恋愛ゲームToday


第2回 次のビジュアル時代に向けて

98/12/13掲載

 前回「シナリオ系」恋愛ゲームを取り上げたので、今回はいわゆる「ビ
 ジュアル系」について考えてみる。

 恋愛ゲームにおけるグラフィックの重要性は改めて語るまでもない。そ
 れは、言わばゲームの「顔」であり、ひいてはそのメーカの「顔」にも
 なるからだ。先月初め、有名恋愛ゲームメーカのグラフィック系スタッ
 フの移籍が大きく話題になったが、それも無理のないことだろう。

 こういった絵重視の恋愛ゲームの考え方は旧来のゲーマーには理解でき
 ず批判の対象となることもしばしばだが、そうではなく、「ゲーム」と
 いう概念が広がる中で、シナリオを楽しんだり、絵そのものを楽しんだ
 りと、新しいゲームの遊び方が生まれてきた、ぐらいに考えた方が良い
 のではないかと思う。それに、女性に比して、男性は視覚的に性的刺激
 を感じやすいというのがどこまで正しいのかは分からないが、少なくと
 も恋愛ゲームの場合買う前に内容が分からない以上「動機付け」として
 重要にならざるを得ないのだから。(現実の恋愛、あるいは異性と比べ
 た時にどうしても奥行きに欠ける部分があることや、キャラクタの外見
 的特徴が性格やシナリオの方向づけまで行ってしまうという恋愛ゲーム
 ゆえの傾向のため、外見的な要素の占める割合が現実のそれより大きく
 なってしまうというのは注意しておく必要があるだろう。)

 しかし、人の顔の好みがバラバラのように、ゲームグラフィックは恐ら
 く他の要素と比べて一番趣味の別れる部分だ。そこで、正しい評価をす
 るには絵柄や塗りについて主観的・客観的な視点が必要になる。できる
 だけ多くのユーザを獲得するためにはいわゆる「一般ウケ」する絵が望
 ましいが、それはキャラクタの没個性化・ステレオタイプ化とトレード
 オフな関係にあるので難しい。またこの一般ウケにも流行があり、「同
 級生」→「センチメンタルグラフティ」→「Pia2」のようにゲームとそ
 の原画家の人気・流行はタイアップしている感じである。次にどんな絵
 が「来る」のか興味深いところだ。

 技術的な観点から言えば、昔の16色時代には技術力のあるメーカとそう
 でないところの格差が激しかったが、256色やハイカラーが一般的にな
 り、また優れたCGクリエイターが多く流れ込んでいる現在では、その格
 差はだんだんなくなっていく(あるいは見えにくくなっていく)方向に
 あるように感じる。過去には「トゥルーラブストーリー」のような「ビ
 ジュアルフィルタ」(※注、お気に入りのキャラクタなら少々絵がアレ
 でも脳内補完して可愛いと思い込んでしまう人の機能(笑))が大活躍
 するようなものもあったが、グラフィックはもはや一定レベル(それも
 かなり高い位置で)を越えていることが「前提」になりつつあるのだ。

 そうなってくると、一枚絵としての完成度ももちろん大切だが、これか
 らむしろ重要になってくるのは、その絵をどうやってゲーム中に効果的
 に使っていくかということ、つまり音楽(BGMとの同期は基本)やシナ
 リオ、画面効果と組み合わせた「演出」だろう。(些細なことかもしれ
 ないが目パチや口パクは個人的には結構欲しい。)Leafなどは比較的頑
 張っているし、F&Cも最近若干良くなってきた印象があるが、アニメー
 ションを含め、まだまだ恋愛ゲームにおける演出には総じて不十分な感
 が強く、これから向上して行ける余地のあるところではないかと考えて
 いる。