第8講 同窓会

〜「せつない」系恋愛ゲームのフロンティア〜
97/9/16開講

1、「せつない」系と「どきどき」系

1996年9月に発売され、先の「下級生」とともに1996年を代表する大ヒット恋愛ゲームが、このフェアリーテールの「同窓会」です。
今をときめく水谷とおるさんの原画、綺麗なCG、BGM等、パーツごとのレベルの高さはすでに書くまでもありませんが、同窓会は「せつない」系恋愛ゲームを持ち込んだ先駆者としても重要です。

恋愛ゲームに不可欠の要素として前から提唱しているのが「どきどき」と「せつなさ」である訳ですが、それまでは「どきどき」系が圧倒的に多く、せつない気持ち、やるせない思いを描いたものはほとんど無かったように思います。
もともと恋愛ゲームは恋愛から「気持ちの良い部分だけを切り取った」ものであるだけに、その傾向は当然とも言えます。

しかし、恋愛ゲームの本質はゲームの中の女の子と仲良くなること(これが「どきどき」にあたる部分)だけではないと思います。
ゲームが現実の自分、そして思い出の中の自分とオーバーラップしていくこと(これが「せつなさ」にあたる部分)により、自分だけの物語を生み出すことで完全体となるのではないでしょうか。
同窓会は(下級生も一部意識していますが)その「せつない」系恋愛ゲームを初めて実現したゲームだと言えるでしょう。

キャラクタの立て方としても、某εL○GINの1996年ゲームヒロインコンテストで鮎が1位を取るなど、大成功していることを伺わせます。もっともスタッフの力の入り方からして表のヒロインであるはずの瑞穂を含め他のキャラの扱いがちょっとひどいんですけど……。(泣)
#おっと、個人的な趣味が出てしまいました。(笑)

2、システム的な問題とゲームの難易度

原画、CG、シナリオ(一部のキャラだけ扱い違うという問題もありますが(^^;))、BGMとコンテンツ的にはトップクラスのものを持っている同窓会ですが、ゲームとしてはお世辞にも良くできているとは言い難いように思います。

初めてプレイした人はきっと思ったことでしょう。
「何かこれ、同級生と同じだな。」
と。
実際、フィールド型アドベンチャー系は同級生以降も頻繁に使われているありふれた形式です。

しかし同窓会は、この同級生系アドベンチャーの欠点が更に悪い方に出た形になっているような気がします。
ゲームの難易度を決めるのは本来あるシナリオにおいて受け答えの選択肢があって、その選択が難しいからゲームとしての攻略(語弊があるかもしれませんが、ここではあえてそう呼ばせて下さい)が難しくなるべきもので、このタイミングにこの場所に行かなければ攻略できない、とかいうのはおかしくないのでしょうか。確かに偶然に左右される恋愛もあっていいですが、同窓会は出会える場所等が全く脈絡ないため、ランダム的要素が支配的になってしまっていると思います。
それとゲームに時間の概念が希薄で、更にその攻略を難しいものにしています。ゲームとしての難易度、やりがいは大切なのですが、間違ったところでその難易度を実現されてしまうとユーザにとっては単に「とっつきにくい」「めんどくさい」ゲームということになってしまうのではないでしょうか。

慣れればともかく、いきなり広大なマップに放り出されては途方にくれてしまいます。しかも、行けるポイントの割にエンカウント率(キャラクタに会える確率)が極端に低く、プレイが冗長なものになりがちです。

#フレンズでは女の子がどこにいるか分かるようになる、みたいなことを読んだのですが、それはそれでゲーム性もあったものじゃなくて考えものですが…。

ゲームの難易度は「会話等の選択肢」に適度にクリティカルな選択を組み込むことで実現すべきです。逆に気分値蓄積型のゲームはそれはそれで選択で間違えても簡単にカバーできるものが多く、選択肢に緊張感がありません。気分値蓄積型でかつここぞという時に将来を分ける選択肢が出てくる、それがもっとも自然な恋愛ゲームの難易度/ゲーム性の実現だと私は考えるのですが。

あとこれは余談になるのですが、結構重要なこと。
「同窓会はえっちシーンがめんどくさい!!(泣)」
「きゃんバニエクストラ」もかなり大変でしたが、同窓会は先に進むためにクリックする場所が多すぎる…しかもマウスカーソルが小さくて何やっているか分からないので(パッチ入れて修正しないとズレてるし……)、先に進まなくて悪戯にクリックしまくる、なんてことが日常茶飯事です。「下級生」などはあっさりし過ぎで寂しいのですがこれは面倒過ぎです。こちらの方も「適度な歯ごたえ(笑)」が大切だと思うのは私だけでしょうか?
#ユーザって勝手ですよね。(笑)

ハイクオリティな作品だけに、細かいところで色々気になる部分が多いですが、第3世代恋愛ゲームとして1996年を代表する3本の1つにも数えることができる同窓会は、美しい恋愛物語と、そしてゲームとしての課題とを残しました。「同窓会2」(え!?もちろん出すんですよね?(笑))ではぜひその点を踏まえて更に高いクオリティを標準にして欲しいものです。

3、ちょっと主観的な評価

※注:★は5個が最高。1個が最低。
原画★★★★★
CG★★★★★
シナリオ★★★★
キャラが
立っているか
★★★★
システム
操作性★★
BGM★★★★
ゲーム性★★★
え○ち度(笑)★★

どきどき★★★
せつなさ★★★★
恋愛ゲームと
しての完成度
80点

4、キャラクタ各論

ラグナを参照して下さい。m(__)m

5、キャラクタの分布

 活発    ←         →  大人しい
お姉さま系 青木桃子
  ↑  狩野真琴緒方静香
若林鮎秋山みどり小早川瑞穂
  ↓  村田深雪佐伯夏奈子
子供・ロリ系

基本的に大学の同窓会ということで平均年齢が高く、真ん中に固まった感じです。悪く言えば平凡なキャラが多いということになるのでしょうが。でも人気はちょっと偏りすぎですね。(^_^;;

6、同窓会の恋の「カタチ」

初めに誰と仲良くなりたいか決める、という形は今までの恋愛ゲームにはないもので、とても新鮮でした。しかしよく考えれば当たり前なんですよね。あちこちの女の子に手を広げておいて、うまく行きそうな娘に走る、なんてことは現実では(人にもよりますが)普通はしないですから。その点で同窓会の恋の「カタチ」は非常に自然に感じられました。


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