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■ 今回のテロ攻撃について
投稿者:三木原慧一 さん  ( uid 27009, posts:235, since 2001/06/01 )
投稿日: 2001/09/12 (水) 02:50 No.603 | 編集 | 削除

 新作の完成が目前で(中央公論の編集会議の最終結果は金曜日に出ます。現在、9割がたオーケーが出て、残りは初校を直した部分の評価判定)そろそろ復帰しようかと思ったら、今回のアメリカテロ攻撃が起きました。
 書きこみを見る限り、特に専門にしている方もおられないようなので、僭越ながら書きこみます。

 まず、亡くなった方々は気の毒でした。彼らは犠牲者です。政治家とマスコミとある種の無関心が招いた犠牲者だと思います。
 その上で、今回の事件から派生する事態予測を書きます。
 今回のテロが巻き起こす最大の被害は、実は、人的犠牲ではなく、経済的なそれです。まず、ニューヨーク市場は暫く閉鎖でしょう。次のテロターゲットになる可能性が高い点を考えると、再開には慎重さが要求されます。すでにドル売りが始まり、株式市場は暴落に入っています。原油価格の高騰も始まっています。日本の場合、株価がこれで一万円割れになるのは確定しました。テログループの狙いはアメリカ経済(というかこうなると世界経済そのもの)に大打撃を与えることかと思われます。
 次に軍事行動。
 ある人から「戦争になるのか?」という質問をすでに受けましたが、湾岸戦争タイプの侵攻作戦をやる可能性は低いです。
 まず、湾岸戦争に関しては、あれを可能とした最大条件として、サウジアラビアが協力したからという点がありますが、ここ数ヶ月のアメリカとの関係はかなり悪化しています。以前にここで書きましたが、パレスチナ問題でイスラエルの暴挙を後ろからがっちり支持しているのがアメリカ(石を投げるとミサイルを叩きこむイスラエル軍と書いたはずです)である点に、アラブはおおむね(穏健派含めて)腹を立てています。腹を立てている、というのは実に穏便な書き方で、強硬派はイスラエルに殺されたパレスチナ人たちの復讐を強く望んでいます。PLOのアラファトは穏健派に属しますが、今回の事件でアラファトはもう駄目でしょう。ある意味、何の実権もなくなるかも。実行グループはパレスチナでは英雄となるはずです。理由は前記の通りで、石を投げたらミサイル叩きこむような無茶をやり続けたことに対するアラブの復讐が今回のテロですから。中東情勢で基盤の弱い穏健な国はガタガタになり、強硬派が主導権を握ることになります。さらに、原油価格はこれで暴騰するでしょう。最大の損害が人命ではなく経済と記したのはそのためです。おそらく日本でも、この件が引き金で自殺してしまう人がこれから何名も出るでしょう。その意味では、他人事では全然ない出来事です。アラブは強硬派を中心に原油価格を高めに誘導するはずです。
 では、これらのアラブ勢力にアメリカがどう対応するかというと、仮にパレスチナに下手人がいたとして、そこへの軍事侵攻に整合性を持たせられるか、というと、かなり疑問です。いみじくもトム・クランシーが「恐怖の総和」で描いたように、テロリスト個人(もしくはそのグループ)を摘発し、処刑することができても、国家そのものを侵略するのは無理がある。おそらく、空爆と、特殊部隊の投入によるテログループの殲滅(皆殺し)あるいは、犯人を捕らえて自国へと拉致し、裁判によって死刑判決……という流れになると思われます。これはパナマ侵攻で前例があり、ノリエガ将軍はアメリカの法廷で裁かれ、収監されています。(これが国際法から見て無茶な行為なのは記すまでもない。)
 ただ、このプランの問題点は『実行グループが特定できるのか?』という点です。現在でもパレスチナグループ、タリバン、日本赤軍、様々な名前が上がっています。貿易センタービル爆破の周到さを考えても(飛行機の他に、おそらくどこかに大量の爆薬をしかけてます)相当に緻密に作戦を立てられる連中ですから、カヴァーも徹底しているでしょう。もう一つの問題は、過去にアメリカはこの手の特定に幾度も失敗していることです。15年前にテロの報復にリビアを空爆した時も、後になってリビアの犯行でないことが判っています。数千名が死亡したと思われる今回のテロの場合(15年前は50名前後)その報復として徹底したものをアメリカ人は求めるでしょうから、もし違っていたらえらいことになります。それこそ、被害者転じて「やっぱしアメリカは……」という話になりかねない。
 さらに、空爆/報復後のテロ行動も実行グループが予定として組んでいるとすると(物書き的な視点で言えば)これで小型の戦術核でもテログループが持っていたら、アメリカが空爆をした直後に、ワシントンかニューヨークで爆発させるでしょうね。
 脅かすわけではありませんが、当面、可能ならばアメリカへの旅行(特に飛行機)は避けたほうが賢明かと思われます。中東に対するアメリカの姿勢が変らない限り、イスラエル軍のパレスチナ人への虐殺行為は続きますし、それに対するテロ戦争をアラブがアメリカ/イスラエルに仕掛ける、という図式も動きません。そして、テロ戦争の攻撃目標は「対象国の存在すべて」です。軍事的なものだけがターゲット……ということでは決してない。その意味では、この戦争はあらゆるものを巻きこむ恐ろしいものです。その点をよく考えて、慎重に行動されるのが賢明かと思われます。

 原稿がアップしたらまた書きこみます。
 

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