互いの温もりが心地よかった。
クロードはセリーヌと抱き合いながら、心臓を激しく高鳴らせていた。
(あのセリーヌさんが、僕の・・・腕の中にいるんだ・・・)
クロードの顔も熱くなってくる。彼の胸に顔を埋めた美女も同じだった。
セリーヌが動く。顔を上げ、じっとクロードを上目遣いで見つめる・・・。
頬が紅く染まり、瞳が潤んでいる。藤色の髪が、弱い風に震えていた。
「クロード・・・キスして」
そう言うとセリーヌは、形の良い唇を軽くすぼめた。
そして目を閉じると、ゆっくりとクロードの方へと顔を近づけていく。
クロードもそれに応じた。自らもゆっくりと顔を近づけ、自分の唇とセリーヌのそれを重ね合わせた。
無音・無言の世界。潮騒など、彼らの耳には届かない。
クロードはセリーヌを抱きしめる腕に、さらに力を込めた。セリーヌの温もりが、より熱く彼に伝えられる。
長い時が過ぎたように思えた。セリーヌはおもむろに唇をもぎ放し、ぼうっとした熱い表情で、唇から言葉を紡いだ。
「ああ・・・愛していますわ、クロード・・・」
囁きながら、頬を彼の胸に押しつける。自分の腕をクロードの背に回し、ぎゅっと力を込めた。
「好きです、セリーヌさん・・・」
クロードも彼女の言葉に答えた。
「クロード・・・クロード・・・もう一度、キスして下さいな・・・」
クロードはこくりとうなずくと、それに応じた。望むことなら、何だってしよう、僕の愛する人だから・・・
もう一度、二人は更新を重ね遭った。セリーヌは今度は、彼の背に回していた腕を
首の後ろにまで持っていった。文字通り、彼にしがみ付く形だ。
「んっ・・・」
長い口付けだ。息が持たない。セリーヌの呼吸が、わずかに荒くなったような気がした。
「・・・・・・!!」
クロードは驚愕を隠せなかった。
(なっ・・・・・・)
一瞬、呼吸を乱れさせたと思ったセリーヌの舌が、彼の唇を押し開き、口腔内に侵入し始めたのだ。
蠢くその物体は、クロードの歯茎を刺激し続けている。
たちまちのうちに、クロードは力が奪われていくような気がした。何とかこらえ、唇を
引き離そうとする・・・が、セリーヌの腕がそれを許さない。
首に腕を回したのは、まさか計画的なものだったのか・・・などと疑う余裕は、クロードには無論、ない。
セリーヌは我を忘れたかのように舌を蠢かせ・・・ついにクロードの舌に自分の舌を触れさせた。
「んん・・・・・・」
あまりのことに仰天させられたクロードだったが、一心に舌を絡めるセリーヌをとても愛しく感じた。
彼女の鼓動が、自分の胸にも伝わってきたからだ。
それは・・・言葉では言い表せぬほどに大きく激しく脈打っていた。
(ドキドキ、してるんだ・・・)
(クロード、分かりますの・・・?)
心で、そんな言葉を交わしたような気がした。
答えなければならなかった。
クロードは、その蠢く舌に、おずおずと自分の舌を絡ませる。
ビクッと、セリーヌの身体が一度だけ打ち震えた。
先ほどよりもずっと長く、情熱的なキス。
「んんっ・・・んっ・・・はん・・・っ・・・」
呼気を乱れさせながら、セリーヌは舌をクロードのものと睦み合わせた。
その時に漏れる吐息が、この上なくクロードの情を煽った。
セリーヌはクロードが舌を絡めてきたのを感じると、さらに舌の動きを微細なものに切り替えた。
そう、それまでのキスは誘いのキス。そしてこれからは燃え上がるための・・・。
クロードは力が抜けそうなほどの甘さに耐えながら、セリーヌの卓越した技巧を誇る舌に追いつこうとしていた。
艶めかしいキスに満足したのか、セリーヌはゆっくりと唇をはがした。
二人ははあっと息を吐く。口の間に唾液が糸を引いた。
クロードもセリーヌも、頬を上気させていた。彼女はクロードにまたも寄りかかった。
「なかなか素敵なキスですわね・・・クロード・・・」
「そうなん・・・ですか?」
セリーヌを抱き留めながら、クロードはしどろもどろになって言う。
セリーヌは彼の頬にキスすると、
「わたくし・・・力の抜けるキスなんて・・・」
ほう、と息を漏らしながらセリーヌはつぶやく。
「ねえ、クロード・・・」
一息つくと、セリーヌはとろんとした虚ろな目でクロードを見つめた。
頬をさらに紅潮させながら、鼻にかかった声でクロードに囁いた。
「クロード・・・クロード・・・わたくしを、好きなようにして構いませんわ・・・」
わたくしはあなたのものですから・・・心の中で、彼女はそう付け加えた。
「セリーヌさん・・・」
「ああ、クロード・・・・・・わたくし、とてもドキドキしているんですのよ・・・」
クロードも同じだった。
いや、セリーヌ以上かもしれない。
計り知れない緊張が、クロードを包んでいた。
クロードは、どうしたらいいのか分からなかった。
今、自分に抱き付いている女性を欲しているのは分かっている。しかし・・・
だが、助け船は意外な所からやってきた。
セリーヌだ。
彼女はクロードの頭を抱き寄せると、自分の豊かな乳房に埋めさせた。
「わっ・・・」
「クロード・・・分かりまして? わたくし、こんなにドキドキしてますの・・・」
クロードも感じていた。乳房の谷間に埋められた自分の顔に、彼女の心の鼓動と、
余りにも柔らかな女の肌の温もりが伝わってくるのを。
「好きよ、クロード・・・」
セリーヌは身にまとった薄絹を、焦らすように脱ぎ始めた・・・。
TO BE CONTINUED
(update 99/05/08)