スターオーシャン

■ラクア海岸の月光■

その5

作・ユーロさま


 

「ねえ……初めてなの? クロード…」

その言葉に、クロードはぞくりとした震えを感じた。

被虐的な快感と言えるのかもしれない。

セリーヌの瞳が虚ろにとろけるのを、クロードは目の当たりにした。

「セっ…セリーヌさんっ…?」

「ふふ……質問してるのは、わたくしですのよ…」

セリーヌはそう言うと、軽くクロードの頬にキスをした。

「クロードのこと、もっと知りたいの……」

クロードの耳に熱い吐息を吹きかける。

「クロードはわたくしに抱かれたいでしょう…? 構いませんわ。

あなたが心行くまで抱いてあげる…だから、ねえ……」

「セリーヌさん、そんな…僕は、僕は…」

僕は、の先が出てこない。

クロードは…「初めて」だった。

告白してしまえば、楽になるのかも知れない。

だが、そこにプライドと羞恥心が絡み合い、素直さは減退する。

恐らく、セリーヌはそんなクロードの苦悩を知り抜いた上で聞いているのだろう。

「わたくしが怖いの?」

セリーヌが聞いた。

もうセリーヌは見抜いていた。この少年は童貞だと。

となれば、答えない理由はある程度思いつく。初体験への羨望と不安。

うまくいくかどうかへの不安。

不安。

不安。

そしてそこからくる怯え。これは、男女共通のものなのだろう。

(…少し、調子に乗り過ぎましたわ……)

セリーヌも処女喪失の直前には、かなりの不安と怯えを覚えた。

それを思えば、これほど残酷な問いもないだろう。

「怖いの?」

クロードは、小さく、こくりとうなずいた。

それを見たセリーヌは、優しく微笑んだ。それは今までに浮かべた、欲望の笑みではない。

全てを受け入れ、慈しむ、聖母の微笑みと同質のものだった。

「意地悪してごめんなさいね、クロード…。でも、安心していいんですのよ…」

身を重ね、肌を密着させる。こうすることで、緊張がほぐれることを知っている。

(ふふっ……胸がどきどきしてますのね…)

それはクロードのことだろうか。それとも自分のことか。

幾分、セリーヌの方が余裕がある。

クロードには、自分の胸の鼓動を自覚する余裕もないはずだ。

「わたくしが…教えてあげますわ……」

クロードの唇を奪い、そして互いに舌を絡め、身を寄せ合う。

扇情的なキスが、二人を熱くさせた。

「ふう…素敵なキスね、クロード……」

愛する者のキスは、それだけで体に入る力を失わせる。

「セリーヌさん……」

クロードはほうっと吐息を漏らし、熱い視線でセリーヌを見つめた。

視線を釘付けにさせるだけの、魅惑の肢体がそこにある。

藤色の下着で覆われた乳房の頂と、男を惹きつけて止まない下半身の「女」は

まだ見ていない。

だが、ブラジャーの端からはちきれんばかりのバストは、細身の体とは不釣合いなほどだ。

深く切れこんだ乳房の谷間は、男ならばつい目線を送ってしまうだろう。

細い腰と重心が高く形のよいヒップが描く曲線もまた、この上なく美しい。

「そんなにじっと見ないで…わたくしだって、恥ずかしいんですのよ……」

頬を薄く染めつつ、セリーヌは拗ねてみせる。

「あ…す、すみません……」

そんな台詞も、可愛く思える。

「いいのよ、クロード…あなたになら、見られてもいい…」

「セリーヌさん…」

熱っぽい吐息。

染まった頬。

快感に悶えるクロード。

そして、彼を翻弄する自分。

……それだけで、セリーヌは「女」を熱くさせてしまう。

……それだけで、濡れる。

セリーヌの下半身が疼き始めた。

快感を味わいたい。

だがそれ以上に、クロードが悶える顔を見たい。

クロードに女というものを教えてあげたい。

いえ…「わたくし」を教えたい。そして、わたくしから離れられなくしたい…。

そんな屈折したとも言える思いが、クロードの男性自身に手を伸ばさせる。

「セリーヌさん……」

「いいのよ、じっとしていて、クロード…」

白い指が、クロードの分身を上下にさする。

時に弱く、時に強く……力加減が絶妙だった。

「う……」

うめくクロードの顔は、何度見ても愛しい。

わたくしが彼を気持ちよくしているのね…。

男性自身への愛撫は止まらない。根元のくびれを、円を描くように指で責め立て、裏筋を優しくしごく。

透明な粘液が、クロードから滲み出した。セリーヌはそれを男全身に塗りたくる。

感じている証拠だ。

「気持ちいい? ねえ、気持ちいい…?」

「あっ……」

声にならない声を漏らすクロード。

びくんと体を痙攣させると、クロードは手を握り締めた。

愛撫は止まらない。このままではとても持たない…。

クロードは自らが絶頂に達しようとしているのを自覚していた。

「ふふ…ここが感じるんでしょう…?」

裏筋とくびれを優しくしごかれる。クロードはいよいよ痙攣し始めた。

「ねぇん……気持ちよくなったら、出してしまってもいいのよ…」

許可が下りた。だが、ここでの射精はもったいない。必死になって我慢するが、無意味なことだろう。

セリーヌはクロードが達するまで、愛撫を止めるつもりはないのだから。

「だっ…駄目です、セリーヌさんっ! そんなにされたら僕、出ちゃいます…っ!」

クロードは仰け反るようにして喘ぎ、顔を横に背ける。

ぴたりと、指の愛撫が止まる。

セリーヌは顔を背けたクロードの顔を、無理矢理自分の顔に向けさせる。

人差し指で、クロードのあごをくいっ…と持ち上げて。

そして、強引に目を合わせる。

「駄目ぇ…。わたくし、クロードがイク瞬間の顔が見たいの……」

誘うように空虚な目。とろんと潤んだ濡れた瞳。羞恥ではなく、

興奮から紅く染まった頬。鼻にかかった甘い声。扇情の言葉。

あえなく、クロードはセリーヌの前に陥落した。

「そんな…見ないで下さい………っあっ!」

クロードの絶頂が近いことをセリーヌは悟った。

セリーヌは絶妙な指戯を続けたまま、クロードの乳首にむしゃぶりついた。

誘うような紅い唇と舌が、クロードの乳首をいやらしく舐める。

「うっ…ああっ…!」

(男の感じる所なんか、みんな知ってますわ……乳首で感じるのは、女だけではありませんのよ…)

セリーヌの心のつぶやきが、クロードには聞こえただろうか。

「あああっ………!」

痺れるような電撃が、クロードの全身に走った。

その電撃は、下半身と乳首から注入される…。

「あっ…もう出るっ…!」

どくん。

一瞬、クロードの「男」が膨れ上がり、そこから白く熱い情熱が迸った。

2度、3度…白い情熱は止まる所を知らぬかのように噴き出し続ける。

その圧倒的な量が、快感の深さを物語っていた。

セリーヌは、またもクロードの顔を自分に向けさせた。

「うふふ……見ちゃった」

「クロードがイク瞬間」のことだ。

はあはあと熱い息を漏らすクロードを見つめ、セリーヌは思った。

(なんて可愛いのかしら…)

今日だけで、何度こう思ったことだろう。

そう思うだけで、またもセリーヌの花芯は潤み出す。

おもむろにクロード自身に目を移し、セリーヌは驚かされる。

(全然萎えていないの…?)

想像以上だった。あれだけ射精したのに……。クロードの陰茎はまだ屹立していた。

手を伸ばす。硬さに若干の変化があるものの、衰えと言えるものではない。

セリーヌの心に、またも火が点いた。

「ふふ…クロード…。気持ち良かったみたいね…」

「は、はい…セリーヌさん…」

セリーヌは妖しい笑みを浮かべた。

「クロード…まだまだ、デキるでしょう?」

甘く囁くセリーヌ。クロードに拒否権はなかった…。

 

TO BE CONTINUED

 

 

 


(update 99/06/27)