【AH!MYGODDESS beforestory
〜Beyond The Time〜

その1 

作・zeroさま


【侵 入】

 

CAUTION!!CAUTION!!CAUTION!!CAUTION!

CAUTION!!CAUTION!!CAUTION!!CAUTION!

ユグドラシルシステムのモニター類が、一瞬で真っ赤に染まる。鮮やかに、そ

れでいて凶々しく。かつて、このシステムがここまでの警告を発した事は無かっ

た。それを見ていたオペレーター達は、一瞬バグが発生したのかと勘違いしてし

まう。

「シ、システムエラーじゃないのね!!?」

「100エリアから164エリアまでのセンサーに反応無し!!圧壊した模様で

す!!」

「緊急事態発生!緊急事態発生!各クルーはレベル6で対応の後…」

次々に現れては消えていくスクランブル。情報の書き換えが早すぎて、1分前

に発せられた警告は、すでにモニター上には残っていなかった。

「来たか……」

老人のその一言は、オペレーター達の耳には入らなかった。

 

 

 

バルハラ広場。『世界樹』ユグドラシルの袂、バルハラ宮殿の前に広がる自然

と調和した神々の憩いの場。中央にある巨大な噴水が、優雅に、そして美麗に聖

水を湛えていた。

普段は物静かなこの広場も、今はかつてないほどに騒然としていた。男神・女

神、今この場にいる者達の数は、ゆうに5万は超えているのだから、当然と言え

ば当然だろう。

噴水の前の壇上に、短髪の男神と褐色の女神が登った。

「みんな聞いてくれ」

トールの一言に、ざわついていた雰囲気がいっきに静まる。

「すでにレベル7への移行は周知のことと思う。ただ、前例が無いぶん、少々戸

惑うかもしれないが、要は戦闘体勢ですぐにでも天界の外に行けるようにしてお

いてくれ、ということだ」

トールのあっけらかんとした口調のせいか、それとも、名前だけの配備に、事

態の深刻さがわかっていないのか、この場に集まった者達は、誰一人として深刻

そうな者はいなかった。……戦闘配備の招集にも関わらず、武装している者は誰

一人としていないのだから。

みな、あまりにも平和に慣れ過ぎていたのかもしれない。

しかし、その甘えを許すほど、今回の「相手」は生易しくはなかった。

 

ド−−ン!!!!!!

 

一瞬。まさに一瞬だった。広場の後方で爆発音が聞こえたかと思うと、瞬く間

に衝撃波がその場にいた者達をなぎ払う。

「な、なに!?」

ウルドの悲鳴とも叫びとも取れない声が響く。

「まさか!?敵襲?」

トールも何が起こっているのか瞬時にはわからなかった。が、咄嗟の判断で結

界を展開する。

爆音と巻き上げられた煙、両者が神々のリーダーに事態の認識を遅らせた。

そして、この遅れが致命的となった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ぎゃ…っ!?」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

爆風の向こうから響く仲間達の絶叫。

−何?何が起こってるの!?

神々は一種のテレパシー能力を持っている。普段は意図的に押え込んでいるの

だが、事態を把握できないトールとウルドはその能力を解放する。

それと同時に大量に流れ込む、恐怖・混乱・不安…そして絶望。

それら全てを吹き飛ばすかのごとく、一陣の風が爆煙を振り払う。

−風!?ベルダンディ?

ウルドは一瞬そう考えたが、次の瞬間、その思考の全てが止まった。

「ッ!!」

「…………」

トールとウルドは、回復した視界の先に見たものに…絶句した。

それは、まさに地獄絵図だった。

あたり一面に散らばる肉塊、いたる所に出来た血の水溜まり、そして所々にド

ーム状の光の膜が存在している。咄嗟の機転で張った結界だろう。全滅だけは免

れたようだった。

そしてその先に、二人は3体の巨人を見た。

「あ、あれは?」

半ば茫然自失となっていたウルドは、何とかそれだけを呟いた。無論、それに

応える者はいない。

「トール!あいつらは何?」

「…………………」

トールにはウルドの声は聞こえていなかった。彼は視界が回復するのと同時に、

まず、一人の女神を探していた。

−ベルダンディ!どこだ…!?

結界の中まではテレパシーは通じない。つまり、肉眼で、気配で探すしかない

のだ。全神経をベルダンディ探索に向けるトール。

「トール、トール!!」

そのトールに必死に呼びかけるウルド。ウルドとて、ベルダンディのことは気

になったが、今は一人にかまけてる事態ではない。このままでは全滅もありえる。

「トール、ちょっとトールってば!」

「なんだよ!?」

パチン

トールの頬に平手打ちを食らわすウルド。

「…………?」

何が起こったのかわからないトールは、ただただ目の前にいる女神を凝視した。

「しっかりしなさい!!アンタがここのリーダーでしょ!?このまま全員を見殺

しにする気?」

ウルドの声は決して大きくはなかった。大きくはなかったが、トールに冷静さ

を取り戻させるには十分だった。

「トールッ!」

頷くトール。そして3体の巨人に向かって跳躍する。

『ウルド、君は生存者の確認と、戦闘可能な者の再編成を!』

テレパシーならば距離は関係無い。跳躍中でもしっかりと指示を出せる。つま

り時間に無駄が無いのだ。

トールが冷静になったのを確認したウルドは、すぐさま彼の指示を実行する。

しかし、結界の中へはテレパシーは通じない。それならばやることは只一つ。

「すぅ…」

大きく息を吸い込むウルド。

「全員動けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

叫ぶ。それだけである。

一見子供っぽいが、その実効果はてきめんで、神々はいっせいに結界の中から

飛び出す。

そしてウルドは、「声」で指示を与えていく。

『みんな、聞いて!今、トールがあの化け物に向かってるわ!!戦える者はトー

ルの援護、それ以外の者は、生存者の保護と退避を!』

『姉さん!!』

ウルドの「声」に一人の女性の「声」が重なる。

『ベルダンディ!?アンタ無事だったの?』

『ええ、簡易結界でぎりぎり凌げたから…それよりも、あれは何?』

ベルダンディの問いにウルドは応えようが無い。ウルドにもわからないのだ。

『わからないわ…』

『そう…』

『ただ一つわかるのは、あいつらは仲間を殺したアタシ達の敵ということ。いい

ベルダンディ?今わからないことは考えなくてもいい、今やれることをやりなさ

い』

『はいっ』

ウルドはわざとこのテレパシーをオールレンジで流した。神の資格を持つ者で

あれば、この会話を聞きさえすれば、それ以上に細かい指示は必要無い。ウルド

はそう判断したのだ。

−それにしても…ホントにあれは何なの?

ベルダンディにああは言ったものの、やはり気になってしまう。

ウルドの視線の先には3体の巨人。それらに纏わりつくように飛んでいるトー

ルと比べれば、その大きさは一目瞭然だ。トールの身長のゆうに10倍は大きい。

そしてその容貌を一言で表わせば……「鬼」

ウルドのいる所からでも、その顔は良く見えた。角こそ生えてはいないが、吊

り上った目に、牙の生えた口元。全体から感じる雰囲気は「鬼」そのものであっ

た。

『ウルド!!』

突然、「声」で話しかけられ、ウルドはびっくりする。

『な、だ、誰よ!?トール?驚かさないで!』

『すまない、それよりもただバラバラに攻撃していたのでは駄目だ!』

『隊列を組んで、一点に集中砲火を浴びさせろ!』

『あなたが命令すればいいじゃない!?』

ウルドは当然の疑問を口にする。

『それが出来るならやっている!こいつらの強さは半端じゃない、いちいち指示

を出しながら応戦なんかできない!!』

−トールが苦戦してるの!?冗談じゃないわよ…

ウルドの焦りも当然だろう。トールは天界に住む神々の中で、最高神を除けば

最強の神なのだ。

『わかったわ、すぐにそっちに行く!……死ぬんじゃないわよ』

『ハッ、誰に向かって言ってるんだよ。援護の方、頼む』

『りょーかい』

−まだ軽口を叩けるだけの余裕はあるようね…

ウルドは一瞬にして「鬼」の元へと跳んだ。

 

 

 

「チィッ、なんなんだよ、この硬さ!!?」

トールの愚痴ももっともだった。先程から、トールは「鬼」の頭部、腹部、各

間接部、人体で言うところの急所…と、考えられるヒットポイント全てに、フル

パワーに近いエネルギー弾を叩き込んでいたのだ。「鬼」はそれを避けようとも

しない。しかし、全弾命中しているにも関わらず、3体の「鬼」は平然とトール

を見下ろしてるのだった。

−だいたい、こんなデカイのが3体も…亜空間結界が完璧に破られたのか?

いい加減、フルパワーでの攻撃が無駄に思えてきたトールは、「鬼」の攻撃を

避けつつ、思考を巡らす。

−それに……こいつら…いや、そんなハズはない、ハズはないが、しかし…

−……しかし、あいつなら…あいつならば亜空間結界も破られる…?

「トールさん!!危ない!!!」

「え?」

ガキッ!

思考の海に埋没していたトールは、「鬼」の振り降ろした一撃をまともに受け

てしまう。

「クッ…!」

いや、直撃では無かった。一瞬のうちに結界を展開し、ギリギリのところで防

いでいた。それでもダメージは届くらしい。

「トールさんっ!!」

女神が一人、打ち落とされたトールのもとに駆け寄ろうとする。が、「鬼」は

容赦無く彼女を狙う。

「っ!?…ホーリーベル!!」

少女の一声に、突如有翼の女性が現れる。少女はその有翼の女性をトールの方

へ飛ばし、自分は「鬼」の一撃を避ける為に横に飛ぶ。

有翼の女性は、トールを抱え一気に跳躍する。

−天使ホーリーベル……!?ベルダンディ…無事だったのか……

自分を抱えている有翼の女性を見つつ、トールは安堵の溜め息を漏らす。これ

で精神的余裕が生まれたのか、ここにきてようやくトールは気づいた。仲間の攻

撃が「鬼」にヒットする瞬間に展開されている光の膜に。

−結界!!?

そう、「鬼」もまた、攻撃がヒットする寸前のところで結界を張って防いでい

たのだ。これで「鬼」の無敵の原因が判った。しかし…

−バカな!?俺のフルパワーで破れないのか!?

『結界の許容範囲以上の高エネルギーを叩きつけられれば……結界は破られる』

トールはふと、ウルドのセリフを思い出した。

−ま、まさか…究極結界魔法陣!?

彼ほどの者ならば、やろうと思えば究極結界魔法陣よりも下位の結界ならば破

る事が出来る。そのトールの攻撃を防いでいるあの結界は…

−いや、ありえない…アレは魔法陣無しに発動する事はないはずだ。

「降ろしてくれ」

天使にそう言い、「鬼」を牽制している仲間のもとに降り立つトール。その様

は、人から見ればさぞ神々しく映る事だろう。

「トール様!」

「トール様……」

口々にリーダーを迎える神の資格を持つ者達……その顔には安堵と不安とが織

り交ざっていた。

「トール……」

そんな中から、一人の褐色の女神がトールを呼ぶ。

「あれは…あいつらは、まさか…?」

認めたくない。その一念だけがウルドの口を衝く。

『断定は出来ない。だが、間違いなく究極結界魔法陣クラスだ』

トールは「声」で簡潔に告げる。

「な、そんな!?冗談じゃないわよ!!?」

思わず口に出してしまうウルド。当然と言えば当然だが。

先にトールが述べていたように、究極結界魔法陣とは一個体では破る事の出来

ない、まさに究極の結界なのである。

無論、発動条件は他の結界とは比べ物にならないほどに厳しく、一級神以上の

資格を持つもの以外は、最高神からの使用許可まで取らなければならないほどの

モノなのだ。

それを、「鬼」は容易く繰り出している。

「どうする気なのよ!?」

ウルドのその声には、微かに絶望の響きが混じっているのをトールは聞き逃さ

なかった。

「なぁに、心配は要らないさ」

「な!?」

事態の深刻さとは裏腹に、明るいトールの声。

グッとガッツポーズを見せるトール。

「アウトレンジが駄目なら……クロスレンジさ!」

 

 

 

数刻後…

バルハラ宮殿の一室、最高神のプライベートルームと言える部屋に、短髪の男

神はソファにくつろぎながらお茶を啜っていた。

その向かいでは、老人が厳しい目つきで若き男神を見つめている。

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

二人の間に会話はない。あるのは沈黙のみ…いや、短髪の男神のお茶を啜る音

だけが、最高神のプライベートルームに響いていた。

意外にも、その沈黙を最初に破ったのは寡黙な老人だった。

「……トールよ」

「…………………」

最高神の問いかけに若き男神は応えない。

「…………………」

「…………………」

再び訪れる沈黙。

「神界から……招集命令がかかった」

ピクッと反応しつつも、我関せずを決め込むトール。最高神はそんなトールに

お構いなく言葉を続ける。

「先の戦闘での犠牲者の数もおびただしいが……このままでは…」

「罪を……」

老人の台詞に割って入るトール。しかし、目線は自分の持つ湯飲みに注がれて

いる。揺れるお茶の水面に、トールの顔が揺れる。

「罪を償わなければならないのは……己だよ…な」

トールの台詞に目を細める老人は、意を決したように立ち上がった。

「お前に、魔界へ行ってもらいたい」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

三度訪れる沈黙。トールは目線を最高神に合わせていた。

「…………………」

「…………………」

「ふぅ…」

トールは短く息を吐き、湯飲みを老人との間に横たわる小洒落たテーブルの上

にのせる。

「お前は…それでいいんだな?」

トールの問いに老人は応えない。

「…………………」

「必要なのは…過去への贖いではない」

「詭弁に聞こえるな」

老人の弁にふっと苦笑するトール。その目は、どこか寂しげだった。

「人選は任せる。とは言っても、戦力になりえる者はわずかだが…」

「ウルド………彼女を連れて行く、いいな?」

「………うむ」

振り向き、トールに背を向けた最高神は、そのまま部屋を出ようとする。

「…………………」

「それと…」

部屋の扉を半分ほど開けたところで、老人はトールを顧みる。

「ベルダンディ……彼女も連れていってくれ」

「なっ!?」

流石にこの発言にはトールも驚く。ベルダンディは三級神、どれほどセンスが

良くても、魔界に連れて行くのは自殺行為だ。

「何故だ!?」

「連れて行けばわかる」

それだけを言い残し、最高神は姿を消した。

後に残された若き男神のリーダーは、旧友の台詞にその表情をこわばせること

しか出来なかった。

 

 

 

同刻バルハラ広場。

わずか数刻の間に、美しき神々の憩いの場は、地獄と化していた。

事後処理に駆り出されたのは、神の資格を持たない者や、比較的軽傷の者達だ

った。

「しっかしさぁ〜ロキ」

「…ん?」

その中で、戦闘に参加し、運良く生き残った神の資格を持つ者が、友人に声を

掛ける。

「トールって、ホント凄ぇのな」

「そうだな…」

「だってよぉ、あいつらの防御壁って究極結界レベルだったんだろ?」

「らしいな」

「それを、お前、わずか一分足らずで三体も殲滅したんだぜ!?興奮したなぁ〜」

「…………………」

一人夢見るような目つきの仲間を無視しつつ、黙々と事後処理…遺体の処理や

血の排水等…に精を出すロキ。

「最強の神…っていうのも肯けるよ、うん」

一人うんうんと首を縦に振り続ける友人を横目に、ロキは一言…

「働けよ」

と、冷ややかに告げるのであった。

 

 

 

 

【疑 念】

 

「鬼」との戦闘の後数刻、天界にも静かに夜の帳が下りていた。

ユグドラシルシステムの大半を、生命維持と亜空間結界のサポートに向けてい

るため、闇夜に紛れて世界樹に侵入を試みている者がいることを、オペレーター

達は気づかなかった。

−フフフフフ、燃える、燃えるわぁ〜

一人怪しげに微笑む侵入者は、複雑に入り組んでいる世界樹の中を、迷う事無

くスイスイと目的地に向かい進んでいく。

−ここね…

暗証コードを必要とする特別室に、手惑う事無く入り込む侵入者。

部屋の明かりも点けずに、手際良く作業を進めていく。

ピッ…

ピッピッピッ…

ブツッ!

ヒュイ〜〜ン〜

【ユグドラシルシステムα…起動準備完了…】

侵入者の手元に見えるサブモニターに、他とリンクしていない、特殊なシステ

ムの起動画面が浮かぶ。

−よしよし、起動コードは変わってないみたいね…これなら特一級の情報も手に

入るかしら?

褐色の侵入者は、それまでの不敵な笑みから一転し、深刻そうな顔つきになる。

−トール…あいつ、何か知ってる…

昼間の戦闘の際、トールの見せたラッシュは凄まじいの一言だった。

そう、未知のモノとの戦闘ではやりえない、ありとあらゆる特性を熟知してい

てこそ出来る芸当。

−そして……それをサポートしたベルダンディ…あの娘も…?

時は戻って「鬼」との戦闘中……

クロスレンジ…つまりは接近戦なのだが…で仕掛けようとするトールに、一人

の美しい女神が進言する。

「私がサポートに入ります」

「ベルダンディ……」

その声に真っ先に反応したのは姉のウルドだった。

「ちょっと、あんた本気なの?」

こくん、と小さく頷いて見せるベルダンディは、言葉を続ける。

「ホーリーベルのスピードなら、トールさんの力になれると思います」

属性が「風」の天使、ホーリーベル。心優しきマスター…ベルダンディ…のた

め、滅多な事では全開で飛んだ事はなかったが、先程のトール救出の際の速度は、

間違いなく天界でも随一のモノだった。

それを知ってしまったが故に、反対するにしきれないウルドとトール。しかし、

二人は彼女に危険を冒して欲しくはなかった。

「お願いです、トールさん…私にも…手伝わさせて」

迷っている暇はない。「鬼」がいつ次の攻撃を仕掛けて来るかはわからないの

だ。わかっているのは、「鬼」の攻撃は神々を一瞬で皆殺しに出来るという事。

「……わかった」

「トール!?」

「ベルダンディ、段取りはこうだ…」

−その一分後には片がついてるんだもんなぁ〜

一人ごちるウルド。

その一分間…わずか60秒足らずで、トール、ベルダンディのタッグは「鬼」

三体を殲滅したのだ。

跳ぶトールを、後押しするように飛んだホーリーベル。次の瞬間には一体目の

「鬼」は消滅していた。

そして、何が起こっているのかわからないままに、二体目、三体目と瞬く間に

「鬼」は消滅していった。

無論、相手とてなすがままではなく、反撃に転じようとしたのだが……攻撃態

勢を取るまでしか及ばなかった。

ピッピッ…

ピッピッピッピッ…

暗闇に、コンソールパネルを叩く音が響く。

【個人情報】

【トール】

【一級神非限定 XXXX年に転生。04エリアに居住…】

−転生?オリジナルじゃないの?

【現在、最高神の命により、ツインエンジェルの捜索指揮を取る】

−ツインエンジェル…………!?

不必要なデータを攫えば、丸一日かかってしまう事をウルドは知っている。だ

から、適当なところで気になるキーワードをさらに検索した方が効率が良い。

ピッピッ…

ピッピッピッ…

【転生リスト】

【転生前 ??】

【転生後 トール】

ピッピッ…

【UNKNOWN】

−…………嘘!?

ユグドラシルシステムにおいて、UNKNOWNはこの世界に存在しない事を

意味する。が、トールが転生体であることは、同じシステムが示している。

−このシステムが…矛盾を抱えている?

−……違うわね、誰かが抹消したんだわ…

ピッピッピッ…

気を取り直して、別のキーワードを検索していく。

【不特定データ】

【ツインエンジェル】

ピッピッ…

【双子の天使。現在までに、実在されたかどうかは未確認】

−未確認って……それでどうしてシステムに登録されてるのよ!?

プッ

−なに!?

ピッ…

ピッピッピッピッピッピッ…

画面上に、不可解なコードの羅列が入力されていく。

−わ、私…何もしてないわよ!?

狼狽しているウルドをよそに、ユグドラシルシステムαは、ある一件のデータ

を提示する。

【超極秘データ】

−!!!!?

【アーク】

【XXX年、オーデ…】

ブツッ

バン!!

突如、部屋中が明るく照らされる。侵入者発見時の緊急用非常灯だ。

−チィッ…ここまでね……

そう呟き、ウルドは一瞬でその場から消えてしまった。

 

 

 

深夜、ウルドは自室で、先程手に入れた情報について考えていた。

−まず…トールね…

−あいつ……転生体だったんだ…

転生体、その名の通り、一度でも転生を経験したものにつけられる名称。ただ、

普通は下位の存在にしか転生は出来ない事になっている。

−でも…あいつは一級神…じゃぁ、その前は?

−………………考えても…わかるはず…無いか。

−でも、これであいつがあの「鬼」を知っている可能性は出たわけよね。

−それにしても………転生前がわからないなんて…何かあるわね、あいつ。

−次は、ツインエンジェル…か……聞いた事も無いなぁ…ましてや、ユグドラシ

ルにも存在は未確認ってあったし…

−でも、最高神様からの命ってあった……あ!

ウルドは、昼間、最高神に呼ばれた時の事を思い出した。

−あの時、この事を言ってたのかしら?たぶん、そうね…

−それと……そう、アーク…

−だいたい、何が起こったっていうの?αは一本立ちだから…外部からのアクセ

スなんてありえない…

−そして、超極秘項目に触れていた………誰が?何の為に?アークって何?

−………………

−わからない事が多すぎる…わ……

−………………

「…………………」

「…………………」

「すぅ…すぅ…」

いつしか、ウルドの部屋には可愛らしい寝息が聞こえてきた…

 

 

ToBeContinued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『次回予告』

 

 

仲間達の死に、静かに涙するベルダンディ。

そんな彼女とその姉ウルドに、トールは自らの過去を告白する……

 

そして、トールはかつての親友…いや、それ以上の存在との再会を果たす。

 

音を立てて廻り始めた「運命の歯車」に巻き込まれていく姉妹…

 

 

宿命とは、何故にこうも重いのだろうか…

 

 

次回

 

【真 実】

【邂 逅】

 

 

「生きて……還って来なさいよ…あの娘達の為にも」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

後書き

 

いやぁ〜〜この章は書くのに手間取りました(^^;

特に、【侵 入】なんて、途中4ヵ月以上手付かずでしたし(核爆

 

そのせいか、文体がバラバラだったりするかもしれませんが、

どうかご了承くださいm(_ _)m

 

# って、直すものなんですけどね、普通(^^;;;

## っつうか、直してはみたんですけどね(爆

それでも直しきれてないかと思いまして(;_;

 

 

う゛ぅぅぅ(^^;

かなり時間が開いた為に、裏設定がコロコロと変わる変わる(ぉぃ

 

つじつま合わせの方が大変で、本編が全然進みません(^^;;;;;

 

マイッタなぁ〜

と、愚痴ってみたり(^^;

 

 

とにかく、今年中には全章投稿したいと思いますので(ぉぃぉぃ

どうか、これからもお付き合いよろしくお願いしますm(_ _)m

 

それでわ!(^^/~~

 

zero

omega@alles.or.jp


みゃあの感想らしきもの

 

すまんです、明日まで待って(^-^;。


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