Frozen Drive

Episode3

作・Yuskeさま

 


Internet Alert ”Frozen Drive”

 

インターネットアラート フローズンドライブ

 

第参話..優しさの一滴.

 

一人の少年が光の中をひたすら歩く。 眩しすぎて何も見えない周りを見ながらも止らず先へ先へと進んでいく。

「ここは何処だ..よく分からない。 夢なのか..現実なのか、 チィ状況が良く掴めない。 ここで立ち止まってても

何も起こらない.... 先に進むしか道が無いか..」

新一は周りの気配を感じながらも止らずに先に進んでいった。 周りが光壁から漆黒に変わり新一は神経を研ぎ澄ました。

新一の耳に風を裂く音が響く、 だが新一はそれを気にせず歩む。首を右に傾げる..ザーシュ..ブンッ..

「その様な殺気で俺を殺そうとするとは..まだまだ甘い..っ!?!?」

新一が振り向くとそこには新一と同じ背の高さをしたドクロの顔を持つ人間が立っていた。 いや、 人間じゃないのかも

知れない..新一は心底そう感じていた。 新一はそのモノの腕を見る..『案の定..』巨大な刃物とカマが腕に合成していた。

新一は構えを取るとバイラスの様子を覗い先手を取る。

「今度は手加減無しだ..See you in Hell..」

新一はバイラスと思われる物体の頭を一撃で貫く。

「手応えあった..フォーマットかんりょ....何!」

バイラスが幻影のように新一の前から消える。 新一の周りの気配が一人、 二人、 三人、 四人、 五人..

増えていく..

「そこだぁ!! 消えろぉぉ!!!」

新一の燃える拳がドクロを貫く..だが、 また幻影のように消えてしまう。 そして気配が増える。

「全てが幻影のはずは無えぇ!! 何処かに本体がある筈..食らえ!! 武田邪剣流、 三途渡し・全!」

新一は自分の中にある全ての精神を集中し、 破壊を脳裏に唱える。 そしてバイラス全体に炎の乱舞で追い討ちを掛ける。

新一の分身がバイラス全ての残像を破壊する..そして最後の一体が新一の前に現れる。 その顔はドクロから鬼の形相に

変わって行った。

「やっぱり貴様か..俺の夢の中に出てまでフォーマットされに来るとは..相当のマゾヒストだな..フッ、 殺してやるよ

甦れないようにな!」

新一は炎の残り火をバイラスに蹴り当てる。 ガンッ..新一の拳が鬼の顔を殴る、 だがドクロの様に破壊されない..

「チッ..威力が足りないか。」

鬼の顔が気色悪く微笑む..新一は心の中で恐怖を覚える..この感じ..バイラスと戦った時と同じ..新一の動きが一瞬止る。

バイラスは新一の視界から姿を消す。

「また消えやがった..チッ..何処だ、 気配すら感じない..っっ!!」

新一の右腕の感触が消えていた..スパン..ドンッ..新一は音の方向を冷静に見つめる..自分の腕..腕..腕..うで..ウデ

右腕を動かそうとする、 でも何も起こらない..新一は何をしていいのか判らない。

「ぐっぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

かつて無い恐怖が新一を襲う..新一はがむしゃらに左の拳でバイラスを殴る..スー..その音と共にバイラスの姿が消える。

「クソォ!! 何処だ!! 何処だ!!何処だ!! 何処だ!!何処だ!! 何処だ!! 姿を現しやがれぇ!! 殺す!! 殺してやる!!」

新一は休みもせず周りをひたすら殴り続ける。 風を裂く音だけが新一の周りにこだまする。 新一のパンチが鬼の形相を貫く..

ガラスの様に砕けるバイラスの顔..新一の周りが漆黒から虹の色ヘと移行していく。 新一は殺気を解きそこに座り込む。

 

・・・・・・・・・

 

「ではこことこことここにサインをお願いします。 ドライバーオペーレーターの引き渡しはその書類のサインで終了します。 後は

WASHINGTON D.C.をエンジョイしてください。」

マリーが微笑みながら黒服の中年に引き渡し書類を渡す。 エミリーはその後ろでコンパニオンのリス、 リーリと遊んでいるようだ。

中年の男は顔をひく付かせて書類を黙々とサインしていった。 エミリーはリーリと鬼ごっこをし始めた様だ..中年の腕がプルプル震え、

マリーに聞こえるほどのプチッと言う音がANTIのGUEST ROOMに響いた。

「SHUT! UP!!! KEEP IT DOWN ATLEAST UNTIL I LEAVE、 YOU ANNOYING BRAT!!」

中年がテーブルを思いっきり叩く。その反動で当りが静まる..だが次の瞬間エミリーの泣き声がANTI本部に響き渡った。

『ビエーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!! エーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」

この時、 エミリー達が居た部屋の対爆発防護壁ガラスが一瞬にして割れた。 マリーは耳を塞ぎながらエミリーを優しく慰める。

「もう大丈夫よ、 こわーいオジサンは怒らないって言ってるから。 ねっ?」

エミリーの緑色の髪を撫でながらエミリーをあやす。 エミリーは潤んだ目でマリーに問う。

「本当っしゅる?」

マリーはエミリーの話し方に不安を覚えながらもエミリーを慰め続ける。

「大丈夫よ、 私の方がランクが高いから。 彼は私の命令に従わないといけないの、 だから泣かないで。 貴方の泣いてる所見てると私も泣いちゃうぞ!」

エミリーの顔から涙の河が枯れ始め、 エミリーは笑顔を撒き散らしハシャギ始めた。リスのリーリもエミリーを真似しながら鼻をヒクヒクさせて鳴いている。

「なかなっしゅるぅ! だからマリーねぇしゅるんもなかなっしゅるっ!」

ホッとしたのか呆れたのか、 マリーはため息を吐き、 受け渡しを終わらせた。

「シンイチに続いて、 別の意味で凄い娘が来ちゃったわね..見た目は普通のティーンエージャーなのに中身は幼子..シンイチもそういう意味では一緒ね..

はぁ..この仕事辛くなりそう..」

 

・・・・30minutes later at the meeting room

(三十分後..司令室にて)

 

「紹介します、 Driver Operator Code Ω エミリー・クロフォードです。サンフランシスコのステートサプリームコート

オーダーでこちらに派遣された新たなるドライバーです。 他に聞きたい事があるならば彼女に聞いてください。 以上です、 ANTIデバッガーはエミリーの

ドライブ・バージョンガンマの調整に入ってください。」

ヨークはエミリーのブリーフィングを終わらせると、 赤髪をなびかせ部屋を出た。 マリーはそれをフォローするかの様にエミリーのANTI入社状況をメンバー

達に説明すする為にエミリーの横に立つマリー。 エミリーは女の子にしては背が高く、 マリーが横に立った時の二人の背の差はエミリーの方が歴然として高かった。

「軽く説明するけど、 エミリーの保護リポートによると..ぅ..わっ..シンイチよりも酷いわ....ヤッパリまた今度にしましょう! ねっ? 今日は解散です

これは命令よ。」

眼鏡をかけた知的美人の女性が手を上げる。

「私はメインプログラマー課のアンダーソンと申します。 エミリー・クロフォードのブリーフィングとバックラウンドはドライブのマインドリンキングに必要なインフォ

メーションです。 マインドリンク無しではドライブも動きませんし、バイラスに対抗する手段も無くしてしまいます。 その為、 このブリーフィングは必要不可欠なのです。

エミリークロフォードのブリーフィングを続けてください。」

マリーは少しムッと来たようだがブリーフィングを始めようとした..がその時エミリーがマリーに呟いた。

「マリーねぇしゅる..おトイレは何処でしゅるか?..我慢できなっしゅるぅぅ..」

マリーはエミリーに呟き返した..

「エミリー、 もうちょっと我慢してね。 ブリーフィングはすぐ終わるから、 ねっ?」

緑のポニーテール三つ網を横に振りながら訴えるエミリー..我慢が出来なくなったのか大声で叫ぶ。

「我慢できなっしゅるぅぅ!!!!!!!!!!」

当りが一瞬にしてどっと笑い始める。 これを見てマリーはため息を吐くしかなかった..

 

・・・・・・

 

七色に光る部屋..甘い香り..甘い歌声..新一の感覚が感じたのは先とは正反対の極楽だった。

「極楽か..俺には性に合わない場所だ。 俺を地獄ヘ戻せ! あのバイラスを跡形も無く始末する!」

新一は跳ね上がり、 自分の右肩を撫でる。

「この借りは返さないと気が済まない..」

辺りがまた暗くなり、 甘い香りや甘い歌声などが、 血の匂いや人々の断末魔に変る。 常人なら気がおかしくなりそうな常態でも新一は笑みを浮かべ、 戦いの構えを取った。

バイラスの雄叫びが新一の耳にこだまする。

「来た! そこだ!!」

新一の拳がバイラスの動きを止める。 拳からずるずると落ちていくバイラス。 そしてバイラスはガラスの様に地の上に砕ける。

「これで終わりか?....っっっ!!!」

新一が気配を感じた時にはもう既に遅かった、 今まで見た事も無いバイラスの軍隊が新一を襲っていたのだ。 新一はバイラス達から身を振りほどこうとしたが、 バイラスの

攻撃は止る様子を見せず、 新一はオモチャの様に遊ばれていた。

「....何故、 ドライブが..俺を..」

バイラスの影のシルエットが消え、 バイラスの形がドライブに変わっていく。 ドライブの一体が新一に光琳法を使おうとした瞬間、 天から光が差込み、 新一の周りにいた

ドライブは姿を消していく。 暖かい光が新一を包み、 新一の心を和ませる。 新一が失ったと思っていた彼の右腕も復活していた。

「....暖かい..」

新一の鬼の形相が幼子の寝顔に変わっていく。 安心したのか新一は光を抱きながら眠りにつく。

 

 

・・・・・

 

話し声が雑音の様に聞こえるミーティングルーム。 マリーはその部屋の前に立ち、 汗を拭く。 深呼吸を二三回して自分を落ち着けた後、 大きな声でわざとせき込む。

「コ、 コホン。 先はちょっとした邪魔が入りましたが、 今度は大丈夫です。(ほんとーは心配なのよねぇ)ただいまから、 エミリー・リーサ・クロフォードのブリーフィングを

始めます。 質問の在る方はブリーフィングの後にお願いします。」

ミティングルームが静まり帰りANTIのメンバー全員はマリーに注目する。 マリーはそれを確認すると、 エミリーのヒストリーを読み始める。

「Emily Crawford、 born in Sanfran Scisco California. Date of Birth, May 23 2006 A.D.....」

高く強い声でエミリーのヒストリーを読み上げるマリー、 その後ろで脚をバタバタさせながら歌を歌っているエミリー。

「エミリとリーリがシュルルルルぅ♪♪ リーリとエミリがしゅるるるり♪ 皆で皆でしゅるるるる♪ 一緒に一緒にしゅるるるるる♪」

マリーはエミリーの歌を無視しながらヒストリーを詠み続ける。

「過去17回も逮捕され、 その内14回はAquitted By The Court、 他の3回はEscape from Prison。」

「しゅるる!! エミリーはシュルルぅ♪♪ リーリもしゅるるぅ♪♪」

マリーの顔にしわが寄る。 マリーの我慢している様子が見られる。

「理由は全てLAギャングとの抗争と資料に書かれています。」

「あっしゅる、 ふぃーしゅる、 リズムえもーしゅるん! しゅるるるもいたっしゅるも♪」

マリーの右手がプルプル揺れ始める。 右手に握って居た紙がバサバサバサと音を立てるがエミリーはその可愛い声で歌い続ける。 若いANTIの男達はエミリーに釘付けだ。

「エミリー・クロフォードはサンフランシスコ・プレーグの三代目リーダーであり、 サンフランシスコの住人達には親しまれていました。 SFPDもプレーグにはあまり気にして

いなかったようです。 ですが、 L.Aのストーカチャンプと呼ばれるチームとサンフランシスコを守る為抗争していた。 その抗争の後、エミリー・クロフォードは進んで自首した..と書かれています。」

「ワンダーリングしゅるるぅ♪♪ ワンダーリングふぁんたしゅるるぅぅ♪♪ 会わずにしゅるるるぅ♪♪ ワンダーリングしゅるる♪♪」

マリーの顔が真赤に変るがマリーは深呼吸を二三回した後にエミリーに微笑みながら話し掛ける。

「エミリー....お願いがあるんだけど..」

エミリーは次の『エミリーとリーリの替え歌メドレー第四章』突入していた。エミリーは可愛らしい歌声を止めず、 マリーの方向に注目する。 リーリはエミリーの左肩で黙々と踊っていた。

「ザーンコークなっしゅるぅ天しゅるのしゅるる! しゅるねんよぉしゅるわになっしゅるぅ♪♪ あっしゅる風がしゅる! 胸の..なっしゅるぅ、 マリーねえしゅる?」

マリーはぁ自分の腕を後ろに回し、 右手で左手の甲をつねる。 ニコッとエミリーに微笑みながら話を続ける。

「歌、 上手ねぇエミリー..」

「ウン! エミリンお歌大しゅるっ!」

エミリーの瞳が一回り大きくなり、 マリーに天使のような微笑みを見せる。 これを見せられてはマリーでも怒る事が出来ない。 マリーはふぅっとため息を吐きエミリーに命令を下した。

「エミリー、 ちょっと外で待っててくれる? 皆は今大事なお話をしてるの。 皆エミリーの歌を聞きたいんだけど、 大事なお仕事を先に済ませないといけないのよ。 すぐ済むから、 お願い。」

エミリーは寂しそうな表情を見せながら、 無言で部屋を出ていった。 エミリーを見つめながら、 『少し悪い事をしたな..』ッと悲しい表情を見せるマリー。それでも、 マリーは会議に自分の

感情を現さ無かった。

「それでは、 スケジュール通りにエミリー・クロフォードのヒストリーのブリーフィングを再開します....」

 

 

緑毛の髪をなびかせながら、 ANTI本部をキョロキョロ見回すエミリー。 リスのリーリもシッポをエミリーの見る方向に動かしていた。 周りに誰もいないと確認すると左肩に居る相棒に話し掛ける。

「あーあ! つまんなっしゅるぅ。 リーリぃ、 いっしゅるにぃ、 どっか行っしゅるぅ!! えいえいしゅるしゅるぅ、 じゃーんぷ! ブイっしゅる!」

エミリーは腕をぐるぐる回して、 ジャンプしブイサインを見せた。 リーリもそれをマネ従っていたのか、 ジャンプし床に落ちた。

「リィー! リィー!」

エミリーはすぐさま床に居るリーリを自分の手のひらに抱き、 自分の目の前に導く。

「リーリぃ..大丈夫しゅる?」

リーリを人差し指でツンツンと突っつく。 リーリは目を開け、 一目散にエミリーの肩に駆け上がる。 そして元気な鳴声を出す。

「リーリーリ!!」

リーリはエミリーの緑毛の髪を匂うと、 髪を軽く掴む。 それを見たエミリーは合図も無しに走り始める。

「なっしゅるかぁおもしゅるい事さがっしゅる!」

エミリーはメインコラドア、 プライベートコラドア、 ANTIライブラリを走り抜ける。 そしてメディカルセンターにたどり着いた..

 

Frozen Drive

Episode Three..

「 Simpathy Lies in all of us」

 

 

「....これでエミリー・リーサ。クロフォードのヒストリーは途絶えています。 質問のある方はどうぞ..」

マリーはいつもの様に、落ち着きを取り戻して質問をまった。 だが、 マリーの予想とは裏腹に来た質問はマリーの堪忍袋の尾をちぎりそうになった。

「エミリーちゃんのスリーサイズは?」

この質問を聞いたとき、 マリーの細く長い手は凶器と化しこの馬鹿な質問を聞いた男性ANTI隊員を平手打ちで殴っていた..

「いい加減にしなさいよ!!」

マリーの手は休まずに男を殴っていた。 その時後ろからもう一人の男性がマリーに質問した。

「それはそうと..肝心のドライバーオペレーター、 エミリー・クロフォードは何処ですか?」

マリーは手を休め、 男を投げ飛ばす。 そして、 きつい表情でANTIのメンバー達を睨む。

「エミリーなら外に居るでしょ!!」

「それが..居ないんですよ..」

マリーの普段白い顔が太陽のように燃える。 周りのメンバーはこれを見て一歩後ろに下がる。

「Everyone、 Find the girl.. Dead or alive Ireally don’t care. I’m not in the mood..find her

in 30minutes or you’re all fired!! GOT THAT!! NOW GO!!」

ミーティングルームに居るメンバー全員がいっせいに立ち上がり、 部屋はマリーとサンドラ以外空になる。

マリーはサンドラを睨みながら用件を聞く。

「まだ何か御用でも? Ms.アンダーソン。」

メガネを外し、 笑みを浮かべながら話掛けるサンドラ。

「エミリーは多分多重人格者でしょう。 何らかのトラウマで本当の性格がエミリーの心の中に隠れてしまっているのです。 ですが、 ドライブは心そのものをリンクさせる

システム..エミリーに使いこなせるのでしょうか? 反対にエミリーと言う人間を壊しかねません。」

マリーは、 きつい表情から、 真剣なまなざしでサンドラを見つめる。

「..アタシもあの娘が戦えるなんて思ってないわ..期待もしていない。 性格は子供そのもの..その上体つきも格闘家の物じゃあ無いもの。 それでもね、 彼女は選ばれた戦士、

ドライバーオペレーターΩなのよ。 これはヨーク長官とUS政府が決めた事、 私の無力さをつくづく思い知らされるわ..」

サンドラは眼鏡を掛け直し、 マリーを答える。

「分かりました。ドライバーの調整はプログラマー一課とアーカシャナルバが万全に整えます。 しかし、 戦闘でのダメージは全て貴方の責任となる事を覚えておいてください。

これはMr.チャンからの伝言です。 Good bye for now Ms.Silverstone。」

話終わるとサンドラはゆっくりと部屋を後にした。 それを無言で見つめるマリー、 表情はさっきと変らず真剣だ。

「言われなくても分かってるわよ..誰も殺さずにバイラスに勝つ..その為に私がいてその為にドライブが動く。」

 

エミリーの顔がひょっこりとドアから飛び出る。 エミリーはメディカルセンターのPatient roomに進入していた。

「しゅる?..ここ何処でしゅる? わっしゅるかぁ、 リーリぃ?」

エミリーは右肩に居るリスのリーリに話し掛ける。 リーリはそれに反応するかのようにシッポを左右に振り、 高い鳴声を出す。

「リーリ..」

リーリの仕草を見てエミリーは小さなため息を吐く。

「しゅるぅ..リーリも分からないでしゅるかぁ..ちょっと様子みっしゅる!」

ドアをゆっくり閉めながら、 部屋の先に進むエミリー。 その先にはベッドに横たわっているエミリーと同い年位の少年と赤毛の美系の女性が横の席に座っていた。

女性は少年の手を優しく握っており、 それを目にしたエミリーはどうすればいいのか分からず、ただ佇んでいた。リーリは何故かエミリーの肩を飛び降り、 赤毛の女性の方向へ走りだしていた。

「待っしゅる! リーリぃ!!」

エミリーはリーリを追いかけるが、 その声を聞いて、 女性はエミリーの存在に気づく。 今までの暖かい表情とは違う、 寂しく凍った瞳でエミリーを見つめる女性がそこに居た。

「何方か知りませんが、 ただいま面会中です。 Mr.ナガシマに御用の方はまた後日にしていただけますか?」

エミリーは赤毛の女性の凍った瞳を見て、 泣き出しそうな表情になりながら答える。

「エミリンはそんなっしゅるつもりじゃ..グスッ..エグッ..しゅる....エーン!」

エミリーの漆黒の瞳から大粒の涙が零れた。 赤毛の女性は表情を変えず、 話し続ける。

「泣いても何も始まりませんよ、 ミス。 私も睨んだりしてすみませんでした。 ですが、 人の病室に無断進入するのは間違っています。 分かってくださいね、 ドライバーオペレーター・エミリー。」

エミリーは泣き止み、 涙の河を袖のフリースで拭く。 ちょっと疑問を持った顔をして赤毛の女性に質問する。

「しゅる? なっしゅるエミリンがドラッシュルオペッシュルって、 分かっしゅる?」

赤毛の女性は冷たい表情を解き、 笑顔でエミリーの質問に答える。

「それは私がANTIの長官だからですよ。 私は貴方の長官のMrs.ヨークです。 はじめまして、 Ms.クロフォード。」

エミリーは分かった様に手をポンッと叩きお辞儀する。エミリーの長いポニーテールが顔の前にたれる。 それをがっしり掴んでいるリーリの様子も見られる。 必死でエミリーの髪を握っているリーリを見て、

ヨークは小さい笑いをこぼした。

「これはごていっしゅるに。 エミリンはエミリーと申しまっしゅる。 こっちはおともだっしゅるのリーリぃでしゅる。 リーリも挨拶しゅるっしゅる。」

リーリは尻尾を地に向け、 手を脚に当ててお辞儀する。 そして素早くエミリーの肩からヨークの肩へと飛び移る。 ヨークは少々驚いた顔で笑い始める。 そしてリーリの頭を軽く撫でる。

「はじめまして、 リーリ。 エミリーと一緒にがんばってね..」

リーリはヨークに答えるかのように茶色いシッポを天にかざし腕をクルクル回す。 ヨークはそれを見て優しく笑う。

「リーリが人になつっしゅるなんて..ヨークしゅるん凄っしゅる! ヨークしゅるんは良い人なっしゅるねぇ。 エミリーのお....」

その時、 コンコンっと言うノックの音が部屋に響いた。 ヨークは優しく美しい顔を無表情な顔に変え、 ノックを答える。

「誰ですか? ただいま面会中です、 また後に来てください。」

ドアごしから高い女性の声が聞こえる。 その息切れした声からして、 ヨークは急用だという事を察知した。

「はぁ..はぁ..エミリーがここに来ませんでしたか? エミリーが勝手に居なくなっちゃったんです。」

ヨークはエミリーを優しく微笑む。

「Ms.クロフォード、 上官の指示にはちゃんと従わないと行けませんよ。 分かりましたね。」

エミリーはしゅんっと背中を丸めて、 ヨークを答える。

「はーい、 分かりまっしゅる..ママ。」

ヨークは一瞬寂しい表情を見せた、 だがドア先の声を答えるときには既に無表情の彼女に戻っていた。

「Ms.クロフォードならここに居ますよ。 入りなさい、 許可しますよMs.シルバーストーン」

ドアをゆっくり開けるかと思えば、 凄い速さでエミリーを抱くマリー。 安心仕切った顔でエミリーに言う。

「こらぁ、 エミリー! 部屋の外で待っててって言ったでしょ! ほんっとに心配したんだからぁ。 今度からお姉さんの言う事はちゃーんと聞くのよ! 分かった?」

エミリーは微笑みながらマリーと話す。

「すみまっしゅるぅ、 だってぇつまんなっしゅるもん。 許しゅる、 マリーねえしゅる!アハハハハ。 頭グリグリ辞めるっしゅる! くすぐったいしゅる!」

ヨークはそれを見て優しく微笑んでいる。 マリーはヨークを見てエミリーをグリグリするのを辞める。 そして疑問を抱いた顔でヨークに質問する。

「..そう言えば、 ヨーク長官。 何故シンイチの病室に居るんですか?」

ヨークが答えようとしたとき、 辺りが赤く変色しアナウンスがANTI本部全体にこだまする。

『WARNING WARNING WARNING』

「カルフォルニア、 LAにて謎の巨大専行物体発見。 アーカシャナルバでデータを検討中。 構成物質サイバネティックス..エンコーディングチェック終了..バイラスと

確定! ドライバーオペレーター及び、 戦闘部隊隊員は直ちにマザーボードルームヘ!」

マリーは真剣な顔つきに変り、 エミリーに指示を与える。

「エミリー、 私に付いてきて、 直ちに出動よ。 これは命令よ! ヨーク長官、 先に行って作戦を見当しておきます。」

ヨークも厳しい表情でマリーを答える。

「分かりました、 私も指令塔へ戻り、 バイラスアタックをプレジデントに報告してきましょう。 戦闘は貴方に任せましたよ、 Ms.Silverstone。 敗北は許され

ません。」

マリーは頷き、 エミリーを引っ張りながら部屋を後にする。 ヨークは新一の顔を優しく撫でると立ち上がる。

ドアの閉まる音が部屋に響き。 部屋は医学機の音がカシンカシンと静かに音を立てていた。

 

To be Continued..

 

次回予告

新たなバイラスがLAを襲う..エミリーの初出撃..新一は未だに回復せず。

全てが終わりかと思われた頃、 バイラスを撃退する性格の変ったエミリー..

次回..合わせ鏡(前回訂正..参話は優しさの一滴でした)

See you in Hell

 

あとがき..

疲れた..期末やっと終わってこれ書いたからな..とにかくやりました! エミリー登場です!

ロリです!! ここまでロリにして良かったんでしょうか!! ともかく、 下のハカナの

ふろーずん・どらいぶとは違い! こちらは本編ですので..お忘れなく..

P.S.

ただいま新一、 マリー、 アーサーを描いてくれるアーティストを募集中です! 興味のある方は

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