「アイーダプリマ・ベルラ建造顛末」
【アイーダプリマ・ペルラ建造顛末】
1. 文芸春秋2017年6月号の指摘
2. 長崎造船所の歴史
3. アイーダプリマ建造概要
1) 仕様打合せ時に出た問題点
2) 予測しなかった仕様提示と回答の遅れ
3) 納期遅延とコスト増
4) 客船製造上の問題点・難しさ
5) 納期遅延回復のための打ち手と結果
4. 文芸春秋指摘の他の問題点と動向
以下は、当日話された内容の要点を、岡さんにお願いして、まとめて頂いたものです。
皆さま、こんばんは。文芸春秋6月号の掲載された記事に基づき、ご説明します。
この記事では、MRJ(三菱リージョナルジェット)の納期遅延、客船建造での大幅赤字、
南アフリカでの大幅赤字、アメリカ原発での訴訟、フランス原発メーカアレバへの
投資などが、現在の三菱重工の抱える問題点・課題として挙げられています。
本日は、その中で、客船関係を中心に公表された事実、関係者の声について、ご説明します。
三菱重工長崎造船所は、1857年に創立された「徳川幕府の長崎熔鉄所」が、ルーツであります。
客船・艦艇などを建造し、昭和40年には、30万トンドック、47年には香焼の100万トンドック、
その2年後には、香焼に50万トン修繕ドックを竣工させ、船舶の大型化に対応してきました。
ドイツ・ハンブルグに本社を置く「アイーダ・クルーズ」社から、受注した2隻のクルーズ船で、
大幅な赤字を出し、結果として、祖業である船舶建造で、付加価値のある客船建造から撤退する
ことになりました。その原因は、受注金額が安すぎた。推定ですが、2隻で1000億円と言われています。
この金額でも、安かったと思われますが、それに加えて、詳細仕様打合せの段階で、予測して
いなかった仕様提示が多数あり、それらに「Yes、No」の対応がとれず、ずるずると納期が遅れたことが
大きく、造り難さが倍加し、部品等の調達にも支障が出て、大幅なコスト増となったと思われます。
これらは、実際に仕様を決める際の交渉で、きちんと決めていくことができなかった、経験不足、
交渉能力が弱かったことに原因があると思われます。もちろん、先方も過度の仕様を提示してきたことも
ありますが。それらの提示を跳ね返すことができなかった点は、大きな問題点です。
その結果、大きな赤字を計上することになり、客船事業から、撤退することになりました。
文芸春秋では、MRJについても、鋭い指摘があり、これらを早期に解決することが大切です。三菱重工が、
現在直面している課題は、日本の製造業に共通する課題とも言えます。現在の宮永社長の下で、
ドメイン制・SBU制(戦略事業単位)導入など、マーケット・ユーザー側からの視点での事業取り組みが
進められており、無線送電技術、海外企業とのJVによる洋上風力発電など、いい結果も出ており、
新しい事業分野への開拓ができるものと考えています。