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Partner Style

 Partner Styleは現代日本においてコミュニケーションとパートナーのあり方に問題意識を持ちを個人と社会の両面から考えていこうとするシリーズです。

初版: 2003/07/05

0.「普通」がなくなった

 今、結婚の制度疲労が露呈している。平成12年国勢調査の結果(※1)ははっきりと晩婚化ならぬ非婚化の傾向を示しており、こうした状況を団藤氏は「空前の生涯独身時代」と指摘している(※2)。具体的な原因については、今後考える機会があると思うが、一言で言えば、少なからぬ人にとって結婚は恋愛に比してもはや魅力的な、あるいは現実的に選択可能なオプションではなくなってきているのである。

 その一方で、「シングル」を「選択する」生き方が出てきているとされるが、この「シングル」もまたかなり大括り過ぎて様々なコンテキスト=個人が置かれた状況を見落としてしまう危険がある。結婚するのが「普通」だった時には、「未婚者」を指すと考えれば良かったかもしれないが、生涯非婚率が10%から20%へと伸びつつある今では乱暴過ぎるだろう。例えば1)ステディなパートナーを持ちながら、あえて結婚することに意義を見出せない人と、2)特定のパートナーに縛られることを拒否し、より自由なパートナリングを志向する人と、3)理想が高くて今のところパートナーがいない人と、4)そもそも1人でいることを好む積極的「セルフパートナリング(造語。例えば「自分にプレゼントする」といったような発想から来ている)」者と、5)いくら理想を下げようが特定の関係を望んでも叶わない消極的「セルフパートナリング」者とでは、それぞれ全く事情が異なるからだ。

 こうした個人の「選択」は、それが集まることで必然的に社会にも大きな影響を与える。非婚化の結果として少子化が進めば、超高齢化社会が加速し、労働者1人当たりの負担はますます厳しいものとなる。結果的に、日本に住むことのメリットはどんどん減少していく。しかしこういった結婚や出産が「個人の自由」である以上、政府や自治体ができることには限度があり、日本のシステムを維持するためには外国人労働者を全面的に受け入れていく、といった別の選択肢も考慮に入れる必要もでてくるだろう(※3)。

 多様なパートナースタイルが許容されるようになってきたことで、社会からの要請(圧力)は弱まり、全ては個人の自由な「選択」に任され、反面自ら責任を負うことになる。「普通」とか「標準」的な生き方モデルというものがなくなる。Partner Styleではこの「普通」とか「標準」の存在しない現代日本においてコミュニケーションの問題とパートナーのあり方を個人と社会の両面から考えてみたい。

参考文献

  1. 明日への統計2002 平成12年国勢調査の結果
  2. インターネットで読み解く!No.1「空前の生涯独身時代」
  3. インターネットで読み解く!No.73「非婚化の先に見える多民族社会」

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