先ほどよりも、より情熱的に舌を絡める。
息も吐かせぬほどに、熱いキス。
クロードも積極的に舌を絡ませる…おずおずと遠慮がちだったのが、まるで嘘のようだ。
「んふっ……ん…んぁっ…」
苦しげな息が繰り返される。二人は互いの唇を激しく求め合っていた。
互いに唾液を送り合うように舌を睦み合わせる。
「はぁんっ……」
セリーヌの方が、耐えられなくなったように唇をもぎ離した。
糸を引く唾液が、月光を跳ね返してきらめく――何と艶めかしい光景だろう。
クロードはぞくりと、その艶めかしさに背筋が震えるのを感じた。
セリーヌはクロードに覆い被さり、ぎゅっと抱き締める。クロードもまた、セリーヌに
たまらない愛しさを覚え、彼女の背に手を回し、力を込めて抱き締めた。
セリーヌもクロードの熱い抱擁に、さらに心を熱くさせる。
巧みに唇を重ねながら、体重を上手く移動させ……クロードと体の位置を入れ替える。
「わ……!」
クロードはセリーヌを「抱いている」ことに気がついた。
セリーヌの潤んだ瞳に見上げられ、顔を紅に染める。
セリーヌの裸体は、とても美しかった。
静脈が透けて見えるほどに白い肌。豊かな乳房、細い腰、男を誘うラインを描いたヒップ…。
体の線…それは出るべきところは出て、引っ込むべき所は引っ込んでいる。
男が触れぬことの方が罪であると言ってもよいだろう。
洋梨をイメージさせる、完璧な「女」の肉体だった。
「ねえ、クロード……キスだけじゃ、嫌ですわ…」
「え、えっ…?」
「クロード……わたくしでどんな想像をしているの?」
「え……?」
「わたくしを考えて、性欲を処理したこと、あるのでしょう?」
はっきり言いなさい…優しく、セリーヌは告げた。クロードをいじめようという気は微塵もない。
「……はい…。あります…そ、その、す、すみません……」
セリーヌは笑って、掌でクロードの頬を包み込む。
「いいのよ……わたくしがそれほど、魅力的だったのでしょう…?」
優しく諭す。傷心の男を傷つけてはならない。慰めれば慰めるほど、クロードは
きっと自分に惹きつけられていくことだろう。レナの呪縛からも解き放てる。
「クロード。その想像の中で、あなたがわたくしにしていることをしてもいいんですのよ…」
「セリーヌさん……!」
「何も恥ずかしくないのよ、クロード……」
クロードは感動に近いものを覚えた。
「セリーヌさんっ!」
クロードは貪るように、セリーヌの唇に自分のそれを押し付けた。
先ほどに劣らぬくらいに、情熱的なキスだった。
だが――今度はそこに、男の本能の荒々しさが込められていた。
蕩けるような甘さはない……だが、激しくセリーヌを求めていることは分かった。
蠢く舌の淫蕩さに、クロードは「男」を奮い立たせ、セリーヌは「女」を濡れさせてしまう。
「はぁっ……」
止めど無く溢れる唾液と愛液……
クロードの唇がセリーヌの唇から離れた。
「次は…どうするの、クロード?」
セリーヌが目をらんらんと輝かせ、クロードの行動に期待する。
クロードはセリーヌの頬に口付けると、そのまま舌をじんわりと頬に這わせる。
「ああっ……」
セリーヌが喘ぐ。感じているのだ。
元よりセリーヌはとても敏感なのだ。感じやすい体質なのだ。
彼女はそれで、大変得をしていると思っている。
性交の果てに得られる悦楽の絶頂……そこに至らなかったことなど、まず記憶にない。
快楽の度合いに差はあれど、あの頭が真っ白になる感覚は性交の度に味わっている。
クロードはセリーヌが初めてだというが……どれほど感じさせてくれるのだろう。
(もっとも、何度でも勃たせてあげますけれどね……)
そんな妖艶な瞳の輝きに、クロードは気づく由もない…。
クロードの舌が、頬から下へ、そしておとがいのラインへと移る。
ぞくぞくと震えるセリーヌに、クロードは喜びを覚えた。
セリーヌさんが僕で感じている……!
首筋に舌を移ろわせ、そこを舐める。濃厚な女の匂いが漂う。
「はあん……」
熱い吐息。クロードの舌は、そのまま白い肌を撫でるように蠢く。
「んん……いいわ、クロード…ああっ!」
舌の軌道が、クロードの意図を示していた。舌の軌跡の延長上にあるのは…耳。
「そのまま……耳に来て、クロード…」
言われなくても、クロードはそのつもりだった。
だが、自分の行動が見抜かれていることに、セリーヌの性の熟練ぶりを感じていた。
「ん……耳はね、触れるか触れないかの微妙なタッチで優しく舐めるのよ……
あっあっ、あぁん……そ、そうよ、そんな感じ…はぁ…」
びくんと体が震える。気持ちいい…もっと感じたい…。
わたくしの感じる所、全部クロードに覚えさせて…わたくし好みの男に仕立て上げなければ…
快楽に基く独占欲。セリーヌはクロードをいつの間にかリードしていた。
クロードの「夜の想像」通りにことを運ばせ、テクニックを伝授……何と淫靡な光景だろうか。
クロードの耳への愛撫は収まらない。セリーヌの教え通りに忠実な舌の愛撫。
クロードはそこに、ふうっと息を吹きかける。
「ああっ……!」
ぴくん――セリーヌが打ち震えた。
(ううん…感じてしまいますわ……もっと余裕を見せつけて、この坊やを導きたいのに……)
余りにも感じやすい体を、セリーヌは初めて恨めしく思った。
「ふうっ……クロード、クロード…なかなか…あんっ…上手よ…」
初めてにしてはね……それとも、わたくしが感じやすいのかしら…。
クロードの舌が耳朶を濡らす。そして……優しくカリッとそこを噛む。
「ふぁああっ…んんっ……」
痺れる電撃。身を強張らせてしまうセリーヌ…。
「はあん…クロード、舌使いが上手いのね……でも、それだけじゃ駄目ですわ…」
セリーヌは甘く囁く。熱い吐息を漏らしながら。
必死に年下をリードしようとするが、快感がそれを阻害する…。
だが、それを逆手に取ることを決めた。感じながらリードしようと。
その方が、男は喜ぶかも知れない。
女を感じさせることは「男のプライド」に関わることでもあろう。
それを満たすことが出来る上に、男にテクニックを覚えこませ、自分も快感の海に溺れることが出来る。
「舌ばかりでは駄目……手がお留守ではありませんか…」
クロードがどきりとする。セリーヌの手が、彼の腕を取っていた。
セリーヌは手首を掴むと、その手をゆっくりと、自身の最大のセックス・アピールである乳房へと導く。
仰向けになっても、形が崩れぬ豊かなバストの上に、掌が重ねられる。
白い美乳はそれでいながら、とても柔らかく、温かい……。
「ここを触っていいのは、あなただけ…わたくしの胸は、あなただけのものなのよ、クロード……」
セリーヌは拗ねるように言うのだ。
「もっと……もっとわたくしを感じさせて…悶えさせて…」
「は、はい……」
クロードは言われるままに、バストを揉み始める。
「あぁっ……そう、そんな感じよ……」
セリーヌが恍惚の表情で言う。
「わたくし……胸が弱いの…とても感じやすいの……あん…っ!」
その言葉は真実のようだ。掌に納まりきらないほどに実った乳房を軽く揺らすだけで、
セリーヌは思わず強く喘いでしまう…。
「もっと感じさせてね、クロード……」
セリーヌはうわ言のようにつぶやき、喘ぎ、快楽を貪る。
そんな中でも、セリーヌはクロードをリードするという意地を失いはしない。
(この快感…何倍にもしてお返ししてあげますわ、クロード……)
究極の快感……わたくしが教えてあげますわ……。
TO BE CONTINUED……
(update 99/08/28)