「野母崎の自然」
【野母崎の自然】
日本本土最西南端に位置する、長崎市野母崎地区。世界文化遺産に登録された「軍艦島」 (端島)
が真横から見えるため、軍艦島目当ての観光客が多く訪れるが、実は全国的に見ても貴重な
自然資料が沢山あることが近年わかってきた。今回は。今まであまり知られることがなかった
野母崎の自然について紹介したい。
◆野母崎の紹介◆
2005年に長崎市に編入された、旧野母崎町にあたる地域。高浜、野母、脇岬、樺島の4つの地区に
大別することができ、かつて地区ごとに治めていた藩が異なるという歴史を持っている。そのため、
現在に至るまで、地区ごとで方言・人情気質・食文化・祭りなどが全く違っている。
◆野母崎の自然◆
《地質と恐竜と炭鉱》
・野母崎地区では数億年前〜数百万年前のものまで、幅広い年代の地層・岩石が見られる。狭い
範囲でこれだけ多様な年代の岩石が見られる場所は国内でも珍しく、日本最古の岩石が見つかる
可能性もあるということで、調査が進められている。
・2014年度には、西側の海岸に露出する三ツ瀬層から、国内初のティラノサウルス科(獣脚類恐竜)
大型種の化石が発見された。その他ハドロサウルスのなかま、ヨロイリュウのなかま、翼竜のほぼ
全身の骨格、爬虫類や魚類の化石が多数発掘されており、長崎市は野母崎の田の子地区に恐竜
博物館の建設を予定している。
《渡るものたち〜海と空の交流地〜》
・鯨類
ザトウクジラ、サラワクイルカ等、長崎では珍しい鯨類が漂着することがある。また、野母崎を含む
長崎半島周辺にあらわれるハンドウイルカの一部には、この種にしては珍しく、狭い範囲を回遊して
いる可能性があることが分かってきた。
・ウミガメ
年間を通じてウミガメが頻繁に見られる。定置網に入ることが多いのはアオウミガメ。脇岬海水浴場
では3年おきに3回続けてアカウミガメが上陸産卵しており、長崎県内では最もスパンが短いアカウミ
ガメの産卵場所と云える。
・アサギマダラ
海を超える旅をすることで有名な蝶。野母崎の樺島には毎年、晩秋〜冬に5000頭近くのアサギマダラ
がやってきて、遠くは台湾にまで渡って行く。また、少数であるが野母崎でも幼虫越冬する個体がいる
ようで、春にも長崎でいち早くアサギマダラの姿を見ることが出来る。
・渡り鳥
全国でも有名な渡り鳥の観測地である。国内での観察例が数例しかないような珍鳥も毎年報告される。
また、鹿児島の出水で越冬したツルの北帰行のルートにもかかっており、春と秋にはマナヅルや
ナベヅルが隊列を組んで飛ぶ姿が見られる。
冬季の樺島にはカツオドリと云う海鳥が200羽ほどやってくるが、野母崎で見られる習性が繁殖地の
ものと異なる点が多いことがわかり、2016年の冬から調査が始まった。