クロードが快感にうめいた。
「うっ…」
白魚のような指。その信じ難いほどの微細な動きが、クロードの肉棒を巧みに刺激していく。
「ねぇん…気持ちいい? クロード…?」
男を誘う妖しい目付きと、鼻にかかった甘い声が欲望を更にそそる。
「気持ちいいです…セリーヌさん…っ!」
その瞬間、セリーヌはまたしてもクロードの顔を引き寄せて、唇を重ね合わせ…躊躇いもせずにクロードの舌と自分のそれを絡めた。
最早舌の絡み合いは常識である。だが、セリーヌは更に一歩先に踏み込んだ。
この美女は、いくつのキスを知っているのだろう。
一つに、愛を確かめ合うキス。二つに、誘うためのキス。三つに、燃え上がるためのキス。
そして、四つに…。
(ああん…異性を惑わせるキスですのよ、クロード…)
キスは幻覚剤の一種である、とは誰の言葉だったかしら…?
ふふ…きっと、わたくしですわね…。
心の中で、セリーヌは何ともつかぬ笑いを浮かべていた。
第四のキス。
口唇を重ね、舌を絡め、互いに燃え上がる。
セリーヌは、立ったままのクロードの脚の間に、自分のすらりと長い脚を踏み込ませた。
そして、男が最も欲する女の下半身を、クロードの腰にぐっと押し付け、
誘うように肉棒にこすり付ける…無論、指の愛撫も怠りはしない。
第四のキスは、口と舌だけではないのだ。
「……!」
目の前の美女のテクニックには、驚かされてばかりだ。
(まだ、キスだけなのに…?)
ふっとクロードは冷静になった。
(一体、この先…)
どれほど驚かされるのだろう。
どれほど翻弄されるのだろう。
どれほど快感を味わうのだろう。
緊張は消え去らない。
下半身から伝わる、痺れにも似た悦楽はどんどん強くなっていく。
クロードもセリーヌを欲している。
セリーヌの下半身の動きに合わせ、クロードも分身を押し付けるように動かした。
それを意志表示と受け取ったのか、セリーヌは唇を離した。
糸を引く唾液と、恍惚とした紅い顔がとてつもなく扇情的だと、お互いがお互いに思った。
「クロード……横になって」
セリーヌが耳元で囁く。指先の愛撫をもストップし、とろんとした瞳で。
男を誘うのに最も効果的なのは、上目使いの虚ろな瞳と鼻にかかったかすれ気味の声だと、セリーヌは知っている。
(もう一つは、男の感じる所を攻める勇気かしらね…)
ほう、と荒い息を吐きながら、そんなことを思う。
セリーヌはクロードを可愛いと思った。
性の快感に悶える表情。自分の意地の悪い挑発に頬を染める一瞬。
おずおずと舌を絡めてくる瞬間に、セリーヌは愛しさを覚えずにはいられなかった。
(クロードのこの姿を知っているのはわたくしだけ…)
途端に、自分の下半身が熱くなるのを感じた。
藤色の下着の中に眠る「女」の欲望が、首をもたげて来た。
クロードの全てを包み込みたい。
クロードをわたくしで悶えさせたい。
クロードと愛し合いたい…。
クロードと欲望を満たし合いたい……。
母性というものか、それとも眠れる女の欲望か。
はたまた、愛か。
その問いに答えをすぐ出すのは、拙速というものだ。
だが、それを知った上で敢えて答えるなら…「愛欲」が最適かも知れない。
「愛」と「欲」の二つの意味を含む秀逸な言葉である。
セリーヌがそんな妄想に浸っている間に、クロードは海岸に横たわっていた。
セリーヌはクロードの体に添うように覆い被さると、軽くキスした。
「ふう…素敵よ、クロード…」
もう何度目のキスなのだろう。
セリーヌは唇をもぎ離した。
「好き…あなたから離れたくないの、クロード…」
愛を囁いたかと思うと、舌をクロードの首筋にいやらしく這わせていく…。
「………っ!!」
形容し難い痺れが、クロードの全身を駆け巡る。
這い上がる女の舌は、そのまま耳朶の裏を触れるか触れぬかの微妙なタッチで愛撫する。
快感がぞくりと、背筋を痺れさせる。
その瞬間、セリーヌは耳朶をカリッと噛んだ。
「う…ああっ…!」
断続的に電撃がほとばしった。
荒い息を吐きながら、クロードは喘ぐ。
熱っぽいその表情にセリーヌは満足した。
何て可愛いのかしら…? 予想通り、いえ、予想以上の反応をするのね……。
可愛がってあげる価値はたっぷりあるわ…。
途方もなく艶めかしい感情がセリーヌを支配する。
もっと気持ち良くなって、クロード…。
「セリーヌさん…」
「クロード…」
二人が求め合う。
人肌の温もりとは、何故かくも安心できるのだろうか?
しばし抱き合い、愛を確かめる。
………
沈黙の中に、響かぬ潮騒の音。
降り注ぐ月光。そして微かな星明かり。
柔らかな海岸の砂。
心地よい微風。
柔らかい肌。温かい肌。
おもむろにセリーヌはクロードを可愛がる。
「ねえ…クロード?」
「何ですか?」
瞬時の沈黙。そして、女の声。
「……ねえ………クロード…。『女』は初めて…?」
うふふ…余裕の笑みが、クロードをぞくぞくさせた…。
TO BE CONTINUED
(update 99/06/13)