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目次
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序章
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
最後に
参考文献

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化け物祭考 ー「マレビト信仰」との関連からー

第五章・そして、現代の「化け物祭」へ

 江戸時代後半に盛んだったという「天神祭」も、明治になって一旦廃れたという。それを、昭和初期に商工連合会が「商業の発展策として天神祭を一種の市民祭として発展させようと」働きかけて復活させ、仮装行列なども大々的に行うようになったのだそうだ。昭和41年に「天狗舞、獅子舞復活」という記事も鶴岡天満宮の由緒にあるので、祭の際のそれらの奉納舞もしばらくは廃れていたものらしい。
 私が子供の頃に見た「化け物祭」の、華やかな仮装パレードや公園の縁日のにぎわいは、その、商工連合会が働きかけて復活し、盛り上がったころの「化け物祭」だったのだ。
 しかし、なんとはなしに暗いイメージがあったのは、明治生まれの曾祖母や祖父がまだ元気でいて、昔からの土着の祭であるということを分かっていたからではないだろうか。昭和40年代の高度成長期の、中央では近代化が推し進められている時代に、大昔から続いている、もしかしたらその昔は人身御供を捧げたこともあったかもしれない泥臭い祭を未だに行っているという引け目があったのかもしれない。
 しかし、そのような本来の由来を言葉にして説明できる人は、もはや存在せず、現代に復活した「化け物祭」としては、いわば公式に伝わっている道真公との関係の方ばかりが語られるようになった。江戸時代でもそうだったように、他の土地の人々に「化け物祭」を紹介するときに、説明しやすかったということもあるだろう。
 
 そんな「化け物祭」も、このところの地方ブーム、民俗ブームに乗って、「東北の奇祭」として、今度は観光連盟が後押しをして盛り上げようとしている。観光客向けに「化け物」の衣装を貸し出したり、スタンプラリーをやったり、地元の物産の紹介をしたりと、様々な催しを祭に合わせて開催し、全国に宣伝している。多くの旅行雑誌などにも取り上げられ、「化け物祭」の5月25日の鶴岡はたくさんの観光客でにぎわうという。
 地元の人々も、楽しいイベントに参加する感覚で「化け物」になって、観光客たちに酒やジュースを勧めている。そこには、昔私が感じた暗いイメージなどは、もうない。無言であるはずの「化け物」たちも、数人で連れ立って、楽しく語り合いながら歩いているそうだ。

 
 地元を離れ、ずいぶんと長い時間のたってしまった私などからみると、勝手な郷愁だとは思うが、その明るさには少し寂しい気持ちがしてしまう。なので、ここでは「化け物祭」を無理矢理にその暗い側面から考察してみた。どこの土地でも、そこで行われる昔ながらの祭には、口に出しては語られない暗い面が、少なからずあるのではないだろうか。その語られない部分を想像し、祭の始まった古代の故郷の様子や人々の生活を思い描くことは、とても楽しい作業なのだ。



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