「ねえ……初めてなの? クロード…」
その言葉に、クロードはぞくりとした震えを感じた。
被虐的な快感と言えるのかもしれない。
セリーヌの瞳が虚ろにとろけるのを、クロードは目の当たりにした。
「セっ…セリーヌさんっ…?」
「ふふ……質問してるのは、わたくしですのよ…」
セリーヌはそう言うと、軽くクロードの頬にキスをした。
「クロードのこと、もっと知りたいの……」
クロードの耳に熱い吐息を吹きかける。
「クロードはわたくしに抱かれたいでしょう…? 構いませんわ。
あなたが心行くまで抱いてあげる…だから、ねえ……」
「セリーヌさん、そんな…僕は、僕は…」
僕は、の先が出てこない。
クロードは…「初めて」だった。
告白してしまえば、楽になるのかも知れない。
だが、そこにプライドと羞恥心が絡み合い、素直さは減退する。
恐らく、セリーヌはそんなクロードの苦悩を知り抜いた上で聞いているのだろう。
「わたくしが怖いの?」
セリーヌが聞いた。
もうセリーヌは見抜いていた。この少年は童貞だと。
となれば、答えない理由はある程度思いつく。初体験への羨望と不安。
うまくいくかどうかへの不安。
不安。
不安。
そしてそこからくる怯え。これは、男女共通のものなのだろう。
(…少し、調子に乗り過ぎましたわ……)
セリーヌも処女喪失の直前には、かなりの不安と怯えを覚えた。
それを思えば、これほど残酷な問いもないだろう。
「怖いの?」
クロードは、小さく、こくりとうなずいた。
それを見たセリーヌは、優しく微笑んだ。それは今までに浮かべた、欲望の笑みではない。
全てを受け入れ、慈しむ、聖母の微笑みと同質のものだった。
「意地悪してごめんなさいね、クロード…。でも、安心していいんですのよ…」
身を重ね、肌を密着させる。こうすることで、緊張がほぐれることを知っている。
(ふふっ……胸がどきどきしてますのね…)
それはクロードのことだろうか。それとも自分のことか。
幾分、セリーヌの方が余裕がある。
クロードには、自分の胸の鼓動を自覚する余裕もないはずだ。
「わたくしが…教えてあげますわ……」
クロードの唇を奪い、そして互いに舌を絡め、身を寄せ合う。
扇情的なキスが、二人を熱くさせた。
「ふう…素敵なキスね、クロード……」
愛する者のキスは、それだけで体に入る力を失わせる。
「セリーヌさん……」
クロードはほうっと吐息を漏らし、熱い視線でセリーヌを見つめた。
視線を釘付けにさせるだけの、魅惑の肢体がそこにある。
藤色の下着で覆われた乳房の頂と、男を惹きつけて止まない下半身の「女」は
まだ見ていない。
だが、ブラジャーの端からはちきれんばかりのバストは、細身の体とは不釣合いなほどだ。
深く切れこんだ乳房の谷間は、男ならばつい目線を送ってしまうだろう。
細い腰と重心が高く形のよいヒップが描く曲線もまた、この上なく美しい。
「そんなにじっと見ないで…わたくしだって、恥ずかしいんですのよ……」
頬を薄く染めつつ、セリーヌは拗ねてみせる。
「あ…す、すみません……」
そんな台詞も、可愛く思える。
「いいのよ、クロード…あなたになら、見られてもいい…」
「セリーヌさん…」
熱っぽい吐息。
染まった頬。
快感に悶えるクロード。
そして、彼を翻弄する自分。
……それだけで、セリーヌは「女」を熱くさせてしまう。
……それだけで、濡れる。
セリーヌの下半身が疼き始めた。
快感を味わいたい。
だがそれ以上に、クロードが悶える顔を見たい。
クロードに女というものを教えてあげたい。
いえ…「わたくし」を教えたい。そして、わたくしから離れられなくしたい…。
そんな屈折したとも言える思いが、クロードの男性自身に手を伸ばさせる。
「セリーヌさん……」
「いいのよ、じっとしていて、クロード…」
白い指が、クロードの分身を上下にさする。
時に弱く、時に強く……力加減が絶妙だった。
「う……」
うめくクロードの顔は、何度見ても愛しい。
わたくしが彼を気持ちよくしているのね…。
男性自身への愛撫は止まらない。根元のくびれを、円を描くように指で責め立て、裏筋を優しくしごく。
透明な粘液が、クロードから滲み出した。セリーヌはそれを男全身に塗りたくる。
感じている証拠だ。
「気持ちいい? ねえ、気持ちいい…?」
「あっ……」
声にならない声を漏らすクロード。
びくんと体を痙攣させると、クロードは手を握り締めた。
愛撫は止まらない。このままではとても持たない…。
クロードは自らが絶頂に達しようとしているのを自覚していた。
「ふふ…ここが感じるんでしょう…?」
裏筋とくびれを優しくしごかれる。クロードはいよいよ痙攣し始めた。
「ねぇん……気持ちよくなったら、出してしまってもいいのよ…」
許可が下りた。だが、ここでの射精はもったいない。必死になって我慢するが、無意味なことだろう。
セリーヌはクロードが達するまで、愛撫を止めるつもりはないのだから。
「だっ…駄目です、セリーヌさんっ! そんなにされたら僕、出ちゃいます…っ!」
クロードは仰け反るようにして喘ぎ、顔を横に背ける。
ぴたりと、指の愛撫が止まる。
セリーヌは顔を背けたクロードの顔を、無理矢理自分の顔に向けさせる。
人差し指で、クロードのあごをくいっ…と持ち上げて。
そして、強引に目を合わせる。
「駄目ぇ…。わたくし、クロードがイク瞬間の顔が見たいの……」
誘うように空虚な目。とろんと潤んだ濡れた瞳。羞恥ではなく、
興奮から紅く染まった頬。鼻にかかった甘い声。扇情の言葉。
あえなく、クロードはセリーヌの前に陥落した。
「そんな…見ないで下さい………っあっ!」
クロードの絶頂が近いことをセリーヌは悟った。
セリーヌは絶妙な指戯を続けたまま、クロードの乳首にむしゃぶりついた。
誘うような紅い唇と舌が、クロードの乳首をいやらしく舐める。
「うっ…ああっ…!」
(男の感じる所なんか、みんな知ってますわ……乳首で感じるのは、女だけではありませんのよ…)
セリーヌの心のつぶやきが、クロードには聞こえただろうか。
「あああっ………!」
痺れるような電撃が、クロードの全身に走った。
その電撃は、下半身と乳首から注入される…。
「あっ…もう出るっ…!」
どくん。
一瞬、クロードの「男」が膨れ上がり、そこから白く熱い情熱が迸った。
2度、3度…白い情熱は止まる所を知らぬかのように噴き出し続ける。
その圧倒的な量が、快感の深さを物語っていた。
セリーヌは、またもクロードの顔を自分に向けさせた。
「うふふ……見ちゃった」
「クロードがイク瞬間」のことだ。
はあはあと熱い息を漏らすクロードを見つめ、セリーヌは思った。
(なんて可愛いのかしら…)
今日だけで、何度こう思ったことだろう。
そう思うだけで、またもセリーヌの花芯は潤み出す。
おもむろにクロード自身に目を移し、セリーヌは驚かされる。
(全然萎えていないの…?)
想像以上だった。あれだけ射精したのに……。クロードの陰茎はまだ屹立していた。
手を伸ばす。硬さに若干の変化があるものの、衰えと言えるものではない。
セリーヌの心に、またも火が点いた。
「ふふ…クロード…。気持ち良かったみたいね…」
「は、はい…セリーヌさん…」
セリーヌは妖しい笑みを浮かべた。
「クロード…まだまだ、デキるでしょう?」
甘く囁くセリーヌ。クロードに拒否権はなかった…。
TO BE CONTINUED
(update 99/06/27)