第7講 To Heart

〜大ヒットの代償〜
97/9/4開講

1、キャラ立ての成功と美しいシナリオ

1997年前半を代表する恋愛ゲーム、と言われたら間違いなく3本のうちの1つに入るのがこのToHeartでしょう。ToHeartはLeafビジュアルノベルシリーズ第3弾として、まさに満を持して発売されました。

内容は高校1年3月から2年5月頭までの2ヶ月を幼なじみを初めとする個性豊かな女の子たちと過ごす、さわやかな恋の物語です。

良い恋愛ゲームには欠かせない2つの最重要項目としていつも挙げているのがまず「魅力的なキャラクタ」とそしてそれを彩る「心を打つシナリオ」です。
ToHeartはそれをあっさりとやってのけました。そして遙かにグレードアップしたハイクオリティなCGと美しいBGM。
恋愛ゲームとして成功するのはもはや当然のことでした。

#もっとも、キャラクタ人気に順列ができるのは当たり前ですが、ToHeartはそれが異常に偏ってると言わなければなりません。それはシナリオの質にムラがあるためだ、というのはあながち間違いでもないと思います。

さて、恋愛ゲームとしてのヒットについてはくどくどと書く必要もないことですので、ToHeartが残した課題について書きましょう。

2、恋愛ゲームの「限界」

ビジュアルノベルシリーズ第3弾は学園恋愛モノ、そう聞いた時から期待とともに感じていた一抹の不安。ToHeartはその不安が見事に的中してしまう形となりました。

それは、恋愛ゲームの「限界」ということです。
狭義の恋愛ゲームにおいてはやはり表現できる世界に限りがあります。
恋愛ゲームは確かに一般受けしやすく、一定数の購入者が見込めるという利点が明らかに存在しています。そしてその恋愛ゲームを出してきた、ということは制作したLeafが「守り」に入ってしまったということを表しているのではないでしょうか。

ビジュアルノベルシリーズ第2弾「痕」になると多少は余裕があったかもしれませんが、少なくとも第1弾「雫」の頃には会社の状況は良かったとは言えないでしょう。しかし、だからこそ斬新的な、そしてインパクトの強い「攻め」のゲームができたのだと思います。
2作品をヒットさせて会社の状態も安定した分、今度は「必ず(そこそこは)当たるものを作らなければならない」という人気ソフトハウスの宿命がなかったとは言い切れないのではないでしょうか。そして恋愛ゲームはまさに「必ずそこそこ当たる」というものだからです。

「雫」「痕」は広義恋愛ゲームと恋G研では定義しています。
一般的には恋愛ゲームの範疇に入れられないかもしれませんが、この2作品(特に「痕」)には「恋」が根底にあるのは確かでしょう。
恋愛ゲームの分類は色々してきましたが、もう1つ「日常/非日常」という分類があります。「雫」「痕」は「非日常」の恋愛ゲームの典型例です。恋愛物語としてこの2作品がトップクラスのクオリティを持っていることに異論を唱える人はいないでしょう。「非日常」ということで、確かに一般受けはしないでしょう。一般受けはしないがハマる人はハマる、そんなゲームだったと思うのです。

ところがToHeartはごく普通の恋愛ゲームになってしまいました。なるほど、一般受けはするでしょうが、前2作品と同じ「非日常」の恋愛をそこに求めていた人にとっては「何か違う」、「裏切られた」、ということになりかねません。
そもそも「雫」「痕」と「ToHeart」を同じ土俵で語ること自体意味がないことなのかもしれません。しかし、それならばビジュアルノベルという形式を取ることに何か意義はあったのでしょうか?同じキャラクタで、同じシナリオで、しかしもっと別の表現形式があったのではないでしょうか?

また、毎日行き先を決定することで話を進めるのが、ルーチンワークになりがちというのも非常に気になりますし、それに今までの「ビジュアルノベル」というシステムが生かされていません。適当に移動先を選択していては仲良くなれませんし、結局リロードを繰り返してキャラクタ1人を追っかけるプレイに終始しがちです。
キャラクタごとのシナリオがバラバラになってしまってボリュームの割に世界観に厚みを感じられなくなってしまったのも残念な点です。

確かに恋愛ゲームとしては(他と比較しても)非常に優れているに違いない、しかし大ヒットの陰では大きな代償を払わなければならなかった、ToHeartはそんな事を物語っているように感じるのです。

3、ちょっと主観的な評価

※注:★は5個が最高。1個が最低。
ToHeart(参考1)雫(参考2)痕
原画★★★★★★★★★
CG★★★★★★★★★
シナリオ★★★★★★★★★★★★★★
キャラが
立っているか
★★★★★★★★★
システム★★★★★★★★
操作性★★★★★★★★★★
BGM★★★★★★★★★★★★★★★
ゲーム性★★
え○ち度(笑)★★★★★★★★★
どきどき★★★★★★
せつなさ★★★★★★★★★★★★★
(狭義の)
恋愛ゲームと
しての完成度
72点8点25点

4、キャラクタ各論

ラグナを参照して下さい。m(__)m

5、キャラクタの分布

 活発    ←         →  大人しい
お姉さま系 
  ↑  宮川レミィ保科智子
長岡志保来栖川芹香
  ↓  松原葵神岸あかり姫川琴音
子供・ロリ系雛山理緒マルチ

水無月さんの絵がもともとそういう感じということもあるのですが、かなりロリ系に偏っています。(^_^;)全員高校生(それも1人を除き同学年以下)なので無理もないことですが。

6、To Heartの恋の「カタチ」

出会いと会話を重ねていくことで親密度を上げていくスタイルは第2期以降の恋愛ゲームではもう定番中の定番ですが、実際それが一番自然な恋の「カタチ」だからですよね。1人に集中しなければ成功しないのも最近では当たり前で、ToHeartはまさに恋愛ゲームの「お約束」に沿って作られていると言えるでしょう。


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