「ここは、 何処??」
そのクリスタルブルーの瞳で天井を直視しながら彼女は呟いた。
「見たことのない..天井。頭がイタイ..」
彼女はシーツをかぶり眠りにつこうとした、 だが少年の叫びが彼女の眠りを
妨げた。 幼さの影が残る少年は泣きながら彼女に近寄る。
「アスカ! よかった..ミサトさんは、 別に怪我は無いって..言ってたんだけど..その..僕、心配で..」
少年はシャツの袖で涙を拭いた。 アスカと呼ばれる少女は、 上半身だけ起き上がり
少年を問う。
「あの..貴方はどちら様ですか?」
少年はショックを受けたのか、 また泣き出しそうな顔でアスカに話し掛ける。
「ナ、 何言ってるんだよ..僕だよ碇シンジだよ。 そんな事言って僕を苛めないでよ。 使徒の事は僕が悪かったからさ。 許してよアスカ。」
アスカはキョトンとした表情でアスカと話す。
「なにを許すんですか? シンジさん、 私、 本当にアナタにあったのは今が初めてです。あの..アスカと言うのは..私の名前ですか?」
「マイッタわね、 まさか記憶喪失になるなんて思っても見なかったわ。 これでエヴァの戦力は半減、 おまけにあの使徒がまだ生きてるってウワサだし。 チョッチヤバイ状態ね。」
エビチュビールを飲みながらミサトはグチっていた。
「でも、 アスカはまだ戦えるわ。 エヴァは深層心理で動く物ですもの、 記憶くらいではアスカ
を拒絶しないはずよ。」
リツコはミサトの入れたコーヒーをすすった。
「でも、 彼女の操縦は振り出しに戻った..って事なのよ。まあ、 使徒が現れないように神様に
祈るしかないか..」
「シンジ君の時にも記憶は戻ったし、記憶の無かった時にも彼は今まで道理戦ったわ。 無理に明日とは言わないけど、 彼女がシンクロテストする気になったら、 シンジ君と一緒に連れてきて。」
ミサトはビックリした顔でビールジョッキをテーブルに置いた。
「シンジ君が記憶なくした時はあれほど焦ってたのに、 今回は余裕ねリツコ?」
「私の予想では、 前回の使徒の様にアスカの最も恐れた使徒の能力を駆使して責めてくるに違いないわ、 でもシンジ君の様にアスカが恐れた使徒はすでに見当が付いてるわ。」
ミサトは何処から取り出したのか日本酒をビールジョッキ入れて飲んでいた。
「さすが、 赤木リツコ博士、 さあ、 今夜はやな事忘れてぱぱっと飲みましょ。」
「それよりどうやってアスカの記憶を取り戻すつもり? 作戦部長さん?」
イタイ所を付かれてミサトは青ざめた。
「ッウ、 シ、シンジ君に任せればダイジョーブよ。 学校に行かせれば何か思い出すかもしれないし..」
次の朝、 シンジはいつもの様に朝食を作るため、 早起きして台所に向かった。
だが、 テーブルには既に、 フレンチトースト、 パンケーキ、 マッフィン等の西洋朝食が並べられていた。 シンジは少し驚いていた、 葛城/碇/惣流家には、 シンジ以外マトモに料理出来る人間は居ない(ペンペンの方が、 ミサト/アスカより料理が美味いとされている)、 では誰がこんな料理を作ったのか、 シンジは知りたくなった。 好奇心だけではない、 シンジは少し嫉妬していた。 いつも周りの人に料理が上手いと言われていたので、自分でも負けたと思わせた朝食を作った人が少し、 許せなかったのだ。
シンジはキッチンに入った途端に腰を抜かした、 自分が見た光景が信じられなかったからだ。 相手に気づかれない様にシンジは、 一旦、 ダイニングルームヘ戻った。
「い、 今観たのは何だったんだ? 夢だよね、夢。 よーし、 ほっぺたつねれば夢から起きられる
はずだよね..やってみよう!」
シンジは力いっぱい自分の左頬をつねった、だか、 シンジの悪夢はまだ覚めない。 今度は両方の
頬を思いっきり叩いてみる。 だが、 彼が感じたのは、 紛れも無く現実の痛みだった。
「ハ、ハハハハハハハ、 なんか疲れてるみたいだな、 僕。 今日は学校休もう..」
シンジはフラフラと自分の部屋に戻ろうとしたが、 料理を作った女の子の声に呼び止められた。
「あの..お、 おはようございます..」
シンジは正直言ってびっくりしていた。 あのアスカがシンジに対して敬語を使うなどという事は
過去に一度も無かったからだ。シンジは一瞬いつもの様に謝ろうかと思ったが、 今のアスカは
記憶が無い、という事に気づき深呼吸をした後挨拶を交した。
「お、 おはよう。 これ、 全部一人で作ったの?」
「はい、 私、一人で作りましたけど。 作りすぎましたか?」
「え、 いや、 そういう事じゃなくて、 あの..その..何て言ったら良いのかな..」
シンジは自分の頭を撫でながら、 次の行動を考えた。 記憶は無くとも、 今、 シンジの話している相手はアスカなのだ。アスカの調教(笑) の成果からか、 シンジは言いたい事がアスカの前で言えない体質になってしまったのだ。
「洋食はお気に召しませんか? でも私、和食作れないんです、 ごめんなさい。」
アスカは今にも泣きそうな瞳でシンジを見つめた。 『か、 かわいい..で、でも彼女はアスカなんだ!記憶を失ったアスカなんだ...裏が在るかもしれない、 弄ばれているかも知れない..』
「ベ、 別に洋食が嫌いって訳じゃなくて、あの、 アスカがさあ、 料理するのはじめて見たものだからチョットビックリしただけさ。」
シンジはこの時、死を覚悟していた。 青ざめながらシンジは、 歯を食いしばる、 いつもならここで殴られていただろう、 しかし、 アスカは興味深くシンジの話を聞いていた。
「私、 料理しなかったんですか? じゃあ、 料理していたのはミサトさんですね。」
「ち、 違うよ。 ミサトさん、 インスタント以外何も作れないもの」
アスカは興味深くシンジを見つめた。
「じゃあ、 誰が食事を作っているんですか?」
シンジは頬を赤らめながら呟いた。
「ボ、 ボクだよ。」
アスカのリアクションは驚きだった。 シンジもそのリアクションには少々驚いた、
いつものアスカなら『男は種馬でしか無いのよ。 男が女の為に働くなんて当たり前じゃない! ホーント、 アンタバカねぇ..』と言ってる筈だ。
「ご、ごめんなさい! これからは私が食事を作りますから。 シンジさんは休んでいてください。 料理は女の仕事ですから..」
シンジはこの言葉を聞いて自分の前に居る娘が本当にアスカなのか疑った。 この娘はアスカとはアイディールが全く違うからだ。 アスカは男女平等、 むしろ女性の方が男性よりも権力が在ると信じていた。 だが、 この娘が信じている物はセカンドインパクト以前に信じられていた物だったからだ。
「いいよ、 僕、料理好きだし..そ、 それよりさ..食べていいかな? アスカの手料理見てたらお腹空いちゃったよ。」
アスカは顔を真っ赤にした。
「あっは、 はい..どうぞシンジさんに食べてもらう為に作りましたから..あ!」
「え?ボ、ボクの為に?」
アスカは顔を手で隠し、 シンジは照れながら床を直視した。 短い沈黙を破ったのはシンジだった。
「いただきます..パク......お、美味しい! 僕でもこんなに上手くマッフィンを焼けないよ。 ねえアスカ、 誰から料理教わったの?」
シンジはフレンチトーストを口に運んだ。
「あんまり良く覚えてないんですけど..多分、 お母様からだと..思います。料理してた時に少し懐かしさを感じましたし。 朝起きて台所に来たら、 体が勝手にこの朝食を作っていたんです。」
「でもさ、 アスカのお母さんは確か..」
「どうかしましたか?」
シンジは記憶喪失の少女に母の死を伝える勇気は無かった。
もし、伝えていたらアスカは今の自分の存在感を無くして狂っていただろう。
今のアスカは、 昔とは違いシンジの知らない、別な時を過ごしてきたアスカなのだ。
「え、 いや何でもないよ、 ハハハハ。」
ヤカンの鳴る音を聞くとアスカは台所に駆け込んでいった。
「シンジさん、 コーヒーは御飲みになりますか?」
「あ..うん。」
「砂糖はいくつ入れますか?」
「三つ..位かな。」
「ミルクは入れますか?」
「うん。」
アスカは二つのマグカップを持ちながら台所から出てきた。
「はいどうぞ、 シンジさん。」
アスカは、シンジの前にマグカップを置く。そして、 アスカは自分の椅子に座りながらコーヒーをすすった。
シンジはフレンチトーストを食べ終えると、 自分の前に置かれたコーヒーを飲んでみる。 コーヒーの味がいつもと違う事に気づいた。 いつも以上にコーヒーの味が濃く、 シンジは味の高級さに少々驚いた。
そうこうしているうちにミサトが二人の新婚気分をぶち壊しに起きてきた。 記憶を失ったアスカと違い、 ミサトは何時も道理の態度でシンジとアスカに接触した。 まず、 ミサトが挨拶したのは長年の友、ビールのエビチュ君だった。
「ングングング....プッハーー、 ヤッパリ朝はこれが一番ね!」
「朝からお酒飲んで、 お仕事大丈夫ですか?」
アスカがミサトを心配するが..
「なによーアスカ、 記憶失って随分心狭くなったじゃない? 昔は私と一緒にうわばみの様に飲んでたくせに。」
ミサトは逆にアスカをからかう。
「ミ、 ミサトさん! アスカに変な事吹き込んじゃだめじゃないですか!!」
「..私、 朝からお酒飲んでたんですか..」
「これ飲んだらぁ、 記憶なんてすぐ戻っちゃうかもねぇ?」
「ミサトさん! いい加減にしてください、 僕、 怒りますよ!」
「おお、 シンちゃんが自分の彼女を守る為に立ち上がった! ウフフ、 カワイイ。」
「..コレを飲めば..私の記憶戻るかも..」
「ミサトさん! ミサトさん....あっ..酔ってる..」
「いけアスカ! それっ! イッキ!イッキ!」
「ングングングングング」
「ア、アスカ! ミサトさんの言う事なんか聞いちゃだめだ!」
「....プハーー」
「よっアスカ、 良いのみっぷりだったわん」
「アスカ! ビールなんか飲んでも記憶は戻らないよ。」
「シンジさん..コッチ来て..」
「えっ?」
「何か思い出しそう..チュ」
アスカはシンジに抱き着くなりシンジの唇を奪った。
「チ、 チョットアス..ッング」
「まあ! アスカとシンちゃんてば、 ダ・イ・タ・ン! ンフフ..クーカ..クーカ..」
「「..........」」
「..キャッ! わ、 私..ごめんなさい..」
アスカは一礼した後、自分の部屋に駆け込んでいった。
「アスカ! ちょっと待って!」
シンジはアスカを追ってアスカの部屋に入ろうとしたが、 扉の張り紙の『入ったらコロスわよ! by アスカ!』 を見てアスカと話すのを諦めた。
「アスカのキスの仕方、 変わってない..」
to be continued.
あとがき
こんにちは、 Yuskeと言う名のガキでございます。 初投稿と日本語を中学レベルまで
しか習ってないという事でキツイコメントはチョット困る..
とにかく僕が多分、 ここ初めての海外投稿者だと思うので、夜チャットしたくなった
ら僕がいるかも? E−mail 送ってね! Yuskeでした。
みゃあの感想らしきもの。