スターオーシャン

■ラクア海岸の月光■

その7

作・ユーロさま


 

ごくり…

クロードが生唾を飲み込む音が、セリーヌにも聞こえた。

添うように海岸に横たわるセリーヌが、優しくも妖しい笑みを浮かべ、クロードを幻惑する。

そう、それはまさに幻惑……。

「ねえ…見たい?」

セリーヌが甘い声で訊ねる。

クロードはかっと頬を染め、思わず顔を背けるが…またもセリーヌの指が、彼のあごをくいっとこちらに向けさせる。

小悪魔の微笑み。だが、その微笑みは、同じに天使の優しさに満ちている…。

「わたくしの裸…見たい?」

クロードは恥ずかしげに、こくんとうなずいた。

(正直でいい子ね……)

セリーヌの優しい瞳がきらきらしている。

「ねえ……脱がせて、最後の下着…」

セリーヌは自分から服を脱いだ。しかし、男と交わる時、彼女はいつもそこで止めている。

何故なら…彼女は、男が下着を脱がせるのを喜びとするのを知っているからだ。

繊細に、焦らすように下着を脱がせる男。

乱暴に、欲望を満たすためだけに、荒々しく下着を脱がせる男。

いずれも、その顔は喜びに満ちていた。

クロードはどちらだろう。

(きっと、どちらでもないでしょうね……)

戸惑い、顔を赤らめながら、自分ではそんな行為に及べないのではないか。

もしそうなら、セリーヌはクロードの口から、意地悪く言わせるつもりだった。

「セリーヌさん…脱いで下さい……」と。

それならば、それには喜んで応じるつもりだった。

年下の初心なボウヤには、その方がいいかも知れない。

しかし…クロードは緊張に身を硬くさせながらも、おずおずと手を伸ばしてきた。

(あら……)

セリーヌは心の中で驚いた。積極性は残っていますのね…。

(でもこの子…ブラジャーの外し方、知っているのかしら……)

クロードはセリーヌを一度、ぎゅっと抱き寄せる。そして、腰に回した手を、背骨のラインに置き、ゆっくりと上に撫でるように動かす…。

「あっ……」

びくっとセリーヌが震える。感じてしまったのだ。

巧みな指使いだった。ぞくぞくするような痺れが、快楽の刺激となって伝わってくる。

優しくさするような愛撫だった。徐々にその指は背中を這い上がり、ブラジャーを支える金具に触れる。

セリーヌは肩紐のないブラジャーを好んで身につける。最も、普段の彼女の服装が露出度が高いのだから、これは致し方ないことだ。

いつも彼女は、肩も露わな薄絹に身を包んでいる。太股も大きく露出させており、とても扇情的な姿なのだ。

そんな彼女が、肩紐のあるブラジャーを身につけることは出来ない。あれだけ肌を見せることに抵抗はなくとも、

下着の一部が見えてしまうことに抵抗を覚えてしまうのが、セリーヌだった。

つまり、今身につけているストラップのないブラジャーを支えているのは、クロードが今触れた金具だけなのだ。

これが外されれば、重力の法則が、ブラジャーを地に落としてしまう…。

クロードの上に、セリーヌは覆い被さるように寄り添っている。

重力の法則は、常に忠実だった。

クロードの手が、それを躊躇うことなく外した。ピンッ、と音を立て、金具が外される。

(えっ……?)

目を丸くしたのはセリーヌだ。こんなにあっさりと外されてしまった。

もっとも、下着の構造は簡単なものだ。クロードがそれを知っていても不思議ではない。

彼は19歳。もっとも「貪欲」な年齢なのだから。

ただ、セリーヌには違う思いがあった。彼を挑発したかったのだ。

「ブラの外し方、分かる?」という台詞を囁き、彼の反応を見たかったのである。

だが…クロードは既に知っていた。

 

ぱさりと、ブラジャーが落ちた。

ぽよんと、豊満な乳房が揺れながらまろび出る。

何という造形美だろう。

ブラジャーを外したクロードも、思わず息を呑んだ。

まず、その豊かさと形の美しさに驚かされる。

サイズは87センチ。豊かな膨らみは、Eカップは確実だった。

それでありながら、乳房の全体的な位置が高い。膨らみがツンと上を向き、形が崩れるのを防いでいる。

乳房の重心が高く、驚くほど前面に張り出しているというのに、それは決して垂れたりはしない。

重力の法則は、セリーヌのバストには通用しないようにさえも思えてくるほどだ。

美しい球形にも驚かされる。まさに「まん丸」という印象さえも受ける。静脈も透けて見える白い肌に、

豊かな形の良い乳白色の膨らみは、ふるいつきたくなるほどに魅力的だった。

そして、その母性と優しさの象徴でもある豊かな膨らみの頂点にある突起は、

膨らみの圧倒的なボリュームとは対照的なまでに控えめだった。

薄桃色に染まった乳首は、前面…と言うよりもむしろ、斜め上方に小さく突き出ている。

それを取り囲む乳輪は、豊艶なバストにありがちなように、大きな広がりを見せることは断じてない。

小さくすぼまって乳首を取り囲み、まさにひっそりと咲く美しい花のように、バストの頂点にあった。

巨乳という言葉は似つかわしくない。敢えて呼ぶならば美乳だろう。

しかも、ただ美しいだけではない。完璧なまでの造形美と豊かさを誇る至高のバストは、同時にいやらしささえもクロードに感じさせていた。

男の性欲を著しく刺激する「何か」を感じさせる乳房だった。もっとも…セリーヌはそんなことを知る由もない。

セリーヌが知っているのは…男は皆、乳房をこの上なく愛するということだけであり…。

自分のバストに、交わる相手が執着するのは形の良さと豊かさが他の女性よりも優れているからで、

豊かなバストを好む男たちが、世の中の多数派で、自分と体を重ねた男が皆その多数派に属しているからだと思っていた。

「自分の思うままにしたい」と強く男に思わせる要素が、自分の乳房にあるとは考えたこともない。

もっとも、豊満な乳房は、それだけでそう喚起させるだけの魅力はあろう。

だがセリーヌの乳房は、それそのものに強い媚薬のような効果があるのかも知れなかった。

 

「ねえ…そんなに見惚れてばかりではいけませんわ……」

セリーヌの声で、クロードは我に返った。

彼女の乳房の、余りの見事さにぼうっとしていたのかも知れない。

「わたくしの胸を見たいのなら、いつでも見せてあげますわ……だから、ね…」

また例の、潤んだ瞳が彼を見つめた。

「今は、今しか出来ないことをしましょう…最後の一枚、脱がせてちょうだい……」

その言葉に促されるように、藤色のパンティにクロードの手が伸びていく。これを取ってしまえば、セリーヌは一糸まとわぬ姿になる…。

想像するだけで、下半身が充血してしまうではないか。

(えっ……?)

その事実に、クロードは戸惑いに近い感覚を覚えた。

もう三度も射精してしまったのに、またしても勃ち始めてしまっている…。

自分は、こんなに「強かった」だろうか。

実際の女がいるのといないのとではこうまでも違う…。

女とは、性欲を極端なまでに煽り、そして秘めた物を引き出す力があるようにさえも思えてきた。

 

セリーヌのスタイルは抜群である。

豊かな乳房と、絶妙な柳腰。そしてヒップからすらりと伸びた艶めかしい細い脚…

何と均整のとれた体であろうか。

生物学的に、優れた女とはどういうことか?

それはすなわち、異性を惹きつけることの出来る者…という見方が出来なくもない。

セリーヌはその点では、頂点に位置していると言ってもいいかも知れなかった。

 

クロードが、彼女のパンティに手をかけた。

ここでもまた、セリーヌは驚かされることになる…。

脱がし方が、「初めて」らしからぬほどに巧みなのだ。

重心の高いヒップの方からするすると脱がしていく。

パンティはヒップの方から脱がせれば、後は簡単に下ろせばいいということを、

クロードは知っていたのだ。

セリーヌはそのことを教えようと思っていた。パンティはただ下に下ろすだけでは、ヒップの膨らみに引っかかって、

うまく脱がせられないことがある。

(初めてのはずなのに…!)

これにはさすがに驚かされた。

腰を軽く浮かせて、うまく脱がせるのに協力し…セリーヌは生まれたままの姿になった。

余りにも美しい体だった。クロードの視線は、豊かな乳房と、セリーヌの「女」を覆う茂みを何度も何度も往復している…。

「ねえ…どう、クロード……?」

セリーヌの見事な肢体に見惚れていたクロードは、またしても彼女の声で我に返らされた。

「ど、どうって……」

「もう!」

セリーヌはわざと拗ねて見せた。鈍感な彼の額を軽く小突いて、

「こういう時は、男が何か言わなくてはなりませんわ…。何でも構いませんのよ。

愛してる、好きだ、きれいだ…そんな言葉でいいのですから…」

「あっ…す、すみません…」

「分かればいいのですわ…。ねえ、どう…? わたくしの裸は…?」

「そ、その…きれいです、セリーヌさん…凄く…」

ぎこちない、震える声でクロードが言う。セリーヌはにこりと笑うと、軽くキスし、

「ありがとう……嬉しいわ…」

そう返したのだった。

 

しばらくの間、二人は抱き合っていた。

 

ざざぁん…規則的な潮騒の音が、二人を祝福するメロディのようにも聞こえてきた。

「…クロード…わたくし…もう濡れていますのよ…」

言われてクロードは、彼女の下半身を見た。

「女」を隠す茂みに、とろりと液体が滲んでいた。

「やン…そんなにじっくり見つめないで……」

「あ…す、すみません……」

かあっと頬を紅潮させ、クロードは視線を逸らした。

くすくすとセリーヌが笑う。

「もう……クロードのそういうところがすごく可愛いんですもの……思わず興奮してしまいましたわ…」

こんな時、どういう顔をすればいいのだろう。

「でも驚きましたわよ、クロード…脱がせるのが上手なんですもの」

セリーヌはそこで一息つくと、甘く鼻にかかった声に切り替えた。

「ねえ…本当に初めてなの? クロード……」

セリーヌが潤んだ瞳で問いかける。

「セリーヌさん…僕は、僕は……」

クロードは、悪戯を咎められた子供のような声でつぶやいた。

「ここまでなら…初めてじゃないんです……」

 

TO BE CONTINEUD

 

 

 


(update 99/07/25)