1. 貝類についての概説

 �貝と軟体動物の定義:貝は軟体動物のうち貝殻を持つもの 

 �貝の種数:昆虫についで2番目に多い。世界では10万種以上あると言われているが正確な数値は不明           

 �貝の分類体系:巻貝(腹足類)、二枚貝、頭足類(タコ・イカなど)の3つが主要なグループ

2. 長崎県の地理?貝の生息環境としての特徴

 �外洋(東シナ海)と内湾の両方がある。

 �大陸棚上で水深が浅い。

 �島が多い(五島列島、壱岐、対馬など)

 �リアス式海岸と内湾が発達(有明海、大村湾、橘湾など)

 �外洋は対馬暖流の影響が強く暖かい。

 �陸上は平野が少なく、標高は低い(最高点:雲仙1483m

 �大きな河川、湖沼がない。

3. 長崎県の貝類相の特徴

 �外洋域は暖流系の浅海性の貝類相。深海性種は分布していない。

 �内湾は大陸遺在系種が特徴的(氷期に大陸と陸続きになった時の貝類相の名残)

 �内湾性の種は保全を要するものが多い(絶滅危惧種)有明海側は諫早湾の干拓によって激変。

 �陸貝は九州の他県と共通するものが多い。

 �島嶼部の陸貝は固有種が分化(特に対馬と五島列島)

 �淡水、汽水の貝類の種数は少ない。

4. 長崎県にちなむ貝類

 ナガサキニシキニナ、ヒラドカワザンショウ、ヒラドサンゴヤドリ、オキヒラシイノミ、

ホリカワタマキビ、ゴトウギセル、ツシマギセル、ツシマムシオイ、ツシマケマイマイ、

チュウシコギセルなど

5. 日本の貝類学の歴史

 日本の貝類の科学的な研究は19世紀に始まった。Sieboldは標本を体系的に収集した最初の人物。

1860?1880年代にドイツ人のDunker, Lischkeが長崎産の貝類を記載。日本人では平瀬貝館を設立

した平瀬与一郎が貝類学を推進した。後に平瀬の助手であった黒田徳米が日本貝類学会を設立。

6. 長崎の貝類研究家とその貢献

 沖 荘 蔵:平瀬時代の貝類研究家の一人。オキヒラシイノミに名を残す。

  金子一狼:医師で収集家。カネコチグサ、カネコヒタチオビ、カネコマクラに名を残す。

  堀川安市:戦前台湾での活動に貢献があった。台湾博物館に標本が残されている。

 山本愛三:東シナ海、島嶼部の貝類相の解明に尽くした。

 松林金造:九州貝類談話会の会長を務めた。ホリカワタマキビの発見者。

 肥後俊一:日本産貝類目録を出版。三度改訂した。第三版は英語版が出版された。

海に恵まれている長崎育ちのものにとって、貝は幼いころから身近にあり、親しみのある食べものでした。
その貝について、自然7科学的にまた歴史を織り込んだ人文科学的に考察され、多くの科学者の
研究対象であることに感動しました。もちろん寿司屋での大好物のネタでもあります。