もせず新一を見つめていた。
「フフッ、大体の予想はしていました..ですがバージョンベータはフィードバックが在ると聞いてい
ます..その様なダメージを受けて、 勝つ自信があるのですか?」
「もちろんだ、 マインドアタックされるよりはマシだね。 それよりなぜベータのシステムを
そこまで把握している! これは歴史から抹消ずみのハズ..」
「すまんなぁ小僧! 俺が全て教えちまったよ..お前の事、ベータシステムの事、そしてお前の家族
の事もな。」
エレベーターが開きそこから一人の美形の青年が出てくる。
「あっ! アーサーぁ! ANTIに来てたのね? 電話してって言ったのにぃ、してくれないだものぉ」
マリーがアーサーと呼ばれる男の背中を叩く。アーサーはお返しにマリーの頭をポンッと軽く触る。
「スマン、スマン今帰って来たばかりなんだ。 途中でアクシデントに遭遇して予想以外に送れちまった
ケドなぁ、 小僧!」
アーサーは新一にウィンクする。
小僧..新一の頭の中にある人物が浮かび上がる..新一はアーサーをよく観察しその人物と容姿を重ねてみる。
「まーだ分からねーのかぁ? 俺だよ! ランスだよ..ほれほれ付け髭!っな?」
新一は驚きを隠せず一歩跡ずさる..
「マジにランスのオッサン? まさか髯そったらここまで若返るとは..俺も驚いたぞ!」
「まぁ、 今度こそよろしく頼むわぁ、 コゾ..おっと新一だったな!」
「ああ、 こっちこそ宜しくな、 アーサーさん」
ヨークがアーサーを険しい顔で睨む。
「Mr.ブロスナン、 下がってもらって結構です。」
アーサーは、にやけた顔でヨーク長官に答える。
「これは職場仲間とのコミュニケーションですよ。 怒るとその美しいお肌にしわができますよ、いくらANTIの
長官といえど自分の肌くらい気をつけないとせっかくの美貌がだいなしですよ。」
「二度言う必要はありませんね、 アーサー。 私は無能な男が嫌いなのですよ。」
マザーボードルームが静まり、 ヨークの声がモニターからこだまする。 アーサーはお構い無しにヘラヘラと微笑む。
「分かってますよ、 ヨーク長官。 じゃあ新一、 後でな!」
手を空にかざしルームから出ていくアーサーを追うようにマリーが質問する。
「アーサァー、 電話してね。 約束よ!....あっ..ス、スミマセン! ヨーク長官。」
マリーはモニターに気づいたのか、 いつものストイックな彼女に戻る。 アーサーはエレベーターに乗り込み、ドアが
閉まる前にマリーにウィンクした。ヨークはそのままマリーを睨みながら新一に話し掛ける。
「私に知らない事などありません..もし知らないのならばすぐ答えを知るまでです。 ANTIには貴方以上のインター
シーフ、ハッカー、 フリーカーなどを雇っています。 ANTIの力を甘く見ないでください。」
「..フッ、そうか..ならそのプロのハッカーとシーフ、 五人ほど貸してくれないか? バージョンベータを移植するには
一人じゃあ時間が懸かりそうなのでね。」
ヨークはその吸い込む様な深緑の瞳で新一を睨み付けながら答える。
「それだけでは足りないでしょう。 ANTIのプログラミング技術部を50人ほど回しましょう。次のATTACKは半日後..
貴方に与えられた移植時間は6時間半です。 できなければ元のドライブで出撃していただきます、 よろしいですね?」
新一は自分の拳を作り、 ヨークの前に翳す。
「この腕にかけてやってやるよ! ヨーク長官。」
....ANTIのメンバーは驚いていた。 今までインターギャラクシー最高のプログラマーと呼ばれていた自分達が十人懸
かっても新一のプログラミング速度に追いつけなかったからだ。
「このプロシージャーを次のファンクションと融合..おい、 そこの! そのプログラムにはモジュールを使え! その方が
メモリーを無駄にしない!」
新一の声がマザーボードルームーに響いていた。
....そして5時間55分後....ドライブシステム・バージョンベータが完成した。
「ふぅ、 終わったか..ボディーの改造はマジに大変だったな。 スピードを上げる為に脚の太くして腹部の装甲を削った。 他には
フィードバックの時にチョークされないよう、 首の装甲を増やして、 顔面の表面積を減らす為に新しいヘッダーを付けた。 見た目は
人の顔が空手のフェイスガード被ってるようで少しダサいが..文句言える立場でもねぇしなぁ。」
新一は額の汗を拭く。 その時後ろで誰かが拍手している音が聞こえた。
「お見事、 シンイチ。 ここまでプログラミングが出来るなんて正直驚いたわ。 コーヒーの差し入れよ。 それと長官からの司令、
『次は無いと思いなさい..WIN OR DIE..Mr.ナガシマ』ですって。」
そう言いながら新一に缶コーヒーを渡すマリー。 新一はそれを開けると一気飲みし缶を潰す。
「バージョンベータは負けねぇ! 絶対にな..バイラス..完全にフォーマットしてやる!」
「強いのね、 シンイチは..私は貴方のそういう所を尊敬するわ。」
優しい目で新一を見つめるマリー、 だが新一は何を言っていいのか分からなく、 その場を逃げようとする。
「じ、時間だ! さぁーてと、 バージョンベータのテストランとでも行きましょうか? シルバーストーン中佐、 インストール..
及びスタートアップを頼む..」
それだけを言い残し、 新一はチップへと走りはじめた..
『System Boot....2GB..6GB..290TB....580TB....10000TB..Done。
System Starting....Reading Cybernetics....』
新一はファイアーウォールスーツに着替えながらインストールを待った..
「ファイアーウォールがスーツにねぇ..考えたな。 デザインも俺の柔術着に似せて作ったデザインだな..後はナーブリンクケーブルを..
おもしれぇ..ちゃーんと黒帯の作りしてらぁ、 リクエストはしてみる物だな。 よっし!」
道着を二三回ほどはたき、 帯をきつく締める..新一の場合いは三回巻いてからきつく締め、 帯の先を膝二付くくらいまで垂らす..
『Cybernetical nerves....Found....Identity request....』
「シンイチ、 ウォールスーツはどう? 貴方のリクエストどうり作ったつもりだけど。」
マリーの声が新一の脳に響く。
「ああ、 ぴったりだ映像をつける..」
新一はウォーフィールドのオプション機能をイメージし、 自分の前にドラッグする。 そして映像の切り替えを思い描く..
「似合ってるわシンイチ。 次はMISSIONのブリーフィングよ..さっきい..」
「さっき言ったとうり、 俺には勝つしかない..だろ?」
新一の表情が険しくなる..
「そうよ、 そして出来るだけバイラスの増殖、回復機能そしてコアを狙って攻撃して。 もし全部破壊されていなかったらサウス・アメリカの
悲劇を繰り返す事になるかもしれない..」
マリーの茶色の瞳が潤む。 新一はマリーの言ってる事が分からず、彼女を問う。
「サウス・アメリカの悲劇? 何が起きたんだ、 教えてくれないかマリー?」
マリーは手を顔によせ新一の問いに答えた。
「知らないのね..20年間フリーズされていたのですもの、 無理も無いわ。 サウス・アメリカはミケランジェロ・バイラスに..」
『Warning..Warning..VIRUS..detected..Please..Secure the Area..Sector..
0−0−5..Neo York city is under attack..secure the Area』
マリーは驚きのあまり声をあげる。
「バイラスが進んでCityを襲撃するなんて..今まではありえなかった事だわ!」
新一の表情が暗くなる..
「Virus..一定のサイズと力を貯えた後、他のものをマインドアタックし吸収する..それがバイラスの真の存在理由..これを公表した為に俺達は..」
『Warning Sector underattack..Sector underattack..』
新一のモニターがマリーからヨークへと変わる..
「誰も貴方の気持ちなど分かりません。 ですが、 今 貴方に出来る事は目標のバイラスの侵食を止め、 他の人達の幸せを護る事は出来るのです。 慰めは戦いの
中に見つけなさい! 貴方に同情する人は誰一人とて存在しません。」
ヨークの炎の様に燃える髪をシルエットにモニターがマリーへと切り替わる。
「出撃準備はOK、 システムALL CLEARだ。 Neo York Cityまではどう行く?」
マリーが笑みを浮かべながら答える。
「ドライブ用の高速サイバネティックスモデムを使うわ! 性能を試すいい機会だわ!」
そう呟きながら、 技術科を呼び出し、 モデムスロットへとゲートを開ける。 ドライブはゲートを通り抜け、
モデムの上に横たわる。
「今からモデムをネオヨークシティにのバイラス位置までコネクトするから。 Gが多少掛かるけど死ぬほどでは無いわ。 今度こそバイラスを仕留めなさい。
Good luck!」
モデムのコードが太いファイバオプテックスのケーブルに繋がれ、 モデムは高い雑音を響かせながらダイアルする。 雑音が静まったすぐ後、 ドライブはケーブルの
中を走り、 Neo York Cityへと向かった。
「今度は勝つ..」
Frozen Drive
『Hybernation of man』
Neo York City、 United Statesの大都市ニューヨークシティから北西約150キロに面する新世紀の都市。 2015年まではニューヨークシティ
を超す速さで拡大していった都市も、 第一バイラスがサウス・アメリカで発見されて以来、 その人工拡大のスピードを失った。そして今、 人々の悪夢が現実となって
ネオヨークシティを襲った。 凄まじいスピードでバイラスは街を侵蝕し吸収していった。 逃げ惑う人々、 あるものは走り、 ある者はその騒ぎの中でただ神に祈るしか
なかった。 その時、 ネオセントラルパークに突如現れたもう一体の巨大な物体..人々は絶望を顔に表した。 人々は逃げるのを辞め地べたにはいつくばった。
「到着か..早いな、 うっし! バイラス退治と行きますか!」
オーソドックスに構える新一、 ドライブも同じ様に構えた。 この人間的動きを見て、 町の住人達は驚きの様子を隠せなかった。
「マリー、 目標の繁殖機能及び回復機能は何処に在る?」
ウォーフィールドからマリーに語り掛ける。
「バイラスはこの前から進化してるわ! 進化するたびに機能のローケーションが変わるから、 まだ判らないわ!」
キーボードを素早く叩いている音が聞こえる。
「ってー事は、 バイラスと仲良く遊んでろって事か? おもしれー、 出来るだけ時間を稼ぐから早く探しておいてくれよ!」
新一はマリーのイメージを脳裏から消し、 素早く自分の闘志を燃やす。 ウォーフィールドウィンドウのアドレナリンレベルが上がる。
「アドレナリン、 60パーセントか..行ける!」
ドライブは猛スピードでバイラスに向かって走り出す。 バイラスはそれに気づかずひたすらシティを吸収していた。
「武田邪剣流、龍尾巻き落としぃぃ!!!!」
ウォーフィールドの中で3メートル飛び上がり、 そこから身体を前方回転させてから腰をひねり脚を伸ばす、 そしてバイラスのホログラムに向けていっぺんに脚を振り下ろす。
ドライブも新一と同じようにその太く黒い脚をバイラスのドクロと思われる部分に落とす。
「よしっ!!」
そう思ったのもつかの間、 バイラスに脚を掴まれそのままニュートランプタワーに叩き付けられた..
「がっ...効くねぇ、 でもこれ無しじゃあ死闘って感じ、 しねえからな..行くぜ!」
倒れた状態から左手で手刀を作り、 バイラスの右腕に向かって振り下ろす。 案の定、 バイラスの腕は千切れ、ドライブはバックフリップで腕から増殖していく触手の猛攻を
避わす。バイラスの右肩からは新たなる腕が再生し始めていた。
「フッ、 そう来なくっちゃな..ちょっとは手応えねぇと倒した気にもならねぇ!」
新一は構えを武田邪剣流・極に変え、 バイラスの様子を覗った。 バイラスは再生した腕を長い刃に変え、 新一の視界を変えた。
「何!..クッ、 後ろか!」
新一は構えを解き、 自分の体制を後ろに向けた..そこにはニュートランプタワーの残骸しか残されていなかった。
『Warning VIRUS in opposite direction!! Warning VIRUS in wrong Direction!!』
「チィ! ....避けきれねぇ!! クソぉ!!」
バイラスの左腕の触手がドライブの首を絞める..新一にもそのフィードバックが首にかかる。新一の首にきつい黒い痣が現れる。 それをフォローするかの様に、 バイラスは
右腕の刃をドライブの胸部に突き刺す。
「グァァッ!!! ウァ..クッゥゥウ!!! クッ..ッソ..フィードバックが効きやがる..おもしれぇ..急所もばればれって訳か..フッ」
新一のファイアーウォールスーツから血が滲み始めた。
「シンイチ!! 気をつけて、 今のはマインド・ワープよ! 貴方のビジョンに錯覚を作り、 消えたと思わせるの。 マインド・ワープは脳に直接微弱なリンクをかけているから
貴方の十八番の氣を感じるとかカラテで言う流しはできないわ! ホログラムの動きを見るのよ!」
マリーの通信が新一に語り掛ける。
「分かってるけど..今はそんな状態じゃ....ねぇ..早く弱点..お」
「今、 解析しているのだけど、 バイラスの装甲がライトプロテクトされてデータのアドレスがダウンロードできないの..Keep Fighting、 後3分も在れば見つかるわ。」
新一は喉を掴みながら険しい表情から笑みを浮かべる。
「了解..ゆっくりダウンロードしてな....クッ..時間稼ぎしといてやるよ。」
マリーは通信を切らずそのまま新一の映像を映している。新一は自分の首に巻き付いた触手を千切ろうとあがくが余計首が絞まってくる。バイラスは徐々にドライブを持ち上げた。新一は
地面に付こうと重心を脚に置くがバイラスの力が新一のドライブを上回る。
「かはっ....マ、 マジにヤバイ....こうなったら..」
新一は触手をきつく掴みマリーに叫ぶ..
「マインドブレイクを開放させる..とばっちり食らわない様、 ウォーフィールドのリンクを切っておきな!」
マリーは暗く驚いた表情を隠し、 新一に叫ぶ。
「NO、 You may not! This is an order Shinichi!!」
「うるせー!! 俺の考えている事を聞いてる暇が在んなら、 早くヤツの弱点を探しやがれ! 行くぞ....マインドドライブ開放....ドライブと俺の神経のリンクを100%にあげる..
ブレイクスタート!!」
『Mind DRIVE Linked....Transfering data....Done』
ドライブの頭部のマスクが外れ、 新一と似た輪郭のした顔つきに変わる、 そして腕の装甲が外れ骨の様な物体が浮かび上がる。
『....MIND BREAK START....NOW』
「....Death is the true secret to BUSHIDO. そう、 武士道の最終到着地点は死だったよな..オヤジ!」
新一が雄叫びをあげながら自分の拳を首の痣に突き上げる。そして眼を閉じながら念じる。
「MIND BREAK....Execute..」
ドライブが口を大きく開き、 眼を赤く輝かせる。 ドライブの腕がバイラスを掴み、 電子回路の輝きを放つ。 ドライブの腕が灰のように溶け出し、 それに掴まれたバイラスの触手もまた溶け出して
いった。
「まだだ..道ずれ....だ。」
ドライブの右腕は既にダストと化していた。 バイラスの触手も同じように溶け始め、 新一をチョークしていた触手の絡まりは取れていた。
「くぅ..このまま俺と共にフォーマットだ....Let’s go to hell。」
ブレイクがドライブの右肩を侵蝕しようとした時、 新一の脳裏に声が響いた。
『お兄ちゃん....お兄ちゃんは絶対負けないよね!』
『Mind break aborted....Mind link..transfer rate..70%..』
「..ア.イ..そうだったな。 俺は最強だよな。 相打ちは負けだって事..忘れてたぜ。 チョークも溶けた! これなら勝てる!」
新一は体制を直し、 バイラスの牽制を待つ。 バイラスの腕は触手から死神のカマにデータをトランスファーさせる。 両腕の刃物を
クロスさせながらその根の様に動く脚でドライブを掴もうとする。
「一度見せた技は二度効かない..これが格闘家の心情だ!」
ドライブはビルに向かって飛び上がり、 ビルを軽く蹴る。 ビルはその衝撃でビルのガラスは全て砕れる。 ガラスの破片はバイラスの脚に吸収され、 バイラスの脚から巨大な刺が生える。
ドライブは空からバイラスの左肩目掛けて横蹴りを放つ。 バイラスに命中し、 バイラスの左肩がガラスの様に割れる。 それを追うようにドライブの左拳がバイラスの腹部を貫いた。
バイラスは右手の刃をドライブの眼を狙う..新一は紙一重に背を曲げ、 バイラスの突きは空を切る。
「この距離からの攻撃は俺の拳の方が有利だ..」
新一はバイラスの体制を崩すとそのままマウントポジションを取り、 バイラスの頭部を力一杯殴る。 だが、 ここだけ装甲が固く、 なぜか貫けない。新一はマウントポジションを解き、 肘をホログラム
に向かって落とす。 バイラスはそれを予想した居たかの様に溶けた脚でドライブを跳ね除ける。
「クッ..調子に乗りすぎたか..」
新一は前方回転で状態を立て直す。 バイラスは割れたドクロを外し、 鬼のような形相をした顔が現れる。バイラスの腕も死神のカマとして復活していた。
「今度はこっちから仕掛ける..」
新一はバイラスを掴み膝蹴りを頭部に向けて蹴りだす、 だがバイラスもその腕のカマで新一の腹部を切り離そうとする。 新一はとっさに避そうとするが右腹部を運悪く切られてしまった。
「..長時間戦えなく..なってしまったな。 マリー! 弱点はどうだ..見つかったか?」
「繁殖機能と回復機能は両方とも頭部の中心に隠されているわ..でもコアが何処にも見つからないのよ。 もう少し時間を稼いで! もう少し様子を」
新一は無理にも笑みを浮かべ答える..
「了解....」
そしてマリーとの通信を切る。
「..女に嘘をつくのは好きじゃないが..この状況じゃ仕方ない..」
新一は武田邪剣流・光の構えをとりバイラスの攻撃を待つ。 バイラスは新一の予想どうり脚をドライブの首に絡ませ、ドライブを自分の方向に引きずっていった。
「...光琳法..壊!」
ドライブの左腕の装甲が炎をまとい、バイラスの頭部をかみ砕く。 バイラスの鬼のような顔は氷のように砕け..炎に溶かされていく。
「これが回復機能と増殖機能のプログラム..これで! 終わりだ!」
新一は自分の腕の残り火を漆黒の球体に向けて放つ。バイラスのプログラムは跡形もなく溶けてゆく。
「マリー、 回復、 及び増殖機能を破壊した..コアは何処だ?」
マリーは新一の技を見て驚きの様子を隠せない。
「..え? あ..バイラスのコアは脚に隠されているわ..解析によると..バイラスの脚が根のように張っているのは吸収した力がすぐ扱える為..」
新一は血の滲み出ている腹を押さえながら、 マリーを答える。
「..すぐ帰るぜ、 待ってな!」
新一は地に張う脚を破壊しようと大地に向かって踵を振り下ろす、 しかしバイラスは既に新一の視界から消えていた。
「チィ、 またマインドワープ..いや、 マインドディセプション..このまま振り落としてやる!」
ドライブの踵が大地を割る、 しかしバイラスの姿はそこには無かった。
「シンイチ! バイラスはネオ・セントラルパークへ向かってるわ! 右の方向よ!」
ドライブは踵を大地から引き抜き、 ネオ・セントラルパークへと全力疾走を始める。新一は常人とは違い、 短い距離間ならば疾風の速度で走る事が出来る。 ドライブの疾走速度は新一の
走りと比例している為、 その速度はUNの飛行部隊に値する速度だった。新一はバイラスの最終本能があるプログラムのエクセクューションだと知っており、 今のバイラスの行動は明らか
にそのプログラムを有意義にエクセューションする為の実行だという事に気づいていた。
「パークか..考えたな..コンプリートフォーマットを自分、 及びパークにかければ壮大な被害が出る。 俺には関係無いがね。」
マリーの声が新一の脳に響く。
「シンイチ! 前方300メートルに目標が確認されたわ! 出来るならバイラスを集落以外の所へ! 命令です!」
「了解..だが、人が死のうと俺には関係無いし、 責任も持たないぜ、 シルバーストーン隊長..」
新一の額から汗が流れる。
「一発で決める..光琳法・絶..」
新一は残った力を己の左手に集め..その力を凝縮する。 新一の左腕の筋肉が変動を起し肉離れの様な感触が新一を襲う。
「Format operati....クッ..Cancel!」
ドライブがジャンプの頂点に達したとき、 新一の眼に一人の少女を守る少年を目当たりした。 新一の記憶に一つのシーンがフラッシュバックする..
『お兄ちゃん!』
一人の少女の声..幼くそして新一のただ一人の生きた肉親..
『一生アタシを守ってねっ! 約束だよ!』
金色のショートヘアーをなびかせ新一に語る..その青く幼い瞳は悲しみを知らなかった新一の瞳と同じ物であった..
『ああ、 もちろんさ! 兄ちゃんは最強だからな!』
「チッ..関係ねーはずなのによ..」
「Cancel? 何故? よそ見しないで攻撃しなさい! 貴方が死んだらオシマイなのよ!」
新一は筋肉の変動を止め、 宙で一回転しマリーを答える。
「ここからは俺の自己判断だ..隊長は黙って見てろ! Mind Drive..100% MAX Acceleration..Mind Break on..」
『Mind Break Recognized..on』
ドライブは光り放ち、 その身体ごとバイラスを消し去ってゆく..砂のように散るバイラス..それとは裏腹に光り輝くドライブ。 戦いは終わった。
..2HOURS LATER..
茶髪の女性が新一の顔に覗き込む。
「シンイチ!! 良かった!....もう二度と..あの様な無茶はしないでね..これは私からのお願いよ..」
一滴の涙が同じ茶色の瞳から流れ落ちる。マリーの瞳には新一以外何も映っては居なかった。
「..ああ、 美人の上司のお願いは守るのが俺のポリシーだからな..スマン、 疲れたわ..しばらく寝かせてくれないか? 別に死ぬ訳じゃない..眠いだけサ..」
新一は目を閉じ、 マリーは新一の小さないびきが聞こえるまで新一の小さな手を握っていた。
「ゆっくり休んでね..後はアタシに任せて、 シンイチ。」
..At the White House..
歴代の大統領達が座っていた席、 巨大なソファの様な黒い席に座る一人の男、 そして巨大な大理石の机の前に座る美形の女性。
「バイラスの撃退、 ご苦労..ミズ・ヨーク..」
ヨークは顔を上げ、大統領を答える。 大統領はカーテンの目の前に座っている為、 ヨークは彼の顔が直視できない状況にいた。
「ありがとうございます、 ミスタープレジデント。」
大統領は椅子を机に近づけ、 カーテンの陰からその姿を現す。 ヨークより少し年上の、 まだ大統領としては若い男がヨークを見つめる。
「しかし..ドライブ..ANTIにその使用権を渡したが..シティの被害を最小限に食い止められず、 死者を200人は出したぞ。 私は民衆に
どう説明すればいいのかね?」
ヨークは無表情に大統領を見つめ、 大統領の問いに答える。
「ANTI広報部隊はその為に在ります。 United Statesは今まで幾度となく軍事秘密を上手く歴史に抹消してきました。 これもまた、 同じ事です。」
大統領はオフィスの窓から見える、キャピタル・ヒルを見つめながら微笑みを浮かべる。
「ハハハハ、 良い答えだ..それであの計画の方はどうなのかね? その為にUSはドライブという馬鹿げた兵器に民衆の金を密かに使っているのだぞ..これが
REPUBLIC党に知られたらスキャンダルでは済まなくなる。 事は丁重に進めてくれたまえ。」
ヨークの血のように赤く塗られた唇がヨークの微笑みをよりいっそう美しくする。
「君はまだレオナルドの事を考えているのかね? いい加減諦めて、 私と..悪いようにはせんよ。」
ヨークの表情が一瞬歪む、がすぐに微笑みを取り戻す。
「いけませんわMr.プレジデント、奥様に言い訳が着かないでしょう? それに新しい人が見付かりましたので。 時間です失礼します..」
ヨークが不意に時計を見つめ、 席から立ち上がる。 プレイジデントはそれを追うように立ち上がり、 ヨークに忠告する。
「Be alert Miss.York、 you never know when they Attack. Not even the president of the
United States.」
ヨークは髪を振り替えしながら答える。
「Yes、 Mr.President. I understand.」
大統領はそれを見てヨークの美しさに見とれた、 がすぐに我を取り戻しヨークと握手を交し、 ヨークを部屋の戸までエスコートする。
「May the lord be with you、 Ms.York。」
.....Back at ANTI HEADQuarters..
「ヨーク長官は何処へ..」
マリーがANTIのオペレーターに聞く。
「..私は知りませんが..」
「ヨーク長官ならANTIメディカルセンターだぜ..」
長髪、美形の青年がマリーの肩をポンっと叩き彼女を答える。マリーは喜びながら振り替える。
「アーサぁ!」
マリーの唇に人差し指を押し付けるアーサー..
「今はそんな事してる場合じゃないだろ? 新一との約束、 守れよ。」
アーサーがマリーにウィンクする、 マリーは頷きメディカルセンターへと走り出す。
「はぁはぁ、 ちっとはしゃぎすぎた..かな..ハァハァ。」
マリーの息がメディカルセンターにこだまする。 ANTIのメンバーの他、 ほとんどのメディカルルームは空室で、 医者達は、 日夜自分達のリサーチに
没頭出来る場としてメディカルセンターを利用していた。 新一は数少ない患者の一人であった。
マリーはメディカルセンターのインフォメーションでヨークの居場所を聞こうとしたが、 誰も答えようとはしなかった。
「教えなさいよ! アタシは大切な話があるのよ!」
一人の男をゆすり蹴り上げるが、 皆ヨークを恐怖し、 マリーを答えようとしない。
「キィー! もう良いわ! ここまで来たんだし、 シンイチに会ってこよう..」
マリーは新一の部屋へと脚を向けた。新一の部屋から一人の女性がドアを閉めていた。 マリーはその女性を見て驚きを顔に見せた。
「ヨーク長官..何故シンイチの部屋に?」
ヨークは無表情でマリーに問い返す。
「シルバーストーン隊長、Mr.ナガシマ以外のドライブのバージョンアップ..完了しましたか?」
マリーは驚きの表情を真剣な表情に変え、 ヨークを答える。
「い、いえ..まだですが..」
ヨークはその美しい顔でマリーを睨む。 その顔が美しいが為、人を睨む顔はマリーの予想以上の形相だった。
「良いでしょう、 後2時間で新たなるドライバーオペレーターが到着します..調整用意は20ハンドレッドアワーで完了させなさい..」
「ハ、ハイ!..でも新しいドライバーって?」
ヨークが優しく微笑む。
「..これからが大変ですよ、 シルバーストーン隊長。 では私は失礼します。」
ヨークはマリーが挨拶出来る前にメディカルセンターを後にした。
....on Interstate Highway
交通渋滞の激しいハイウェイの中、黒いベンツはゆっくりとワシントンD.Cから50キロ在る郊外のANTI本部へと向かっていた。
「ヘ..ヘ..ヘッ、 ヘっくしゅるぅ!! しゅるるぅぅ..誰かエミリンのうわしゅるしゅてる? リーリぃ?」
金髪の髪をお下げにした少女が自分の肩にいるリスに話し掛ける。
「リー!」
エミリンと呼ばれる少女の銀の瞳を直視し、 自分なりに答えるリス。 少女は外の夜景を見るが、 5分前に見た同じ夜景だと気づき運転席によっかかる。
「まっしゅる? まっしゅるぅ? 運転しゅるしゅん! ANTIはぁまっしゅるっ?」
うっとうしく運転手のにまとわりつく少女、 リスのリーリも運転手の反応を見てはしゃいでいる。 運転手は少女を無視し運転を続ける。
「まっしゅる? まっしゅるまっしゅるまっしゅる? まっしゅる.....まっしゅるぅぅぅ!!!!!」
エミリンは連続に『まっしゅる』と言う意味不明の言葉を発言し、 より一層運転手に付きまとう。 運転手は堪忍袋の尾が切れたのか、
手がフルフル揺れ、 顔がユデタコの様に赤くなる。
「ウ、 ウルセーーーー!!!! SHUT UP AND SIT DOWN!!!!!! そこの冷蔵庫からミルクでも飲んでろー! 俺は運転に
集中しなきゃならんのだぁ!!」
運転席から飛び上がる運転手、 車が一時的に揺れるがエミリンは平然としてはしゃいでいる。エミリンは冷蔵庫を発見し、 ドアを全力の力で開ける。 宝箱を見つけた
様にその眼を潤ませ、 ミルクを手に取る。
「しゅる? ミルクあっしゅる? 飲むでしゅる!! ングングング..プッハー! ああ、おいしゅるぅ!ねっリーリ!」
エミリンはミルクを飲み、 少し残ったミルクを指に付けリーリになめさせる。リーリはエミリンに反応するかのように答える。
「リィー!」
To Be Continued..
次回予告..
戦いの中、 新一は再起不能に陥り、新たに派遣されたANTIのメンバーはただの
子供に過ぎなかった。 この状況の中、 新たなバイラスがアトランタを襲う。全て
は新たなるドライバーオペレータ、 エミリークロフォードの手に掛かっている。
次回
合わせ鏡
「Good luck tell next time!」..By Marie S.
あとがき..
疲れました! 二話の完成です。 新一ファンの皆様、 新一君寝ちゃいました..
その代りロリコン男性諸君! 待望のエミリンの登場です! 次回を期待してね。
P.S
苦情メール、または「何が起こってるのか分からんわぁ! このアホ」ッと言う
意見が在ります方はメールしてね! 後、 新一、 ヨーク、 マリー、 とバイラス
の絵募集してまーす!
..From 庵野になっちゃいそうなYuske..
Excutive Editor..タクさん
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