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恋愛ゲーム学補講


第1講 恋愛ゲームの2つの方向性

97/09/26開講

1.恋愛ゲームの2つの方向性

 恋愛ゲームには様々な分類方法があるのですが、では一番根本の所で分かれるのはどういう要素なのでしょうか。ゲーム全般の形態の分類であるSLGとAVGという分け方も目に見えやすいものではあったのですが、最近の恋愛ゲームはそういった古典的な型にはまらないものも多くなり、境が見えなくなって来ている気がします。それにこれは本質的な問題(分類)ではないでしょう。ましてや、18禁と一般という分類は恋愛ゲームにおいては全く無意味です。

 そこで総論第4講の冒頭で提唱したシミュレーション(疑似恋愛系;以下SLG)、シーナリー(恋愛物語系;以下SNG)という分類要素が一番本質的なのではないか、と考えるようになり、それがまさに最初の一文に具体化されたのです。SLGとSNGの説明は後にまわすとして、この2つはちょうど直交する軸のような関係にあり、SLG軸の基準となるのがバーチャコール、SNG軸の基準となるのがセンチメンタル・グラフティという訳です。

 しかし、分類と言っても今のところは多様な恋愛ゲームがこの2種類にはっきりと分かれてはいません。それぞれが両軸に対応する部分をいくらかずつ持ち、ちょうど平面座標のように位置することになります。「現代の〜」という一文はそういう考え方のもとで生まれたものです。

 今後はこの2つの方向がより明確な形で現れてくることが予想されます。疑似恋愛と恋愛物語という2通りのアプローチ、どちらが真の「恋愛」に近づけるのか、しかしそれは人それぞれだと思いますので、ぜひ考えてみて下さい。

2.恋愛SLG系

 恋愛ゲームは世間では一般に「恋愛シミュレーションゲーム」あるいは簡単に「恋愛シミュレーション」と呼ばれることが良くあるのですが、これはときめきメモリアル(以下ときめき)がゲームの形態的にはSLGであった所から来たのではないでしょうか。ときめきは「恋愛」の「シミュレーションゲーム」であって「恋愛シミュレーション」の「ゲーム」ではありません。

 そして、世に出ているほとんどの恋愛ゲームが、全く「恋愛をシミュレート」していないことに気づくのにさほど時間はかからないでしょう。そう考えると「恋愛シミュレーション」という言葉で恋愛ゲームの全体を表現するのはやや不適切であるということにならないでしょうか。

 そこで、恋G研ではすでに散々使っていますが「恋愛ゲーム」を全体を表す用語とし、その中に部分的に「恋愛シミュレーション」というカテゴリを作ることにしました。

 「恋愛シミュレーション」(以下恋愛SLG)ではまさしく現実の恋愛をゲームにマッピングするものです。もちろん恋愛ゲームの特性上必ずハッピーエンドになる可能性がなくてはならず、恋愛の「気持ちいい部分」だけを切り出した格好になってしまうのは仕方のないことですが。しかし、SNG系に比べるとこちらは何らかのリアリティが求められます。そこでリアリティとご都合主義の兼ね合いが問題になるのですが、今後は恋愛の「陰」の部分の表現にも意欲的に取り組んで欲しいです。

 代表的なものにはバーチャコールシリーズはもちろんですが、その他に下級生、放課後恋愛クラブ、NOeLなどがこちらに近いでしょう。「恋愛を感じる」と言う点ではこちらは得意ですが、上にも書いたようにこのSLG系はほとんどありません。そのことからも次のSNG系の方が「恋愛」に近づき易いと言えるのかもしれません。

3.恋愛SNG系

 「恋愛シミュレーション」以外のほとんど全ての恋愛ゲームが含まれるのが「恋愛シーナリー」です。「シーナリー」というのも訳の分からない独自の用語なのですが(^_^;)、英語ではもちろんsceneryになります。これは小説でも映画でもない恋愛ゲームを表現するためにでっちあげたもので、「シナリオ」(scenario)にかけている部分もあります。この場合、初めからリアリティは必要ではありませんし、求められてもいません。現実離れした設定は全く問題になりません。どれだけ感動できる物語が表現できるか、が全てなのですから。こちらの系統ではときめき、トゥルー・ラブストーリー、同窓会などが挙げられるでしょう。

 そして、ここから恋愛ゲームの本質に近づくかもしれないのですが、To Heartのようにゲーム本編自身でも優れたストーリーを提供するものもありますが、基本的にこのSNG系はゲーム内で自己完結してしまうSLG系とは違い、特に成功しているものはそうなのですが、ゲーム本編だけで収まりきらないのが一番の特徴です。2次創作はもちろん、果てはイベントやグッズに至るまで。(笑)

 sceneryはもちろん「風景」という意味なのですが、第2義として「舞台装置、背景」という意味があります。そしてSNGの本質はそこにあると言っても過言ではないのです。主人公は自分自身。ゲームを土台として自らの思い出(妄想でもいいですけど(笑))を呼び起こし、自分だけの恋愛の物語を再構成するのです。

 恋愛SNG系の代表として挙げたセンチメンタル・グラフティ(以下センチ)。センチはどうしてゲームが出る前からヒットしたのでしょうか?それはセンチの世界観、各種設定、そしてヒロインたちを「背景」として自分だけのセンチメンタル・グラフティを創りあげることができたからなのではないでしょうか。

 SNG系ではゲームそのものはきっかけを与える「舞台装置」に過ぎなかったのです。