【中文提要】
日本国江戸中葉、長崎的異国通事留下的《訳詞長短話》、一九一四年被発見以来、引
起人椚的関心、論及到這本書的学者也不少竈但是、這本書上写的所謂「唐話」的性格、一
直到現在、還摸不清竈這本書上一起写的各種異国話、幾乎都是未閲明的様子。「摸不清」
的主要理由就是「魏氏仮名文字」的存在但、他尽管全編都用漢字写、不過、我椚被作為音
注使用的r魏氏仮名文字」遮蔽、不能釈読這本書。
現在、不手愚、通過長崎大学国語学者的不断努力、作為音注使用的「魏氏仮名文字」被
転写成「伊呂波仮名」但結果、《訳詞長短話》在我個中国語言学者的眼前出示。
加上、最近又有一個新的成果。那就是、通過同様的国語研究者伊『的努力、与《訳詞長
短話》有密接的関係三同様採用「魏氏仮名文字」的別種文献《東京異詞相集解》的翻印都'
完工、研究報告書都刊出来了。這様、対於《東京異詞相集解》這本書的語言本身進行研究
的基礎工作総算準備了、中国語言学者、現在可以進行研究、抽出結論直
0 関係年表
1635(寛永!2)年 鎖国令
1644(正保 1)年 明.滅亡
1672(寛文12)年 魏九官、帰化を申し出、長崎住宅唐人となる。
従僕の魏喜(魏五平次)東京通事となる。
1781(天明1)年 魏喜輝(五左右衛門。号、龍山)四代目東京通事となる。
1793(寛政5)年 魏五左右衛門、唐通事見習となる竈
!796(寛政8)年 魏五左右衛門r訳詞長短話』清書完了。
1834(天保5)年 魏五左右衛門死去回
1 序一未解決の問題と考察の背景
江戸中期に長崎の異国通事の残した肝訳詞長短話』は、1914(大正3)年に発見されて以
来、その風変わりな八分体の表記と相侯って関心を呼び、これに論及した学者や研究者は
これまで少なくなかった。
しかし、そこに盛られた「唐話」の実体については不明のままであり、併記されている
各種の異国語についても、今も未解明のありさまであると言ってよい。その理由は、音注
に使われた「魏氏仮名文字」と称される特殊な発音注記が立ちはだかり、それに阻まれて
容易に解読.することができなかったからにほかならない。
しかし、国語学者による努力が積み重ねられ、音注に使われた「魏氏仮名文字」(『魏
氏いろは」とも言われている)は解読されて、普通の「いろは仮名」に転写され、旺訳詞
長短話』の一部は、われわれの目のまえに提示され、この言語について考察することので
きる基盤が近年ようやく大体備わった。
加えて、最近になってもう一つの新たな成果が積み上げられた。それは、内容的に密接
な関連をもっていて、同じ魏氏仮名文字を用いたr東京異詞相集解』の翻刻が上記と同じ
研究者らの努力によって完成され、公表されたことである。実のところ、肝東京異詞相集
解』の翻刻は・口語の特徽牽より一層露わにしている点で興味をひかれるものであつて、
『訳詞長短話』の翻刻とあわせて意義深いものとなっている。
2 『訳詞長短話』と旺東京異詞相集解』の唐語の性格
筆者が検討したところでぽ、r東京異詞相集解』および、より整理された著作としての
『訳詞長短話』に記されているr中華」の言語、すなわちr南京官話」とは、福州語にほ
かならない。『東京異詞相集解』と書名に冠され、書中に記されているr東京語」とは、
実は・今から約二、三百年前の福州語である。このことは、現在から遡ること二、三百年
の時問的隔たりはあるものの、この「魏氏仮名文字」の音価によって、大多数の単語と句
とを橿州語のそれにひき当てることができるということである直
当時の福州語の音韻組織と現代の福州語のそれとの問には、細部にわたって見れば、か
なり異なる点も存することに注意する必要もあろう。だが、この「東京語」は、その根幹
部において、現代の福州語とほとんど差異はなく、差異のみとめられる若干の単語も、現
代の福州語から容易に引き当てることができるのである。語彙を詳しく分析すれば、基礎
語彙が一致ないしは著しい類似性を示していることがわかる。この一致は、基礎語彙ばか
りではなく、文化関係の語彙にも目立ってあらわれる。語彙の面での散発的な不一致を根
拠にして、上述の毒実に疑いをさしはさむことはできないのである。
福州語の歴史的研究として利用することのできる文献としては、門音系韻書の噴矢とい
われる一『戚林八音』(明末清初の音韻を反映していると言われる)'やアメリカの宣教師、
R.S.MacIeyとC.C.Baエdwhの著した、
An Alphabetic Dictionary of the Chinese Language in the Foochow
Dialect(1870,Foochow)
Dictionary of the Foochow Dialect(1870,Foochow)
がある。『東京異詞相集解』は、資料的価値において、これらと同等、あるいはこれらよ
りも貴重なものと見て差し支えない。
ただし、この「東京語」と称しているのは、福州語を根幹として、若干のヴェトナム語
が混入している言語である。また『東京異詞相集解』に収められていて、「案南語」と称
されているのは、舎エトナム語を根幹にして若干の福州語の混入している言語のことを言
っているのである。
『訳詞長短話』(第1冊)冒頭の第1句には
天長 地久 テン チャン ニー キウ(中華)
テン チャン リイ キー(案南)
テン チャン リー キウ(東京)
とあり、この句は、(中華)では、音注のように、
t'ieng44 ch'ang52 t-ni242 kieu31
と読まれた。
「地」がtiがniと発音されるのは、前の音節ch'angの韻尾の鼻音に影響された声母
の交替によるものである。この読音こそが長崎の魏の家に伝わり、「(中華)南京官話」
と思い込まれていた言語一客観的にみれば、福州語詑の南京官話一であった。
『東京異詞相集解』では、「唐山(「中国」を指す)国名」の項目において、
一 南京 福州 章州 寧波 ・(@1-2)
のように記され、以下には、船山・普陀山・安南・東京・広南… の地名が続き、長崎
と交渉の深かった地名が順に並んでいる。先頭の「南京」に続いて「福州」が2番目に置
かれているのは、福州・福州語の優位を明示していると言える。音は次のように福州語に
一致する回
福州 フッチウ ho?5 tsiu55
章洲 チユウチウ tsyong55 tsiu33
3 門語の下位方言
門語は、福建省を中心にして話されている言語であり、多くの下位方言群に分岐してい
る。福建省内の門語は、言語面での均質性を基準にしてつぎのように5種にわけられる。
1)門東語 東北部の門江下流域に分布する方言群を指し、3つの支系(福州語・福安
語・福鼎語)に分かれる。省都の福州語が代表方言である。
2)甫仙語 沿海部の甫田地区に分布する方言を指す。
3)門南語 東南沿海部に分布する方言を指し、3つの支系(アモイ語・龍岩語・大田
語)に分かれる。
4)門中語 中央部の山問部(永安・三明・沙県)に分循する方言群を指す。
5)門北語 西北部の山間部、建渓流域に分布する方言群を指す。
上の5種の下位方言のうち、門東語、門南語、門北語の分布範囲がひろく、勢力のある
こと・から、他の2っをのぞき、門語を代表する3つの方言として扱われている。沿海部に
分布する門東語、甫仙語、門南語をあわせて、門海方言と呼ばれることがある、
門語の分布は、福建省を中心にして、大陸東南沿海部に帯状に伸び、北は漸江省東南部
(漸南門語)から台湾(門南語)、広東省東部(潮州語)でも話されている。海南島の漢
族によって話されている海南語は、アモイ語、潮州語、漸南門語と系譜的関係をもつ門南
語の一支派である。
4 現代福州語の音韻特徴
福州語の音韻は、概略1つぎのようである。すなわち、15の声母(pp'm;tt'nl;ts' s;
k k'ng h o)と48の韻母(主母音5種、副母音2種、韻尾には、開韻尾のほかに、-ng
の鼻音韻尾と-?/-kの入声韻尾が立つ)からなる。
声調は5種。すなわち、上声のほかは陰調と陽調との対立がある。
陰平(55) 上声(33) 陰去(31) 陰入(23)
陽平(52) 陽去(242) 陽入(55)
福州語の韻母には、緊音(tense)と髭音(1aX)の区別があって、同一の韻母が、声調の違
いによって音色が著しく交替する(緊音では主母音が前寄りとなる。髭音では後寄りとな
'って、単母音が二重母音、すなわち「複韻尾」となり、狭母音が広母音となる)現象がみ
られる箏すなわち、緊音は平らないし下降調で曲折を伴わない調型をもっ陰平、陽平、上
声、陽入に現れる一方、、髭音はゆるやかな曲折の調型をもつ陰去、陽去、陰入にそれぞ
れ現れるのである。
福州語では、同化作用による声母の交替が顕著であって、2音節結合では、第享音節の
初頭子音が交替型をとる。
福州は、歴史的に見ると、音韻特徴のなかに、門語全体に共通するつぎのよラな古形態
を保存している。
すなわち声母では、
1)口語語彙のなかでは、いわゆる「軽唇音」は重唇音のままであって、文語音では
軽唇音の形になっている。
2)口語音では、舌頭音(「端・透・定」)と舌上音(「知・徹・澄」)の区別はない。
3)古漢語の全濁音声母は、口語音層では無声非帯気音に変化している。
4)「明.泥・疑」母の字は門南語ように、非鼻音化を起こすことなく、それぞれ、m-,
n-,ng-で発音される。
5)「厘」母字では、k-で発音される。
6)「従」母字では、「心・邪」母字と同じく、s-で発音される。
また韻母では、次のような古漢語としての特徴をもっている。
1)古漢語の合口三等字は、撮口呼-y-がでることは少ない。
2)古漢語で鼻音韻尾をもつ韻は、-ngで発音されて、門南語のような鼻音化韻尾は
ない。
3)古漢語の入声韻尾は、-?で発音される。
5「魏氏仮名文字」による音注
音注として使用された「魏氏仮名文字」の的確な音価を把握できるか否かは、『訳詞長
短話』と『東京異詞相集解』に記載されている単語や句の解釈の成敗の関鍵である。補助
記号の意味するところも重要である。
6『訳詞長短話』とr東京異詞相集解』の漢字表記
『東京異詞相集解』を見ていると、手っ取り早くいろいろな字があてられている口たと
えば、次のような例がある。
福州語 「何」 「シノ」 (在に)
福州語 「事・大這」 「タイチエ」(こと)
これは・福州語で、それぞれ、sie?no?(什宅)、tai52chie213(事志)があてられる。
7 『東京異詞相集解』の本文の検証
資癖から、現代の福州語およびヴェトナム語との対応関係を検証してゆく。符号の@A
は長崎大学経済学部分館武藤文庫の2冊であり、Bは長崎市立図書館渡辺文庫の1冊で
ある。@ABに続く「ウ-1」のような表記は頁数と行数を表している。