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著者略歴
昭和四年(1929年)山形県鶴岡市生まれ
昭和二十一年(1946年)鶴岡中学(現・鶴岡  南高等学校)卒業
山形大学文理学部哲学科卒
県立山添高等学校、鶴岡南高等学校通信制、 庄内農業高等学校、鶴岡家政高等学校に勤務
平成二年(1990年)3月定年退職

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酒友

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飲んだくれてふる里
未入籍別居婚
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飲んだくれてふる里 立ち読みコーナー

かりそめの一坪半

 教師駆け出しの頃は学校に授業に行くのか、飲みに行くのかと思うくらい。昭和三十年代から四十年にかけての鶴岡は次々と飲み屋が誕生。丁度飲み盛りの私などとピッタリ時期が一致。酒友の尻馬に乗って、図に乗って「警察のブラックリストに載っている」とおどされる程毎晩のように飲んだくれた。それがそのまま鶴岡飲み屋繁盛史ともなるよう。

 その手始めがやきとり屋。

 当時私は山添高校に勤務しており、例の酒友と例のごとく学校で一杯やり下地を入れると鶴岡の灯目がけて繰り出す。雪でバスをはじめ乗り物一切不通の真冬など猛吹雪、地吹雪もものかは小一時間歩いて鶴岡のやきとり屋台の赤提灯にたどりつきホッとする。戸の隙間から容赦なく吹雪が入り込むわずか一坪半ばかりの屋台のなか。四十ワットの裸電球の下でやきとりを串からしごき、焼酎をすすって身も心も温まる。

 鶴岡にやきとり屋台が見え出したのは昭和二十四年頃。戦後の飲み屋はまさにこのやきとり屋台からスタートしたといっても過言ではあるまい。その後三十年前半には市内を流れる内川の川端に十数軒、羽黒街道筋の映画館前、また駅前その他合わせて七十軒をこえた。それで私などやきとりは屋台で食べるものと思っていた。少なくとも料理屋の座敷でかしこまって食べるものではないと、もっともやきとりは明治の頃からあったようで、とくに鶏や豚のモツなどは大道商い、つまり屋台だった。それが庶民に広く食べられるようになったのは戦後で、鶴岡もその例にもれまい。

 鶴岡のやきとりはそもそもの屋台でなければ、また豚モツでなければならず、そしてその商いはかあちゃんでなければならないようなところさえあった。一升ビンから酒を受け皿にこぼれるまでコップに注ぐ前ダレ姿のかあちゃん、その腕にダンナのカタミという腕時計がヒカる戦争未亡人である。戦争の傷跡を負っているかあちゃん達が少なくないのである。れっきとした職業軍人のオクサマをかなぐり捨てて生まれて初めての豚モツに挑戦。その処理に息をひそめ必死の思いだったとか。一方復員後人が変わったように毎日パチンコ、マージャン、酒びたりのとうちゃんに業を煮やしせっせと焼きつづけて見事子供四人、高校を卒業させたかあちゃんの指はリウマチ。あるいは満州から娘をかかえての引き揚げ者で、ハダカ一貫からの赤暖簾。人生いろいろ。かあちゃんいろいろ。たくましいのである。

 ホンのベニヤ一枚ヨシズ一枚で遮断された一坪半は五、六人も座れば満員盛況。内川を背にして立ち並ぶ屋台のざわめきはまさにやきとり銀座。夜半も過ぎ裸電球が消え去るとあとは闇。束の間の盛り場?は跡形もない。

 土台飲み食い屋などはかりそめの世界といってよい。とくに屋台はその感が深い。わずかな空間を申し訳に囲った舞台装置はもろく不安定ではかなげでさえある。そういえば深夜の吹雪に突然川に流された無惨な屋台を見た。一方酔いに踏みはずして内川酔泳と洒落た?御仁も。屋台もかりそめ、酔いもかりそめとなればついいとしむようにコップを傾ける。たかがチュウ二、三杯やきとり五、六本の昔日の饗宴?は「つわものどもが夢のあと」か。

 屋台には車がついて移動できるようにしてあり、また即座にたためる。高度成長期に入って洒落た居酒屋、バーなどが続出して客が減り出し、止むなくたたむかあちゃんも。しかしそれよりも市がやきとり屋台を追放したといってよい。内川端一帯の立ち退きから始まり、歩道、川岸の改修を機に結局公道から締め出された。お役人は屋台は美観を損ねるものとみた模様。私など川面に流れる煙、赤提灯の風情がむしろ美観と映ったのだが。

 平成三年四月内川端の四軒を最後に鶴岡のやきとり屋台はほとんど姿を消した。やはりかりそめだったか。今私道に数軒見える。そのなかで草創期からの「ぐんばいや」のかあちゃんはまだ健在。炭火で焼いているのが嬉しい。

 

この記事に見える内川端の四軒のやきとり屋台は、今、どうなっているのか…

つづきは本書でどうぞ。

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